峠の一番星   作:翠 -SUI-

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さて、いよいよ1期の折り返し地点に当たるインパクトブルー編の開始です。イニシャルD中、一、ニを争う不憫な男池谷は幸せになれるのでしょうか。


ACT.20 池谷と碓氷の天使

 八月の灼けるような日差しが容赦無く地表に降り注ぐとある日の昼間。池谷はひとりシルビアのステアリングを握り、国道18号線中山道を群馬方面へ向けて走っていた。今日の仕事が休みである事を利用して軽井沢の千ヶ滝温泉へと足を伸ばした帰りであった。

 

「やっぱたまには温泉入るのもいいよなぁ、日頃の疲れが吹っ飛んだ気がするぜ」

 

 誰かが「風呂は命の洗濯」なんて言葉を言っていた気がするが、実にその通りだと池谷は思った。外は真夏の日差しのせいで地獄のように暑いが、シルビアの車内はエアコンが効いているおかげで温泉でさっぱりした池谷はそのまま帰路につけていると言うわけだ。

 

「軽井沢土産も買ったし、帰ったら拓海達に配ってやるかな。アイちゃんも喜んでくれるといいなぁ」

 

 池谷はシフトレバーを4速へと送り込みながら、傍らの助手席に積んであるビニール袋にちらと目をやった。温泉に入ったついでにいつもの面々へのお裾分け用として軽井沢でお菓子類を中心にいくつか個包装になっているタイプのお土産を買い込んで来たのだ。最近はお洒落なお土産も増えて来ており、レモンケーキや可愛い包装に包まれたチョコレートボール、老舗珈琲店のモカチョコケーキやラスク等もある。

 アイスクリーム等の甘いものが好きと聞いたアイの口にも合うものがあるだろうと池谷は笑みを浮かべながらFMラジオの電波から流れる曲をお供にシルビアを群馬へ向けてひた走らせる。

 

 些か元気の良過ぎる八月の日差しを浴び、ライムグリーンツートンの車体を輝かせたS13シルビアは"峠の釜飯"でお馴染みのおぎのや横川店へ差し掛かった。

 

「お……?」

 

 ふと左手に視線をやった池谷の視界に、おぎのやの駐車場で何やらボンネットを開けている赤いミラが映った。オーナーらしき女性が困り果てている様子だ。

 

(あの人どうしたのかな、トラブルか……?)

 

 何故か池谷はそのまま素通りする気になれず、ブレーキを踏んだ。減速したのちに停車したシルビアをバックさせ、件のミラの近くまで下がって行ってからハザードを点滅させる。

 

(見ちゃったからには、ついつい止めてしまうよな……!相手が女の子だからって下心とかあるわけじゃないけど、やっぱり放っておけないぜ)

 

 路肩に寄せて停めたシルビアから降りた池谷は困り人に話し掛けてみる事にした。

 

「あの、大丈夫ですか??」

「えっ……??」

 

 池谷の問いかけに反応し、エンジンルームを覗き込んでいた女性がボンネットの影からひょっこり顔を出す。

 

 その時、池谷は時が止まったような錯覚を覚えた。すらっと伸びた長い脚にキュッとくびれた腰、はっきりと胸元の生地を押し上げる双丘。淡いイエローのノースリーブミニワンピースを纏ったその肢体の上には二重瞼のぱっちり大きな瞳を擁した整った顔立ち。後ろに纏めた艶やかなダークブラウンの髪が風に揺れる。

 

 ――つまるところ、抜群のスタイルをした絶世の美女である。

 電流が走ったかの如く池谷は呆けた顔をしてフリーズした。

 

「あのー……??」

 

 不自然に固まる池谷に怪訝な様子を見せる女性にどこかへ飛んで行っていた自我を帰還させた彼はテンパりながら話し掛けた経緯を話し始めた。

 

「うぇ!?えっ、あっその、いや、俺別に怪しいモンじゃなくて……ボンネット開けて停まってるから、クルマどうしたのかなって」

「あぁ、それが突然エンジン掛からなくなっちゃって……何がどうなってるのか、いくらセル回しても掛からないから途方に暮れちゃってたんです」

 

 あたふたしながらもここへやってきた理由を話す池谷に彼女はこの駐車場で立ち往生する事となった経緯を語った。彼女曰く、出発しようと始動を試みたところ、セルは回るもののエンジンがちっとも始動しなくなってしまい、ここへ足止めを食らっているらしい。

 

「お、俺でよければ診てみるよ……!!」

「わ、ほんとですか?助かります!」

 

