宇宙戦艦ヤマト 2199-Ⅱ  ガトランティス戦役 断章   作:◆QgkJwfXtqk

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 無限に広がる大宇宙。

 その星屑の海、その片隅に漂う遊星の群れに紛れる小さな光の集まり、それは19隻の戦闘艦艇だった。

 選抜襲撃隊(アサルトユニット)

 それは2209-ガミュロン演習部隊から名を改めたガミュロン星系特設防衛部隊において、数の上では最も大規模な部隊であった。

 地球連邦のド・グラース型駆逐艦とガミラスのクリピテラ級二等航宙装甲艦(ミサイル駆逐艦)の群れ。

 否、駆逐艦だけでは無い。

 地球連邦の大型戦闘艦であるソウリュウ ―― ヒリュウ型戦闘空母*1が含まれていた。

 求められている役割は肉薄宙雷戦。

 戦艦が集められている打撃戦力群(ストライクグループ)がガトランティス艦隊を正面から抑え込んでいる内に突撃し、一気に艦隊を壊乱させる事だ。

 ガトランティス軍は個々の戦意や戦闘技能は侮れないが、その帝国の成立に由来する組織力の弱さ ―― 皇帝ズォーダ―のずば抜けたカリスマによって束ねられた諸民族の集合体である為、同じ部隊であっても別部族の艦との連携は弱いのだ。

 そして、ズォーダ―に称賛されんが為、名誉を得ようと独断専行をする癖を持っているのだ。

 艦隊指揮官には、その様な将兵(名誉乞食)を纏める事が求められている。

 だからこそ、艦隊指揮官を討ちさえすればガトランティス艦隊は後退する所があった。

 

 選抜襲撃隊の目的はガトランティス艦隊旗艦、首脳陣の抹殺(首狩り作戦)であった。

 指揮系統を破壊し、襲来したガトランティスの艦隊を一時撤退に追い込み、ガミュロン星系からの民間人の撤退時間を稼ごうと言うのだ。

 

 

 

 被発見利率を下げる為、電波は勿論ながら主機を落として熱紋まで絞っている選抜襲撃隊。

 熱管理の問題から空調さえ止められていた。

 凍える様な宇宙を、熱い闘志によって耐える地球連邦とガミラスの将兵。

 耐える、と言う時間。

 静まり返っているド・グラース型駆逐艦スズカの艦橋(ブリッジ)、その空気を陽性な声が壊す。

 

「こういう時は珈琲の1つでも頂きたいですな!」

 

 言うまでも無く、柿崎拓真少佐だ。

 その呑気な響きに好意的な笑いが漏れた。

 正に天性(ムードメーカー)と言えるだろう。

 古代進も相好を崩して応じる。

 

「ココアじゃなくて良いのか?」

 

「はっはっはっ、そいつは買い置きが切れそうなので戦勝後の乾杯用しときたいですからな!」

 

「そうなのか? なら珈琲で我慢だな」

 

 艦長兼戦隊指揮官と参謀長が呵呵大笑と言う塩梅であるのだ、まだ若いブリッジクルー達は顔を見合わせ、そして頷き合っていた。

 勝つ気である。

 そう見る者に信じさせる態度であった。

 尤も、ベテランの乗組員は、艦長も参謀長も大変だと小さく口元を緩めてはいたが。

 

 兎も角。

 気分の入れ替えにと、気の効く下士官が珈琲の準備に取り掛かろうとしたその時、通信長が声を張り上げた。

 

「艦長! 主隊(打撃戦力群)が交戦を開始しました」

 

 

 

 

 

 カワチ型戦艦*2とガイエス級二等航宙戦艦を中心とした打撃戦力群が来襲するガトランティス艦隊と火力の応酬を開始したのは42,000宇宙(コスモ)Kmの事であった。

 主砲によるモノではない。

 艦首に設けられた軸線砲 ―― 100cm陽電子衝撃砲による長距離砲戦だ。

 対するガトランティス側は、此方も超長距離砲撃戦向けの火炎直撃砲を搭載したメダルーサ級殲滅型重戦艦を前に出して応戦してくる。

 だが、直撃を受ける艦は居なかった。

 圧倒的とも呼べる破壊力、そして命中精度をもって戦場に君臨した火焔直撃砲であったが、登場して10年が経過した今、最早その栄光は消え失せていた。

 発砲時の探知と回避プログラムの普及、そして何より、物資転送システムへのジャミング技術が開発された事が、火焔直撃砲を無力化していたのだ。

 無論、機動要塞や惑星その他の固定目標に対しては未だ絶大な破壊力を有しており、廃れる事は無かったが。

 

