キリが良いところまで行ったので分割して前後編。
いよいよ気になってしょうがない秋名のハチロクを捕捉しに掛かる一番星ことアイちゃん。
ちなみに時系列は鈑金王こと中里戦の後頃。啓介さんに「自分の技術にプライドを持て!」って言われて拓海君が徐々に「バトルの楽しさ」を自覚し始めたあたりです。
ふいーたべたぁ。
今日もミヤコさん謹製ナポリタンは宇宙一おいしかった。デザートのパフェも言わずもがな。全人類食べるべき。
ミヤコさんの絶品お料理でお昼を済ませたあと、クルマいじりを中断して休憩に来た社長も合わせた二人と談笑して午後のゆったりタイムを過ごす。お供はミヤコさん特製カフェラテだよ。
ミヤコさんの車がお店のデモカーだった180SXになった話とか、新しく在庫に入った新作エンジンオイルの話とか。社長はおとうさんの近況が気になるらしい。
「好造さんは元気か?」
「うん、元気元気!相変わらず『俺は死ぬまでGT-Rだぁ!』ってニッコニコしながら34乗り回してるみたい」
「さすがだなあの人…筋金入りのGT-R大好きマンだもんなぁ」
日産車を得意とする社長も呆れるほどのGT-R愛好家ぶり。帰るたびに見るおとうさんが楽しそうで私もなにより。ちょっとぽっこりお腹になりつつあるのは心配だけど。
「でも私としては栄養バランスが心配よ。唐揚げとかの揚げ物大好きでしょう好造さん」
「もういい歳だもんなぁ。俺よりかだいぶ上なんだしミヤコの言う通りそろそろコレステロール抑えねぇと…」
「あ、それよく城島せんせにも言われてるよ〜」
やっぱりそうだよね。最近ニュースとかで言われるようになってきてる生活習慣病、っていうのかな、そういうのになっちゃいそうで心配。
おとうさん唐揚げが大の好物なんだけど、さすがに歳には勝てないのかコレステロールがどうのー、それじゃ長生きできないぞってよく城島せんせに言われてる。
あ、城島せんせっていうのはおとうさんの親友の
「私がアイに教えるから、帰った時にでも体にいいメニュー作ってあげてね」
「はーい。2人も心配してたよって言っとくね」
「おう。アイを残してぽっくりしてほしくねぇしな」
社長とミヤコさんもおとうさんとは仲がいいから、最近おなかのぽっこりしてきたおとうさんが心配みたい。愛するおとうさんには長生きしてほしいし、ミヤコさん直伝のヘルシーメニューを作ってあげよう。
☆ ☆ ☆ ☆
あれから夕方まで社長たちとお喋りして苺レーシングを出た私は一度家に帰り、晩御飯とお風呂を済ませてから再び家を出発。今度はすっかり日の落ちた街並みを秋名峠目指してひた走っていた。
等間隔で並ぶ街灯の照らす大通りを快調に巡航していく。今日はあまり信号に引っかからない運のいい日みたい。お昼間の暑さもいくらか和らいだし、気持ちがいい。時折青信号を点灯させた信号機がフロントガラスの向こうを見据える私の視界を過ぎ去っていく。
夜の帷の中、青白いキセノンヘッドライトの光が照らし出す路面を走る事幾許か。いつの間にか車は渋川市へ入り、街並みの向こうに聳え立つ秋名山が見えてきた。
峠に入る前にちらりと燃料計を確認。峠アタックにはちょっと…いや、だいぶガソリンが心許ないね。
私の目線の先のメーターパネルの左端、スピードメーターの横に水温計と仲良く並んでいる燃料計の針が指している位置はいつのまにか半分をとうに下回り、Eの少し手前あたり。これじゃ全開アタックを何本かした日にはあわやガス欠かもしれない。よし、麓のスタンドで入れて行こうかな。
秋名の手前で満タン給油をすることにした私は手頃なスタンドを見つけて敷地へGT-Rを乗り入れた。
「いらっしゃいませー!」
GT-Rを給油機の横につけると、駆け寄ってきたスタッフさんが出迎えてくれた。気の良さそうで優しそうな感じの無精髭のお兄さんだ。運転席側の窓を開けて、お兄さんに用件を伝える。
「ハイオク満タンで☆」
にこっとアイスマイルもつけちゃう。私は表情の調律が上手いみたいで、私のルックスの良さという武器も相まって出しうる完璧な微笑みを作っておけばほぼ完璧に相手の好印象を引き出せるのだ。
走り屋のコミュニティは案外こういうガソリンスタンド等に根を張っていることも多い。ここは秋名峠の麓だし、秋名のハチロクに辿り着くための情報を引き出したりもできるかも。第一印象は良いことに越したことはないよね。
…あれ?お兄さんがぽけーっとして固まっている。あちゃー、ひょっとしてアイスマイルの火力が高すぎたかな…?
「お兄さーん?」
「…ッハ‼︎は、ハイオク満タン、かしこまりました…!」
私が呼びかけると、我に返ったお兄さんはあわあわとしながら給油機の準備をしにいく。その間にエンジンを切り、給油口のオープナーレバーを引いておいてっと。
フューエルオープナーに引かれて半開きになった給油扉をお兄さんが開け、キャップを緩めてノズルを差し込む。トリガーが引かれてすぐに給油機のポンプが低い唸りをあげ、給油が開始された。
給油機の筐体に設けられたデジタル液晶窓に表示されたリットル数と金額がパラパラと増えていく。R33型スカイラインGT-Rのガソリンタンク容量は65L。この残量から満タンになるまではちょっと時間が掛かる。
…よーし、情報収集のチャーンス…!
勢いよくノズルを通じて送り込まれるガソリンがGT-Rのお腹を満たしてくれる間に、私はスタンドのお兄さんに聞き込みをしてみることにした。
運転席の窓から顔を覗かせて、早速突撃☆
「ねぇ、お兄さん。ちょっといいかな?」
「あ、あぁはい。何でしょうか?」
「この辺りにね、すんごく速いパンダトレノのハチロクがいるって聞いたんだー。秋名の下りなら負け知らずで、秋名のハチロク、って呼ばれてるんでしょ?」
「…!!」
お?お兄さんの表情が変わった。やっぱり秋名のハチロクのこと、知ってるみたい。
「私ね、そのハチロクのこと、とっても気になるの。お兄さん、何か知らないかな?」
「…秋名のハチロクは俺の知り合いです」
わぁおクリーンヒット!まさかの知り合いだった!ちょうどいいや、作戦変更!この人経由で伝えちゃおう。
「よければなんだけど、お兄さんから秋名のハチロクさんに伝えてくれないかな?」
「…!」
得意の嘘と表情の調律力を応用した、人を惹きつける魅了のオーラを解き放ち、微笑みながらお兄さんを見据える。瞳の星が煌々と輝きを増した。
「私は星野アイ。あなたとバトルがしてみたいんだ、って」
伝え終わると同時にガチャンと給油の停止音が響いた。
完璧で究極の一番星さん、立ち寄ったスタンドでミラクルラッキーで秋名スピードスターズの溜まり場こと、裕一店長の店舗を当てました。拓海君の前に店員の池谷先輩とエンカウント。お目当ての相手と知り合いだったのでここぞとばかりに挑戦状を叩きつけたようです。
ちなみに一話あたりの文章量ってちょうどいいですかね?それとももっとボリューミーなほうがいいですかね…?
1話ごとの文章量について。
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ちょうどいい!
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もっと欲しい!