【完結】機動戦士ガンダムSEED Infancy   作:丹寺 錯視屋

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扇動者

 ミーシャはレクイエムが発射されたことを知った次の瞬間には駆け出していた。すかさず、アスランが聞いた。

 

「どこへ行く?」

「通信室! アズラエルさんと連絡取らないと!」

「アズラエル……ブルーコスモスの盟主と話してどうするんだ」

「大統領に命令してオーブと大西洋連邦で足並み揃えさせないと! 戦争になる! 私が死んだと思ってるなら絶対に核報復するって!」

 

 アスランはちらりとメイリンを見る。

 

「はーい。わかりましたよ。さ、バレンタインちゃん、一緒に行きましょ」

「え……?」

「彼女に任せれば居場所がバレることもない。大西洋連邦を抑えてくれるならありがたい」

「うん。首脳会談が始まって取り返しがつかなくなる前に!」

 

 ミーシャはメイリンを連れて駆け出した。通信室に辿り着くと、メイリンは手にした端末を接続して操作を始める。その手つきは淀みなく、的確である。流石の腕であった。

 

「――はい、できました。ここからなら通信できますよ」

「ちなみに誰から掛かってきたって表示されるの?」

「そうですねぇ、『魔弾の天使』にしておきました」

 

 ミーシャは通信機器を操作してアズラエルに連絡を取る。出てくれるかどうかは賭けだ。だが、ほどなくしてアズラエルが通信に出た。

 

「アズラエルさん!」

「……ミーシャ……。生きていたのですか」

 

 アズラエルは脱力して目元を覆った。それから僅かに肩を震わせる。頬につう、と涙が一筋流れ、アズラエルは慌てて手元のハンカチで顔を拭った。少しだけ赤くなった目を照れくさそうに背けて、アズラエルは普段通りの様子を取り繕う。

 

「ずいぶんと連絡が遅かったですね。しかし生存を喜んでいる暇もありません。状況はご存知ですか?」

「レクイエムがまた撃たれた」

「ええ。今度こそあの砂時計全てキレイさっぱり、スペースデブリに変えてやることとしましょう」

 

 通信に映らない所に控えていたメイリンがギョッとする。

いきなりこの男は何を言うのか?

 

「それはナシで」

「なぜです? レクイエムはザフトの管理下ですよ? アレをいきなりユーラシアに撃つということは、彼らは戦争がしたいのでしょう。お望み通り戦争して、尽く滅ぼしてやりましょう」

 

 非常にややこしいことに、おそらくファウンデーションがザフトに撃たせたのだろうけれど、レクイエムを管理しているのはザフトであってファウンデーションではないのだ。ユーラシア対ファウンデーション王国ならユーラシア連邦と元構成国の戦争というふうになっても、プラントがユーラシアに向けてレクイエムを撃てば即ち、プラントVS地球連合軍である。そんなことにさせるものか。

 ミーシャはもうなりふり構うつもりはなかった。

 

「……全面戦争するならするでいいけど、もし次全面戦争するなら私ダイダロス基地に特攻して死ぬまで殺し続けるからね」

「そんな脅しが私に通用すると――」

「――もう疲れた」

 

 ぼそりと、ミーシャは言う。アズラエルは思わず言葉を止めた。

 

「……レクイエムとか、核とか、もうやだ。疲れた。だから、絶滅戦争する気ならレクイエムを潰して私も死ぬ」

 

 嘘を言っているようには見えない。少なくともミーシャは本心だった。何度滅ぼし合えば気が済むんだ。何百万人生贄にすれば人は学ぶ。

 ――あと何人殺せば世界は平和になる?

 あと何人の犠牲を堪えれば人は争いを辞める?