 斯くして急遽池谷の臨時カーレスキューが始まった。シルビアから車載工具セットを持ってきた池谷はミラのエンジンルームを覗き込み、始動不能に陥っている原因を探し始めた。

 

「大体こういう時は電気系トラブルだとは思うけど……えーっと」

 

 そう呟きながらエンジンを弄る池谷の横から手元を覗き込んでくる顔がある。整った目鼻立ちに大きな瞳。白い肌が眩しい。

 

「直りそうですか……??」

 

 そんな問い掛けと共に池谷の作業を見つめる彼女。主に拓海を目当てに日頃から池谷の近くにちょくちょく現れるルッキズムの暴力のような一番星の少女の美貌ほどではないが、それでも滅多に縁のない美女なのは間違いない。むしろそのおかげで池谷はどぎまぎしつつもいい塩梅に親しみを感じていた。小市民的な彼にとってはアイのあまりに可愛すぎるルックスの暴風は割と畏れ多い部分が多いのだ。

 

(ちょ、かわいすぎだろ……というか近、女の子とこんなに近い距離で居た事なんて今までねぇよ、心臓バクバクだぁ……アイちゃんにもこんな至近距離まで寄られた事ないし)

 

「あ、あぁ、これならすぐに直ると思う(ちっか、めちゃくちゃ良い匂いするッ……!?)」

 

 すぐ隣の彼女から香る甘い匂いにどもり散らかしつつも池谷は修理を続ける。彼は務めて自分の手先に集中する事にした。生まれてこのかた二十数年余り、女の子とまともに手を繋いだこともない池谷としては動揺しすぎてうっかり手元が狂いかねない。

 

(ちょっと待て、俺汗臭くないよな……??温泉入った後さっきまでエアコン効かせたシルビアの中だったし、大丈夫だよな……??)

 

 お土産の中にあるチョコ類等を溶かさないためにもさっきまでシルビアのエアコンをガンガンに回していたことを彼は感謝した。

 

 そんな池谷が工具片手に奮闘すること暫く。彼の見立てでは恐らくこれでエンジンの始動には問題が無い状態には持ってくる事に成功した。

 

「よし。これで問題ないはずだ、ちょっとセルを回してみてくれ!」

「分かりました!」

 

 つっかえ棒で持ち上がっているボンネットの影から池谷が運転席へ呼びかけると、了解の意を返した女性がキーを捻った。軽快な音と共にセルモーターが回った後、少しぐずりつつもに無事に火が入ったシングルカムの直列3気筒エンジンが元気良く目覚めた。軽い空吹かしにも軽やかなエキゾーストを響かせてエンジンが問題なく吹け上がる。

 池谷の見立て通り、ミラのエンジンはこれにて完全復活を果たした。

 

「わぁ、ほんとにエンジン掛かっちゃった!!すごーい!」

「いやぁ……へへ、そんな大した事ないさこんなの」

 

 無事に息を吹き返したミラを見て満面の笑みで感嘆の声を上げる女性。池谷は満更でもなさそうに、「大したことない」という口とは裏腹に思わず得意げな顔になった。

 

「そんな事ないですよ〜!メカに強い人尊敬しちゃいます!!」

「そ、そうかな、へへ」

 

 尊敬の目を向けてくる彼女に池谷はついデレデレしてしまう。さもありなん。日頃からアイが周囲に居る関係で多少は慣れてきたが、それにしたってここ一ヶ月もないくらいの期間の話だ。本質的には池谷は未だ女性に不慣れな冴えない走り屋でしかないのだ。

 

「ほんとにありがとうございます、あの、お礼したいので良かったら携帯の番号教えてくれませんか??」

「えっ!?いやぁ、いいよそんなの全然、気にしないでくれ」

「……そうですか」

 

 お礼がしたいと言う彼女の申し出に池谷の口から咄嗟に遠慮の言葉が飛び出す。一瞬の後に彼は猛烈に一秒前の自身の発言を後悔した。

 

(しっしまったぁ……!!こんな可愛い子と連絡先を繋げられるチャンスを棒に振るなんて……!!神様が俺にくれた一生に一度のチャンスかも知れないのにっ!!俺の馬鹿馬鹿、大馬鹿野郎ッッ)

「それなら、あの、これ……!!」

 

ミラの車内をなにやらゴソゴソしている彼女を尻目に池谷が百面相をしていると、とことこと戻ってきた彼女が何か手渡して来た。何らかの紙片のようだ。見ると電話番号が書かれている。

