序盤で死ぬ当て馬モブの俺、インフレ激しい百合エロアニメにて最強を目指す   作:霧夢龍人

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第5話

学校入学まで残り六日。

“災害対策委員会”に壊れた家の事を相談したところ、なんと一時間ちょっとで完全に復活し、なんならお詫びとして空間拡張までして貰った。

 

空間拡張とは文字通り、対象の空間を見た目以上に拡張することが出来る技術らしい。

 

「お陰でトレーニングしやすくなった、のはいいけど・・・」

 

正直あの主人公相手に、負けずに善戦するっていうのはめちゃくちゃ難しいと思う。だって成長能力が異次元だしアイツ。

どれだけ追い詰めても、戦いの中で成長してやがるッ!的な展開にしかならないだろう。

 

だとしてもボコボコにされるのは嫌だけど。

 

「取り敢えず、今入手出来る【天賦】をあらかた手に入れとくか」

───『あら、どうしたの・・・ですかマスター。あの人に触発でもされた?・・・ましたか?』

「今更敬語に治したところで遅いって。前の口調でいいよ」

───『ほんと!?ふふん、まぁそうよね!“今”のマスターならそう言ってくれると思ってたわ』

 

敬語じゃなくていいと言った瞬間にこの態度だ。

原作では主人公のステータスはもっと落ち着いた感じだが、普通は他人のステータスは、そいつ自身以外には聞こえない。

 

もし聞けるなら、俺のステータスも見習って欲しいものだ。まぁ、コイツのお陰で助かったんだけどな。

 

───『それで何だっけ、【天賦】のことよね?』

「あぁ、身に付けられるだけ身に付けたい・・・から、ちょっと付き合ってくれよ」

───【ど、どこによ?】

 

「決まってるだろ───【天上の塔(バベル)】だよ」

 

☆★☆★☆★

 

ザッザッザッと土を踏み締めて、少しの食料と荷物を抱えながら歩く。周りには鬱蒼と茂った雑木林や、せせらぐ川の音。そして動物の鳴き声が幾重にも重なって聞こえてきた。

 

「自然に溢れてるなぁ・・・」

『そうでスネ。特に植物はデータベース上でしか拝見したことがないので、とても珍シイです』

───『ねぇほらあれ見て、鳥よ鳥!サイボーグじゃない普通の鳥だわ!』

 

俺が今来てるのは、【天上の塔(バベル)】と呼ばれる“特殊建造物(ダンジョン)”の一種だ。全長数十キロmにも及ぶ高さと半径三km程の大きさを誇り、円柱形の構造をしていて、一つの階層事に一つの“世界”が広がっている。

ある階層は海が広がっていたり、ある階層は炎に包まれた土地だったりする。上には階段を用いて上がることが出来て、下りる際は【次元転移装置(テレポーター)】ですぐさま下ることができる。

 

現在の最新到達地点は十二階層らしいが、百階層あるのではないかと言う予想も建てられているくらい、“ルール”を知らないと攻略が難しい“特殊建造物(ダンジョン)”だ。

 

「・・・って、なんでミカは着いてきてるんだよ!」

『えェ、今更ですか?』

───『何ならこの子、マスターと一緒に出て来たじゃないの』

「そうだっけ?じゃ、じゃあ武器は持ってきたのか?」

『・・・?』

「俺が悪いの?今難しい質問したかな??」

 

なぜ家のアンドロイド(ミカ)ちゃんは勝手に着いてきてるんですかねぇ、しかも武器も持ってないし。

最初からおかしいとは思ってたよ?

