宇宙戦艦ヤマト 2199-Ⅱ  ガトランティス戦役 断章   作:◆QgkJwfXtqk

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 ガミュロン星系特設防衛部隊隷下の選抜襲撃隊(アサルトユニット)による突撃は、その開始した時点でグガム(天の川)銀河方面第353偵察軍に察知されていた。

 

「天頂方向にエネルギー反応!!」

 

「敵かっ!?」

 

 疑問の声を参謀の誰かが上げた。

 だが、部隊の指揮官(都督)であるゴルオル・ゲイムは声を上げた参謀を殴り飛ばした。

 果断過ぎる癖のあるゴルオルにとって、この状況で仕掛けて来る相手を敵と見なさないのは怯懦であるからだ。

 知恵者ぶり過ぎている、とも言えた。

 

「この時点で誰何(敵味方識別)など不要! 構わん、迎撃を行え!!」

 

「み、味方の可能性も__ 」

 

 殴られた参謀が、殴られた頬を抑えながら反論する。

 献身。

 だがその顔を一顧だにする事無くゴルオルは吠えた。

 

「左直衛隊に繋げ!」

 

「はっ!!」

 

 旗艦イリマニの護衛にあたっている左直衛隊 ―― サハマ級高速駆逐艦部隊の指揮官を呼び出す。

 14隻からなる大規模な護衛戦隊の指揮官は、呼び出された理由を承知しているのだろう。

 傷だらけの強面を、更に強い表情へと変えて笑っていた。

 

「我らの仕事ですかな都督!」

 

「そうだ! このゴルオルの、大帝の艦隊に戦いを挑む愚を教えてやれ!!」

 

「承知!!!」

 

 打てば響く。

 旗艦部隊の護衛任務を任される程にゴルオルとの付き合いが長く、そしてその信用を受けていた指揮官は、即座に動き出す。

 迎撃。

 14隻の駆逐艦で、19隻から成る選抜襲撃隊(アサルトユニット)への逆襲は無茶めいた部分があったが、左直衛部隊の指揮官には勝算があった。

 イリマリの周りにはアンデス級重戦列戦艦の他にも20隻を超えるワスカラン級戦列艦(戦艦)が揃っており、その火力支援が受けられるからであった。

 戦艦の大口径荷電粒子砲で散々に隊列を崩して近接戦/乱戦に持ち込めば、伝統的に砲塔の多いガトランティス艦艇に勝てるフネは無い。

 そう自負をしていたのだ。

 

 実際、戦闘はその様に推移した。

 イリマリ周辺の大型艦、その約半分が選抜襲撃隊(アサルトユニット)への砲撃を開始したのだ。

 主砲こそは、眼前に迫るガミュロン星系特設防衛部隊の表の主力たる打撃戦力群(ストライクグループ)に向けられていたが、それ以外の副砲類は全力で火砲を火箭を放っていた。

 豪雨の如き、光の柱の群れ。

 だが、その暴力は放つモノたちの期待通りの力を発揮出来なかった。

 

「ばかな!?」

 

 

 

 

 

 突撃する選抜襲撃隊(アサルトユニット)

 その先頭に位置するヒリュウ型戦闘空母ソウリュウのブリッジはある種の異様な興奮状態が支配していた。

 彼我兵力差10倍な相手に正面切って殴りこむのだ。

 ある意味で当然の話であった。

 

「はははっ、噂に聞くバラン会戦のヤマトの気分だな」

 

 ヤマトによるマゼラン長征(イスカンダル・マーチ)の戦闘記録を見ていた艦長は、いっそ朗らかさすら漂わせて笑う。

 装甲シャッターの降ろされ赤暗い戦闘灯が灯されたブリッジが、五月雨の如く叩き込まれてくる荷電粒子砲による光芒によって不規則に明るくなる。

 否、光だけではない。

 被弾による振動が断続的に続いていた。

 だが、そんな中にあって艦長の表情に怯懦の色は無かった。

 

「どうせなら()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 副長が合いの手を入れる。

 共に10年前のガミラス戦争時代以前からの軍歴を持った軍人であり、そうであるが故にガミラスに含む部分はあった。

 だが、勿論ながらもジョークである。

 感情と民主主義国家の軍隊としての良識とを分けていられる、良く訓練された士官であるからだ。

 でなければ、最精鋭と言ってよいヒリュウ型戦闘空母の指揮官に選ばれる筈も無かった。

 他のブリッジクルーは、上官たちによるタチの悪いジョークに苦笑を浮かべていた。

 

