異世界緋想天 ~天子と衣玖の異世界旅行紀~   作:火也(かや)

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前話から数日ほど時間が進みます。読むのに何も影響はありません。


23話 デート(?)

 天子と衣玖がこの町、正確に言えばこの世界にやって来てから一週間が経過した。この一週間は良い意味でも悪い意味でも怒涛の日々だった。

 幻想郷の天界で“異変”を起こして博麗の巫女と一戦を交えて退屈しのぎをするつもりが、八雲紫と名乗る妖怪に変な空間の裂け目に放り込まれてこの世界に文字通り吹っ飛ばされた。そして砂漠を彷徨う最中でロビンに助けてもらいこの町へと流れ着き、ロビンと決闘して冒険者となった。

 栄えある冒険者初の依頼でドスガレオスというCランク級のモンスターに運悪く遭遇。長時間の死闘の末にこれを撃破した。

 その過程で多くの人に出会った。ロビンやベティとアリアの家族や、ギルドのお姉さんのアンナ。道具屋のティアにDランクパーティの「琥珀のブローチ」の面々。その他の人々などなど……。

 

 次々と起こる予想だにしない出来事に驚きつつも、それを楽しく感じている。こんなドタバタな出来事こそが、形は違えど強く望んだものだったのだから。

 寿命を超越した存在である天人と、不老長寿の妖怪。共に長くこの世を生きる存在として、一日や一週間など些末なものでしかなかった。

 それが今ではどうだろうか。一日を過ごすためにその瞬間に全力を尽くして生きている。こんな生活は向こうでいれば考えることもできなかった。

 

 だから、天子はこの日常がとても楽しく感じられている。予測のできないドタバタな毎日が楽しみでいるのだ。

 

 

「……だからこれも楽しみって呼んでいいのかな」

 

 

 天子はいつもの普段着で通りを歩いている。腰には相変わらず緋想剣を差していて冒険者の格好となんら変わらない。まあ、元々普段着としても着られる服だから問題ないのだが。

 いつもと違う点を挙げるのなら背中にザックを背負っていないのと、隣に衣玖がいないことくらいか。

 

 

「いやまあ、楽しみっちゃあ楽しみだけどね」

 

 

 一人でぶつぶつつぶやいている姿は傍から見ればもの凄く不審な姿である。過ぎ去って行く道行く人々も通り過ぎてから天子の方を振り返っているくらいなのだから。

 しかし、天子がこうやって独り言をつぶやいているのにも理由があった。理由が無いのなら、そいつは精神科病院で一度見てもらうことをお勧めした方がいいだろう。

 

 

「アリアのお誘いかー……」

 

 

 こうして天子が一人であるいているのは、アリアからお茶のお誘いがあったからだ。

 これが男ならば完璧なデートになるわけだが、女同士である手前デートと呼んでいいのか謎であるが、つまりはそういうことである。

 待ち合わせは町の中心の大きな広場。そこに天子は向かっている途中なのだ。

 

 

 

 

 

 

 事の経緯はこうだ。

 依頼から戻った日の夜、天子と衣玖が夕食を取っていたときにアリアに話しかけられたのだ。

 

 

「お茶?」

「はい、天子さん、以前にお茶に誘ってくれると言っていましたよね」

「言っていましたね。ちゃんと私のログに残しておきましたからね言い逃れはできませんよ」

「別に言い逃れするつもりはないけど……。最初にここに来たときに言ってたやつでしょ」

「はいっ。明日暇ができたので天子さんさえお暇ならどうかなって思って」

 

 

 夕食の肉を頬張り、それを飲み込んでから天子は言う。

 

 

「どうせやることないし。別にいいわよ」

「やった♪ じゃあ中央広場で待ち合わせしましょう。美味しいケーキが食べられる店があるんですよ!」

「あの甘い菓子よね? 確かに楽しみね……あ、そうだ、衣玖はどうする?」

「私は遠慮しておきます。お二人の時間を邪魔するわけにいきませんからね」

「別に、私は邪魔だなんて思ってないですよ?」

「いいんですよ私は。楽しんできてくださいな」

 

 

 そうやって衣玖は一歩引いて辞退を進言した。衣玖には、アリアが天子と一緒にお茶することを何より望んでいることが分かっているからだ。

 自分は邪魔にしかならない。アリアも本心では二人で楽しみたいと思っているはず。ならば自分は遠慮しておこう、そう空気を読んだのだ。

 

 

「アリア、衣玖は変に強情だから何言っても聞かないわよ。私たちだけで行きましょ」

「……はい。衣玖さん、ごめんなさい」

「謝らなければいけないのはこちらです。誘っていただいたのに申し訳ありません」

 