 兎も角。

 火焔直撃砲が有効打足りえない事を確認したガトランティス側は全長400m近い大型戦艦、アンデス級重戦列戦艦を前に出して応戦を開始する。

 射程の差もあり、急速な勢いで距離を詰めようとするガトランティス。

 カワチ型戦艦の持つ100cm軸線砲はラスコー級突撃型巡洋艦は勿論、アンデス級重戦列戦艦ですらも当たり所次第では1撃で撃沈させていく。

 だが戦意旺盛なガトランティスの進軍に怯みは無かった。

 距離が35,000宇宙(コスモ)㎞を切って詰まって来れば、今度はガトランティスが反撃を開始する。

 アンデス級重戦列戦艦は、艦橋に荷電粒子衝撃砲と言う大威力砲を搭載しており、その発砲を開始したのだ。

 荷電粒子衝撃砲は射程こそ短いものの大威力であり、ガイエス級二等航宙戦艦は勿論としてカワチ型戦艦にも痛打を与え、戦列から脱落する艦を生み出させていた。

 波動防壁やゲシュタム・フィールド*3を貫く大威力。

 だが地球とガミラスもまた、怯まない。

 防御力(装甲と防護フィールド)を信じ、進路を固定し主砲叩きつけ合う様は、正に戦艦の闘いであった。

 

 

 ガミュロン星系特設防衛部隊の総指揮官にして打撃戦力群の指揮官も兼ねているゲム・ガンツは、相互の火砲による彩に顔を染めながらガイエス級二等航宙戦艦ハーケンのブリッジで仁王立ちをしている。

 少しだけ表情は面白く無さげだ。

 さもありなん。

 カワチ型戦艦とアンデス級重戦列戦艦の大口径長射程砲の打ち合いに、ガイエス級二等航宙戦艦は一切、関われないからであった。

 

「この状況、我がガミラスも大口径軸線砲が欲しいものだな」

 

 運用方針の違いから、ガミラスは大口径軸線砲を重視していなかった。

 機動戦を志向している為、有効な射撃を行うには進路が固定されてしまう軸線砲が嫌われていると言うのがあった。

 実際、ガンツも又、機動戦の信徒ではあるのだが、この一方的に打たれると言う状況では()()()()()()()()()と思うのも当然であった。

 遠距離戦に対応する火力を持たないハーケンを含むガイエス級二等航宙戦艦群であったが、その位置は地球戦艦群に隠れてはいない。

 戦艦の持つ防御力を持って、艦隊後方の中小の艦艇を守ると言うのがある。

 だがそれ以上に、援軍たる地球艦隊をガトランティスの矢面に立てて、自分たちは守られるというのはガミラスの将兵(男子)として受け入れられないからであった。

 ゲシュタム・フィールドもあるのだ。

 であれば、地球の戦艦群に隠れるなど受け入れられない。

 そういう話であった。

 尚、その矜持の対価として2隻のガイデロール級二等航宙戦艦が脱落していた。

 だがそれでも尚、ガンツや他のガミラス将兵の顔に怯懦の色は無い。

 特に軍歴を重ねていた古参兵は平然としたものであった。

 

「足が止まりますな」

 

 合いの手を入れて来る参謀長。

 益々もって面白くないと言う顔をするガンツ。

 

「足を止めずに使える軸線砲の開発、技術局には願いたいものだな」

 

「ザー・ベルク。それは中々の要求ですな」

 

 ガンツの稚気めいたモノに、参謀長のみならずハーケンのブリッジ要員は好意的な笑いを浮かべるのだった。

 

「相対距離、35,000宇宙(コスモ)㎞!!」

 

 報告が上がる。

 と、ハーケンのブリッジの直ぐ傍らを、ガトランティスの荷電粒子衝撃砲の光芒が駆け抜け、衝撃が襲ってくる。

 誰かが悲鳴を上げている。

 だが、指揮官としての面子から、表情を揺るがす事無くガンツは報告者 ―― 航海長に確認する。

 

