なんか違う意味で荒れ始めている森を抜けてすぐ見える位置に『ドナファ』と名付けられ知られている町ある。
昼を告げる鐘の音が響く、以前来たときに比べて少し活気が失われたかなと思った表通りから逸れた脇道。そこにひっそりと建つ店が一軒。吊るされた看板に『雑貨屋モナカ』と書かれた店の中で彼女、『ロレーナ』は煙草を咥え、煙を揺らしていた。
「…はぁあぁー」
煙を吐き出しながら椅子の背もたれに背を預ける。若干困った様子の彼女の視線の先には一人の少女…と、その少女に抱えられている半透明な箱に入った謎の光る何かが居る。
「わぁー凄い色んなものがありますね!」
「でしょー? うちは品揃えだけは無駄に凄いよ!」
「あ、なんですかこれは?」
「これ? これはねー、ここをこうすると」
「わぁー凄い!」
「でっしょー!」
なんて、きゃっきゃと楽しげに会話をしている一人と一つ。それを見ながら溜め息を溢す。
「ほんとに…なんなんだろ?」
「なにがだ?」
「んぁ?」
声が聞こえると同時に隣から椅子の軋む誰かの座る音。視線を向けてみれば、友人が一人。
「あー、やっほ『ルガン』2年ぶりね」
「おう、久しぶり」
と返しながらよいせとロレーナの隣に座る『ルガン』という名の老人。彼に向けて彼女は煙草を遊ばせながら問いかける。
「ついさっき昼御飯食べに出掛けたって聞いてたけど随分と早く帰ってきたわね」
「酒場の坊主にお前を見たって聞いて急いで帰ってきたんだよ。ほれ、泣いて喜べ」
「お金払ったら喜んで上げるわよ?」
「んな金貰って喜ぶような性格してねぇだろお前は」
「まぁ、そうね」
そこまでお金に困ってないしと言葉と一緒に煙を吐く。彼女は割と金持ちなタイプの魔女なのであった。と、そこで二人は沈黙。楽しげな一人と一つの話し声を聞きながら、それでとルガンが切り出す。
「俺の孫と楽しげに会話してるあの…なんだ、まじであれなんだ? 何処で拾ってきたんだあんなの?」
「ちょっと森の中でねー。で、なんなのかに関してはこれが全く分からないのよねー。本人…人? 自身もなにも分からないみたいだし」
「ほーん…記憶喪失って奴か?」
「言った通りなにも分からないからなんとも、そうかもしれないし違うかもしれないわね」
「なる程な。で、そんな正体不明ななにかを町に運び込んで大丈夫なのかおい? 何時かの『衣服炸裂事件』や『一週間強制逆立ち生活』みたいな事にならねぇだろうな?」
「可能性があるけど森の中に放置する方がもしもの時問題でしょうが。あと一応、あの時と違ってちゃんとあたしの結界の中には居れてるから大丈夫でしょ」
言いながら謎の光、が入っている半透明の箱を指差す。
「ま、もしあたしの結界を壊すことが出来るならあれの良し悪し関わらずどうしようもないから諦めて」
「それはまぁ、そうだけどな」
「なんの話してるのじいちゃんに魔女様ー」
「ですかー?」
「ん? あぁ、ちっとな」
「その、光ってる子に関してちょっとね」
「なる程、だって『フェリー』ちゃん! 君に関して色々お話中だったみたい」
「僕の知らない僕の事を話していたんですね。ちょっとドキドキします」
「まぁあれこれといっても…なんて?」
「おい、どう言うことだ『マゴ』?」
急な問いかけに、目の前の『マゴ』というロレーナ的にちょっとややこしい名前の少女は結界に入っている謎の光を抱えながら首をかしげる。
「なに、その…名前、え?」
「お前、そのフェリー? だったか、その光の名前で良いのか?」
「そう! 名前が分からないって言ってたからつけて上げたんだよ!」
「つけて貰いました!」
「あぁそう言う事。まぁ確かに名無しのままだと不便ではある…けど、なんでフェリー?」
「前にじいちゃんに見せてもらった本に書かれていたんですよ! どこかの国の言葉で『妖精』を意味の言葉らしくて、こんなかわいい絵本に出てくる妖精そっくりな子にはぴったりだと思うでしょう!?」
「…あー、そう言うことね」
「そう言うことです!」
「です!」
ねー! と楽しげにはしゃぐ二人を見ながらスッとルガンが顔を寄せて小声で話す。
「なぁ妖精ってあんな感じじゃなかったよな?」
「いや、絵本のって意味じゃ確かにたまにあんな感じに輝きながら登場する描写はあった気がするわ…本物はあんなのじゃないのはその通りだけど」
「だよな、うん…というかフェリーって妖精って意味の言葉だったっけ?」