「ハハハハハッ!」

 

 艦長も又、快活に笑う。

 状況は楽観できるモノでは無い、だがブリッジクルーの士気は決して曇って居なかった。

 

「だが今の仕事はっ__ 」

 

 そこまで言った瞬間、ソウリュウは派手に揺れた。

 人工重力、慣性制御システムの限界を超えた激震であった。

 合成された警報音(アラート)が鳴り響く。

 

ダメージリポート(被害報告)!!」

 

 座席から吹き飛ばされぬ様にひじ掛けを咄嗟に掴んだ艦長が吠える。

 打てば響くとばかりに、先任戦術情報士(FITO)が報告を叫ぶ。

 但しソレは、最悪に類される報告であった。

 

「推進機、被弾! 姿勢制御、維持できません!? 進路が乱れます」

 

 ソウリュウの艦後部の被害、度重なる被弾によって波動防壁が限界を迎えた(飽和した)のだ。

 先任戦術情報士(FITO)の前にあるディスプレイ、手早く被害詳細表示に替えられたソレが艦後部から一気に赤色と黄色(機能の喪失乃至は低下の表示)に染められていく。

 その中に艦の姿勢を維持するのに必要な、艦後部のスラスター群が含まれていた。

 ソウリュウが揺れだす、

 被弾に際する衝撃を中和しきれなくなったのだ。

 

「加速度、低下します!!」

 

応急(ダメージコントロール)班__ 」

 

 怒号の飛び交うブリッジにあって、艦長は1人静かであった。

 

「被弾はどっちだ?」

 

「はっ?」

 

 先任戦術情報士(FITO)がキョトンとした声を出す。

 だが付き合いの長い副長は、委細承知とばかりに応える。

 

「強いて言えば、左舷ですかね」

 

「結構。操舵、取り舵一杯、後は自由にしてよし。右舷を敵に向けるのを忘れるな。それから先任戦術情報士(FITO)、信号弾だ。色は__ 」

 

 

 

「ソウリュウ、転舵います!? あ、発行信号、青・赤・黄色!!」

 

「見えてるよ!!」

 

 目の前に見ている、当たり前すぎる報告に咄嗟に漏らしてしまうフォルト・バーガー。

 ソウリュウの上げた3色の信号弾。

 事前に取り決められた意味は2つ。

 〈ワレ任務続行困難〉、そして〈次席指揮官指揮ヲ執レ〉であった。

 速度こそが重要な強襲(首狩り)作戦に於いて、足の鈍ったフネは足手まといになる。

 そう言う話であった。

 

「信号弾、青・青・赤。両舷全速だっ!!」

 

 無論、その意味は1つ。

 〈ワレ此レヨリ指揮ヲ執ル〉であった。

 選抜襲撃隊(アサルトユニット)の全てがバーガーの采配に掛かる事となる。

 緊張感がケルカピア級二等航宙装甲艦カルピアスのブリッジに充満する。

 先ほどまでと何かが変わる訳ではないのだが、部隊の最前線で敵の槍衾に突入すると言う事は緊張感の段が違うというものであった。

 と、アイナス・ベイガーが感に堪えぬとばかりに声を漏らす。

 

「やりおる」

 

 それはソウリュウであった。

 被弾し、加速の鈍り選抜襲撃隊(アサルトユニット)から離れたソウリュウであったが、任意方向への離脱航路を取る事無く敵旗艦への突入軌道に近い航路を取りつつ、無事な右舷を敵艦隊に晒しながら主砲や対空砲をしきりに撃ちあげている。

 囮の役割を、被害吸収担当としての任を全うしようとしているのだ。

 

「クソッタレめ。これだからテロン人は手に負えねぇんだよ」

 

 嚙み締めた歯の隙間から言葉を押し出すように言うバーガー。

 だが、その献身が無駄にはならなかった。

 バーガーのカルピアスに迫る荷電粒子砲の光条は明らかに減少していたのだから。

 

「敵艦迄の距離!!」

 

「約1万2千宇宙(コスモ)Kmです! 射程に入ります!!」

 

