【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy 作:丹寺 錯視屋
ファウンデーション王国は新興国ながら、その歴史は決して浅くない。小さくとも長く独立を保っていたのだが、再構築戦争の際に大国ユーラシアに飲み込まれ、連邦の構成国の1つになっていた。そこを、前の戦争でユーラシア連邦が疲弊した隙をついて独立を宣言。鮮やかにその主権を取り戻した。その手腕に魅了されたユーラシア連邦の構成国がいくつか独立を謳ったせいで、『ファウンデーションショック』なんて呼ばれたりするが、今もなお独立国として主権を保っているのはファウンデーションくらいである。他の国は未だに独立のための戦争をしていたり、独立する際の被害から立ち直れずにいた。
世界の戦乱など遠い国の話であるかのように、ファウンデーション王国首都イシュタリアは繁栄を謳歌していた。立ち並ぶ摩天楼がぐるりと湖岸を囲うように発展している。独立戦争の際かなりの戦闘があったはずだが、その傷跡は見られない。そもそもの被害が少なかったか、あるいは、国家運営に携わる者がよほど優秀なのか……。
首都で最も歴史があり最も豪奢な建物……王宮に辿り着いた大型ヘリから、コンパスの面々が降りてくる。総帥ラクス・ クラインを先頭に、3歩離れたところをパイロット達がキレイに2列に整列して歩く。先頭はキラとミーシャであり、その後ろがステラとシンであった。
ヘリ発着場の、ヘリが着陸した場所から王宮までの道にはレッドカーペットが敷かれ、その両脇を近衛兵が整列してコンパスを出迎える。レッドカーペットの中央を歩き、にこやかで柔和な笑みを浮かべて一人の男がこちらに歩いてくる。金髪の髪に繊細で端正な顔立ちの男だ。まだ若く、20歳頃に見えるほどだ。彼はラクスの前まで歩くと優雅に一礼した。
「ようこそおいでくださいました、姫。私はオルフェ・ ラム・タオと申します。若輩の身ではありますがファウンデーション王国において宰相の職に就かせて頂いております。ファウンデーション王国、この日を一日千秋の思いでお待ちしておりました」
「――」
す、とオルフェは自然な動きでラクスに手を差し出す。その手には指輪が嵌められている。ラクスもよく知っているデザインの……母の形見とよく似た指輪だった。
「わたくしはラクス・クラインです。本日はこのような歓迎、誠にありがとうございます」
ラクスはその手を取る以外の道はなく、本人も全く無警戒でその手を重ねてしまう。
その瞬間。
……まるで宇宙に連れていかれたような浮遊感を感じる。ぼんやりと思考があやふやになって、無防備になった心に温かさが流れ込んでくる。目の前のオルフェも驚いたような顔を一瞬だけして、すぐに確信を得たような微笑みを浮かべる。
(ようやくお会いできましたね、ラクス)
その言葉は発声されず、ただラクスの脳内に響く。直接響くようなオルフェの声に、なぜか胸が高く鼓動する。あなたは誰。そんな疑問すら浮かばない。ずっと一緒だったような、ずっとともにあったような安堵さえ胸に湧いてくる。
(私の運命。どうか私を導いて)
「ラクス」
後ろから聞こえた愛しい声がきっかけで、不思議な体験はブツリと切ったような感覚がした。今の感覚は一体……。
さっきの感覚はもはや夢のように遠く、儚い。白昼夢でも見たのだろうか。不思議に思いながら、オルフェの案内でラクスは歩みを進める。
……キラはミーシャと歩調を合わせながら、前を歩くラクスを見る。さっき、彼女はまるで心ここに在らずと言った様子だった。何があったのだろうか。そう疑問に思っていると、脳内に誰かの声が響く。
(邪魔な奴……)