 アズラエルを説得するのももはやめんどくさかった。

 

「……わかりました。これは貸しですよ。今度ディナーでも奢ってください。忌々しいですが今回ばかりはアスハ代表の味方をすることにしましょう。あなたをダイダロス基地で死なせるわけにはいかないのでね」

「――ごめん、ズルいこと言って」

「いえ。ジュードのほうがよっぽどズルくて姑息なこと言ってきますよ。では失礼」

「うん」

 

 通信が切れる。ミーシャは椅子にへたり込むようにして座った。

 

「……大丈夫ですか?」

「ん……なんか、どっと疲れた。もう大量破壊兵器は嫌だなぁ」

 

 しみじみと、彼女は呟くように言った。

 

 ――レクイエムでの報復から数時間。カガリは地球各国の首脳会談に臨んでいた。

 

「レクイエムがなぜ起動できる状態で保存されている!? これは明確な協定違反だ!」

 

 ユーラシア連邦の代表が声を大にして主張する。核を撃ったつもりもないのにその報復で首都が焼かれるなど、ユーラシア連邦からしたらたまったものではないだろう。すべてがファウンデーションの陰謀で企みだとしたら、ユーラシア連邦はその犠牲者だ。――アークエンジェルのクルーから齎された情報で粗方事態を把握したカガリですら未だ全貌を把握仕切れていないのだ。

 

「こんな……なぜプラントが撃ってくる!? ファウンデーションと同盟を組んでいたというわけでもあるまい! 地球連合として、プラントに対する宣戦布告をするべきだ!」

 

 この場を支配しているのは利益でも政治でもなく、圧倒的な恐怖だった。突然頭上から死が降ってくる――その恐怖に勝てる者などいない。ミーシャすらその恐怖から銃を置けずにいるのだから。戦ったことすらない政治家などさもありなん。カガリとてその恐怖を噛み殺すので必死だった。

 

「残念ながら大西洋連邦としては承服できかねます」

 

 どう場を収めたものか。そうカガリが気を揉んでいると、大西洋連邦の大統領、フォスターがなんと宣戦布告に反対の立場をとったのだ。ブルーコスモス……それもアズラエルの言いなりである大統領がまさかこの場でカガリと意見を同じくするとは思わなかった。

 

「何だと!? 日和ったか!」

「現実を見て下さい。どこに宇宙で戦争する戦力があるのです」

「……! 本土防衛隊を回せばよかろう!」

「では……そちらが先に実行してくださいよ。無茶言われても困ります」

「クソッ……泣き寝入りしろというのか!?」

「そうは言っていません。やり方というものが――失礼」

 

 会議を中断させて、フォスターは秘書と何事かを話す。フォスターは眉を顰めて、次に映像を切り替えた。民放のチャンネルだ。

 ――そこには核爆発に包まれるファウンデーション王国の映像をバックにするオルフェが立っていた。

 

「我らファウンデーション王国は地上を追われた。ナチュラルが放った野蛮な核によって」

 

 国ではなくナチュラルときたか。カガリは内心で吐き捨てる。コーディネーター、ナチュラル問わず重用するファウンデーション王国の在り方は()()()に過ぎないのだな。

 

「真なる平等と、真なる安定を望む我々のささやかな願いはまたしてもナチュラルに踏み躙られた……なぜか!」

 

 そばに控えていたトーヤが耳打ちしてくる。

 

「全国放送です」

 

 カガリは頷く。トーヤの精神はミーシャの生存を知ってからかなり落ち着いた。その未熟なところに呆れる気持ちもあるが、年相応に見えて微笑ましく思う。

 

「我らは先のプラント最高評議会議長、ギルバート・デュランダル氏が提唱したデスティニープランを導入していた」

 

 何人かの首脳がやはりか、という顔をする。めざましい発展の裏にはデスティニープランがあるのではないかと疑っていたらしい。

 同時刻、プラントでもオルフェの演説は大々的に放映されていた。街頭でもオルフェの顔が大写しになり、彼の声がプラント市民の胸に響く。

 

「だが、怠惰なる人間達はそれが気に入らない。進化の否定、停滞の許容、妬み、恨み! 彼らは地球という安寧の地にありながら、ただその恵みを消費する! 彼らは寄生虫にも等しい! なぜ優れた我らが彼ら寄生虫と手を取り合って歩まねばならない!」