 ケルカピア級二等航宙装甲艦が持つ必殺の中距離対艦ミサイルが発射可能になったと言う報告。

 併せて戦術長も吠える。

 

「敵艦、照準に捉えました!!」

 

 撃てと希う色を帯びた声。

 既にカルピアスも複数の至近弾を浴びており、装甲の何処其処も焦げていた。

 いつまでも健在であるかは判らぬ状況。

 だが、バーガーは耐えろと叫んだ。

 

「まだ、まだだ。1万まで行くぞ!」

 

 有効射程距離限界ではなく、必中が期待できる所まで征くというのだ。

 2000宇宙(コスモ)kmを駆け抜けるのに必要な時間は約15分。

 この状況下では永劫とも感じられる時間であった。

 凍り付いたブリッジの空気。

 そんな中、バーガー以外で笑っていたのは女房役であるベイガ―であった。

 

「手荒いですナァ!」

 

「仕方ねぇだろ? テロン艦が、それも宙雷駆逐艦じゃねぇ空母モドキが気合を見せているってのに、イモっちまうのはガミラスの男がするこっちゃネェからな」

 

「確かに! そうなると仕方ありませんな」

 

 煉獄めいた状況で尚も百戦錬磨、歴戦(ベテラン)らしい態度を見せる2人に凍り付いたブリッジの空気が解けかかる。

 だが、勇猛果敢はガミラスの専売特許では無いのだ。

 

「ガトランティス駆逐艦部隊、前に出てきます!」

 

 指呼の距離まで突進してきた選抜襲撃隊(アサルトユニット)に、ガトランティスの駆逐艦部隊 ―― グガム(天の川)銀河方面第353偵察軍左直衛隊も又、舳先をぶつける勢いで突進してきたのだ。

 

「やるじゃねぇか」

 

 味方の砲火の下、誤射を恐れる事無く突進してくる左直衛隊。

 その様を称賛するバーガー。

 

「だが、ウチにはケツ持ちが居るんでな」

 

 その言葉を待っていたかのように、爆散していく左直衛隊のガトランティス駆逐艦群。

 バーガーの駆逐艦部隊の後続している古代守の駆逐艦部隊による支援射撃だ。

 

 

 

「バーガーめ、突っ込み過ぎだ」

 

 指揮下の艦艇に矢継ぎ早に命令を出しつつ愚痴る古代守。

 加速にエネルギーを回す為、それまで射撃命令を出していなかったド・グラース型駆逐艦の主砲 ―― 30cm3連装陽電子衝撃砲の発砲命令だ。

 旗艦であるスズカが射撃対象を割り振り、低エネルギー充填での射撃だ。

 それだけで選抜襲撃隊(アサルトユニット)に立ちふさがった左直衛隊の駆逐艦たちはたちどころに熔けていく。

 200m級の船体に搭載できる戦艦並みの主機、コンパクト高出力な波動エンジンに支えられた地球艦艇の持つ陽電子衝撃砲は、事、対艦射撃と言う面では銀河列強で最強の地位を維持し続けているのだ。

 

「見事ですな、ガミラスの宙雷戦術」

 

「食らうと厄介だったよ」

 

 柿崎拓真の言葉に、少しだけ過去を思い出す目をする古代。

 かつて乗艦したヤマトの、マゼラン長征(イスカンダル・マーチ)の際に撃沈寸前にまで追い詰められたカレル163の戦いを思い出していたのだ。

 とは言え、その指揮に乱れは無かった。

 四散爆散するガトランティス駆逐艦群の脇を、矢の如く駆け抜けていくガミラス艦艇群の直ぐ後ろを、古代の地球艦艇群もその動きに追随していたのだから。

 左直衛隊の艦艇を撃ち払う為、射線を得るために散開したド・グラース型駆逐艦が古代の指揮 ―― 発光信号(青・黄・黄)を受けるや、滑らかに動いてスズカを先頭とした単縦陣へと戻る。

 猟犬めいた、統制された姿は1級のプロが操る事を示している。

 地球連邦宇宙軍の練度は、壊滅的被害を受けたガミラス戦争時代から立ち直っているのだ。

 勢力圏は小さくとも、天の川銀河(ミルキーウェイ・ギャラクシー)列強の一角を占めるのは伊達では無い。

 そういう話であった。

 

「ガミラス、射撃開始!!」

 

