星野アイと星野好造。どっちも星野さん。
せや!クロスオーバーさせて親族にしてアイちゃんをしあわせにしちゃおうぜ!
こんな思いつきから始まりました。
ンバァアア!!となってやった。後悔はしていない(
2024/2/22 伯父が叔父になって居た箇所を修正しました。
もし、あの時こうだったら。
誰しもそう思い返すことは一度はあると思う。
何かのボタンを掛け違えて、全く違う人生を歩むことになる選択肢なんていっぱいある。
私、星野アイだってきっとそう。
もしかしたら無数にある可能性のうちには、キラキラしたアイドルをやっている私なんかもいるかも知れない。
私ったら見た目は超可愛いからねっ☆
小柄で華奢な身体に抜群のスタイル、光を浴びると紫掛かった輝きを振り撒く黒髪、精巧に整った顔立ちに星を宿すおっきな瞳。できちゃうポテンシャルは持ってるのかもしれない。
私は愛を知らなかった。生まれてから親から受けるはずの無償の愛はそこに無かった。
父はおらず、母は私を愛さなかった。
ううん、はじめは優しかった時もあったけど、私が成長するにつれて母は、あのひとは私を蹴ったり叩いたり、物を投げつけたりするようになった。そうしてひどいことをしたあとに泣きながら言うのだ。「愛してる」と。
愛してるならどうしてひどいことするの?うそつき!やっぱりお母さんは私を愛してくれてないんだ…!
そう思うのも無理ないよね。
あのひとの暴力はどんどんひどくなって、私は傷とあざだらけになった。割れたビンがご飯に入って、口を切ったこともあった。その日から…未だに白米はちょっと苦手。
身も心も傷だらけで、あのひとの顔色ばかり気にして、誰も何も信じられなくて擦り切れそうになった時、あのひとは万引きで捕まった。
それっきり音沙汰が無くなったから、あの人の本心は今でもわからない。
散々ボロボロになってからひとりぼっちになった私は養護施設へ入れられる寸前で伯父だという星野好造に引き取られた。
『あいつが本当にすまん…辛かったな。よければうちに来ないか…?』
信じられないかもしれないが、役不足かもしれんが俺でよければ精一杯君を愛す、と。そう言って手を差し伸べてくれた伯父、今は義理の父の手を取って、信じてみてよかったと思う。
あのとき既に私は周りに印象良く見えるように、機嫌を損ねないようにと嘘の鎧で身を固め、演じることが癖になり始めていた。あのまま施設に行ってたら、ガチガチに固められた嘘の鎧は私自身と一体化して、そのうち自分自身でも自分の言っていることがどこまでが嘘なのか分からなくなって居ただろう。たぶん。
好造伯父さんに引き取られてから、彼は精一杯の愛を注いでくれた。父親のような存在としてできる限り。しばらくして義理の娘として養子縁組もしてくれた。
おかげで壊れて自分を守るはずの嘘に侵食され切る寸前だった私は踏みとどまり、なんとかそれなりにまともに戻ることが出来たと思う。嘘をつくことは得意になっちゃったけど。
でも私は…やっと愛を知れたんだ。
親戚だし、直接的な血縁的親子関係は無いけど間違いなくお義父さんはわたしのおとうさん。だってあんなに愛をくれる。今まで生きてきた中でうんと一番。
以前のことを思い出せば嘘みたい。だけどその分を取り戻すみたいに今、私はいっぱいに愛されてるんだ。
あぁ、これは絶対嘘じゃない。
愛してるよ、おとうさん。
☆ ☆ ☆ ☆
そんな私、ちょっと嘘が得意な現在十九歳、大学一年生である星野アイには実は特技がある。
嘘も得意だけど、そうじゃない。
何より惹かれて魅入られてしまった、心の底から得意で楽しいって思えるものが「車を走らせること」なのだ。
おとうさんに引き取られる前にあんなことがあったせいでいつのまにか得意になっちゃった嘘を、走るためのテクニックとして逆手に取ってプラスにできたのも嬉しいんだ。
元々おとうさんが車が好きだったんだけど、助手席に乗って峠にサーキットにと一緒に走ったりしているうちにすっかり私も虜になってしまった。