 

 プラントでその放映を忸怩たる思いで聞いていたイザークは、副官が歩いてきたことに気付くと視線を副官……シホに移した。

 

「ジャガンナートが動きました」

「当たってほしくない予想ばかりが当たる……。行くぞ!」

 

 イザークは立ち上がって行動を開始する。するべきことは山ほどある。守らねばならぬものも。

 ……まずはラメント議長を保護せねば。

 

「プラントに住むコーディネーター達よ。今こそ立ち上がる時だ! 我らは諸君達の兄弟だ。共に手を取り合う真の友人なのだ」

 

 再び地球、オーブにて。カガリはオルフェの扇動を隠しもしない様子に心から嫌悪する。ようやく平和のために歩みを始めた人類に対し、まだコーディネーターだのナチュラルだのを持ち出して対立を煽るなど……。

 

「我らは完璧なる調整を受けたコーディネーター。我らは人類を導く調停者として生を受けた特別なコーディネーター……アコードである!」

 

 アコード。カガリはその実態を全く知らないが、報告によるとテレパシーをはじめとする超能力を使えるらしい。超能力を使えることが人類の上位者とでも言いたいのか? そんなわけがない。

 

「我らはそのために生を受け、そのために生きてきた。――安心するといい。諸君らの指導者の1人、ラクス・クラインも我らと同じアコードであり……我らの同胞なのだ」

 

 カガリはやられた。と握り拳を強く握る。ラクスが本当にアコードかどうかはこの際問題ではない。問題は――

 

「……その証拠に、ラクス・クラインは我らと共にいて、我らの思想に、我らの理想に共感していただいた。我らの意志は彼女の意志であり、我らの願いは彼女の願いなのだ」

 

 ――問題は、彼女の身柄をオルフェ達が確保しているということだ。

 ここに来てようやくカガリは彼らの目的を悟った。

 何もかもこのためだった。

 自国の――もはやオルフェ達はカケラもそう思っていないのだろうが――首都を核で焼かせたのも、コンパスを全滅に追い込んだのも、全てラクスの身柄を抑えるためだったのだ。

 

「立て、コーディネーター! 立て、兄弟! 旧人類による暴虐と理不尽から解放される日が来た! 我らは真なる独立を果たす時が来た!」

 

 オルフェの演説は次第に熱が入ってくる。

 

「地球に存在するすべての国家に通達する! 五日以内にデスティニープランを導入、実行せよ! 旧人類達よ、我らアコードの支配を受け入れるのだ! 我らの導きの下、恒久和平を実現しようではないか!」

 

 お題目にしてもお粗末過ぎる。カガリはデスティニープランの問題点……そして、全人類に導入できぬ理由をはっきり確信した。

 自分がデスティニープランによって支配者に振り分けられると知っているのなら、デスティニープランほど上手く権力を得られる手段は他に存在しないだろう。言葉尻は綺麗だがその実、コーディネーターによる世界征服の布石だった……この期に及んでしまえば、そう思われても仕方のない状況になってしまった。

 デュランダルがどう思っていたかは知らないが、たった今デスティニープランは扇動と支配の道具に成り果て、恒久和平実現の最終防衛策という理念は形骸化した。カガリは小さくため息をつく。次に彼らが言うことは聞くまでもない。本家大本がやったことを彼らがやらないわけがない。

 

「なお」

 

 オルフェは切り替えるように落ち着いた様子で告げる。おきまりの脅迫だ。

 

「もしデスティニープランを受け入れない、我らに敵対する……それらの行動が見られた場合、()()()()()()()()()()()()()、レクイエムがその国の首都に奏でられ、メギドの火が諸君の頭上から降り注ぐであろう」

 

 その言葉を最後に、オルフェは放送を終えた。

 カガリは内心、怒りで燃える。怒り狂っていた。

 

 ――ラクスを。

 

 彼女は優しい人だ。戦いのない世界を望む善き人だ。

 

 ――ラクスを……こんなくだらないお題目に利用したな!?

