おじさんとショタと、たまに女装   作:味噌村 幸太郎

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47 また来年

 

 事故とはいえ、未成年の少年とキスしてしまった。

 酔っぱらっている航太と……。

 

 彼としては、紙風船のように俺の頬が膨らむか、遊ぼうとしていただけ。

 本当に純粋な気持ちで、唇に触れたはず……なのに。

 俺はそれを利用して、自らの欲望を満たしてしまった。

 

 罪悪感で胸が押し潰れそうだ。

 しかし、後悔するのは後にしよう。

 半裸状態の彼を立ったまま寝かせては、風邪を引いてしまう。

 航太を抱き上げて、一旦畳の上に寝かせる。

 

 押し入れになおしていた、布団を取り出すためだ。

 敷き布団を畳に敷くと、彼を寝かせてあげる。

 着ていた体操服では、どちらにしろ寒そうなので、俺がいつも使っているトレーナーを着せておいた。

 掛け布団をしっかり首元まで、掛けてあげる。

 

 彼の寝顔を眺めながら、ため息をつく。

 

「はぁ、酷いクリスマス・パーティーだったな……」

 

 どちらにしろ、母親の綾さんには、このことを内緒にしておかないと……。

 

  ※

 

 あれから、一晩が経った。

 航太は初めての飲酒を経験したせいか、なかなか起きてくれない。

 時おり、いびきをかいている……。

 

 俺はと言えば、キッチンの換気扇の前で立ち尽くしていた。

 タバコをくわえながら……。

 もう、何本目だろう。

 航太とのキスを思い出しては、頬が熱くなり、心臓の音がバクバクとうるさい。

 

 興奮を抑えるために、タバコに火をつけて煙を吐き出す。

 静まり返った部屋の中は、掛け時計の針の音……それから、航太の寝息だけが聞こえてくる。

 ダメだ、眠れない。

 

「でも、俺は……」

 

 あの時、もし航太がその場で倒れ込むことなく、続けていたら?

 果たして、理性を保てていたのだろうか。

 

 

 朝になっても、航太が目を覚ますことは無かった。

 そろそろ起こさないと、いい加減、あの綾さんでもチャイムを鳴らしてきそう。

 

 キッチンに置いていた灰皿で、タバコの火を消すと。

 ゆっくり航太が眠る布団へ近づく。

 膝を曲げて、彼の小さな手に触れようした瞬間だった。

 

 パチンと音を立てて、瞼が開く。

 俺に気がつくと、ブラウンの大きな瞳がこちらをじっと見つめる。

 

「お、おう……大丈夫か?」

 

 平静を装うつもりだったが、まだ頭の中は昨晩のキスでいっぱいだった。

 

「あれ、パーティーはどうなったの?」

 

 人差し指で瞼をこすりながら、身体を起こす。

 起きて間もないから、まだボーっとしているようだ。

 というか、昨晩のことを覚えていないのか?

 

 俺は恐る恐る、彼に聞いてみることにした。

 

「昨日のこと……覚えていないのか?」

「なにが?」

 

 と首をかしげる航太。

 

 本当に覚えていない……?

 もし、そうなら俺にとっては、好都合なことかもしれない。

 だってキスの相手が、アラサーのおっさんだからな。

 

 たぶん初めての経験だっただろうし、彼が酒で記憶を消してしまったのなら。

 その方がお互いに良い……今後のためにも。

 

「ところで、おっさん。オレ、寝ちゃったみたいだけど、パーティーは終わったんだよね?」

「ああ……昨晩はかなり興奮していた見たいだからな。疲れていたんじゃないか」

「そっか。ならさ、またしない?」

 

 ゆっくりと俺に身を寄せ、上目遣いで頼み込む。

 

 彼が何を考えているかは分からない。

 自然と、昨晩のキスを思い出してしまう。

 また……して欲しいということか?

 

 生唾を飲み込んだあと、その質問の意味を聞く。

 

「な、なにをするんだ?」

 

 すると、彼は満面の笑みでこう答えた。

 

「もちろん、クリスマス・パーティーだよ! あんなに楽しい夜は初めてだったからさ」

 

 変な期待した俺がバカだった……。

 

「そうだな。じゃあ来年も二人でするか?」

「うん、約束!」

 

 そう言うと、お互いの小指で契りを交わすのだった。

 

 ~一週間後~

 

 色々とハプニングだらけの年末だっただが、無事に年を越せた。

 まあ、お正月だからと言って、特にやることもなく……。

 いつも通り、近所のコンビニで酒とつまみを買って、アパートへ歩いて帰ろうとしていると。

 

 どこからか怒鳴り声が聞こえてきた。

 俺が住んでいる、アパートの方からか?

 気になったので近くにあった電柱の裏に隠れて、様子を見ることにした。

 

「だからさ! なんでそうなるんだよ、母ちゃん!?」

 

 この甲高い声、航太か。

 元旦から一体なにを怒っているんだ。

 

「仕方ないでしょ? もう決まったことなんだから……」

 

 電柱から少し顔を出してみると、アパートの廊下で航太と綾さんが話していた。

 

「母ちゃんはいつもそうだ! 勝手に選んで、決めて……オレの気持ちは考えてくれないじゃん!」

 

 航太のやつ……泣きながら、怒鳴っているのか?

 なんか、いつもの親子ゲンカとは、雰囲気が違うような。

 

「航太、お願い。一緒に来てよ、あなたがいないと……」

 

 綾さんは、まだ航太と話したかったようだが、彼がそれを遮る。

 

「ふざけんな!」

 

 そう叫ぶと綾さんに背を向けて、アパートの階段を駆け下り。

 泣きながら、どこかへ走り去ってしまった。

 

 一体、あの親子に何があったんだ?

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