 

「えっ……?」

「私、佐藤真子っていいます!電話してね!」

 

 どうやら彼女の電話番号らしい。池谷は思わず呆けた顔のまま手に持った紙片と彼女――佐藤真子の顔を見比べる。

 首の後ろで髪を纏めていたヘアゴムを解き、ふわっと広がるダークブラウンのロングヘアを靡かせた真子は池谷に綺麗な微笑みをひとつ寄越すと、そのままミラに乗り込み、颯爽とおぎのやの駐車場を去っていった。

 

 かれこれ十分十五分はゆうに超える時間をそのまま突っ立って過ごした池谷だが、目の前をジリジリと騒ぎ立てながら飛び去っていったアブラゼミの声で我に帰った。

 

(え、ひょっとして、これ……もしかしなくてもついに俺、春来ちゃった……??)

 

 先ほど言葉を交わした絶世の美女、佐藤真子。この夏の暑さが見せた幻かとも思うが、その手には確かに彼女の名前と電話番号が書かれた紙片が残っている。

 

「――っしゃぁああ!!まるで夢みたいだ、感謝するぜ神様ぁ!!」

 

 この群馬に生まれ落ちてから二十数年。彼に漸く遅い春が来た事に間違いなかった。

 

「あっ、やべ、チョコ溶けちまう!!勘弁してくれアイちゃん……!!

 

 ガッツポーズで喜び飛び跳ねた後、愛車の中のお土産達を思い出し、慌ててシルビアの元へ猛ダッシュする池谷。何だかんだこの締まらない所も彼らしさであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「えぇええええ!?池谷(先輩)に連絡先教えてくれた女の子が居たぁああ!?」」

 

 蝉の大合唱が響く八月のガソリンスタンドの休憩スペースに健二とイツキの異口同音の絶叫が響き渡った。軽井沢から帰ってきた池谷の持参したお土産達をテーブルに広げ、ふらっと訪れた健二も交えてパクついていた時の話であった。池谷曰く、トラブルでエンジンが掛からなくなっていた軽自動車を助けたところ、そのオーナーだった女の子に大感謝された後に連絡先を渡されたそう。今まで春という春が無かった池谷を知っている幼馴染の健二は仰天し、その話をよく聞いているイツキも「まさか」という顔をしている。

 

「そうなんだよなぁ〜、あんな可愛い子に連絡先貰えるなんて、ようやく俺にも春が来たんだ、きっと真子ちゃんは地道に今までコツコツ働き続けた俺に神様が遣わしてくれた天使なんだよ……!!」

 

 件の女性、佐藤真子に一目惚れしてしまったらしい池谷はそんな彼女の連絡先をゲットできた事実に舞い上がり切っている。その顔はだらしなく緩み切っており、今にも溶けて液体になりそうな勢いだ。

 

「にしてもそんなうまい話があるかねぇ、池谷にしちゃオチがないっつーか」

「なんだよ健二、俺に幸せが来ちゃダメだってのか?そのレモンケーキ返してもらうぞ」

「んぁ、いや、そういうことじゃねえけど、ちょっと上手くいきすぎなんじゃねぇかってことだよ。すまん池谷悪かった、謝るからこれ食べさせてくれ、美味いんだ……もぐ」

 

 上手い話には裏がある、と言わんばかりに懸念を示す健二をジト目で睨む池谷。よほど真子との縁が嬉しいのだろう。良い気分に水を差され、せっかく配った軽井沢のレモンケーキの没収をチラつかせる池谷に健二は堪らず謝罪した。いたくこのケーキの味を気に入ったらしい。

 

「にしてもそんな事あるんすねぇ……ついに池谷先輩にも春かぁ……あむ、美味しいっすねこれ」

 

 サクサクと音を立ててラスクを頬張るイツキが池谷のあまりにミラクルな出会いに言及する。実にたまたまな確率を引き寄せた池谷の今回の強運は目を見張るものがあった。その傍らでは拓海が黙々とモカチョコケーキを頬張っている。

 

「さーて日曜日には真子ちゃんに会いに軽井沢に足伸ばしちゃうぞぉ、うへ、へへへ

 

 舞い上がり切って踊り出さんばかりの池谷を横目で見ながら健二はイツキにとある提案を持ちかける。

 

「なぁ、俺たちもこっそりついてって、その子がどんだけ可愛いのか見てみようぜ」

「いいっすね……!!行きましょ!!この目でバッチリ見に行きましょうよ!」

 