「予定位置かね?」

 

「誤差はありますが、範囲内です!」

 

 ガンツ程に演技が上手いとは言えない航海長が、やや引き攣った声で報告を叫ぶ。

 

「結構。状況が我らの統制下にあるというのは実に喜ばしいな。参謀長?」

 

「はっ、作戦を第二段階へと進めるべきかと」

 

 

 

 

 

 ガミュロン星系に侵攻して来ていたガトランティス帝国軍 ―― 帝星ガトランティス・グガム(天の川銀河)方面第353偵察軍の都督(提督)であるゴルオル・ゲイムは戦況にそれなりの満足を覚えていた。

 やや太めな凶貌に愉悦を浮かべている。

 

「ここの青虫(ガミラスへの蔑称)ども、覇気が無い」

 

 戦況が思う通りに進んでいるのだ。

 自軍は量と質ともに優れており、であるが故に奇策の類は必要では無く正面から殴り飛ばせば(平押しをすれば)勝つと見て、その通りに進んでいるのだ。

 指揮官として愉悦以外の何を感じれば良いのかと言う話である。

 

「我らの軍勢を見て怯えておるのでしょうな」

 

「勇者を見た生娘の様に、ですな」

 

「がははははははっ」

 

「その期待に応えてやろうではありませんか。ですが余り時間を掛けてしまえば__ 」

 

「あの星を蹂躙し、奪う楽しみが減る。そういう事だな?」

 

「然り!!」

 

 ゴルオルのみならず、このアンデス級重戦列戦艦イリマニの艦橋に居る者どもは誰もが勝利に、勝利後の略奪を思い描いていた。

 ガミュロン星系への侵攻は、部隊名通りに偵察 ―― 戦を好む大帝ズォーダーの命によってガルマン・ガミラス帝国やボラー連邦、その他の群雄割拠となっている天の川銀河を遊び場と(侵略)する為の情報を収集する事が任務であった。

 故に、星系への侵攻などの本格的戦闘は本来は任務に含まれていない。

 だが血の気の多いガトランティス人らしい癖が、偵察によって防備の薄いガミュロン星系を発見した事で出てしまったのだ。

 要するには、気晴らしであった。

 それなりに繁栄している、防備が薄い惑星があったのだ。

 であれば侵略するのはガトランティス人として当然の義務である。

 誠に、ガミュロン星系に入植したガミラス人、地球人や交易に来ていた諸星系の人々にとって迷惑極まり無い話であった。

 

「女狐の腰巾着の言うテロンも、そう脅威では無いな」

 

 それは、第353偵察軍に丞相府から派遣されてきた寄騎(情報官僚)が侵略前に報告していた事だった。

 ガミュロン星系で使用されている電波に、テロン(地球連邦軍)の軍艦のモノが含まれているとの事だった。

 だがゴルオンは重視していなかった。

 

「所詮、貧弱なガミラスと戦って引き分けた様な連中よ。我らの、大帝の敵ではないわ」

 

「然り!」

 

「然り!」

 

 唱和する声。

 と、誰かが声を上げた。

 

「敵が逃げますぞ!!」

 

「なにぃ!?」

 

 見れば、第353偵察軍に正面から殴り掛かって来ていた小癪なる敵軍(打撃戦力群)は進路を変えようとしていた。

 隊伍を崩す事無く、陣形を維持したままに進路を変える。

 それは決して()()と言う言葉で表現できるモノではない。

 だが、欲気に炙られたゴルオンとその幕僚たちに見抜く事は出来なかった。

 

「逃がすな!! 奴らを血祭りにあげろ!!!」

 

 ズォーダ―から賜った都督の身を示す指揮剣を抜剣してゴルオンが吼えた。

 

 

 

 逃げると言われた打撃戦力群であったが、勿論、その積りは一切無かった。

 只、舳先を変え反航戦の形からT字戦法へと移行させていくだけであった。

 大きく側面を見せる形となるし、軸線砲が使用不能ともなるが問題は無かった。

 100cm軸線砲は大威力であるが威力相応のデメリット ―― 連続射撃を行うには冷却とエネルギー管理の(消費エネルギーが莫大過ぎると言う)問題を持っている為、30分を超えての連続射撃は不可能であったからだ。

