登場人物紹介
ビルド
シンプルに主人公。ニコニコ顔なのは生まれつきだが脳内で毒舌なツッコミを吐きがち。むっつりスケベ。女の子のおっぱい大好き。おっぱいに埋もれたい。理想は日本人的柔らかさを兼ね備えたCカップ。
シドー
元破壊神の現脳内中学生。性的知識を得て以来すべてのものにムラムラが止まらない。1週間前にスズメバチの交尾を見て勃起した。ビルドに片思いのあまりストーカー中。
ルル
病気によく効きそう。今回出てこない。
ポンぺ
ポンぺ。
他
おっさんとかおばさんとか筋肉とか。
「なあ、コイビトってなんだ?」
シドーのそんな質問は赤の開拓地にあるピラミッド内のアーマンが経営するバーの中で発された。
時刻は21時。今日の仕事も一段落付いたことだし、と僕はシドーやミルズ、マッシモとウイスキーをルビーラで割ったものを傾けながら何でもないような会話をしつつ夜を過ごしていた。
全てを終えてからっぽ島に帰ってきて以降、シドーは以前にもまして知識欲旺盛で、僕以外にもいろんな人に多くの事を教わり、日々その知識を蓄えている。
しかしやはりというべきか、シドーも年頃の男なのだろう。あるいは交友関係に下世話な筋肉が多いせいもあるかもしれない。彼の知識欲の矛先は最近やや性的なものに傾きがちである。愛はなんだ恋はなんだから始まり、交尾とはなんだ、おっぱいとはなんだ、興奮とはなんだちんことはなんだとあれこれ興味を示すその姿は完全に性の知識をつけ始めた男子小学生のそれであった。それに悪乗りしてミルズやマッシモがペロの話を所々にからめながらやや過剰な性教育を行ったのである。いや、僕自身もおっぱいのことに関しては熱弁をふるった。彼が胸とはデカけりゃいいという短絡的な思考に陥らないように、と。
それだけならまだいいが、その方向性の偏った性教育のせいでシドーは更に掘り下げ始めた。僕とシドーは同じ部屋で寝食共にしているのだが、正直起きたそばから「昨日ドルトンに貰ったえっちな本、なかなかヌけたぜ!」と申告するのはやめてほしい。つーか僕が寝てる隣でするのをやめてくれ。言われなくても知ってるから。昨日ごそごそしてたの知ってる上で寝たふりしてやったんだからお前もなかったことにしてくれ。お願いマジで。
要するに今のシドーは性に敏感な中学生である。そんな彼が久しぶりにぶつけてきたえっちなこと以外の質問であったため、既にほろ酔いの僕の心はとてもほっこりとした。
「んー、好きな人同士でなる特別な関係の事かな。」
「スキっつーとこの間言ってたやつか。」
僕が朗らかにそう答えると、シドーは復習も兼ねてだろう。そう尋ねてきた。
「笑顔にしたい!そばにいたいって思う人のことだぞ!」
「あと他の奴に渡したくない、自分だけのものでいてほしいとも思うぜ!」
ミルズとマッシモがポージングを取りながら解説し、そのあとに二人で「「つまりペロだああぁあぁぁああ」」と叫んだ。当のペロはというと、一瞬彼らに微笑みかけた後、さっさと接客に戻った。そんなさっぱりとした対応でも二人はお気に召したらしく、さらに暑苦しく倍速でポージングをとっている。
ちなみに今その筋肉たちに需要はみじんもない。シドーや周りも特に見ておらず、僕もやや目線をそらした。まさに視聴率0%の筋肉である。
「「ペロとムフフなことをしたいぞおおぉおぉお!!!」」
うるさい。黙ってくれ筋肉。せっかくエロスのかけらも無い雰囲気だったのに。
しかし僕のポーカーニコニコフェイスはこの程度では揺らがない。もうあらくれたちのペロ好きには慣れっこだからである。
シドーはフム、とうるさい二人には目もくれずにしばらく思案した後、
「ビルド!俺はお前のことが好きだ!コイビトになってくれ!」
と最高にいい笑顔で僕に言ってきた。
・・・まあルビーラ吹くわな。
理不尽にもルビーラを吹きかけられたアーマンは僕にキレたい気持ちとシドーの突拍子もない告白にどうしたらいいのかわからない気持ちとでじつに中途半端な表情をしている。後で謝ろう。他の人たちも同様だった。ミルズやマッシモはポージングのまま石化したように固まってしまっているし、セルジや他のあらくれたちも一斉にこっちを見てきた。この瞬間、僕らの時間は確かに止まっていた。