お見送りします!とか言って玄関まで付いて着た辺りは疑問に思ってなかった。そこから【天上の塔(バベル)】まで続く次元転移装置広場(テレポートセンター)ところで「あれ?これ【天上の塔(バベル)】まで着いてくる気じゃね?」って思ったさ。

 

でも本当に着いてくると思わんやん普通。

 

「頼むから前に出るなよ?俺の後ろに居ろよ?怪我したら俺が姉さんに半殺しにされかねないからな?」

『勿論、存じアゲております』

「ならサングラス付けて、楽しむ気満々で来ないんだよ・・・」

 

ミカは何かが入った袋を手に提げながら、黒いサングラスを掛けて実に楽しそうに隣を歩いていた。ピクニックかな?(諦観)

 

挙句の果てにパシャパシャと写真を撮り始めたミカを他所に、俺は今回の目的を再度確認する。

俺が今いる階層は二十二階層。つまり、現在の最新到達点より十階層も高いことになる。まぁ、どうせ数ヶ月もすれば主人公陣営が【天上の塔(バベル)】を制覇するんだが、その前に入手しておきたい武器がある。

 

だが今回の目標はその武器だけじゃない。

 

「ッ!来たぞ、敵だ!!俺の後ろに隠れろミカ!」

『は、はい!』

───『早速ね。あれは半狼獣人『レギオール』、鋭い爪と硬い剛毛による防御の高さが厄介よ』

 

鬱蒼と生い茂る雑木林を進む中、黒い毛に覆われた人狼が木陰から姿を現した。身長は二m程度だが、露出している凶悪な大爪は当たったらひとたまりもない。

普通なら俺のような人間が挑める敵じゃない───が。

 

「ハハッ!上等だァ!!」

「ウラァァァァッ!!」

 

───今回の俺の主な目的は、パワーレベリングによる【天賦】の入手だ。

 

雄叫びを上げながら肉薄するレギオールに対し、次元転移装置広場(テレポートセンター)で購入した簡易光線剣(ビームサーベル)を取り出して応戦する。

くっそ高くて、“災害対策委員会”から貰ったお金をかなり消費してしまったのは言うまでもない。

 

「ガルラァァァアアアッ!!」

「っ、はえぇ!!」

───『マスター!右から攻撃来るよ!』

 

レギオールの凶爪による連撃。そのあまりの速さに腰がすくみそうになるのを堪え、ステータスの指示通りにサーベルを右に“ずらす”。

すると鋼鉄を弾いたような甲高い音が鳴り響き、完全に爪とサーベルが拮抗した。

 

俺の持つ簡易光線剣(ビームサーベル)は、某宇宙戦争に出てくるものとは違って何でも切れる訳ではなく、光を物質化させることによって切れ味を引き出している。

値段はピンキリなのだが、俺より遥かに格上のレギオールの攻撃を受け止められている時点でそこそこの性能だ。

 

───けどこれじゃ足りない。俺も武器も、全てが三流以下だ。

 

主人公(サラカ)なら出てきた時点で切り捨ててる。ヒロイン達なら、レギオールが攻撃する前にぶっ倒してる。

 

「お前も可哀想だなぁ」

「グギィィィィ!?」

 

だから、心の底から憐れみを込めて俺はレギオールを見下した。

俺もコイツも、さして出番がないまま死ぬ身だ。その点で言えば共通点があるだろう。

しかし、決定的に違う点がある。

 

「俺はモブだが、お前と違ってアイツら(主人公達)の敵じゃねぇ」

「ガァァ?ッガガァァ!!?」

 

疑問符を浮かべるレギオールに回し蹴り。

体勢を崩して呆気ない声を上げたところで片足を切断した。骨を断ち、神経を裂き、筋肉を壊す感覚・・・不思議と嫌な感じはしなかった。

前世なら生き物を傷付ける感触に吐き気を催しそうなくらいだが、どうやら完全にこの世界に染まりきってるらしい。

 

「だからお前は───モブ()に殺されて死ね」

 

動けないワンコロに対し、心臓部にある魔核(コア)にサーベルをぶっ刺した。ワンコロは暫くじたばたと藻掻い後に、完全に絶命した。

倒せたようで一安心である。

 

