おじさんとショタと、たまに女装   作:味噌村 幸太郎

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第二章 通い妻
6 汚なっ……


 

 航太からもらった、たくさんのホワイトシチュー。

 なんだかんだ言って、しっかり綺麗に平らげてしまった。

 久しぶりに人の暖かさというか。優しさを感じる。

 

 一人暮らしを始めて10年近く経つが、俺は自炊なんてしない。

 だから朝はトーストのみ、昼はカップ麺。

 夜は晩酌をするから、コンビニで適当につまみを買って酒を飲む……。

 不摂生の極み。

 

 数年ぶりに食べた手作りの料理で、身体が喜んでいた。

 温めたシチューをおかずにして、トーストを何枚もおかわりしてしまった。

 食べ終えて、キッチンのシンクの上に置いた鍋を見つめる。

 

 やっぱり洗って返すべきだよな……。

 作ったのは、母親の綾さんだろうし。

 洗い物なんて大嫌いだが、借りものだからちゃんと洗うか。

 

 ~それから、数時間後~

 

 夕方になりアパートの外から、何やら声が聞こえてきた。

 

『いいって! オレは外にいたいのっ!』

『航太、またそんなこと言って……風邪を引くわよ』

 

 この声は、お隣りの綾さんと航太か。

 ドアの閉まる音が聞こえたところで、俺はさきほど洗った鍋を手に持つ。

 玄関に置いてあるサンダルに足を入れると、外へ出る。

 

「あ……」

 

 すぐに気づかれてしまった。

 航太は頬を赤くして、下から俺を見上げる。

 

「よう。また会ったな」

「うん……」

 

 毎度のことだが、母親の綾さんが家に男を連れているから、元気がないな。

 

「昨日はありがとな。綾さんにお礼を言ってくれよ、シチューうまかったってさ」

 

 そう言って、鍋を差し出すと。

 何を思ったのか、航太は鍋を叩き落とす。

 

「なに言ってんだよ! おっさん!?」

「へ?」

「あのシチューはオレが作ったの! 母ちゃんが料理なんて作れるわけないじゃん!」

「ウソだろ……?」

「本当だって! 母ちゃんは夜の仕事で忙しいし、酒飲みだから。オレが料理を作ってるの!」

「……」

 

 思った以上に、複雑な家庭のようだ。

 

  ※

 

 まさか男の航太が作ったシチューだったとは……。

 しかし、うまかったのは事実だ。

 改めて彼に頭を下げ、自分で洗った鍋を返す。

 

「ありがとう、航太。うまかったよ」

「本当? なら良かった……」

 

 頬を赤くして、恥ずかしそうに鍋を抱える航太。

 しかし、中身を確認すると態度を一変させた。

 人差し指で鍋の底に触れて、眉間に皺を寄せる。

 

「おっさん。これちゃんと洗ってくれたの?」

「ああ、一応洗ってみたが……汚れ落ちてないか?」

「全然キレイじゃないよっ! 洗う前にキッチンペーパーとかで拭いてないの!?」

 

 なんかすごく怒られている……。

 キッチンペーパーなんて、自炊をしない俺が家に置いているわけないだろ。

 

「わ、悪い……そういうの持ってないし、洗い物なんて普段しないから」

「えぇ……じゃあ、おっさん。普段のご飯とかどうするの?」

「どうって、コンビニでパンとか、カップ麵を買って食べるけど。極力、洗い物は出さない生活だな」

 

 俺がそう答えると、信じられないと言った顔で、呆然とする航太。

 

「そんなんで、生きていけるの?」

「ああ、もう10年間ぐらい……」

「……アパートの間取りは一緒でしょ? ちょっとキッチン見せて!」

「おい、ちょっと……」

 

 俺の手を振り払い、勝手に人の家に上がり込む。

 アパートの玄関に入ると、すぐ左手にキッチンがあり、右手はトイレとお風呂だ。

 リビングというものはなく、6畳一間の和室があるだけ。

 

 学生時代から住んでいる1Kの狭い自宅だが、長年住んでいることもあって、物であふれている。

 ほぼ要らないもの、学生時代の参考書や好きな作家の小説、マンガ。古いゲーム機など。

 

 そこに足を踏み入れた少年は、驚きのあまり固まっていた。

 

「き、汚いっ!」

 

 と言いながら、自身の小さな鼻をつまむ。

 汚い部屋だと自覚していたが、そんなに臭うかな?

 

 そういえば、航太が数年ぶりのお客さんになるか。

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