幻聴だろうか? だがはっきりと、確かに聞こえた。不気味に思っていると、歓迎の隊列の一番奥に、黒づくめの集団がいることに気が付いた。近衛兵には見えないが、皆若い。一番小柄な少女兵に至ってはミーシャとそう年が変わらないようにも見える。彼らは皆一様にラクスを熱が籠ったような視線で見ている。喜色に満ちた、ようやく熱望していたモノに出会えたような、そんな視線だった。……彼らがラクスのファンだと楽観することは容易い。だが、キラは彼らの視線にどうしようもない不快感を感じてしまう。
……煌びやかに見える宮殿が視界一杯に広がる。湖畔にあるおとぎ話に出てくるような国と宮殿。だが、キラにとってここは伏魔殿であるかのように感じてしまう。
――ラクスたちは謁見の前に通された。ラクスとキラが隣り合って前に立ち、その後ろを一ミリの狂いなく綺麗に整列したミーシャ達が二列横隊で立っている。
謁見の間。何もかもが新鮮で煌びやかだった。繊細な透かし加工がされた窓や、赤色の生地と金色の刺繍がされた厚みのある絨毯。天井には大きなシャンデリアが吊るされている。そして、最も高いところにある玉座の上に座るのは年端も行かぬ子供だった。彼女はラクスたちが立ち止まると、鷹揚に頷いて言葉を発した。
「わらわがファウンデーション王国女王、アウラ・マハ・ハイバルである。よくぞ我が国に来てくれた。此度のコンパスの迅速な対応、痛み入る」
「ご拝謁の栄誉を賜り、誠に光栄に存じます、陛下」
ラクスが半歩片足を引いて優雅な礼をする。その一秒後、練習した通りに全員が綺麗に揃って頭を下げた。ラクスが頭を上げてきっかり一秒後、同じように揃って頭を上げる。練習の成果が出たぞ、とシンは得意げな顔だった。自分の仕事をやり切ったことで、シンは改めて視線でアウラを見る。ずいぶんと小さい子だ。隣の宰相が実権を握っているのだろうか? だがそれにしては堂々とした様子だ。
「うむ。ミケールのパルチザンにはほとほと手を焼いていてな……。ユーラシア連邦には申し入れを何度もしているのだがな」
ちらり、とアウラは隣の宰相、オルフェに視線をやる。
「まぁ……彼らは今忙しいでしょうから」
クスリと笑うオルフェ。ユーラシア連邦からしたらお前らのせいだろ、と言いたくなるだろうが、ファウンデーションからしたら知ったこっちゃないのだ。両国の関係は最悪に近い。隙を見せればいつ再び戦端が開くか。
「――どうか、我らの民を守っておくれ」
「全力を尽くします」
ラクスが答えると、アウラは満足そうに頷いた。
「ささやかながら歓談の席を設けた。是非楽しんでいってほしい」
それだけ言うと、アウラはぴょん、と玉座を降りて宰相を伴い謁見の間から出て行った。もう謁見は終わりという事らしい。ドッと疲れた。特に大したことはしていないのに、疲労感が凄まじい。もう帰って休みたいが、予定はまだまだある。
――ラクスと艦長たちとは別行動になり、ミーシャ達パイロットは宮殿内を案内されていた。シンやルナマリアは歴史を感じる建物の数々に感心するばかり。案内を担当する宰相秘書、イングリットは物腰柔らかで、キラと同年代に見える女性だ。
――みんな若いなぁ。
ミーシャは案内されながらそんなことを思う。歴史の断絶を少しだけ感じる。普通、国家としてやってきたのなら要職に就くころにはそれなりの年齢になっているはずだ。裏から色々ミーシャが口を出す大西洋連邦ですら、大統領本人とその側近に30歳以下など一人もいない。一番若くて45とかではなかったか。それでもかなりの若手とか言われるような世界が政治の世界である。まぁ、彼女は秘書なんだから若くても全然問題ないのだろうが……。
最後にイングリットは兵舎にパイロットたちを通した。
「彼らが我が国が誇る近衛師団です」