 よりにもよって大量破壊兵器の使用に彼女を名前を使った。こんなこと友人として許せるはずがない。必ず、必ず報いを受けさせる。

 

「……みなさん、提案があります」

 

 カガリは騒然とする会議の中、凛とした声で発言する。

 

「コンパスは凍結、しかしオーブにはミレニアムが停泊中です。なので――」

 

 カガリは思いついた計画をそのまま首脳達に語っていく。最後に、フォスターに目配せをして聞く。

 

「彼女には、極秘の命令を。あの子はきっと、命令なしでは引き金を引けない」

「ええ。今だけはアスハ代表のおっしゃるとおりに」

 

 地球は対アコードで纏まりつつあった。

 

 ――ラクスはアルテミス要塞の廊下をイングリットの案内で歩いていた。彼女は脱出中のシャトルで手渡された飲み物を口にして……それからの記憶がない。どうやら何か薬を盛られたらしい。拉致監禁されたラクスだったが、彼らはどういうわけか彼女をまるでお姫様を相手にしてるかのように扱うのだ。

 監禁されているのは政府の高官が滞在するような貴賓室……よりも1つランクが上の豪奢な部屋だった。浴室付きの大きな部屋で、それこそ食事を運んでくれるなら何日でも快適に過ごせそうなくらい充実した部屋だ。しかもラクスが最初に目を覚ました時、通信端末こそ取り上げられていたものの、その他の持ち物は全く無事で、詳細な身体検査をされた形跡もなかったのだ。ポケットに入っていたペットロボットのブルーも調べられた形跡すらない。少し調べればこれは監禁相手の手元に置いていていいものではないとすぐに気付くはずだ。浴室で確認したが乱暴狼藉を働かれたということもない。

 食事は宰相秘書のイングリットが嬉しそうに配膳し、お世話してくる。着替えだって中世のお姫様が着るような服を勧めてくるが……それだけは断った。助けに来た時に咄嗟に動けるような服装でないと困るし、パッとひと目見て自分だと気付いて貰う必要がある。

 どうにもラクスは不思議だった。自分は拉致され、監禁されたはずだ。それなのに自分は下にも置かれない扱いをされている。こうしてオルフェとの面会を希望すれば誰かに相談する風もなく、イングリットはそれを許可した。

 連れて行かれたのはアルテミス基地司令室。そこにはアウラだけでなくブラックナイツのメンバーが全員そこに集まっていた。

 

「おお……。手荒な真似をして申し訳ありません、姫」

 

 オルフェは部屋に入ってきたラクスを歓迎するように両手を広げた。アウラの顔にも微笑みがあるし、シュラですらラクスに向ける表情は柔らかい。

 

「気にしておりませんわ。お詫びにというのなら今すぐ帰していただけるとありがたいのですが」

 

 ラクスがやんわりと……しかしはっきりと希望を言うと、オルフェはきょとんと不思議そうな顔をした。

 

「帰る? どこへです。姫、あなた様は今、帰還なさったのです。生まれた意味を、使命を果たせる場所へと」

「わたくしの使命はコンパス総帥として平和への道を歩み続けることですわ」

「それは蒙昧なナチュラルに押し付けられたものでしょう? あなたは生まれる前から使命があった。それを果たすべく生まれてきたのです」

 

 ラクスは眉を顰めるのを堪えるので必死だった。コンパスの始まりはラクス、ミーシャ、カガリの三人で決めたのだ。確かに彼らはナチュラルだ。だが、同志なのだ。それを蒙昧などと言われる筋合いはない。それに……生まれる前からの使命だって? そんなものにこだわって一体何になる?