『お見事でス!』

───『やるじゃないの、少し見直したわ』

「ツンデレかな?・・・取り敢えず倒せて良かったな」

 

死んだ影響でボロボロとレギオールの体が炭のように崩れ落ちていくのを見ながら、お目当ての物を探す。

すると炭の中からビー玉くらいの大きさの、翡翠色のガラス玉が見つかった。

 

「お、これこれぇ!ドロップしてて助かったぜぇ!」

『それはナンですか?』

「ナンじゃないぞ」

『・・・トオルさん?』

「じょ、冗談だって!そんなハイライトの無い目で見ないで!泣いちゃうよ!」

 

俺はミカにドロップした翡翠のガラス玉を見せた後、それを口の中に運び、しっかりと咀嚼する。ガリッと破裂する音が響くが、気にしない気にしない。

 

『ッ!?大丈夫ですか!?』

ふぁいふぉうふは(大丈夫だ)

『ほ、本当ですか?口の中からガリガリ音鳴ってマスけど・・・』

 

あぁ、と返事する前に俺の体に変化が訪れた。

 

───“レギオール”の因子を獲得しました。【才覚】を発現します。

発現する【才覚】は以下の三つ(『体幹強化』、『斬撃』、『受け身』)です。

 

「おぉ、キタキタ!新しい【才覚】じゃあ!」

『・・・トオルさんの様子がおかしい、これはやはり頭の病院に連れて行った方がいいのでは?』

「失礼な!さっき食べたのは『才覚の導』っていうガラス玉だ。普通ならそう簡単にドロップしないんだが、自分より強い(エネミー)なら確定で落ちる強化アイテム、みたいなやつだ」

 

そもそも、なぜ人が【天上の塔(バベル)】みたいな“特殊建造物(ダンジョン)に挑むのか。それは(エネミー)からドロップする『才覚の導』を目的としているからだ。

『才覚の導』は、【才覚】と呼ばれる【天賦】と似た物を入手出来るアイテムであり、STR(筋力)やらVIT(耐久)やらのパラメータが存在しない『とある日常』の世界において、極めて重要な強化アイテムである。

 

はい、分かります。

なんで【天賦】じゃなくて【才覚】を入手してるの?と言いたんでしょう?甘い、甘いねぇ君。

 

ここで裏技。【天賦】はくそほど努力重ねないと習得できないが、なんと(エネミー)を倒すことで入手出来る【才覚】を“統合”することによって、【天賦】を作り出すことが出来るのだ!

 

『強化アイテムですか?それを食べればトオルさんが強くなると?』

「そうさ。まぁどんだけ【才覚】を集めようと、まだまだサラカ(チーター)を相手するのは役不足だ。ってことで、どんどん行くぞ!」

『は、はイ!』

───『なんかこの二人見るとムズムズするのよね・・・手でも繋いでくれたら盛り上がるんだけど』

 

テンションが上がった俺はミカを引き連れ、どんどん先へと進んでいく。途中に何度かレギオールと遭遇したがライトセ・・・じゃなくて、ビームサーベルの餌食となり灰になって消えた。

ドロップした『才覚の導』は食べ続けることによって、【才覚】の効力も少し上がるらしい。よって無駄にはならないのだ。

 

調子に乗った俺は、五時間掛けて二十二階を探索し終えた。

その結果───。

 

「やべぇ、食いすぎたかな・・・腹一杯だ」

───『考えなしに食べるからよ。一応ステータス表示しとくわね』

「た、助かる!」

 

ステータスに感謝しながら、獲得したスキルを確認する。

 

───《個体名:懋舞(モブク) トオル》 《年齢 15》

【識別ID:M08dd.esu】

《身長 1788mm》《性格 屑》 《体温:異常なし》《体調:異常なし》

天賦(ギフテッド)一覧】

・“気味の悪い微笑み(スプーキースマイル)

