おじさんとショタと、たまに女装   作:味噌村 幸太郎

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第三章 元カノ
12 おっさんの大事なコレクション


 

「いいから早く出せよっ! 証拠をさ!」

 

 と涙目で叫ぶ、航太。

 一体、なにをここまで必死になっているんだ?

 わからん……。

 

「証拠って例えば?」

「そ、そうだ……彼女っていうんなら、連絡先。L●NEとか」

「ああ。それならあるさ」

 

 別れたからと言って、絶縁したわけじゃない。

 相手はどう思っているか知らないが……。

 俺は“あいつ”を嫌いになって、別れたんじゃない。自分が釣り合わない男だって思ったから。

 仕方なく、俺から別れを切り出したに過ぎない。

 

 だから今でも思い出は、大事に残している……。

 電話番号にメールアドレス、L●NEや各SNSもお互いにフォローし合う仲だ。

 ジーパンのポケットからスマホを取り出すと、アドレス帳を開く。

 開いてすぐに、あいつの名前が出るように設定してある。

 

 未来と書いて、みくる。

 それが俺の付き合っていた彼女の名前だ。

 

「これでいいか?」

 

 航太にスマホを突き出したは良いが、頬が少し熱くなるのを感じた。

 なんか元カノと、イチャイチャしているところを、見せつけているような気がして。

 

「見せて」

 

 俺の手からスマホを奪い取ると、じーっと眺める航太。

 しばらく黙って見つめていたが。スマホを掴んでいる指が震え始める。

 そして何を思ったのか、鉄骨製の廊下にスマホを叩きつけた。

 

「なっ!?」

「こんなの、ウソだっ! おっさん。男友達のアドレスを、女の名前に変えたんだろ?」

「……なんでそんな回りくどい嘘をつくんだよ。本当に俺が付き合っていた女の子だって」

 

 スマホが壊れていないか、急いで拾い上げる。

 どうやら、正常に機能しているようだ。

 しかし、画面に亀裂が入っている……。

 ひどいな。

 

「じゃ、じゃあそこまで言うなら、写真とか無いわけ?」

 

 割れたスマホの画面を見て、罪悪感を感じているのか、航太は視線を逸らしている。

 そんなに人の元カノが、知りたいかね?

 ため息をついて、数年前の写真を探してみる。

 学生時代にデート帰り、プリクラを二人で撮ったやつがある。

 これならあいつが、俺の腕に手を回しているし、良いだろう。

 

「ほら、この写真ならもう納得か?」

 

 再度、航太にスマホを差し出す。

 今度は投げるなよ。

 

「んん……」

 

 眉間に皺を寄せ、スマホを覗き込む。

 まだ疑っているようだ、唸り声を上げて首を傾げる。

 

「合成写真じゃないぞ? ほら、二人とも仲良さそうだろ?」

 

 自分で言っていて、超恥ずかしい。

 過去とはいえ、のろけだからな。

 

「なんかさ……地味じゃね? おっさんの元カノって」

「そ、それはこいつがファッションとか、あんまり興味なくてだな……」

 

 彼の言う通り、元カノの未来は地味な女子だ。

 通っていた大学には、芸術学部があって、ある時偶然知り合った仲。

 普段は趣味であるマンガのことしか、考えていないから地味と表現されても仕方ない。

 だが、写真まで差し出したのに、それではあまりにも未来がかわいそうだ。

 

「ねぇ、おっさん。付き合っただけで、何もしてないんじゃないの?」

「はぁ!?」

「こんな地味女のどこに惚れたの? オレだったら、罰ゲームでも嫌かな」

「……」

 

 別れたとはいえ、未来は俺が初めて付き合った彼女だ。

 ここまで言われる筋合いは無い。

 というより、彼氏である俺が許せない。

 あいつの素晴らしいところは、全部知っているつもり。

 なら、それを証明してやりたい!

 

「わかった……そこまで言うなら、航太。俺の家に来いよ」

 

 気がつけば、俺の方がムキになっていた。

 どうしても元カノの名誉を、挽回させておきたいから。

 

「え? な、なんで……」

「俺の元カノにそこまで言っておいて、逃げるのか? ちゃんと見ていけ。あいつの凄さを教えてやる」

「は、はぁ? なんだよ、ただ地味女だって言っただけじゃん!」

「それが嫌なんだ。部屋にプリントしたあいつのアルバム集があるから、見ていけよ」

「アルバム集? キモい! おっさん、別れてもまだ引きずってんの?」

 

 航太に指摘されるまで、気がつかなかった。

 元カノを収めた写真集を、長年大事にしている自分に……。

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