 四方八方へと火箭が伸びていく。

 生まれる火球。

 

「距離は!?」

 

「10000!!」

 

 バーガー指揮下のガミラス宙雷戦隊は、ピッタリ10000宇宙(コスモ)kmで攻撃していた。

 この至近距離であれば、ガトランティス側による電波妨害が効果を発揮する事など出来る筈もないのだ。

 やりおる、と口元を歪めた柿崎。

 古代は帽子のつば先に触れて、声を発する。

 

「照準、敵旗艦及び直衛!」

 

「照準良し!」

 

「出力、最大発砲!」

 

「出力調整良し!」

 

「各艦より、準備良しの返信確認!」

 

 古代の確認に、まるで打楽器の合奏の如く返される返答。

 最後のは戦隊参謀役の柿崎による言葉だ。

 部隊は、本領を発揮する準備を終えたとの確認であった。

 1つ頷いた古代。

 

「打ちぃ方、はじめ!」!

 

 

 一般に戦艦級とも称されるド・グラース型駆逐艦の火砲が全力を発揮した。

 その標的となったアンデス級重戦列戦艦は、波動防壁やゲシュタム・フィールドを持たぬとは言え標準的な装甲は極めて厚く、又、各区画の分離による生存性向上の図られた文字通りの大戦艦である。

 だが、2桁を超えるどころではない30cm3連装陽電子衝撃砲の直撃を受けては、消し飛ぶ以外の結果はありえなかった。

 ゴルオルが何かの反応をする前に、直衛のアンデス級共々にイリマリは宇宙に咲く火球へと姿を変えたのだった。

 そこから先は手酷い乱戦へとなった。

 艦隊中央を戦艦級の敵(ド・グラース級駆逐艦)によって食い散らかされ、正面からは本物の戦艦部隊が迫る。

 又、ガミラスの駆逐艦も暴れまわっている。

 統制を失ったガトランティス側に組織的に戦うという選択肢が無いのも当然という状況だ。

 問題は、余りにも混乱が酷すぎてゴルオルの死後、グガム(天の川銀河)方面第35偵察軍全体に後退命令を出す人物が出ず、三々五々に抗戦しようとする部隊や撤退しようとする部隊、後退しようとする部隊をこの際だとばかりに攻撃しようとする部隊まで出てしまった事だった。

 文字通りの乱戦へと突入したのだ。

 結果として乱戦は、イリマリの轟沈から約1時間ほど続いて終結するのだった。

 

 

 

 

 

 敵味方を問わぬ救助作業が終わったのは、グガム(天の川銀河)方面第35偵察軍の戦域からの撤退から5時間ほど過ぎた頃であった。

 その任に就いていたスズカのブリッジで古代は、上級司令部から救助作業の終了と終結命令を受けていた。

 

「もう、見つかりそうに無いな?」

 

「甲板作業員からも、大きな破片などは見られないとの事です」

 

 先の戦闘で小規模な被害を受けていたスズカはレーダーの類が全損しており、そうであるが故にガトランティス軍の再侵攻を警戒した戦闘警戒配置ではなく、この救助作業を行っていたのだ。

 

「作業員は全員を艦内に収容させ、特別休養を許可しておいてくれ」

 

 レーダーが全損状態である為、捜索と救助作業には硬式宇宙服を着た甲板作業員が出ていた。

 交代で行っているとはいえ、スペースデブリの多い空間での捜索(対空監視)と救助作業をしていたのだ。

 配慮するのも当然の指示と言えた。

 

「それからヒリュウへ連絡、救助者の受け入れを確認してくれ」

 

「了解です」

 

 救助作業指揮統制の母艦は、大破状態のヒリュウが当たっていた。

 手荒く被害を受けたヒリュウが生き残れた理由は、ヒリュウ自体の生存性能の高さもあったが、被弾による脱落後早々にグガム(天の川銀河)方面第35偵察軍が早々に無力化して撤退する事となったお陰でもあった。

 そして、今、救助任務では広い格納庫に空気を充填し、救助者や捕虜などを収容しているのだ。

 1000名を超える人々であった。

 

()()には、本艦は狭すぎるでしょうからね」

 

 柿崎が笑って合いの手を入れる。

 有名な、ガミラスでのド・グラース型駆逐艦の評価からの言葉だった。

 