 

 そうして夕食を終えて部屋で就寝し、翌日約束通り中央広場へ向かっているところなのだ。

 

 

 

 

 

 

 回想終わり。

 つまりそういうわけだ。

 朝起きて短くなった髪をセットし、時間が近づいてきたので衣玖に見送られて部屋を出た。ちなみに衣玖は適当にぶらぶらする予定らしい。

 天子が向かっている中央広場は砂漠の町らしからぬ大きな噴水が異彩を放っている広場だ。そこそこ大きな広場でその広場を中心にするように町の外へと繋がっている。三本の大きな通りも広場を通っているのだ。

 当然そんな道の中心だから人も多く集まる。広場にはシートを引いただけの粗末な露天商も多く存在するし、食べ物の屋台も多種多様だ。ぼったくりな店もあるが、たまに掘り出し物を置いている場合もある。まあ常時フリーマーケットが開かれているようなものと思えばいい。

 

 待ち合わせは中央広場の噴水前。やはりこんな砂漠の町に噴水なんてどうしてもおかしく感じられるが、アリアに聞くと前からあったから別に何ともないという。慣れとは恐ろしいものだ。

 砂漠の町なのに噴水が建てられる水があるのは、少し離れたところに大きな湖があってそこから水を引いているからである。さらに地下水脈もあるから砂漠の町の割に水が豊富なのだ。故に町もこれほど大きくなったと言える。

 

 

「そういや衣玖以外の誰かと二人で、なんて初めて」

 

 

 天界で疎んじられていた天子は他の天人から交流を持たれることはなかった。というより、疎んじられているのを知っていたから天子自身が距離を置いていたというのが正しいのだが。

 そう考えると、このお誘いも楽しみになってくる。初めてのことで、少しワクワクしてきた。天子はワクワクしながら通りを歩いて中央広場へと行き着いた。

 

 

「到着!」

 

 

 すちゃっと体操選手のごとくポージングを決めて中央広場へとやって来た天子。一面石畳でできていて日本(天界)で生まれ育った天子にとっては少し新鮮なものだ。

 

 

「さーて、アリアはどこかしらーっと……んお?」

 

 

 中央広場には人が多いものの、通る場所さえも無いというほどではない。現代的に言えば地方都市の駅前というレベルだ。それぐらいの人だかりなら人を見間違えるということはないだろう。ましてや、待ち合わせなのだから。

 そして、天子もアリアの姿は割と早く見つけることができた。天子とそんなに変わらない小柄な身長なのだから、天子自身が一番よく分かる。

 ただし、その状況が少々悪かった。

 

 

「なあ、良いじゃん?」

「困ります。待ち合わせしてるんです」

「そんなこと言って、もう十分近く待ってるじゃん? 何、彼氏と待ち合わせしてんの?」

「いえ、女友達ですが…それに、来ないのは私が早く来すぎたせいで」

「同性の友達だろ? じゃあ後でごめんって言えば済む話じゃん」

「そうそう。それに、俺たちが何者か分かればその子もちゃんと分かってくれるって」

 

 

 アリアは男の集団に囲まれていた。噴水を背に、男三人に三方を囲まれているという状況だ。道行く人々はその光景を目にしながらも見て抜見ぬふりをしている。相手の男三人がいかにも冒険者というなりをしていたのが原因かもしれない。

 俗に言うナンパというやつである。いや、少し強引だからよりタチが悪いかもしれない。

 

 

「……あ、ありのまま今起こっていることを話すぜ! アリアが男三人に包囲されてナンパされている…。汚いなさすが男三人汚い…。これで私あの男三人嫌いになったなあまりにも卑怯すぎるでしょう?」

 

 

 噴水と広場の入口のほぼ真ん中の位置から呆れと怒りを混ぜた愚痴をこぼす天子。何故か若干気の抜けた感じがするが、これでもれっきとして天子は怒っているのだ。ただ、感情に任せた暴走した怒りでなく、理性を保った怒りだが。

 

 

「ほら、さっさと行こうぜ」

「ちょ、やめてよ……」

 

 

 男の一人がアリアに掴みかかろうとした、そこまでが天子の限界だった。

 一瞬で人混みを抜け、囲まれていた男の間をすり抜けてアリアと男の間に滑り込むように割って入った。

 

 

「アンタら、いい加減にしときなさいよ」

「て、天子さん!?」

「ああん、何だテメエ―――」

「アンタは……この前ギルドで」

 

 

