【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy   作:丹寺 錯視屋

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運命戦後編です。
ミーシャの一人称視点です。


子供としての日々

 月軌道、レクイエムでの戦いが終わり、正式にオーブ地球軍同盟とプラントが停戦してから一週間が経った。

 あれからすぐ、私、ミーシャ・バレンタインの周りは慌ただしく動いて、目まぐるしい日々だった。まず、戦力と指揮の再編成が始まった。辞令辞令命令命令……。何枚も受けたし何枚も書いた。

 ナタルさんは中将に昇任して、地球軍連合宇宙軍総司令なんて凄まじく高いポストに収まることとなった。ナタルさんの上には地球軍総司令しかいない。ナタルさん指揮下の新生宇宙軍の最初の仕事はボロボロになったアルザッヘルなどの地球軍基地の再建である。

 私は変わらず第81独立機動群所属だが、今は新しい枠組みである世界平和監視機構コンパスへ出向することが決まっていて、開店休業状態である。私の部下……ステラとアウルも同じようにコンパス行きが決まっている。

 私は准将に昇進したものの、立場的なものはほとんど変わらず、ただ貰えるお金が増えただけ。ズルしてるような気分になる。まぁ、これでキラに階級が並んだ。

 アズラエルさんは唯一のロゴスとして今後も暗躍するらしい。もう人類全体に厭戦ムードが蔓延してて正攻法で戦争起こすのは難しそうだと悔しそうにしていた。そのままコーディネーターアンチも辞めればいいのに。

 大統領は規定に従って副大統領が大統領に繰り上がりで就任している。彼も『神輿』の1つらしく、私に指示を求めてくる。意味わかんない。大人なんだからちゃんとしてよ。近々選挙があると言っていた。

 私は相変わらず学校に通わず、地球軍に籍をおいている。前の大戦みたいにまた一時的に学校に通うことも考えたけど、今はコンパス入りが予め決まっている。途中で抜けることがわかってて学校に行ったってしょうがないし……。なんか、前よりも遥かに自分が人殺しということを重く感じる。みんなが知識を詰め込んでいる間、私は人を殺してた。みんながお菓子を食べてゲームをしている間、私は自分のクローンを殺してた。――まるで同級生が別種の生き物のように思えてしまうんじゃないか。いや、違うな。

 同級生を見下してしまうのが怖いんだ。なんだ、偉そうに。戦ったこともないくせに。そう思ってしまったら……。何よりもそれを親友に対して思ってしまったら。そう考えると、怖くて学校になんて通えない。

 

 ……私は自分の家の執務室でぼうっとネットを見ていた。もう戦争が終わったし、休んでもいいかなって溜まってた有給全部使う勢いで申請したら素通しだった。なんか軍人って休めないって聞いてたんだけどなぁ。

 ……見てるのはデスティニープランについての反応。プラントの反応はそこまで悪くない。元々結婚統制なんて前時代なことやってる人らだし、上に決められるのには慣れてるのかな? でも地球の反応は非難が凄い。まぁ職業も結婚相手も何から何まで遺伝子で決められますなんて言われて納得なんてできるわけないか。私がやったことって正しかったのかどうか、今でもわかんない。……いや……違うな。正しいわけないか。意見や言論に対して暴力で封じ込めるなんて野蛮人のやることだ。向こうが野蛮になったからといってこっちも野蛮になったらそれこそ、同じ穴の狢だと思う。――でもあの時はやらなきゃみんなが死んでたんだ。でも私、この先の人生で気に食わない意見に対して銃口向けないなんて言えるんだろうか。今はいいけど、例えば大人になったとして……。

 

「……大人か」

 

 自分はどんな大人になるんだろう。手元のコーヒーを一口飲む。甘くておいしい。砂糖とミルクありありの、名付けてミーシャコーヒーだ。大人になったらブラックも飲めるようになるんだろうか。

 

「世界はまだドンパチやってるなぁ」

 