 

 射撃する事無く、転舵にエネルギーを回して素早く回頭を行っていく打撃戦力群の艦艇。

 流石に船腹を無防備に晒してとなると厳しいガイデロール級二等航宙戦艦が数的主力のガミラス軍も、地球側の中小の艦艇と同様にカワチ側の影に隠れる事となる。

 

 カワチ型戦艦ライオンの艦橋、ではなく船体中央部の戦闘指揮所(CIC)に席を置いているブ・ウランフは精悍な顔に少しだけの笑みを浮かべていた。

 

「漸く、カワチ型の全力発揮かな?」

 

「お任せください。統制射撃、大砲屋の本懐をお見せしますよ」

 

 野趣あふれる顔を見せているのは、ライオンの副長を兼ねた戦術長である南部康雄一尉であった。

 手元の制御盤で、ライオン指揮下の艦艇群に射撃の諸元を送り、配置を命令していく。

 被弾などで揺れはするが、それを無視して作業を進める南部。

 ヤマトに乗り組み、それ以降も戦歴を重ねてきているベテラン(熟練の宇宙戦士)らしい態度であった。

 とは言え、被弾はそう多くない。

 船腹を見せている事で受ける攻撃のし烈さが増すと思われていたが、ガトランティス軍は()()()()()()()()()()()()、火力密度が低下してしまっていた。

 こちら(地球/ガミラス)側の反撃を恐れ、散兵させたのかと思いつつ、無駄だとばかりに射撃の目標配置を修正していく南部。

 ライオン、カワチ側の射撃統制システムは基本的に数的劣勢を射撃密度と精度で補う為に開発されたモノであり、その対価として量産性は低下していたが、その性能は天の川銀河(ミルキーウェイ・ギャラクシー)でも指折りであった。

 その真価が今、発揮される。

 

「期待しているぞ」

 

 と、ライオンの航海長が声を上げる。

 

「全艦転舵確認」

 

「確認よし」

 

「リンク正常、照準よし!」

 

「提督?」

 

「始めて宜しい」

 

「主砲、打ち方始め!!」

 

「打ち方始め!!」

 

 

 

 

 ライオンによって統制された打撃戦力群の発砲。

 ガトランティス軍の応射。

 陽電子衝撃砲(カワチ型戦艦艦載砲)陽電子ビーム砲(ガイエス級二等航宙戦艦艦載砲)、そして荷電粒子砲(アンデス級重戦列戦艦艦載砲)によって宇宙が沸騰しそうな程に熱くなっていく。

 戦艦同士が雌雄を決する一大会戦。

 

 ガトランティス人は誰もが火力の応酬に酔いしれていた。

 ガミラスやテロンの戦艦はしぶとく今はまだ互角の状況であるが、何時かは数で圧しきれると判断していたからだ。

 だがその甘い見積もりは、ガミュロン星系特設防衛部隊の本命たる選抜襲撃隊の襲来までの事であった。

 

 選抜襲撃隊のガミラス側旗艦であるケルカピア級二等航宙装甲艦カルピアス。

 そのブリッジで軟式艦内宇宙服を着込んだフォムト・バーガーは隻眼を閉じて静かに待っていた。

 

「しかし、テロンの船を先に行かせるのは気に入らんな」

 

 さもありなん。

 選抜襲撃隊の前衛に位置するのはヒリュウ型戦闘空母ソウリュウであったからだ。

 

「防御力に於いて我らよりも上ですから」

 

「だから気に入らんのだ」

 

 選抜襲撃隊の前衛に位置すると言う事は、突入時に際して最も応射を受けると言う事。

 即ち、ガトランティスの攻撃を吸収する役目であるのだ。

 無傷で戦いを切り抜けるのが難しいと言うのは当然にしても、高い確率で撃沈される恐れがあった。

 だから、バーガーは気に入らないのであった。

 

 ガミュロン星系に入植しているのは、主にガミラス人である。

 テロン(地球)人も入植はしているが数は少なく、ガミラス人相手の交易が主の商人たちであったからだ。

 主権はガミラス人にあると言っても良い。

 にも拘らず、最も危険な場所をテロン(地球)人が担うと言うのだ。

 バーガーの思うガミラスの男がする事では無かった。

 若さの残るバーガーの物言いに、先達らしい態度で諫めるアイナス・ベイガー。

 