「いやいやいやいや、シドー?あのね、恋人って大抵は男女でなるもんなんだよ。僕もシドーも男だもん。シドーが僕に向けてる好きは友達としての好きだよ。」
自分の尻と彼との関係を守るため、誰よりも早く我に返った僕はすこし困りながらもそう答えた。
「あら、ビルドちゃん。恋人が男と女じゃないといけないだなんて、そんなことはないわ。二人が思いあっていれば、邪魔するものなんてないわ。」
「そうだぞビルド!あらくれの中にも男同士であんなそんなキャッキャッしている奴はいっぱいいるぞ!」
唯一フリーズせずにあらあらとほほ笑んでいたオンバと復活第二陣のマッシモがそうヤジを飛ばす。いやもちろん僕だってもと居た町やいろんな冒険をしてきたなかでそういう関係を見たこともあるから、別段偏見はない。問題はシドーが知識をつけたてで恋愛感情をきちんと認識しているのか怪しい事、そして僕がノンケであることなのである。きちんと想いが通じ合わなければ恋人にはなれないのじゃないか、と僕は思う。何より僕はおっぱいがないと辛い。あとマッシモの話で反射的に汗臭い筋肉同士のアハーンな絵を思い浮かべてしまい、後悔した。
どうやってシドーを傷つけずに元の関係を保とう、そう考えているとシドーが続けた。
「お前は俺が友達のスキを恋人のスキと勘違いしているというが、俺はお前が嬉しそうにモノ作りするのをそばでな眺めていたいと思うし、笑っていてほしいと思う。他の奴らと仲良くしていたらむかむかするし俺だけのものにしたいし何よりセックスしたいと思うのはお前だけだ!!これはどう考えても恋人のスキだろ!」
・・・言った。こいつ、筋肉たちでさえぼかした表現をしていたワードを堂々と言いやがった。
思わずルビーラを再び吹きかけてしまったアーマンが微笑みながら青筋を立てている。さすがに二度目に慈悲はないらしい。本当に申し訳ないと思う。アーマンと狙われる尻の恐怖で思わず穴を強く締めた。
どうして僕が下の前提なのかって?単純な話だ。僕はシドーの雄みに勝てない。力、体格、イチモツの大きさ、すべてにおいて。特にイチモツはすごい。風呂に入ると嫌でも目に入るのだが、こいつのそれは通常時でさえ恐ろしいものを持っている。。初めて見た時は周りのあらくれに跪かれていた。更にシドーが僕が寝静まった(と思った)後一人でナニしている時、こっそり盗み見たことがあるのだが、もはやそれは破壊神であった。女に使っても壊してしまうのではないかと思わせるその凶暴さは男のケツなんかに入れるものではない。仮にも元破壊神なら破壊するにしてももっとほかのものがあるだろう。
「・・・ごめん、もしシドーが僕の事恋人として好きでも僕は友達として好きなんだ。君とは今まで通り相棒としていたいよ。」
やっちゃったーーー。よりによって大勢が見てる前で振っちゃった!!!でも公開告白してきたのはシドーだから仕方ないけど・・・。この空気どうしよう。いやそれよりもシドー傷ついたよね・・・。もう相棒には戻れないのかな。
そう心配しながら恐る恐るシドーを覗き込んだ僕だったが、シドーは思った以上にタフだった。
「じゃあ、お前が俺のことをスキになればコイビトになれるんだな!?」
絶対やってやる!と燃えるシドーを見て、少なからず安心した。断っておきながらシドーのことを傷つけたくないと思っている自分に都合がいいな、とわずかにいら立ちも覚えたが。
「絶対お前を惚れさせて、セックスしてやるからな!!」
・・・前言撤回。やばい。これはやばい。僕の尻が破壊されちゃう!薬草で元通りなんてそういう問題じゃない。男としての大事なものなんだ。
壊れたら作り直せばいい?馬鹿野郎、世の中にはやり直しのきかないものもあるんだ。
リセットして無かった事にした上でセーブしたところからやり直せ?何言ってんの?人生はリセットできないんだぜ?