 特にユーラシアはヤバい。戦後のゴタゴタで弱った隙にファウンデーションっていう国が独立した。まぁ大西洋連邦(ウチ)は国家承認してないんだけど。……国ってどうやったら国って認められるのかな。……正直どうでもいいや。大事なのはファウンデーションが上手くやったからって他の国も独立ムードがバリバリってことなんだよね。

 そんなに連邦の中にいるのは嫌なのかなぁ。私はそんなことないんだけど……うーん。

 

『君たちは恵まれた人間だ』

 

 デュランダルの言葉を思い出す。確かに私は恵まれてる。ワシントンDCにこーんなにでっかいお屋敷持ってて、お金だってきっと一生使いきれないほどあるし、これからもまだまだ増えていく。服だって部屋一つ丸ごとクロゼットにするくらいたくさん持ってるし、食べる物に困ったことなんて一度もない。そんな私が上から目線で物事を考えるのって、本当に正しいのかな。

 

「恵まれない人の為に……?」

 

 じゃあどうするのが正しいんだろう。……こういう時、友達に聞くのが一番だろう。私は自分のスマホを手に取ると時間を確認する。今からなら多分会っても大丈夫。電話をかけると、アイリはすぐに出てくれた。

 

「もしもしアイリ? 私、ミーシャ」

「ミーシャ! どうしたの?」

「今から会いに行ってもいい?」

 

 少しだけ緊張する。学校に行かず、こうして過ごしているからか、普通の生活を送る友達には負い目のようなものがある。私だけサボっているみたいな気持ちになるのだ。

 

「いいよ。どこかで待ち合わせする?」

「うん。――で、どうかな」

 

 アイリの学校の近くにある喫茶店の名前を言うと、アイリは快く了承してくれた。

 

「いいよ。一緒にお茶しよ」

「うん!」

 

 電話を切ると、立ち上がって支度をする。余所行きの服を着て、貴重品を手に取る。身分証をしっかり手にして、拳銃を手にと――ろうとして、慌てて元の場所に戻す。……いや、でも、まだロゴスアンチの残党がアイリを狙ってるかも……落ち着け。不必要な携帯は厳禁だと規則にはある。

 一分くらい深呼吸してざわつく心を落ち着けると、内線電話で部下と通信する。

 

「はい、どうしたんだ、隊長?」

「あ、シャニ? 今から私友達と会ってくるからね。そんなに遅くならないと思う」

「はいはーい。楽しんできなよ?」

「うん。行ってきます」

「いてらー」

 

 内線を切ると外に向かう。日が傾き始めていて、少し外が赤くなっている。周りには住宅が、遠くには傷一つない街が見える。――私が守った世界だ。赤に染まる空を見つめる。この赤の向こうで、私はモビルスーツに乗って人殺しをして、殺し合って……。悲鳴と怨嗟の中、戦い続けた。そんな私が午後には友達と喫茶店でお茶をする。許されていいんだろうか、こんな幸せ。

 

 ふるふると頭を振る。こんな考え、病むまで一直線だ。もっとポジティブに考えないと。……よし、持ち直した。

 喫茶店までは少し歩く。体力維持の為にも歩こう。平和な街並みを噛みしめたいことだし。

 

 ――よく私達が使う行きつけの喫茶店で、私とアイリはコーヒーとケーキを嗜んでいた。甘くておいしい。

 

「そっちはどう? 私はようやく落ち着いて休暇取ることができたよ」

「地球軍はまだミーシャに戦えって言うの?」

「ん-、もう地球軍としては戦わないかも」

「え? やっと辞めるの?」

 

 首を振って否定する。まだ構想段階の世界平和監視機構については何も言えない。……それにしても平和監視機構って悪役みたいな名前だなぁ。悪者ぶった名前を付けたがる地球軍のノリが移ったのかな?