「ならば、彼らが望む我らの槍働きを見せつければ良いでは無いですか」

 

「そうだ。そうだよ。そうなんだが、そんなに割り切れるかよ」

 

 ガミラス人としての矜持、軍人としての意識。

 そう言うモノが綯交ぜとなったバーガーの元へ、その全てを吹き飛ばす命令が到着する。

 

「ソウリュウより発行信号、青、青、青! 作戦開始です」

 

 青色信号が3つ。

 事前に取り決めてあった作戦通りと言う事であった。

 である以上、何も考える事は無い。

 バーガーの頭から敵との交戦以外の全てが消え去った。

 

「全艦全速! テロン人に遅れるな!!」

 

 吠える。

 

 

「両舷全速!! 一気に懐へと飛び込むぞ!!」

 

 普段の、どちらかと言えば柔らかな表情の多い古代進が、この時ばかりは強い貌を浮かべて命令を飛ばす。

 彼我兵力差10倍近い相手への狂気の突撃が始まる。

 

 

 

 

 

 

*1

 ヒリュウ型戦闘空母は地球連邦軍(UNITED NATIONS COSMO FORCE)が、ガミラス戦役終結後の防衛力の再建に際して整備に着手した2番目の航宙機運用母艦であった。

 元より、航宙機の開発能力に於いてはガミラスに劣る所の無く、それ所か対艦攻撃能力すらも十分に有している汎用機たる99式空間戦闘攻撃機(コスモファルコン)が手元にあるのだ。

 壊滅した航宙戦力の柱として航宙機及び航宙母艦の整備を選ぶのも、艦艇乗員の不足に悩まされている地球連邦軍(UNITED NATIONS COSMO FORCE)にとっては当然の選択肢であった。

 だが、この時点で地球連邦軍(UNITED NATIONS COSMO FORCE)にとって航宙機の運用経験は地球での極地防衛戦と戦艦ヤマトによるマゼラン長征(イスカンダル・マーチ)のみであった。

 だからこそ気付けなかったのだ。

 地球連邦軍(UNITED NATIONS COSMO FORCE)が望んだのは、かつての水上艦艇に於ける航空機と空母的なものであったが、宇宙空間に於いてソレが再現される事は無いと言う事を。

 航宙機が活躍したのは極地で守勢的に運用する際、乃至は運用母艦(ヤマト)と共に突撃した際であった。

 宇宙では大型である方が主機も推進剤も大きなモノを積む事が出来る。

 限度があるにしても大きい方がより長く加速し、或いは機動する事が出来るのだ。

 水上艦艇 ―― 気圏内に於ける航空機と空母の様な関係性とは異なり、航宙機と航宙母艦/航宙艦艇の違いはサイズの大小でしかないのだ。

 その事に地球連邦軍(UNITED NATIONS COSMO FORCE)が気付いたのは、最初の航宙機母艦ラングレー型が就役後に行われた木星圏での大規模対抗演習の結果だった。

 木星-2202事件とも言われる、航宙機閥(エアフリート・マフィア)にとっての大惨事であった。

 

 大規模対抗演習時、ラングレー型航宙母艦による空母戦隊は航宙機(コスモファルコン)を発艦させた後、後方に下がって安全を確保する予定であった。

 だが、対抗部隊側の指揮官は駆逐艦を遮二無二吶喊させ、此れを殲滅してしまったのだ。

 併せて、航宙機攻撃部隊に対しては主隊は後退させて距離を取り、その稼働時間を削り切って無力化させてしまった。

 一大事件ともなった。

 これは1つには戦力再建を急いだ地球連邦軍(UNITED NATIONS COSMO FORCE)が、戦訓の研究と検討とを重ねる事無く安易にラングレー型航宙母艦の整備を決定し、設計を進め、建造した事が原因であった。

 尚、ラングレー型の設計検討会には、ヤマトで深宇宙に於ける航宙機運用実績を持っていた古代進三佐と加藤三郎一尉も出席し、その経験 ―― 大航宙戦でもあった七色星団会戦の詳細を報告していたが、顧みられる事は無かった。

 