「いやたぶん違った筈…それ関係に詳しくないから断言出来ないけど」
そうかと言うルガンの呟きを聞きながらさてとロレーナは煙草の火を消しながら立ち上がり、ヒョイと抱えられていた謎の光、フェリーを持つ。
「それじゃ、あたしたちはもう行くわね」
「もう行くんですか、今回はお早いですね」
「まぁちょっと用事出来たからね」
「あれ、僕も一緒なんですか?」
「当たり前でしょうが、用事って言うのはあなた関係の事なんだから。なにも分からないままって言うのは色々不味いから知り合いに所まであなたを連れてって見てもらうのよ。少なくともあたしよりは知ってるだろうし」
「え、良いんですか!?」
「いや、良いも何も無いと言うか…まぁそうね、うん」
「ありがとうございます!」
「…どういたしまして」
「…大丈夫なのかお前?」
無邪気に喜ぶフェリーになんとも表現し難い表情を浮かべる彼女に、ルガンは心配しながらそう問いかけられ、表情そのままに視線を向ける。
「大丈夫かって…さっき言ったでしょ」
「いや安全たどうのじゃなくてな。めっちゃ光ってるけどそのままで大丈夫なのか?」
めっちゃ目立ってるけどと、そう言われて視線を向ける。とても輝いている、間違っても気にするなと言われても無理な位にそれはもうピカピカと。
「あーそうだった、それ関係でちょっと頼みたいことあるのよね」
「頼みたいこと?」
「えぇ、なんかこう良い感じの道具あったりしない?」
「いや良い感じって言われても困るんだけど…要するに目立たなく出来る何かってことだよな? そういうのは結界弄ってどうとでもなるだろうお前なら? 割と何時も同じようなことしてたし」
「それしても結局結界握りしめて移動するんだから目立つことに代わり無いでしょうが。と言うわけだからなにか無い? 割と変な物多いから結構期待してるんだけど」
「言い方、いやまぁ変なのが多いことは否定出来んけどな? しかし良い感じのなにかねぇ…あれとか?」
「あ、あるんだ。言ってみるもんね。見せて貰っても良い?」
「おう、あれを買ってくれるって言うならこっちとしてもありがたいからな、と言うわけだマゴ」
「分かった!…って言いたいけど、見当たらないんだよね。たしかこの棚に置いてあった筈なのに」
「掃除したときにそっちの棚の奥に移動させてただろうが」
「あ、そうだった。ありがとうじいちゃん!」
では少しお待ちをと言ってマゴはルガンが指差した商品棚の奥を漁り始め、あったあったと目当ての物を取り出しロレーナに手渡した。
「これです!」
「…これ、カンテラ?」
「はい! 素材の質も良くとっても頑丈で、こう持ち手を捻ると蓋が出てきて光を遮る事も出来る優れものなんです」
「え、何その機能?…うわこれもしかしてミスリル? 本当に素材の質が無駄に良い…あぁ成程、一度灯りを着ければ魔法で自動的に維持管理されるようにしてある訳か」
「どうだ? それの中にそいつに入って貰えばかなりましになると思うが」
「んー、まぁ真っ昼間にランタンに灯りがついてるのもそれはそれで目立つけど…良く分からん光輝く何かや結界を持ち歩くよりかはましか。質が良いのも確かだからあたしが結界を重ねれば良い感じに出来そうだし」
軽く渡されたカンテラを見てからうんと頷くロレーナは、それじゃと視線をマゴに向けて。
「そうね、これ貰うわね。いくら?」
「30万です!」
「いや高い…訳でもないか。寧ろ素材とか考えれば安い位よねこれ、間違ってもカンテラに付けられる値段ではないけど。はい、30万」
「はいよ、逆に素材が素材だからこれ以下の値段にはできねぇんだよな…うん、30万丁度だな。しっかし相変わらず大金を気軽に出すよなお前」
「ある程度持ち歩いてないと良いものや新しい物を見つけたときに気軽に買えないでしょう?」
「そこも相変わらずか」
と彼は言いながら笑い、トンと何気なく追加でマゴが持ってきた箱から先程ロレーナが購入した物と全く同じカンテラを取り出して目の前に置いた。
「…次いでだから、予備としてもう一つ買わんか?」
「買うわけ無いでしょうが」
・プチ紹介コーナ・
『謎の光体・フェリー』
種族・不明
年齢・不明
身長・掌サイズ
体重・とても軽い
好きな事・不明
嫌いな事・不明
誰かの一言コメント・いや…うん。分からないことばっかりで言えることが、無い。強いて言えば彼、あるいは彼女は色鮮やかで物理的にとても眩しいと言うこと位か。