 二人は池谷の逢瀬を見届ける気満々だ。ふと気になった拓海はチョコケーキを食べ終えてから疑問を呈した。

 

「でも、それ池谷先輩にバレたらどうするんすか?」

 

 拓海の疑問は当然だ。知り合いによるデートの尾行なぞ本人からすれば地獄である。しかし健二は横目で池谷のほうを一瞥してから断言した。

 

「だぁーいじょうぶだって、見てみろあの池谷。今の池谷にそんなの気にしてる余裕なんかねぇって」

 

 そういう健二が指差す先の池谷は踊り出さんばかりかテンションが上がりすぎてついに謎の踊りを始める始末であった。確かにこれでは健二の言う通り、そこまで頭が回りそうではない。

 

「おいおいお前ら、池谷の邪魔だけはするなよ?ん、こりゃ美味いな」

「わかってますって店長!ね、健二先輩」

「ならいいんだがな。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまうぞ〜」

 

 テーブル前の黒い革張りソファの定位置に座り、拓海の食べていたのと同じモカチョコケーキを齧りつつ裕一が念を押して忠告を飛ばす。イツキのサムズアップに一応納得したのか彼は濃厚なモカチョコの味わいを堪能する事に戻った。

 

 そんな事をして居るうちに店舗のガラス越しに見えるスタンド入り口からウインカーを点滅させた真紅の車体が入ってきた。近頃見慣れたアイのGT-Rだ。夏の日差しを反射して輝く赤い車体はスムーズに敷地内へその身を乗り入れ、店舗の入り口前で停まった。

 

「お!アイちゃんだ!!」

 

 推しの出現に迅速に反応したイツキが声を上げると同時に店舗のドアが開き、フレアワンピース姿のアイが入ってきた。

 

「こんにちは〜!お!みんな居るね〜☆」

 

 底抜けに明るい鈴のような声が店内の空気を一気に華やかにした。

 

「お、アイちゃんじゃないか、軽井沢行ってきたんだ、これお土産だから好きなの食べてってくれ」

「わ、ほんと〜?ありがとう池崎さん☆どれにしようかなっ」

「うっ、やっぱりまだ覚えてくれねぇのな……うぅ、やっぱり俺はさえない木っ端走り屋……いや、それよりも今は日曜日のことだ、楽しみだなぁ、うぇへへ」

 

 アイに気づいた池谷は妙なダンスを止め、たっぷり用意したお土産達を薦めた。やはり甘いものには目がないらしいアイは星の輝きを宿したすみれ色の瞳を更に輝かせ、満面の笑みでテーブルの上に広げられたお土産達の物色を始めた。相変わらず微妙な呼び間違えをされる池谷はそれにがっくしと項垂れた後、再びにへらとにやけ面になった。

 

「あむ、むぐむぐ……ねぇ拓海君、池崎さんなんかあったの??今にも溶けそうなくらい嬉しそうだけど」

「なんか先輩、良い出会いがあったらしいよ」

「ふーん……?あ、もしかして女の子かな」

「らしいぜ。よくわかったな」

「てへっ、私の勘はけっこー当たるんだよ☆」

 

 チョコケーキを頬張っていたアイはあまりのにやけっぷりを見せる池谷を見て、拓海にどうしてああなっているのか聞いてみた。その端的な答えにアイは直感を発揮して事情を言い当てて見せる。げに恐ろしきは一番星の勘である。

 

 こうして池谷は次の日曜日に再び軽井沢方面へと足を伸ばす事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 群馬のとある山間。日が落ちた閑静な住宅街の一軒の家にやってくる人影があった。

 金髪に染めたロングヘアに服の上からでもはっきりわかる豊かな膨らみ。メリハリのついたグラマラスな身体が特徴の美女。名を「沙雪」と言った。

 彼女は勝手知ったる様子で目当ての家に乗り込み、「佐藤」と書かれた表札の掛かった玄関のインターホンを鳴らす。間延びした呼び出し音が響いたのちにインターホンから女性の声で応答があった。

 

「はーい」

「お待たせ〜真子」

「あっ沙雪、待ってて、今行くね」

 

 そんなやりとりを挟んだ後に顔を出したのは先日池谷が衝撃的な出会いを果たしたとメロメロになっていた女性、佐藤真子であった。

 

「車検から車戻ってきたのよね?」

「ええ、バッチリよ」

 