 

「詳しくは言えないんだけど、別の組織に出向することになるかも。そこで戦う」

「戦いを辞めたりはしないの? もう十分戦ったと思うよ」

「うーん……なんか、やめたらみんな死んじゃいそうで嫌なんだよね」

「どういうこと?」

 

 心底理解できないって言う風にアイリが聞いてきた。そりゃわかんないだろう。自分だってこの感覚がまともじゃないことは知ってる。でもどうしようもないのだ。

 

「レクイエム……って知ってる?」

「この前議長が持ち出した兵器だよね?」

 

 アイリの感覚が、きっと普通の人なんだろう。不意打ちで使ってあっさり奪われたカス野郎の兵器というより、自分の計画を強要するためにチラつかせた兵器という印象が強いんだと思う。プラントの人にとってしてみればどうなんだろう。今度シンに聞いてみるか。……家族がみんな死んでるシンだけがプラント6基墜としたレクイエムについて聞ける安牌というのも残酷な話だ。他のザフト兵に『プラントを撃ち落としたレクイエムのことどんな印象持ってる?』って地球軍でロゴスの私が聞いたらその場で殺されてもおかしくないと思う。

 私なら殺す。

 

「うん。それを守ってるメサイアっていう要塞にジェネシスが積まれてて……ああ、この世界はある日突然、本当に唐突にみんなを殺す兵器がポン、って出てくるんだって思ってさ」

「ミーシャ……」

 

 アイリは気の毒そうな顔をするが、私は本気だ。気を抜いたり、私が戦うことを辞めたら次の瞬間にでもジェネシスが私の上に、みんなの上に降ってくるんじゃないか……私はそう強く思っている。だからやめられない。辞めたくない。

 

「……だから戦うのを辞めないよ。正直地球軍は辞め時かなって思ってたから出向はちょうどよかったの」

「なんで地球軍をやめたいの? 何かあった?」

「色々。ジブリールのゴミカス野郎がね」

「ミーシャ、口悪いよ」

「ごめん」

 

 注意されて思わず口を指で押さえる。そういやアイリは割とピュアなところあった。

 

「――まぁ、そいつが私のクローンを作っててね。アイリはベルリンで大暴れしてるデストロイ見た?」

「デストロイ……? あの、大きなモビルスーツ?」

 

 そう、その大きなモビルスーツだ。私が頷くと、アイリはその光景を思い出したのか顔を青くした。

 

「そのパイロットに私のクローンが使われてたの。生まれたときから戦うことしか教えられず、苦痛で言うこと聞かされて、戦う時には無理矢理薬で気持ちよくされて。……それを許可したのが、大西洋連邦の人間にいるんだよ。レクイエムも警告無しでいきなり撃ってさ。なんかついていくのしんどくなっちゃって」

「……そうなんだ」

 

 頷く。アイリは今の話聞いてどう思うんだろう……。しんどい話だろうし、もうやめたほうがいいのかな。いや、今は、今だけはごめんね、アイリ。

 

「たぶん次の出向先は長くなるから……出向先での任務が終わる頃にはまともになってると思う」

「そっか。ミーシャはずっと戦うんだね」

「うん。勉強も合間見つけてやってるよ」

「合間で済むような勉強じゃないんだよ?」

 

 アイリのジトッとした目に思わず苦笑を浮かべる。もうだいぶ同級生には置いていかれてるだろう。だがこれは仕方ないことだと思う。私はみんなが勉強している間人を殺して、人の殺し方ばかり上手くなって。最後に問題集を解いたのはいつだっけ。まぁ、勉強は嫌いだったしちょうどいい。そう思おう。

 

「うん、それでも私はみんなを守りたい」

「……もう。他に話したいことはないの?」

「ある。聞きたいことがあってさ」

「なに?」

「デスティニープランを提唱したデュランダル、覚えてる?」

「こんな短時間で忘れられるわけないでしょう……?戦闘中に行方不明になったらしいけど」

「いや、死んでるよ」

「断言するじゃん」

「殺したの私だもん」

「ちょっと待って」

 

 アイリは私の言葉を止めた。目頭を抑えて、もみもみと指で揉む。なんかどうしょうもない事が起きた時のナタルさんみたいな仕草である。コーヒーを飲んで落ち着いたら、アイリは声を潜めた。