『気持ちの悪い笑み。笑みを浮かべるだけで対象は自身に対して、良い感情を抱かなくなる。確率で吐く』

・“吐き気を催す声(ヴォイドヴォイス)

『吐き気を催す声。話しかけるだけで対象は自身に対して、良い感情を抱かなくなる。確率で吐く』

・“路肩の石のような存在感(モブモブモブ)

『自身の存在感を無くす。対象に話し掛けるか微笑むことによって、このスキルは解除される』

才覚(スキル)一覧】

強化系

・体幹強化

・視覚強化

・筋肉強化

技能系

・斬撃

・受け身

・庇い立ち

 

倒した敵はレギオールが四体、初めてにしてはかなり上々だ。

強化系の方も技能系の方も満遍ないが、技能系は斬撃と未入手の斬鉄が習得出来れば、新たな《天賦》を入手できるはず。

 

『端まで来まシタが、どうしますか?また上の階層に行きます?』

「んー、そうしたいのは山々なんだけど、これ以上はギリギリになるからなぁ。お宝だけ取って帰ろう」

 

ここより更に上は二十三階になるが、先に言っておこう。あそこは魔境だ。

話を戻すことになるが、【天上の塔(バベル)】などの特殊建造物(ダンジョン)には、必ず一つルールが存在する。

ここ【天上の塔(バベル)】にも、設定資料集でしか知られていないルールが存在するのだ。それは、攻略している人数が多いほど(エネミー)の出現頻度、もとい強さが強化されるというもの。

 

逆に言えばソロや二、三人程度で来ればそこまで難易度は高くない。足りない攻撃力も、ビームサーベルを買ったことで保証されているしな。

あくまで俺の能力でいける限界が、二十三階なのだ。お陰で二十二階以下はパワーレベリングし放題である。

 

まぁ、大人数で攻略するのが当たり前な特殊建造物(ダンジョン)において、数によって変動するタイプの【天上の塔(バベル)】は相性が悪いから仕方ないね、うん(白目)

 

『お宝・・・どんなのでショウ!楽しみです!』

「だろ〜!?因みに場所はもう把握してある!・・・あそこだ」

───『マスター、あの部屋ってもしかして』

 

「そう、ボス部屋だよ」

 

準備は万端だ。既にここのボスの正体は割れているし、お宝の在処も知っている。

あとは絶対に勝つ、という意気込みのみ。

 

「ミカ。ここで待っててくれ」

『っ、そうですね。私は足手まといになります』

「あぁ確かにそれもある。ボス部屋は一旦中に入ったら、中に入ったやつが死ぬかボスが死ぬまで、絶対に開かない」

 

もし万が一ミカも一緒に中に入ってしまったら、ミカを守りながらボスを倒さないといけない。女性一人守れないなんて情けない話だが、そっちの方が逆に難易度が高くなる。

 

「だからもし俺が死んだら───」

『何言ってるんですか。トオルさんは死にまセン!私が保証します』

「ははっ、随分と自信満々だな」

 

まるで事実のように話すミカに思わず笑みが零れた。

 

「でもそうだな。外に女性を待たせたまま死ぬなんてことしたら、姉さんに怒られる」

『えぇ、ですからお待ちシテおります』

「分かった。でも一応これだけ持っていてくれ、緊急脱出用キットだ」

『分かりました!・・・どうか、ご無事で』

 

俺が居ない間に敵に襲われる可能性も考慮して、ミカに緊急脱出用キットを持たせた。後は俺がボスを倒してお宝も手に入れれば万々歳だ。

 

「目指すは主人公に負けない一般モブか───いいね、燃えてくる」

 

モブだから勝てない?主人公相手だから負けるのは仕方ない?いいや、そんなのは言い訳だ。

俺は俺なりのやり方で主人公を超えてやる。

 

そのためには俺の踏み台になって貰うぞ、我が強敵(ボスエネミー)

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