二人の少年がサーベルを使って試合をしていた。甲高い金属音が何度も鳴り響く。その近くでは三人の男女がベンチに座ってくつろいだ様子で試合を見物していた。イングリットに案内されているミーシャ達を見ても、姿勢を正す様子すら見えない。彼らは全員が黒づくめの制服を着ており、全員が年若い。
「あの人たちがブラックナイツ」
ミーシャは呟く。ブラックナイトスコードと言えば、半年前のフリーダム強奪事件でも世話になった人たちだ。彼らの試合を見るに、身体能力も信じられないほど高いのだろう。激しさを増す剣戟。一人が一撃を受けきれず、手にした剣を弾き飛ばされる。
「あー……。シュラには勝てませんね」
弾き飛ばされた方がさほど悔しそうにも見えない様子で言った。シュラ。そう呼ばれたのは銀髪の、手にしたサーベルのように鋭い目をした男だった。シュラは落ちた剣を拾うと、淡々とミーシャ達の方に歩いてくる。柄の方をキラに差し出すと、無機質な声で言った。
「一手御指南頂いても?」
「え」
キラは固まる。……剣? こういう催しなのか? そう思ってイングリットを見ると、彼女は困惑したようにおろおろしている。まさか本気で剣で試合をしろと言っているのか? キラは軍事教育を全く受けていないし、今の世の中、剣術を軍事教練に組み込んでいる軍隊などあるのだろうか?
「僕は……」
断ろうとしたその時、休んでいたブラックナイツの一人が嘲笑するように口角を上げた。
「へえ、剣が使えない隊長さんかい?」
髪を刈り上げた男が笑う。隣にいるミーシャくらいの年の女の子が同調して笑う。
「コンパスっての、案外大したことないんじゃないの?」
「……それはこのあいだ実証したし」
少女の隣にのっそりと座っている少年がぼそっと言った。彼は顔の下半分をマスクで隠すという中々ロックな恰好をしている。ミーシャは彼らの様子に困惑するばかりだった。……なんでこんなに敵視されてんの? フリーダム強奪事件で手を煩わせたのそんなにうざかったのかな?
「お客人に失礼ですよ!」
イングリットが割って入って止めようとするが、その前にシンが一歩前に進んだ。
「ちょっとシン」
挑発に乗るなんて。そう思ったミーシャだったが、後ろのネオに止められた。
「ネオ?」
「やらせてやれよ」
ブラックナイトスコードの力量が見たいのか? ……でも剣の腕見たってしょうがなくない? とは思ったが、ここは黙ることにする。シンはキラとミーシャを交互に見る。……許可を求めるってことは、成長したんだなぁとミーシャは思った。
「行ってきたら? 遊んできていいよ」
「……了解!」
シンはシュラが差し出す剣を受け取って、丁寧に整備された芝生の練兵場まで歩く。シュラとお互いに剣を構えると、シュラが名乗りを上げた。
「近衛師団団長、シュラ・サーペンタイン」
「ヤマト隊、シン・アスカ!」
シンも同じように威勢よく名乗りを上げる。団員の一人が「はじめ!」と合図をすると同時に猛然と切りかかった。シンの剣筋は鋭く、的確である。流石モビルスーツ戦で近接格闘を好むだけあって、慣れないサーベルであってもその動きにぎこちなさはない。だがシュラはそれらの剣閃を僅かな動きで回避し、あるいはサーベルの腹で受けて流す。長い訓練の果てに裏打ちされた確かな実力をシュラは見せつける。シンは次第に焦りから無茶な攻撃が増えていき、ここだ、と思った瞬間、シュラがシンの頭を飛び越えて宙返りをする。呆気にとられたその瞬間に首筋に切っ先が突き付けられた。
「う……」
キラが緊張から身構え、ネオもホルスターに手をかける。
「んだよ、フリーダム・キラー様も大したことないなぁ!」
「まぁ、シュラ相手によく持ったほうじゃない?」