「あまり当て擦ってやるなよ?」

 

「ははははははっ、旨いモンを振舞ってやってますよ」

 

 勿論、スズカは救難作戦配置であるが故に、平時の様な甘味 ―― フレッシュなモノを提供できる訳では無かったが、それでもパック詰めされた非常用甘味料である羊羹やアイスクリームというったモノを提供させていた。

 或いは、温まるカフェオレと言った飲料だ。

 幸いにしてスズカは先の戦闘でも負傷者を出さず、又、救助できた人間にも重軽症者が居なかった事もあっての呑気さと言えた。

 

()()だけではなく、だな?」

 

「勿論です」

 

 ドヤ顔で敬礼めいた仕草を見せる柿崎。

 過去の因縁からガトランティスに対して厳しい所のあるガミラスであったが、少なくとも地球連邦宇宙軍としては最低限度の文明的ラインを維持する様に務めていた。

 無論、その事が地球-ガトランティスの関係にどれだけ影響があるかは判らない。

 判らないが、俘虜の心に影響を与える事は可能。

 そういう部分があった。

 実際、スズカに収容されたガトランティス人は世間話の中でペラペラとグガム(天の川銀河)方面第35偵察軍の内情を話していたのだ。

 全てが、一言一句が、表情と共に記録されている。

 その内容が事実か否かは後方 ―― 地球連邦宇宙軍情報部なりが判断する事であったが、取り合えず戦争相手が判らないと言う事は避けれる。

 そう古代は考えていた。

 

「しかし本艦、破損個所が面倒ですな」

 

「前線での修理では無理そうだな」

 

()()()()()()()()

 

「だな」

 

 笑いあう古代と柿崎。

 レーダー周りの全損は、戦闘艦としては深刻な被害であるのだ。

 前線側の泊地で修理は部品不足で不可能であるし、又、修理後の調整なども必要であるが、コレも調整設備の不足から不可能であるのだ。

 可能なのは地球衛星軌道上に設けられた大整備廠のみが現実であった。

 地球連邦宇宙軍としても、この状況の()便()は理解しており、前線向けの重整備工作艦の様なモノの開発と配備によって前線への重整備能力の付与も検討しているのだが、まだ検討段階に留まっていた。

 ガミラス戦争終結から10年。

 恒星系間文明に到達したばかりの人類の行動圏は、そこまで大きくは無かったのだ。

 又、ガトランティスとの戦争も状況はまだ深刻では無い事もあった。

 であれば、造船能力も民間の船舶整備に振り向け、地球圏やその周辺の開発に注力したいと言うのが、一般的な地球人の感覚であった。

 そして、その総意となる地球連邦の方針でもあったのだ。

 

「半年で任務終了、後は整備と訓練で3ヵ月位は地球圏で過ごせそうですな」

 

「ああ。深宇宙での任務は楽しいが、地球圏で過ごすのも良いさ」

 

「そう言えば艦長は新居を建てられたんでしたっけ?」

 

「ああ。買って住んでる時間より、宇宙に居る方が長いけどね」

 

「羨ましい。可愛い奥様がお待ちでしょ」

 

「どうかな? 早い帰還に、弛んでいるんじゃないのって叱られるかもしれん」

 

「流石の才媛ですナァ!」

 

「本部勤務、俺よりお偉いサマだよ」

 

 ブリッジクルーからも好意的な笑い声の零れる様な緩い会話は意図しての事であった。

 戦闘から延々とブリッジに配置され疲弊していたブリッジクルーを一息つかせたいと言う思いからであった。

 

「艦長! ヒリュウからです。本艦のお客様レベルであれば受け入れ可能との事です」

 

「良し。甲板のクルーに収容はどうか?」

 

「点呼迄終了しています。総員15名に異常は無いとの事です」

 

「良し。ならばヒリュウへ向かおう。エンジン(推進機)、点火。航海長、舵は任せる」

 

「航海長、舵、受けます。進路変更__ 」

 

「総員、見張りに注意せよ。帰れるからとは言え、途中で事故してはたまらないからな」

 

「帰る迄が任務ですからね!」

 

 柿崎らしい言葉に、スズカのブリッジは笑いに満ちるのであった。

 かくしてスズカのガミュロン星系に於ける任務は終了する事となる。

 

 

 

 

 

 

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