【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy   作:丹寺 錯視屋

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悲しみの場所

 ――アルテミス。全方位に展開する光波防御帯によって絶対の防御力を誇る、ユーラシア連邦所属の宇宙要塞である。消費電力が激しいため常に展開されているわけではないが、不審艦の接近を探知すると即座に展開され、その防御力が発揮される。ミーシャ達アークエンジェルも不審艦として補足されているが、通信可能域まで到達した際に交渉し、アークエンジェルの寄港を許可された。

 

「なんか物々しかったね」

 

 ラミアスとアルテミス司令ガルシアとのやり取りを見ていたミーシャが格納庫で言った。ミーシャはキラと一緒に機体の整備を勉強している最中だった。ミーシャの担当はコクピットの中である。アルコールをウェスに沁み込ませ、細かいところまで清掃していく。キラもストライクのコクピットでOSの調整をしているため、会話は通信越しである。

 

「やっぱり所属が違うと、そう簡単にはいかないんだろうね」

「スパイだと間違われないかな?」

「それは大丈夫だと思うよ。でも……フラガ大尉はそう思ってないみたいだ」

 

 ミーシャは手を止めて、コンソールに映るキラの顔を見る。

 

「どういうこと? ムウはユーラシア連邦が敵って思ってるの?」

「そこまでは思ってないと思う。でも、OSにロックをかけとけって言われたから……」

「OSに? ロック? なんで?」

 

 ミーシャが操縦桿を磨きながら言う。手汗と手垢で汚れてそうなので念入りに。コクピットのそばに浮かせていた消臭ミストを手に取ると、シートの方に何度もプッシュする。戦闘中は汗もすごいので、年頃の乙女として、匂いはものすごく気になる。シトラスのいい香りが鼻腔をくすぐる。

 

「僕もフラガ大尉が何を考えてるのかはわからないよ。でも……従った方がいいと思う」

「そもそも、見られたら困るの、これ? あと、これからも戦うつもりなの?」

「え? いや、僕は別に……」

「だよね? あー、もしかしたら取り上げられちゃうかもってことなのかな?」

 

 ミーシャの言葉に、キラは手を止めて考え始める。

 

「……確かに、それならあり得るかもね」

「私達ってこの後も戦うのかな?」

「――僕は嫌だ」

 

 キラは素直に言い切ると、再びキーボードをいじり始める。

 

「ミーシャちゃんだって嫌だろう?」

「まぁねー。でも、敵を撃つのはそんなに嫌じゃない……かも?」

 

 その言葉に、キラは面食らう。ミーシャだって同じように戦うのが嫌だと思っていたのだ。いや、戦い自体は同じように嫌なのだ。違うのは、ほんの些細なところだけ。そしてその違いを、キラは軽く流すことなどできなかった。

 

「人殺し……だよ?」

「それでも、だよ。色々あったし、戦うのは嫌だし今でも戦争は怖いけど。敵を倒す時、敵の殺意とか圧力とか……そういうのがなくなるのは嬉しいかなー。吐きそうになるし、すっごく辛いのは変わらないんだけどね」

「――」

 

 キラは絶句した様子だった。人殺しの忌避感が少しずつなくなりつつあるミーシャになんと声をかければいいのか、わからなかった。

 

「……キラこそ、もしこの先も戦えって言われたらどうすんの?」

「もう僕は戦わないよ。だって、要塞にはたくさん軍人がいるんだから」

「それもそうだね。あー、ぬいぐるみとか写真とか置いたり飾り付けとかしたかったなー」

「あはは……そういうところは女の子なんだね」

「なによ。私はいつだって女の子だよ」

 

 キラはディスプレイの隅に表示されている時計を確認すると、コンソールを畳む。コクピットから出て、バスターの前に移動した。

 

「ありゃ、もうそろそろ?」

「うん、そろそろ時間だよ。行こう」

 

 キラはミーシャに手を伸ばす。ミーシャはその手を取って、キラと一緒に食堂へと向かう。

 

「軍事要塞……中見たかったなぁ」

 