浴びせかけられる嘲笑に、シンの顔が赤くなる。そして、シュラが剣を引いてぼそりと言った。
「やはり、アスラン・ザラが最強か……」
「はぁっ!?」
一瞬で激昂したシンがシュラにつかみかかろうとしたその時、ミーシャが手を振って叫んだ。
「シン! 帰ってきて! もう楽しんだでしょ?」
「バレンタイン准将! でもこいつ!」
「こいつとか言わない! サーペンタイン団長、ウチのシンが失礼しました」
ミーシャが中庭にやってきてぺこりと頭を下げる。シュラはミーシャに興味も見せるそぶりもなく、そっけなく会釈するだけだった。
「ねえ、あんたも隊長やってるんだって?」
ミーシャと年の変わらない少女……リデラード・トラドールがミーシャに近づきつつ言った。
「はい。コンパス所属艦ミレニアムでバレンタイン隊の隊長をしています。その前は大西洋連邦ワシントン教導隊で新隊員のモビルスーツ教育をしていました」
第81独立機動群のことは当然ながら機密である。存在自体は機密ではないが、任務、人員、その他中身に関わることは全て機密である。少なくとも喧嘩腰の他国に教えられることなど一つもない。
「教育ぅ? あんたみたいなおこちゃまが? どんな教育するのか教えてよ」
リデラードがシュラから剣を受け取ると、シンの方を見て顎でしゃくる。ミーシャに渡せと言いたいのだろう。
「うちではちょっと剣は教えてないですね。もっと別のこと詰め込まないといけないので」
「隊長のあんたは剣もできないって?」
「はい。必要ありませんので。……さ、シン、行こ」
「いいのかよ、バレンタイン准将」
「いいって何が?」
ミーシャは敬礼すると、シンを連れて去ろうとする。だが当のシンが困惑気味である。
「だってほら……その、えっと」
「別に戦闘に関わるからって全部できなきゃダメってことはないよ。この人たちは近衛兵なんだから剣術もやってるってだけ」
近衛兵は女王の身を守る最後の壁である。当然そこには攻め込んできた賊との近接戦闘も想定されて然るべきだとミーシャは思う。
「何よ、もっともらしいこと言って逃げるつもり? やっぱりあんた、お飾りの広告塔ってわけ? その戦歴もどれだけホントなんだか」
「リデラード、失礼ですよ! いい加減にしなさい!」
「――ちぇっ」
リデラードは不満を露わにしてミーシャから離れる。シュラはじっとキラの方を見つめる。
「世界を統べるのは力あるものだけだ。キラ・ヤマト。お前にその力があるのか?」
「そんな世界人は望まない」
「――果たしてそうかな」
キラは内心で憤慨する。力あるものが世界を統べる? そうならないために人々は絶えまない努力を続けていたというのに。そんな世界に逆戻りすることになったら今度こそ世界は終わる。ジェネシスやレクイエムを保有し使用することが『正しい』世界なんて……絶対に否定する。力なんていらない、誰も支配したくない。そう思うキラですら、そんな『正しさ』を否定するためなら武器を手に取る。
「あなた方の指揮で戦うのが楽しみだ」
シュラは挑発するようにキラを見る。お手並み拝見。そう言われているように感じた。
とぼとぼと意気消沈した様子でシンはミーシャと一緒にキラ達のところに戻ってきた。落ち込むシンに対してアグネスがけらけらと笑う。
「ホントにあんた情けないったらありゃしないわね! こんなことになるなら私が出ればよかった!」
「……いくらなんでも白兵戦で女が男に勝てるわけないよ、アグネス」
「シンよか善戦できるわよ!」
はあ、とミーシャは小さくため息と吐く。お願いだからシンをこき下ろすのをやめてほしい。ちらりとステラの方に視線を向けると、案の定怒りをため込んでいるのが見える。同じ部隊同士で仲間割れとかされたら本格的にコンパスが空中分解してしまう。どうしたものか。まだ若いというのに胃の心配をすることになるとは思わなかった。