 結果、この木星-2202事件を精査検討した結果、ラングレー型の整備計画は当初予定の32隻から大幅に削られ13隻で打ち切られ、改めてヤマトの戦訓を基に設計しなおしたヒリュウ型戦闘空母が建造される事となったのだ。

 航宙機を最前線まで運び、その後は航宙機と共に相手艦隊に殴り込み、撃破すると言う極めて攻撃性に溢れた航宙戦闘教義(ヤマト・ドクトリン)の申し子となるのだった。

 ヒリュウ型戦闘空母は露天係留を含めれば80余機にも達する航宙機運用能力を付与する関係から全長が330mを優に超える巨艦として生み出される事となった。

 又、火力も敵中への突入を前提として強力なモノが与えられていた。

 30cm3連装陽電子衝撃砲を4基搭載と言うのはド・グラース型駆逐艦やタカオ型巡航艦をも超えているが、最も恐るべきなのは艦隊の前衛として突入する為に巨大な船体の随所に配置された軸線砲 ―― 20門にも達する100cm陽電子衝撃砲であると言えるだろう。

 主機のエネルギー生産と管理の問題から、カワチ型戦艦に比べれば継続的な運用は難しい(1会戦で3斉射が上限とされている)が、敵部隊突入時の破砕攻撃として見れば必要十分であると判断されていた。

 

 弱点としては、その高性能故に整備コストが余りにも高騰しており、カワチ型戦艦よりも高額になってしまい、整備計画に乱れが出ていると言う事だろう。

 尚、ガミラス軍のバラン星会戦経験者は、ヒリュウ型戦闘空母の登場を見て、その整備予定数を見て少しだけ、地球(テロン)人の戦意におぞ気をふるうのだった。

 

 

 

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*2

 ガミラス戦役に於いて勝利の立役者となったYBB-1 宇宙戦艦ヤマトの実質的な量産モデルとして地球連邦軍(UNITED NATIONS COSMO FORCE)が整備を進めている主力戦艦。

 それがカワチ型戦艦であった。

 ヤマトの運用実績を基に洗練させた装甲と火力配置が行われている。

 又、ガミラス戦役中に行われたヤマトの建造経験を基にして量産されたムサシとシナノ、カイの3姉妹の建造経験(メ2号作戦の成功によって地球への直接的な脅威が減少した事で建造が行われたのだが、波動エンジンの建造に手間取り、ガミラス戦役中での就役は果たせなかった)もあって、量産にも適した戦艦として完成した。

 一般的には準ヤマト型として扱われている。

 これは地球のみならずガミラスでも武名を鳴らすヤマトの名を利用しようと言う政治的な部分もあった。

 ヤマト/ヤマト型との最大の相違点は航宙機の運用能力であった。

 カワチ型の艦載機運用能力は極めて限定されており、艦橋後部に発着艦ポートが設置され人員の移動、そして多目的作業艇の運用が主となっている。

 これは、ヤマト/ヤマト型が探索も主任務の一つとしており、単艦での運用を前提としているのに対し、カワチ型が艦隊に於ける打撃任務艦として運用されるからであった。

 現在、32隻が就役している。

 

 

 

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*3

 テロン戦役で見せつけたヤマトの圧倒的なタフネスを支えた波動防壁、その解明と再現はガミラス軍の技術開発部門にとって最優先課題であった。

 テロン戦役後に友好関係を結んでいるとは言え地球側は、波動技術体系を国家存続の柱であるとしての一切を非公開としていた。

 この為、独自に開発する事となった。

 5年を超える試行錯誤の結果、完成したのがゲシュタム・フィールドである。

 従来の、船体外郭部に防護力を与えるのではなく、波動防壁と同様に船体の外側に防護フィールドを発生させる事によって、船体の艤装などへの被害を抑える事が可能となった為、ガトランティス軍の評価は高い。

 但し、エンジン出力を喰う所がある為、その採用は巡洋艦以上の大型艦に限定される事となった。

 ガイエス級二等航宙戦艦は、ゲシュタム・フィールドを設計段階から組み込んで建造された新しいガミラスの戦艦である。

 ガイエス級二等航宙戦艦は前級であるガイデロール級二等航宙戦艦の基本設計を踏襲しつつ、エンジンを強化した拡大ガイデロール級二等航宙戦艦と呼ぶべき戦艦であった。

 

 

 

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