 ミーシャ達民間人は皆食堂で待機を命じられていた。着艦自体はできても、乗組員の乗り降りは許可されなかったのだ。

 

「なんにもないといいけど」

 

 キラは食堂へ行く道すがら、不安な胸中を口にせずにはいられなかった。

 

 

 ――

 

 そして、不安はものの見事に的中した。食堂に軍人がやってきたかと思うとパイロットが誰かと詰問をはじめ……ミリアリアの腕を掴み始めたりして、本格的に揉め事になる……そうキラ達が思ったところで大きな振動が発生したのだ。軍人たちの脇をすり抜けて格納庫までたどり着いたキラとミーシャは、各々のモビルスーツに乗り込んだ。ミーシャは怒り心頭だった。

 

「いくら知りたいからってハウさんの腕掴んだりする、フツー? 信じられない!」

「それは僕もどうかと思うけど! 今は何が起こったのか把握しないと!」

 

 手際よく二人はモビルスーツを起動し、いつでも出撃できるような状態にする。

 

「ブリッジと通信繋がらないしこれラミアス大尉たちも捕まってるんじゃない? 要塞が吹っ飛んでもアークエンジェルって大丈夫かな?」

「大丈夫なわけないと思うよ。でも僕らじゃ格納庫開けないし……」

「……何もできずに爆散するのは嫌だなぁ」

 

 そんなことを話していると、通信コンソールが開いて、ミリアリアが映った。

 

「あ、ハウさん。ブリッジは無事?」

「うん。ラミアス艦長もバジル―ル少尉もフラガ大尉も、みんな無事よ。ミーシャ、今からアルテミスから脱出するわ。今宇宙港の中をブリッツが暴れまわってるから、出撃してアークエンジェルの出航を援護してね」

「ブリッツ? 何をどうして中に入ったの? 無敵のバリアはどうしたの?」

 

 出撃準備をしながらミーシャが聞いた。

 

「ブリッツはミラージュコロイドという透明になれる機能を有している。それで潜入したのだろう」

 

 ナタルが答えると、ミーシャは目に見えて怯え始める。

 

「とうめい? そんなのできるんだ……」

「ミラージュコロイドを使用している間、フェイズシフト装甲は使えない。ミーシャ、お前の機体ならその弱点を突けるはずだ」

 

 バスターには物理弾を使用する散弾砲がある。それを使えば、フェイズシフト装甲がないのなら致命傷を容易く与えられるだろう。

 

「ん……それなら、ミラージュコロイドの脅威は今日で終わりだよ」

「その意気だ。ミーシャ、命令だ。戦って、殺してこい」

 

 ナタルはあえて過激な言葉を使って命じた。ミーシャは嬉しそうにニッと笑って答える。

 

「うん、戦うよ。ミーシャ・バレンタイン。バスター、行ってきます!」

 

 格納庫のハッチが開いて、ミーシャはバスターをゆっくり発進させる。遠くではブリッツの黒い機体が動かない艦艇相手に大暴れしている最中だった。左手にビームライフル、右手に散弾砲を手にし、ブリッツに近づく。

 

「楽しい的当てはもう終わりだよ! ぶっ殺してやる!」

 

 バスターの射程に入ったと同時に、ロックオンして射撃。ミーシャが初めてロックオンで射撃をした瞬間だった。

 

「バスター!? もう嗅ぎ付けたのか?」

 

 対するニコルも余裕綽々とはいかない。ガモフ指揮下の兵にとって、恐怖の象徴にして死の権化。それがミーシャ駆るバスターなのだ。

 その射撃は正確無比。ロックオン可能距離の遥か遠くからアラートもなくビームが飛んでくる。エリート級……赤服でなければ回避すらままならない。

 ニコルが単騎での潜入と破壊工作を請け負ったのは、そんな恐怖を払拭するねらいもある。ここでバスターを落とせば、ガモフの士気も上がるはずだ。

 

「すみませんがここで落とさせてもらいます!」

「早く透明になりなよ、蜂の巣みたいにしてあげる!」

 