「アグネス? アグネス・ギーベンラート――『月光のワルキューレ』か?」
名前を聞いたシュラが、思わずと言った風にアグネスを見た。名前は知っていても顔は知らなかったらしい。彼はアグネスをじっと見つめると、ふっとほほ笑みを浮かべた。
「え、ええ……そうです、けど」
「そうか……。あなたが」
シュラは何事かに得心が言った様子だった。シュラはキラ達に――というかアグネスに優雅な一礼をすると、部下のブラックナイトスコードを率いて練兵場から去っていった。
「……アレが味方ってマジ?」
「この度は誠に申し訳なく――」
ミーシャの言葉にその場にいる人間全員が内心で同意した。ただひたすらに頭を下げるイングリットが哀れだった。
――その日の夕方、到底『ささやか』とは言い難い豪勢な立食パーティーが開かれていた。ラクスやアウラなどの重要人物の為にテーブルが用意されており、そこにはラクスとアウラ、そして宰相のオルフェが座っている。
「貴国の繁栄はかねがね耳にしておりましたが……まさかこれほどとは」
ラクスは心からの感想を口にした。立ち並ぶ料理に、奏でられる楽団の演奏。ドレスを着て優雅に踊る招待客たち。まるで中世に逆戻りしたかのような空間が広がっていた。大広間では財界、政界の重鎮たちが着飾って談笑している。その中にコンパスの面々もいた。全員がドレスやフォーマルスーツを着込むなか軍の制服を着こむコンパスの面々は、ドレスコード的には問題なくてもどうしようもなく目立ってしまう。
「我が国では年齢、出身問わず能力があれば重用しておる。ナチュラル、コーディネーターすら問わずな」
ラクスはこれまでに挨拶に来たファウンデーション王国の重鎮たちを思い返す。人種、年齢バラバラに見えた。
「全てオルフェの采配じゃ」
オルフェは頷くと立ち上がり、ラクスの隣に来ると手を差し出す。ラクスの母が遺した指輪そっくりの指輪を嵌めた手が、ラクスの視界を埋める。
「喜んで」
オルフェは手をつないだままラクスをダンスフロアにエスコートする。そのままラクスの腰を抱き寄せると、優雅に踊り始める。宰相オルフェとコンパス総裁ラクスのダンスは、その場にいる全員の視線を釘付けにするほど優雅で完成されていた。まるで長年連れ添った夫婦のように息の合ったダンスに、周囲は感心する。
――ふと、ラクスは視界の端でキラと目が合った。彼は傷ついたような表情を一瞬だけ浮かべると、目を逸らす。
わかっている。彼は軍事教育も政治的な教育も受けていない。こうして男と共に踊ることに複雑な感情を抱くのは仕方ないのだ。だが……ラクスは声を大にして言いたい。踊れるものならキラとだけ踊りたいと。悲しくなったラクスは視線を下げる。オルフェと自分が嵌めている指輪が視界に入った。
母が遺した唯一の遺品。指輪の裏には『世界はあなたの物で、あなたは世界の物。この世に生まれ落ちた限りは』と、掘られている。この指輪に願いを込めてキラに渡したことがあった。ヤキン・ドゥーエの最終決戦の時だ。あの戦場は本当に、キラでさえ生存が危ぶまれる危険な戦場だった。ザフトからはジェネシスやプロヴィデンス。地球連合からは核ミサイルとミーシャが。それぞれお互いを滅ぼし合って、そのついでとばかりにキラ達を殺しにかかっていた。……そんな中、『帰ってきて』と願いを込めた指輪はちゃんとキラを連れて帰ってきてくれた。その日からこの指輪は、形見以上の意味を持ったのだ。
――だが、そんな指輪と同じ指輪を持つ彼は、一体……?
あなたは一体、誰なの?
ラクスの困惑は尽きない。……オルフェとこうして踊っていると、高揚してしまう自分にも、戸惑いを隠せなかった。