 

「だ、大丈夫なのそれ?」

「大丈夫って何が? レクイエム持ち出すような奴殺すしかないじゃん」

「そ、そうじゃなくて! 捕まったりとか」

「作戦のうちだから大丈夫」

「そ、そう。それで、その議長がどうしたの?」

「んー、殺す前に少し話したんだけどね」

「殺す相手と話したの……? ミーシャ、ホントに大丈夫? 病院いかなくていいの?」

「行ってるから大丈夫。薬も飲んでるよ」

 

 何も大丈夫じゃない。そう目が言っている。だがもう起きたことなのだ。しょうがない。

 

「とにかく、デスティニープランは持てる人達に少し我慢してもらって、持たざる人達を助けるための施策だって言われてさ。何もかも持ってる君が否定するのか? って言われてさ」

 

 アイリは絶句した様子だった。デスティニープランの意図を始めて知ったのか、それとも話し合いをした上で相手を撃ち殺す私にドン引きしたのか。どっちかな。

 

「……それで、私はデスティニープランを否定してもよかったのか悩んでるんだ。私達が我慢すれば沢山の人が救われる。それなら私は我慢するべきなんじゃないかって――デュランダルを殺して、全部終わってから思ったんだ」

 

 あの時、頭にあったのはデュランダルを殺すことだけだった。レクイエムを撃とうとする奴を殺してみんなを守ることしか頭になかった。でもそれが正しいことだったのか。わからない。

 

「……ミーシャ、私は、今こうしてお茶してるわ」

「うん、そうだね」

「私が思ってるのは、将来どんな人と結婚するのかな、とか、お仕事なにするんだろうな、とか。そういうの。私の遺伝子適性は何だろう? じゃないわ」

「うん……そうだね」

 

 アイリはケーキをひと救いして口に運ぶ。

 

「甘いね」

「うん」

「この世界にはさ、一生この甘さを知らずに死ぬ人がいる。でもそんなに多くないわ」

 

 アイリはふわふわのケーキを食べる。

 

「確かに、私達は恵まれてる。でも一昔前みたいに、私達の富は無数の不幸の上に成り立ってるわけじゃない。慈善活動だってしてるわ。ミーシャだってそうでしょ?」

「……まぁ、そうだね」

 

 まだ目処も立っていないが、いつかクローン達を解放して保護しようと思っている。一生面倒見るつもりである。

 それに、戦乱の激しいところにはできる限り支援してるし……。

 

「やっぱり、デスティニープランは極端なの。世界は白か黒かじゃない。若干13歳の地球軍大佐がいらっしゃるくらいなんだもの。曖昧で、あやふやで、決まっていない部分っていうのは必要なの。そうじゃないときっと、どこかで無理が出る。――それが私の答え」

 

 アイリの言葉に、私は微笑む。嬉しい。こうして真正面から答えてくれるなんて。いい友達を持ったものだ。

 

「ありがとう、アイリ。大好きだよ」

「もう、急にどうしたの? 私も大好きよ」

 

 ふふ、と二人して笑い合う。ああ、幸せだ。

 

 ―― 

 

 翌日、私は自分の遊び部屋でソファに座り、ペットボトルのジュースをでん、と置いてゲームをしていた。テーブルの上にはマイクがある。プライマリスクールのときよく話してた男子と一緒にゲームを遊ぶのだ。FPSゲームなんてホントに久々。

 

「こちらバレンタイン」

「こちらルクス・アルバトリオ。久々に声聞いたよ。久しぶり」

「うん。久しぶり。他のみんなは?」

 

 時間になっても一向に他のメンツが来ない。どういうことだろう。

 

「いや……その、なんだ。急用が入ったらしくて。俺だけなんだ。――嫌か?」

「いや別に大丈夫だよ。とりあえず最初は軽く練習がてら遊ぼ」

 

 同級生の男子と話すのも久々だ。変に思われないかな。

 