 お互いビームを撃ち合うが、どちらも命中には至らない。

 この距離なら、と散弾砲を撃つと、ものの見事に全弾命中する。しかし、フェイズシフト装甲に阻まれて全くダメージを与えられない。装甲が剥げた様子すらなかった。

 

「――! 物理散弾……! こいつの前でミラージュコロイドは使えない!」

 

 不意を打とうと透明になった瞬間散弾を撃たれ爆散する未来がありありと思い浮かぶ。このままバスターに捕捉されたままだと脱出すらままならないかもしれない。計画だと同じようにミラージュコロイドで透明になって脱出する予定だったのだ。

 

「ミーシャちゃん、今援護する!」

「キラ! 一緒にこいつぶっ殺すよ! 楽しいね! 初めてこっちの方が数が多い!」

 

 楽しげな声を上げながら、ミサイルを一気に発射する。

 

「爆発は怖いよね!」

 

 フェイズシフト装甲は物理攻撃を無効化するが、コクピットに伝わる衝撃までは無効化できない。爆発の衝撃というのは狭いコクピットの中では嫌に響く。まともな人間なら回避したいと思うはずだ。

 

「――くぅ!」

 

 ニコルはミサイルを回避し、ミサイルを撃ち落として回避する。銃口がミサイルの方に向いた瞬間、ビームサーベルを抜いたエールストライクが斬りかかる。

 

「!」

 

 ニコルは左手に装備された大きなアンカー状の兵器、グレイプニールをストライクに放って、牽制する。ストライクは進路を変更し、グレイプニールを回避。

 

「くっ! チャンスだったのに!」

「気にしないで! まだまだチャンスはあるよ!」

「キラくん、ミーシャちゃん! アークエンジェルに取り付いて! 脱出するわ!」

 

 出港準備ができたアークエンジェルからの通信が入った。ミーシャは後部モニターを確認すると、そこにはメインブースターを使って加速を始めたアークエンジェルがいた。

 

「ブリッツがまだいるよ!」

「大丈夫よ! アークエンジェルの上で援護してくれれば、宇宙港は脱出できるわ。そして、モビルスーツの推力でアークエンジェルに追いつくことは出来ないわ!」

 

 ミーシャとキラのやるべきことは宇宙港を出るまでアークエンジェルを守ることだけ。

 

「やりぃ! キラ、聞こえたよね? アークエンジェルの上で守るよ!」

「うん、わかった!」

 

 艦橋下のスペースに二機は陣取ると、ブリッツに向けてビームライフルを射撃する。二機に加えて、アークエンジェルからもかなりの弾幕が形成されている。単騎での突破は現実的ではない。

 

「……ここでアークエンジェルを落とすのは無理ですね……」

 

 ブリッツは少しずつアークエンジェルから離れる。アークエンジェルをやり過ごして、ミラージュコロイドで脱出するつもりのようだった。

 

「あ、離れてく!」

「追撃は無用よ。私達は脱出を優先するわ」

「……了解」

 

 ミーシャはパイロットシートに背中を預け、ふう、と息をついた。

 

「キラ、今日は人殺ししなくて済みそうだね」

「うん、本当によかった……」

 

 アルテミス要塞の各所から爆炎が吹き出す様子を背に、アークエンジェルは宇宙空間を進む。

 再びアークエンジェルの格納庫に格納された二人は、コクピットから出ると同時にブリッジに呼び出された。

 

「さて……私達がアルテミスに向かった理由、覚えてるわね?」

「補給!」

「よくできました。……でも残念だけど、肝心の補給が全くされてないの」

「あの……それ、大丈夫なんですか……?」

 

 キラが恐る恐る聞くと、ムウが肩を竦めて首を振る。

 

「大丈夫なわけないだろ、坊主。このまま月基地までいけば、最後らへんはこの船の中どうなってることやら」

「やだよ人の血飲んだり食べたりとか」

 

 ミーシャの最悪の予想に、キラの友人達が顔を青くする。

 