 

「その通り」

 

 アウラが鷹揚にオルフェの言葉を肯定する。

 

「お主の母の願いでもある。妾がそう()()()

「……創った?」

 

 ラクスは繰り返す。

 

「その通り。デュランダルの提唱したデスティニープランに必要な、最後のピース……それがそなたらよ」

「姫。わかるでしょう?」

 

 オルフェは一歩ラクスに近付いて、手を自分の胸元に寄せる。その指にはラクスも嵌めている指輪と同じデザインのものがあった。

 ――次の瞬間、またあの感覚がした。ふわふわとした甘い微睡みの中にいるような感覚。

 

「私とあなたで……この世界を統べるのです」

「あなたと……ふたりで……」

 

 ぼんやりと、オルフェの声が頭に響く。全身の細胞が歓喜している。片割れを見つけたと。最も相性の良い人が目の前にいると、全身が叫んでいる。

 

「我らは生まれる前から決められていたのです……結ばれる運命にあった……」

 

 運命……。ラクスはその言葉を繰り返す。蕩けるような感覚だ。脳髄の芯から共鳴するような感覚がする。甘美で、陶酔すら覚える。

 

 ――ラクス。

 

 キラの声がふと聞こえた。ラクスの魂が怒鳴っていた。その感覚は()()のだと。

 ラクスはハッと正気を取り戻した。オルフェから離れ、荒い息を吐く。今の感覚は甘美だった。歓びだった。

 

 ――だからこそおぞましく感じた。自分の中の価値観が無理矢理染められていく感覚だ。ラクスの中にある彼女自身を、オルフェに都合よく書き換えられる作業のように思えた。恐ろしく、何より嫌悪が沸き起こる。

 

 こんな侵害があるだろうか。快楽で人の心を作り変えようなど、外道の所業である。ラクスははっきりとオルフェを睨む。

 

「私の愛する人はあなたではありません!」

「では誰だと? まさかキラ・ヤマト? ――あなたが討ってよいと言ったのですよ。もはや核に焼かれているでしょうし……生き残っても核の毒にやられています」

「……!」

 

 ラクスはついに耐えきれなくなって、その場に崩れ落ちた。そうだ。もう愛する人はこの世にいない。ラクスの目には輝く光の球が……核の爆炎が焼き付いていた。あの光の中に彼がいた。生きているわけがない。

 

「どのみち、あの失敗作はこの先の世界に必要ない。……もちろん、あなたにとっても不要だ。あなたもせいせいするでしょう」

 

 ラクスは何を言われているのかわからなかった。

 

「知っていますよ? あなたを()()()()。二年も()()()失敗作の介護をするのは辛かったでしょう? もうそんな苦行をすることはない」

 

 ラクスは怒りを通り越して、彼が哀れになってきた。

 記憶を見たのでしょう? なぜそのような感想になるのですか? 本当にあなたは心が読めるのですか?

 理解できなかった。今まで生きてきてあの二年ほど幸福で満ち足りた時間などなかったのに。義母と義父の二人と本当の家族のように過ごして、キラに付きっきりの生活。アレが続くことが理想の人生と言えるほどの時間だと言うのに。

 ああ。ラクスはオルフェのことを少しだけ理解した。彼らは因果関係を履き違えているのだ。

 

「必要だから、愛するのではありません!

 愛しているから、必要なのです!」

 

 だから、オルフェの手は取らない。そう言うと、オルフェは顔を歪ませた。

 

「ナチュラルのような世迷い言を言うのはやめなさい!」

「人を愛することに、ナチュラルもコーディネーターもありません!」

 

 毅然と言い返すラクスに、アコード達の間で動揺が走る。思っていたラクスはこうではなかった。今までずっと思い通りに事を進めて来た彼らの計画に、初めてヒビが入った瞬間だった。

 

 ――ラクスはいっそ憐れみすら浮かぶ。彼らは知らないのだ。愛することの尊さを、人を想う純粋さを。

 定められた使命のために生きて、決められた運命に従うことを至上とする彼らに、ラクスの気持ちはわからない。

 

 ――永遠に。

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