「な、なぁ、バレンタイン。お前戦争終わったばっかなんだろ? FPS辛いなら別のゲームでもいいんだぞ?」

「私は別に気にしないよ? あー、でも手榴弾は怖いかも。ミーアさん助けるときに目の前に転がってきてね。生きた心地しなかった」

「だ、大丈夫なのかそれ!?」

「大丈夫じゃなかったら死んでるって」

 

 笑いながら言うと、向こうが息を呑むような音が聞こえた。

 

「いやいや……トラウマになるだろそれ」

「うーん……手榴弾は別に。ミーアさん死なせちゃったのがなー辛い」

 

 ゲームを起動してルームを作りながら言う。ミーアさん、ホントになんで守れなかったんだろう。死亡確認なんてやってる暇なかったし、私は腰抜けて動けなかったし……モビルスーツの手が邪魔で見えなかった。

 

「その人、大事な人なのか?」

「ううん。ラクスが助けたいって言うからわざわざコペルニクスまで行ってドンパチやったんだけどねー。なんとか守った! って思ってたら殺されちゃった」

「……お、おう。なぁバレンタイン、ホントにこのゲーム続けるのか?」

「やるに決まってるじゃん。この前出た新作でしょ? ほら、部屋作ったから入ってきてよ」

「わかった……」

 

 なんか声が沈んでる。んー……別に親しい人が死んだって言ったわけでもないのになんでだろ。まぁいいや。戦争の時の話すると周りの表情が暗くなったり重い雰囲気になるのはいつものことだし。できるだけ暗くならないよう明るく話してるのになぁ。

 ルームに軍オタの友達……ルクスが入ってくる。揃ったことを確認すると、私はマッチングを始めた。

 

「負けたらごめんね」

「いや、別にいいよ」

「リアルならクルーゼ以外に外したことないから期待してね!」

「……おう」

 

 ゲームが始まる。周辺の情報を見回す。草が生い茂る廃墟マップだ。潜まれたら見つけられない。

 

「アルバトリオ、このマップどこ気をつければいい?」

「ポイントデルタ周辺は大抵激戦区になるぞ」

「了解。索敵するね。私は左、アルバトリオは右で。死ぬわけじゃないし、気楽にやろう」

「……FPSは久々なんだよな?」

「うん。ヘリオポリス以来かな。なつかしー。あ、敵発見。撃つね」

 

 話しながら、奥の方を歩く敵を見つけた。トリガーボタンを押すと、弾が出て敵を倒した。ポーンと弾かれるように敵兵が地面に倒れる。その描写に思わず笑ってしまう。

 

「あはは! 吹っ飛んだ!」

 

 まるで自分から飛んだみたいだ。可笑しくって仕方ない。

 

「え、そんなに変か?」

「変だよ……あはは。と、とにかく敵を倒したから先に進……あっ」

 

 画面が一瞬血をぶち撒けたみたいに赤く染まって殺された。あー、もう、油断した。

 

「他のプレイヤーと連携取れないのしんどいねー。アラートもないからどこから撃たれたのかもわかんなかった」

「気にすんな、全然行ける」

「うん。あ、スナイパーあるじゃん。あ、しかもこの銃使ってた!」

 

 兵科選択で狙撃手を選んでリスポーンする。高いところに陣取ると、スコープを覗く。

 

「……あー……」

 

 レジスタンスの街でまるで動物を撃つように人を撃ったことを思い出した。あの時、スコープの向こうにいたのは完全武装の相手じゃなかった。……なんか気分悪い。

 

「ごめん、兵科変える」

「なんかあったか?」

「え……あ、その、リアルと違いすぎてちょっとね」

 

 違う。リアル過ぎて思い出してしまった。胃から何かが込み上がりそうになる。無理矢理飲み込むとなんか酸っぱい。アサルトライフルを握って、無茶な突撃を繰り返す。殺す数より殺される数のほうが多いくらいだ。そう、これはゲーム。だってほら、こんなに死んでもすぐ生き返る。

 

「あー……負けちゃったね。ごめん、ルクス」

「えっ、あっ、う、うん。気にすんなよ、その……ミーシャ」

 