「俺だって嫌さ。で、そうならないようどうしましょうって話し合うのさ」

「途中に友軍とかいないんですか?」

「残念だけど、任務遂行中の艦隊は基本的に予定を共有したりしないの。闇雲に探すことになるわね……」

「うーん……どっかにパーツとか落ちてないかな、ゲームみたいに」

「そんなことないと思うよ……」

 

 キラは呆れるように言うが、ムウがハッと何かに気づいたように宇宙地図を見る。

 

「もしかしたらあるかもな」

「え?」

「デブリベルトだよ。ここなら戦闘で使われなかった物資とか残ってるかもしれん」

 

 しかも、とムウは航路のシミュレーションを実行させる。

 

「地球のスイングバイで加速して、月の軌道にも早く乗れるようになる。一挙両得。これこそアイデアってやつだな」

「――問題は……ひたすらに危険ってことね」

 

 ラミアスにとってその計画は実利だけ見れば確かに、一択レベルで効果がある。だが、デブリベルトとは言うなれば宇宙のゴミ捨て場。山のようなジャンクが所狭しと浮いているような場所なのだ。いくら戦艦とはいえ、大量のデブリにぶつかれば、そう時をおかずデブリの仲間入りだ。

 

「バスターでゴミを撃ち落とすとかどうかな?」

「バスターの装備では大質量のデブリを破壊することはできないし……藪蛇になるやもしれない」

「ザフトに気付かれるってことですか?」

 

 キラの質問に、ナタルは頷く。

 

「気を付けて航行する……しかないわよね」

「まぁ、そこは操舵士の腕に期待するとしようか」

 

 ムウが言うと、話を振られたアーノルド・ノイマンは顔を顰めつつも、頷いた。

 

「できないとは言いませんが……かなり微速になりますよ?」

「それくらいなら大丈夫よ。進路は決まったわね。デブリベルトまでおよそ二時間。ミーシャちゃんとキラくんは今のうちに休んでてね」

「はい、わかりました」

「はーい」

 

 ミーシャとキラの返事に頷いたラミアスは、さらにクルーたちに指示を出す。

 

「デブリベルトについたら、あなた達には船外活動を手伝ってもらいます」

「了解」

 

 さらりと返事をしたこのとき、クルーたちはまだ、そこがどういう場所なのか、理解しきれていなかった。

 

 ――地球圏デブリベルトに到着したアークエンジェル一行は、ミーシャとキラの護衛の元、船外活動に従事していた。

 

「――キャアアアアッ!」

 

 デブリの探索中にミリアリアの悲鳴が通信越しに聞こえてきて、ミーシャは周囲を警戒する。

 

「ミリアリア、どうしたんだ!?」

 

 キラが聞くと、隣りにいたトールが通信に出た。

 

「大丈夫だ。敵じゃない。……赤ちゃんを抱いた女性の遺体が、あったんだ」

「あ……」

 

 キラは絶句する。ここはそういうところなのだ。自分たちがやっているのは、死者から持ち物を剥ぎ取る行為なのだと、今更ながらに理解した。

 

「……ね、キラ」

「ミーシャちゃん、何かいた?」

「ううんなんにもいないよ。……いい気分じゃないよね。人殺しよりかは、よっぽどマシだけど」

「……うん」

 

 それからしばらくして物資の積み込みはあらかた完了した。次のポイントに向かっている最中、ソレが見えてきた。

 

「――あれ、何?」

「あれは……」

「大陸?」

 

 三者三様に驚いていると、キラがその、宇宙に浮かぶ大陸の正体に気付いた。巨大な大地。モヤのような何かが大地を覆っている。これこそが、コーディネーターとナチュラルの戦争が始まった契機そのものである。

 

「ユニウス……セブン……」

「ユニウスセブン? これ……このコロニーの名前?」

 

 ミーシャが聞くと、キラは苦々しく頷いた。

 ユニウスセブン。血のバレンタインによって崩壊した農業プラント。地球軍の核攻撃により、住人は脱出する余裕もないまま27万人もの人が死んだ。

 

「――ここに、沢山の人が眠ってるんだ」

 

