おじさんとショタと、たまに女装   作:味噌村 幸太郎

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41 バレたくない

 

 喫茶店の駐車場で、元カノの未来と黙って見つめ合う。

 もう10分は経ったんじゃないだろうか。

 未来は、綾さんのことを誤解している。

 とにかく、それだけはしっかりと否定しておかなければ……。

 

「なあ、未来。俺さ、ちゃんとお前のことを見ていたかって、言われたら……自信はないけど」

「……うん」

「それでも、付き合っていた頃。他の子と浮気なんて、しなかっただろ?」

「知ってる」

「じゃあ、信じてくれてもいいだろ? 綾さんは本当に隣りの人で、何もないんだ」

「……」

 

 必死に説得しているつもりだけど、最後の言葉には同調してくれない。

 一体、なぜだ?

 

「わ、私だって……学生時代から、翔ちゃんのことはよく知っているつもり……」

 

 細い肩を震わせて、未来が何かを訴えかけている。

 ここは黙って聞くことにしよう。

 

「でも! 最近の翔ちゃんは、本当に違うもん! 別れる時、”優しい噓”をついてくれた翔ちゃんじゃない!」

 

 そこまで言い切られると、俺も言い返さないと気が済まない。

 

「ど、どうしてだよ? ていうか、一体なにがそんなに違うって言うんだ?」

「そんなの見れば、すぐに分かるよ……その顔」

「は……顔?」

 

 思わず、自身の頬を両手で触ってみるが、特に変わったところはない。

 

  ※

 

「さっき喫茶店の外から、翔ちゃんとあの女の人が一緒に食べているところを見ていたけど……。私が見たことのない優しい顔をしていた!」

「……」

 

 ちょっと待て、いきなり指摘されたから、頭の中で処理できない。

 俺が綾さんと一緒にいて、楽しそうにしていた? いや、優しい顔をしていたと言うのか……。

 あ、その中にもう一人いたな……。

 航太の存在だ。

 

「待ってくれ……未来。それは本当に綾さんじゃない」

 

 未成年の男子中学生、航太と一緒にいたから「お前より優しい顔をしていたんだ」とは言えない。

 

「じゃあ、なんで?」

「そ、その……恋愛とかじゃなくてだな。友情というか……」

 

 と苦しまぎれの言い訳をしていたら、未来が俺の目を見て叫び声を上げる。

 

「ああっ! まさか……翔ちゃん!?」

 

 口を大きく開いて、必死に両手で隠そうとするが。

 あまりの衝撃に、驚きを隠せずにいるようだ。

 

「ま、待ってくれ! さっきも言った通り、恋愛感情じゃなくて……」

 

 そう説得しようとするが、彼女は聞く耳を持たない。

 

「ウソでしょ!? 相手は未成年の男の子だよ!?」

「……」

 

 さすが、元カノだ。

 全てバレてしまった。

 

  ※

 

 俺がずっと気になっているのは、同い年のシングルマザー。

 美咲 綾さん……ではなく、その息子。航太だ。

 

 自分でもこの気持ちは、好きとかそんな簡単な感情じゃない。

 ただ、俺は……あの子とこれからも、仲良くやっていけたらと思っている。

 

 俺が好意を寄せている相手が、男の子だと知って。

 元カノの未来は、黙り込んでしまう。

 

「その、俺はあの子を、航太のことをそんな目で見ていないんだ」

「……じゃあ、どんな関係なの?」

「決してやましい関係じゃない。ただの友達、たまに二人で遊ぶ仲だよ」

 

 そう説明したが、未来は納得していなようで、また黙りこんでしまう。

 視線を地面に落として……。

 

 しばらく沈黙が続いたが、何かを思い出したようだ。

 ハンドバッグの中から、スマホを取り出す。

 

「私、実はずっと応援していたんだよね……」

 

 視線はスマホに向けたまま、喋り始める。

 ずっと、人差し指で画面を触っている。

 

「なにがだ?」

「翔ちゃんと別れても、エロマンガの原作者、SYO先生を……」

「!?」

 

 まさか、未来が俺の書いているエロマンガを読んでいたとは。

 正直、読んで欲しくなかったし、応援もして欲しくない……。

 だってあれは、元カノをそのままネタにしたものだ。

 特に、ムチムチコスプレイヤーシリーズは。

 

「最近さ、作風変わったの?」

「あ、ちょっと担当さんに言われてな……新しいものに挑戦しているんだ」

「ふぅん……」

 

 なんだろう、この無言のプレッシャーは?

 元々、未来という彼女は温厚で優しい人間だったのに、ものすごく冷たい声で話す。

 

「俺の作品が一体、何だって言うんだ?」

「あのね……お仕事だし、私は振られた身だから強くは言えないけど。こういう作品を実体験を基に書いてない?」

 

 そう言って、自身のスマホを俺に向ける。

 

「は?」

 

 彼女が突き出したスマホを覗き込むと、画面の中にはとあるマンガが映し出されていた。

 俺が原作を担当した、ロリものだ。

 

 高熱を出した女子中学生の家に上がり込んだ主人公が、看病と言いつつ。

 座薬と一緒に、自身の欲望を幼い少女で満たす……。

 

 この前、航太を看病した体験を基に書いたエロマンガだ。

 

 「み、未来……これは、あくまでフィクションで……」

 「前作と比べて、そう言える?」

 「……」

 

 なんて、返せばいいんだ。

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