ヘラヘラとした顔は生まれつきだ。だけどこの時僕の顔は確かにヘラヘラ顔が引きつっていた。
それからというものの、シドーのアタックはものすごい。そもそも元から基本的におはようからおやすみまでの行動を共にしていたのだ。もうストーカーなんてレベルじゃない。そして、おそらくなんか名前の忘れた吟遊詩人辺りが吹き込んだのだろう。とにかくほめてくる。朝起きれば「お前の寝ぼけまなこの顔、すげぇ可愛い」だとか、物作りをしていると「物作りをしている時のビルドも好きだ」とか、風呂上がりにタオルで拭いていると、「やべ、勃った」とか。いや最後のはなんか違うな。
やめてくれイケメン。その顔でそんな甘い言葉をかけられたら島中のほとんどの女は落ちるだろう。問題は口説いている相手が僕であるということである。
ちなみに寝るときに襲われやしないかと初めのうちはパンツに画びょうを仕込んでいたのだが、どうやら嫌がることはしないでいてくれているらしい。紳士だ。彼も辛いのではないかと思い部屋を分けることを提案したが、この世の終わりのような顔をされたのでやめた。なんだかんだ僕も彼に甘いらしい。
「で、シドーをまいた後にどうしたものかと俺たちに相談に来たと。」
「あれだけ心の中で筋肉呼ばわりしていたのに現金だぞ。」
まあ筋肉は誉め言葉だがな!と休憩中のミルズとマッシモはポージングをしながら熱く叫んだ。なんで心の声が聞こえてんだよ、とはこの際聞かないでおくことにする。
「シドーはあの調子だと本気だろう。一度男女関係なくあいつについて見つめ直してみたらどうだ?」
まあおっぱいはないが雄っぱいはあるだろう。俺らには敵わないがな!と付け加えてきたが確かにミルズの言う通りだ。
驚きこそすれ、シドーに対して嫌悪感を抱くことは無かったし、なんだかんだ口説かれながらも共に生活をしていることにも変わりない。
もしかして僕はシドーとなら付き合える・・・?いや、僕が折れたら僕の尻は誰が守るんだ。それに・・・。
「シドーがなんだかんだ女性から人気あるの知ってるだろ?一時の感情で僕と付き合うよりも誰か他の人と付き合って幸せになってほしいんだよ。僕はそれをそばで祝福したい。」
これが一番正直な気持ちだった。もちろん僕も誰か女性と結婚して、子供をつくって、そんな未来を描いている。でも何よりシドーの幸せを考えたい。
「おいビルド!お前こんなところに居やがったのか!俺の342回目のコクハクを聞け!!」
「やば、シドーだ。じゃ、僕行くよ。ありがと。」
そう言い残すと僕は遠くから土煙を巻き上げつつものすごいスピードで走ってくるシドーから逃げるべく足早に立ち去った。
「マッシモ・・・。」
「ああ・・・。」
ミルズとマッシモが顔を見合わせてつぶやいた言葉は僕の耳には入らなかった。
「まるでシドーの幸せを想って身を引くみたいな言い方するんだな・・・。」
おまけ
うっす。ポンペっす。今日も元気に野菜をハッスルさせてるっす。
ところで最近のシドーさんは今までに増して性的知識に興味津々っす。この間まで「交尾ってなんだ?」だったのに昨日は「フェチズムってなんだ?人によって違うのか?」って聞いてきたっす。どんどんマニアックになっていくっすね。そのうち「くるぶしってエロいよな」いうんすかね。ちなみに自分はメガネっ子がメガネを外しながら涙目の上目づかいで「めちゃめちゃにして・・・?」って聞いてくるシチュに興奮するっす。
あ、噂をすればシドーさんっすね。なんかキャベツを眺めてるみたいっす。可愛いとこあるっすね~。あれ、なんか聴こえるっす。
「・・・人間が食べるために受粉させられるキャベツって・・・エロいな・・・」
・・・何言ってんだこいつ。