おとうさんは日産のスカイラインGT-Rって車が大好き。「俺は死ぬまでGT-Rだ!!」と豪語してる姿をよく見かける。
でもそのうちのR33って子はあんまり好きじゃなかったみたい。少し前まで乗ってたんだけど、私は好きだったから「手放しちゃうなら欲しい!私なら愛してあげられる」って言って私の車にしちゃった。たとえみんなから失敗作って言われててもあの子なりの良さがあって、私はあの子を愛してる。
この車は理由はどうあれ、ある意味以前の私と同じ。R32型が好きな人達からは愛されなかった。そう感じちゃって、それなら私が…愛されなかったけどそこから愛を知った私なら愛せるって思って。
『俺はデカくて長くてこいつはあんまり好みじゃないんだが…アイが好きならしょうがねぇなぁ。なぁ33、うちの娘にしっかり可愛がってもらえよー?』
とかなんとかいって、でもニコニコしながら私に合うように車をいじくりだしたおとうさんを思い出す。
ほんとにおとうさんは私のことが好きだよね。こんな可愛い娘ができたんだからしょうがないか☆
閑話休題。
高校を卒業して群馬の大学へ入った私はおとうさんと住んでた茨城県の筑波からひとり、群馬県へお引越ししてきた。
車があるからちょちょいと走れば2時間ちょっとくらいで筑波のお家には帰れるし、たまにおとうさんに群馬のお土産を買って行ってあげるんだ。焼きまんじゅうとか。
ふと過去を回想していた意識を浮上させ、時計を見るとまだ針は正午前を指していた。
今日は日曜日。今はお昼前。大学もお休みだし、お昼がてら社長たちのところに遊びに行ってから夜は秋名あたりに走りに行っちゃおうかな。
私の車をお世話してもらってる、おとうさんの知り合いで仲のいいショップの社長さんの、ヤのつく人と間違われそうな金髪グラサン顔を思い浮かべ、ハンドバッグと愛車の鍵を持った私は鼻歌を歌いながらアパートの玄関を出て、鍵をかけてから階段を降りた。
駐車場で私を出迎えるのは真っ赤なボディに私の紫掛かった黒髪にそっくりな暗い紫の差し色が入ったR33型 スカイラインGT-R。
私が得意になっちゃった嘘を、誰よりも速く走るための武器として使える半身。
でかい?重たい?関係ない。上等だよ。
私ならできる。不利をひっくり返してこそ一番星なんだ。
鍵を開け、ドアを開いてドライバーズシートへ乗り込めば、平均よりも小柄な私の身体をバケットシートがすっぽり包み込んでくれた。
キーシリンダへ差し込んだキーを捻る。威勢よく回ったセルモーターが2.6リッターツインターボの怪物、RB26DETTエンジンを目覚めさせ、直列6気筒特有の滑らかで重厚なエキゾーストが響き渡った。
あはっ、おはようって言ってるみたい☆
いいこいいこ。
「さぁ、今夜はとびっきりたのしんじゃお☆」
ギヤを1速に入れ、クラッチを繋ぐ。
太いエキゾーストを奏でながら真紅の重戦闘機がお昼時の群馬の街並みへ繰り出していく。
どこかの可能性の世界では、スポットライトに照らされてキラキラしたステージの上で、サイリウムに囲まれながら愛を振り撒く星野アイが居るかもしれない。
でもこの世界の私、星野アイの踊って跳ぶステージは、深夜の峠。
タイヤのスキール音とエンジンの咆哮を歌に。ヘッドライトはスポットライト、テールランプはサイリウム。
みんなみんな、他の走り屋もギャラリーもまとめて魅了して呑み込んであげる。
ルームミラーに映った私の瞳には爛々と輝く白い星が宿っていた。
秋名のハチロク伝説に一番星の輝きが出会う時、公道最速理論はどんな未来へ向かっていくのか。
ここに運命のギヤは回り出した。
小柄可愛いアイちゃんがでっかいR33を振り回してるのよくない…?
頭文字D篇では推しの子側の登場人物は1話前半、双子誕生以前のメンバーがメインになります。
アクルビたち双子と愉快な仲間たちの活躍はMFゴースト篇の予定。
1話ごとの文章量について。
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