 ミーシャは恐ろしいやら、痛ましいやら、不思議な感覚に見舞われる。そして、次のラミアスの言葉に、凄まじい嫌悪感に包まれる。取るというのだ。ここにある大量の氷を。

 

「――ラミアスさん本気? 本気でここの氷盗るの?」

「やむを得ないわ」

 

 ミーシャは顔を顰める。そして、ふと思いついた疑問を口にする。

 

「……犯罪じゃないの?」

「ミーシャちゃん、それはこの際気にするのはやめよう。だって僕達はこうでもしないと……」

 

 

キラは言葉を濁す。

 

「でもさ、キラ。核で吹っ飛ばされた人の怨念とか……呪われそう」

 

 キラ達はミーシャの感想に苦笑する。だが、他のクルー達が感じる嫌悪感や抵抗感を奥深くまで探ると、ミーシャとほぼ同意見になってしまう。

 

「別にさ、嬢ちゃん。俺達大人だってわーいやったー! って喜んでるわけじゃねぇよ。でも俺達はやらなきゃいけないんだよ。嬢ちゃんや……嬢ちゃんの友達が、辛い思いをしないためにも、ちょっとわけてもらうだけなんだよ」

 

 ムウの言葉に、ミーシャは渋々頷いた。

 

「――わかった。……みず、水か。ヘリオポリスにいたころは、そんなの気にしたことなかったな」

「そりゃ、コロニーの管理者は住人にそんな心配させないために、日々がんばってるからな。本来なら、宇宙じゃ水も空気も貴重品だ。無駄遣いはできないもんさ」

 

 コクリ、とミーシャは頷いた。

 

「そだね。私、警戒続けるね。キラ、一緒にいこ」

「うん。ラミアス艦長、作業よろしくお願いします」

「ええ。任されたわ」

 

 ストライクとバスターは、切り出された氷を運ぶモビルワーカーを遠目に、周辺警戒にあたる。しばらく進んでいると、キラが撃破された民間船を発見した。

 

「ミーシャちゃん、民間船を見つけたよ」 

「民間船? ユニウスセブンの時に逃げ遅れた船かな?」

「いや……なんか真新しい」

 

 キラがその船を観察していると、次第に顔を青ざめさせる。

 

「ミーシャちゃん、ザフトだ!」

「え!? 報告するね」

「お願い。僕は監視を続ける!」

 

 ミーシャは通信を開きっぱなしにしているアークエンジェルに呼びかける。

 

「ナタルさん、いる?」

「どうした、ミーシャ」

「キラがザフトを見つけたよ」

「なんだと!? なぜ奴らがここに……」

「撃つ?」

 

 ナタルはしばらく考える素振りを見せた。

 

「ヤマト機、周辺に他の機体は見えるか?」

「見えません。くそっ……気付くなよ……行ってくれ……」

「監視を続けろ。こちらに攻撃しない限り撃つな」

「了解……! 頼む……」

 

 願い虚しく、ザフトの強行偵察複座型ジンは、キラたちアークエンジェルクルーに気付き、氷を運搬中のモビルワーカーに射撃してきた。

 

「撃ってきた! キラ、撃って! 私も撃つ!」

「うわああああああああ!!!」

 

 キラが武装と頭を、ミーシャがコクピットを撃ち抜いた。完全に不意打ちだったため、相手のジンは回避行動すらロクに取らなかった。

 コクピットの中で、キラは自分の手を見つめる。自分で殺したわけではなかった。だが、同じようなものだ。この状況で殺さずに済んだと思うことはキラにはできなかった。また殺した。また戦ってしまった。

 人を――。

 

「……キラ、ねぇ、キラってば! あれなに!?」

「え?」

 

 茫然自失していたところ、ミーシャの声に気づいて周囲を見る。撃墜された民間船のそばに何かが浮いている。赤いランプが絶え間なく点滅しているポッド……救命ポッドだった。

 

「救命……ポッド?」

 

 キラは贖罪するかのようにそれに近付いて、躊躇うことなくそれを掴んだ。

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