 お互い名前を呼び合うと、ぐっと仲良くなった気がする。それから私とルクスは長い間ゲームで遊び続けた。

 それから数時間は遊んでいただろうか。休憩ということでゲームを一時中断しておしゃべりを楽しんでいた。炭酸ジュースをゴクリとのんで喉を潤す。喉に強い刺激がガツンと来る。

 

「……そういや、ミーシャはベルリンのアレと戦ったんだよな」

「うん。デストロイって言うんだよ。知ってる?」

「いや……テロリストが使ってた機体だろ?」

 

 彼が知らないということはまだ詳しいことは公開されてないのだろう。まぁ無理もないか。まだ一月も経ってないのだ。

 

「詳しいことは私も知らないけどね。強かった」

「……ずっとフリーダムだったのか? 流石にスペック不足だろ」

「そりゃね。新型貰ったよ」

「そっか。……なぁ、ミーシャ、学校来ないのか?」

「うん、行かないよ。人殺しが行ったってみんな引くでしょ」

「俺は引かない!」

 

 ルクスの言葉に、思わず嬉しくなる。でも、だめだ。私にはやることがある。学校に通ってる暇なんてない。

 

「ありがとう。久々に話して遊べてホントに嬉しかった。またこうして遊ぼうね」

「あ、ああ! なぁ、俺……俺実は……」

「……?」

 

 しばらく、ルクスは何も言わなかった。相談事かな? そう思っていると、ルクスは急に雰囲気を切り替えた。

 

「いや、実は……実は、軍に入ろうかなって思ってて」

「ダメ。もし入ったとしても、ルクスが最初に行くのはたぶんワシントンの教導隊だね。ルクスが『辞めます』って言うまで追い込むからね」

「え、ええ……? そこまで言うか?」

 

 何を言うんだこいつは。軍オタが高じて人殺しになる気なのか? 何かを誤魔化したんだろうけど、誤魔化し方ってもんがあるとおもう!

 

「言う! 絶対に軍になんて入ったらダメだからね。私准将なんだから、どこの教導隊行こうとも絶対に手を回して辞めるまで虐め抜くからね」

 

 病もうが故障しようが構うものか。戦場に行くより遥かにマシだ。

 

「わかった、わかった! 何があっても絶対、地球軍には入らない。これでいいんだろ?」

「そう! それでいいの。戦争なんてね、できる人に任せりゃいいの」

「……ミーシャはその、できる人なのか?」

「じゃなきゃ死んでるって。アークエンジェルの時なんてモビルスーツ2機と戦闘機で戦艦守ってたんだよ?」

「……いやそりゃヤベェだろ」

「だからヤバいって言ってるじゃん!」

 

 状況で言えば、さっきのゲームで私とルクスだけで敵に勝てと言われてるようなものだ。普通は不可能なのだ。私とキラが揃ってて、戦闘機にはネオ……ムウが乗ってたからこそできた離れ業なのだ。

 

「悪い悪い。ちょっと……その、照れくさくてさ」

「何が照れくさいの?」

「いや、そりゃ照れくさいだろ。久々に女の子と話したんだぜ?」

「軍オタはモテないだろうからねー」

「――ああ。だから、誤魔化しちゃったんだ。悪いな」

「別にー。……また遊ぼうね」

「ああ」

 

 通話が切れた。……本当に誤魔化したかったのは、それなのか。もしかしたらもっと他にあったんじゃないか。

 ――いや、ないか。

 だって私は人殺しで、初めてじゃない。同級生に好かれるわけがない。それに、ルクスとはただ趣味の話をしてただけだ。そんなんで人を好きになるわけがない。

 

「……ごはん」

 

 ごはん、食べよう。そうだ、女子会の日程も決めないと。ラクスとカガリの空いてる時間探して……女子会を。

 

 ――いや、二人にそんな時間あるわけないじゃん。

 

 ……取り敢えず今度コンパスの事打ち合わせでオーブに行くからその時にちらっと聞こっと。




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