 沙雪の問い掛けに真子は満足そうな微笑みを見せてそう答えた。あの時の真子が乗っていた赤いミラは車検の間の代車だったのである。

 玄関を閉め、真子は沙雪と共にガレージへ向かう。ガラガラと開いていくシャッターの奥には住宅街の街灯と月明かりを受けて暗く輝く青い車体があった。ボディだけを見ると一見180SXだが、そのフロントフェイスは特徴的なリトラクタブルヘッドライトではなく、「SILVIA」の文字が刻まれたフロントグリルを挟む形で切れ長の鋭い目つきをした片側三連のプロジェクター式ヘッドライトが収まっていた。

 そう、佐藤真子の本当の愛車であるこのクルマは180SXのボディへ姉妹車関係であるS13シルビアのフロントフェイスをそっくり移植した、顔がシルビア、ボディが180SXというニコイチの改造車――所謂「シルエイティ」と呼ばれるクルマであった。

 

 助手席に沙雪が乗り込み、鏡合わせのように運転席へ乗り込んだ真子がキーを回す。威勢よくセルモーターが回り、そのボンネットの下に収まった2リッターの直列4気筒ツインカムターボエンジン――SR20DETがターボ特有の低く図太いエキゾーストを響かせて目を覚ます。

 

「おっ、さすが車検帰り!エンジン調子いいね!」

 

 今日一番、快調な目覚めで始動したシルエイティの心臓に沙雪がテンション高く感心の声を上げる。

 

「うん、調子良さそう。私自身、今日もベストな走りができそう」

 

 白魚のような白い指を伸ばし、ステアリングを握った真子がその見た目とは裏腹に強気な笑みを浮かべた。

 

「アイドリングが落ち着いてきたね、アイドルブレなし、油温、油圧、水温OK!出撃準備完了だね!さ、今夜もたっぷりギャラリー達に見せつけてやろうよ。碓氷峠最速の私ら"インパクトブルー"の走りを!!

「うん……!!派手に行くよ、沙雪!」

 

真子がクラッチを繋ぎ、青いシルエイティは月明かりの中へゆっくりとその身を進めていく。

 真子をドライバー、紗雪をメカニック兼コ・ドライバー。二人で一組の親友コンビとして青いシルエイティを駆る彼女らの正体こそ、長野県と群馬県の県境に位置する碓氷峠をホームコースとした、碓氷最速の名を欲しいままにする女流の走り屋"インパクトブルー"であった。

 




【池谷浩一郎】
軽井沢に温泉入りに行ったついでにたっぷりお土産を買ってきた。拓海達へのお裾分けだが、割とアイ受けを狙っている。帰りの道中にエンジントラブルのミラを助けたら絶世の美女の連絡先をゲットした。果たして彼はこのミラクルコミュニケーションの流れに乗って秋名彼女居ない連合からの一抜けを果たせるのか。

【佐藤真子】
清楚系おねーさん。トラブルで車が動かないところをシルビアに乗った好青年に助けてもらった。よほど何かびびっと来たのか、お礼のために連絡先をプレゼントする。しかしメカに弱い清楚な女の子かと思いきやその正体は碓氷峠を根城にする強強な走り屋だった。メカよわよわなのはほんと。

【紗雪】
真子ちゃんの親友。ぼんきゅっぼんのグラマラスな金髪おねーさん。メカに関してはざこざこの真子にコ・ドライバー兼メカニックとしてサポートにつく。二人揃ってのインパクトブルーなのだ。普段のシルエイティのセッティングやメンテナンスは全て彼女の担当。紗雪氏の苦労が偲ばれる。

【秋名彼女居ない連合】
池谷に美人の彼女ができるフラグが立ったと聞いて、こっそり尾行する気満々。健二はめちゃくちゃ羨ましがっているが、イツキは一番星への推し活で幸せなため実は原作比でそこまで羨んでいない。

【藤原拓海】
溶ける池谷と盛り上がる彼女いない連合をよそにチョコケーキをもぐもぐする主人公。家では文字通り腐るほどある豆腐ばっかりなのでこういう贅沢スイーツが珍しい模様。もぐもぐ、うまい。

【星野アイ】
ふらっとスタンドに遊びにきた一番星。池谷のお土産がいっぱいあったので美味しくいただいた。甘いものには目がない。しかしどれだけ甘味を食べようがちっとも太らない。一番星脅威のメカニズムである。しっかり事情を聞かないうちからデロデロに腑抜けた顔をしている池谷を見て拓海の端的な情報のみでほぼ正解を言い当てる。一番星は常に君を見ているんだ。げに恐ろしき星の勘。




次回は池真子のデートの予定。
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