普通に一つだけ購入して店を出たロレーナは歩きながらカンテラにさっと結界魔法を施し謎の光ことフェリーを中に押し込み違和感が無いことを改めて確認してからカンテラ片手に必要な分の食料を調達して足早に町を出た。魔女である彼女はそれらしく箒に乗って目的地まで人っ飛び…なんて事はなく、移動方法は徒歩である。
彼女は空が飛べないタイプの魔女なのである。
それでもこれと言って問題も起こる事が無かったのでそれなりに進む事が出来たなと日が沈みすっかり暗くなった平野で自身の張った結界の中、煙草を加え焚き火をつつきながら思い。ふと視線を地面に置かれている鞄の脇に置かれているカンテラの中で相変わらずピカピカと輝いている『フェリー』へと向ける。
「で、それの中の居心地どんな感じ?」
「凄く良いですよ!」
「それは良かった、なにか違和感感じたら直ぐに言ってよね? こう、急に居心地が悪くなったとか自分が爆発しそうとかそういうの」
「分かりました!…爆発? 僕って爆発するんですか?」
「え、なにその反応。あ、いや待ったそういえば記憶喪失…あー、ちょっと答えてほしいのだけど貴方、『魔法』についてどれくらい知ってる?」
「魔法ですか? えーっと……ん?」
「あぁ、その反応で分かったわうん。やっぱり知らなかったのね。通りで爆発って言われて困惑するわけだわ」
成程と呟き、軽く腕を組みながら煙草を揺らし少し考える。雑にでも魔法とは何なのか説明しておかないと後々大惨事を引き起こす原因になりかねないし今のうちにあれこれ済ませておいた方が良いかな、と。
人に教えるのは得意じゃないんだけどなーなんて思いながら口を開く。
「魔法がなんなのかって言えば…そうねぇ『魔力と言うエネルギーを消費して様々な現象を発生させる事』って所かな」
こんな感じと鞄からコップを取り出しながらパチンッと指を鳴らすと空中に水の塊が出現しがゆっくりとコップの中へと注がれていく。それを見てわぁー! なんてフェリーから溢れた声を聞きながらぼそっと一言。
「まぁ、正確には色々出来るって言うのは次いで基本的な目的は『魔力を効率良く消費する事』なんだけどね」
「そうなんですか?」
「そうなの。『魔の力』なんて名前が付く位には有害で、本当にどこにでもある物だからそうやって積極的に減らしていかないと耐性の程度によっては体調不良になるし、大変な事になる」
因みに言えば魔法と言う言葉も『魔力を効率良く消費する方法』を凄い雑に略した結果生まれたものだったりする。
「大変な事って、どんなことが起こるんですか?」
「『魔力災害』が起こる」
「まりょ…なんですかそれ?」
「それに関しては魔法についての説明を聞いてからの方が分かりやすいだろうからそっちを先に説明するわね」
言いながら煙草の灰を落としながら答える。
「取り合えず知っておくべき魔法の一番の特徴は、発動の容易さかな」
言いながら再び指鳴らし、魔法を行使し鞄から小さな干し肉と少量の乾燥野菜を浮かび上がらせる。
そのまま指を振る、と魔法が発動し今度は浮かばせていた干し肉と乾燥野菜が見えない刃で細かく切り刻まれコップの中に落ちる。
それからじっとコップを見つめる、と魔法が発生しあっという間にコップの中の水が暖められていく。
最後に鞄から取り出した調味料を加えれば簡易スープの完成である。
「とまぁ、こんな感じにね。発動に必要な魔力量さえあれば切っ掛けは何でも良いのよ。それこそさっきあたしが最後にしたみたいに暖かくなれと思うだけでも発動するし」
「ほぇー、成程。あ、それなら事は僕も魔法が使おうと思えば使えるってことですか?」
「使えるでしょうね」
それが問題なんだけどね、と呟きながらスープを一口。もう少し塩入れた方が良いかななんて思う。
「えっと、僕は使えたら駄目なんですか?」
「貴方が、と言うか貴方みたいに知識も技術もない人が使えちゃう事がね。残念な事に発動の容易さに比べて制御する事やそもそも発動させなかったり止めたりするのにはそれなりに知識と技術が必要になるのよ。まぁそれも難しいと言うほどじゃないけどね」
それでも発動に必要な魔力が存在する事とか言う有って無いような発動条件に比べれば雲泥の差と言うやつだ。本当に嫌になると煙をゆるりと揺らす。
「…で、よ。そう言った人たちが起こした魔法は、止まらないのよ」
「止まらない、と困るんですか?」
「そりゃ困るでしょ。さっきあたしが使った…そうね、水の魔法があるでしょう? あれがずっと発動し続けたら周辺がびしょびしょになって大変でしょう?」
「たしかに、それは凄い大変です!」
大変どころではない、と言いたいところだがそう言った知識や技術の無い所謂、素人と呼ぶべき誰かしらが引き起こす暴発、暴走は素人であるが故にまだ対処が容易な方なので、暴発したのが余程面倒な類いの魔法だったり無駄に才能に溢れてたりしない限りはまだ大変の一言で済ませる事が……まぁ、そこそこ出来るだろう。
「まぁ取り合えず魔法って言うものは凄く簡単に発動しちゃうから気を付けましょうって事。あぁ、それとさっき言った『魔力災害』っていうのは魔法暴発の規模がでかくて手に負えない版みたいな感じ思っておけば大丈夫よ」
「成程、分かりました!」
「で、よ。重要な事として魔法が暴発しそうになると、こう爆発しそうって感じの感覚があるのよ」
「ほえー…あ、さっき言ってた爆発ってその事ですね!?」
「そ、だからそうなったら教えてって言ったわけよ。放置しても録でもない事になるだけだから」
分かった? と問い掛ければ、はい! と元気良く返されて。
「でも、爆発ですか…どんな感じなんだろう」
「本当にそうとしか言い様の無いわよ? まぁ、こればっかりは実際に経験しないとしっくり来ない事ね…まぁ、すぐにでも分かるでしょうけど」
「そうなんですか、うーん、んー?…やっぱり分かりませんよ?」
「え、本当に? うわ珍しい」
「はい? どう言うことですか?」
「いや魔法についての説明を聞いた直後に大体の人が魔法を暴発させるから珍しいなと」
知らず意識しなかった故に起こる失敗があるように知っていて意識しすぎてしまったゆ故の失敗と言うやつである。勿論、全員が絶対にそうなると言うわけではないがそうなるわけではないのだが彼女が言うようにかなり珍しいことだったりする。それにしたってそもそも原因が魔力不足による不発であると判明している。
しかし、今回のフェリーはどうして暴発しなかったのか理由がさっぱり分からないのである。たしかに周辺の魔力は暴発した際の被害軽減の為に予め減らしては置いたが、被害が悪化しない程度で別に不発になるほど量が少なくはない…筈なのだがと、ロレーナも困ったように首を傾げるしかなくて。
「…本当に、貴方なんなの?」
「いやだから僕も分からないんですって」
結局、良く分からないことが増えただけだったのでしたと。彼女はため息を溢した。