 天子は割って入った男三人を見て眉をひそめた。天子が見据えた三人は以前ギルドで出会ったゲンとその仲間であったからだ。

 こんなところでも迷惑行為かよ、と天子は思ったが当事者が知り合いということでこれは見逃せないなと気持ちを切り替える。

 

 

「チッ……この前のクソガキ」

「アンタら……こんなところでも迷惑行為? いい加減アンタらそのヒットした頭を冷やしたらどうなの? 馬鹿なの? ハゲ?」

「うっせえ、ハゲじゃねえっつってんだろが!!」

 

 

 唾を飛ばしながら大声で叫ぶゲン。汚いから唾飛ばしながら叫ぶなよ、と天子は鬱陶しく感じる。

 

 

「んで、お前がアリアちゃんの言ってた相手ぇ?」

「だったら何」

 

 

 ハゲ……もといゲンではなくその仲間が天子に問いかける。このままでは話が進まないと感じたのだろう。天子は態度を変えることなく適当に返事をする。

 天子がこの男たちを知っているように、男たちも天子のことを知っていた。特にゲンは目の敵にしていると言っても過言ではないだろう。

 

 

「あのヒラヒラ……今日はいないのか?」

「衣玖のこと? いないけど、それがどうしたのよ」

「ふん、いないのか……なら余裕だな」

「はあ?」

 

 

 男三人は天子を見てニヤニヤと非常に不快な粘着っぽい笑みを浮かべる。正直、これほどまでに人に不快感を与える存在はそういないだろう。ある意味才能と言える。

 

 

「あのヒラヒラはかなりの手練れだ。だがテメエはあの女にただ張りついてるだけのコバンザメなんだろ? お前のこと様付けして呼んでたしな、どうせ主従の関係かなんかだろ」

「ドスガレオスを倒したのだって、どうせあの女に違いねえ。Eランクのゲンを出し抜けるなら有り得ねえ話じゃねえからな」

「それならお前は弱いって話になるんだな! のこのこ一人で現れやがって、あれですか、正義のヒーロー気取りですか!?」

 

 

 ギャハハ、と下卑た笑いを辺りに撒き散らす三人。正直、この馬鹿三人の馬鹿さ加減が伝染るから止めてほしい。周りの人も迷惑そうにしている。

 というか、迷惑に思うなら止めに来いよ、と天子は思ったが、一応こいつらの身形(みなり)は冒険者というだけあって体格も大きい。天子より遥かに身長が高いのだ。強いものには手を出せないか、と天子は少し納得する。人間とは、得てしてそう生き物だと知っているからだ。

 

 

「あの……」

「大丈夫アリア。すぐに終わるから」

 

 

 アリアは不安そうな顔をしていたが、以前に冒険者だった父を完膚なきまでに倒したことを思い出し、「…うん、信じてるから」と少し顔を緊張から緩めた。

 

 

「あん? 終わるって、お前のこれからのことかあ?」

「んなわけねーでしょうが。……暴漢に襲われる少女を助けた、お膳立てとしては最適よね。誰も文句を言うはずがないわ」

「……何だって?」

「つまり―――こういうことよッ!」

 

 

 ゴスッ、と左にいた細長の男の鳩尾を風の速さごとくフックをぶちかます。ロビンの力強い攻撃さえも受け止める剛力にあてられた細長の男は一センチほど宙に浮きあがり、肺の空気を全て吐き出すように詰まった息を吐き出して悶える。

 

 

「おいっ!?」

「今のうち―――っと」

「きゃ!?」

 

 

 注意が細長の男に向かった瞬間に天子はアリアを抱き上げてその場から跳躍して場を離脱した。離脱と言っても人一人抱えての跳躍は無理があるので精々三メートルくらいだ。

 しかし包囲されたこの場からの離脱が目的なのでこれで構わないのだ。

 

 

「よっと。ここで待ってて。アイツら沈めてくるから」

「は、はい……」

 

 

 離れた場所に困惑したままのアリアを下ろし、返事が聞けたことを確認してから汚い男たちに再び向かった。

 

 

「おい、大丈夫か!」

「げほっ、ああ、なんとか平気だ……」

「おい、てめえ……!」

 

 

 ゲンがただでさえ酷い顔をさらに歪ませて天子を睨む。三人が無駄に大きな声を出すから、道行く人々が何だ何だと騒ぎ出した。

 しかし頭に血が上った彼らはそのことを失念していた。

 

 

「アンタら、私の大事な友達になにしやがんのよ。おい、われの【友達】か?」

「うっせえんだよ! いきなりしゃしゃり出やがって! Fランク風情が調子のんなよ雑魚が!!」

「ランクランクうっさいわね。この前衣玖がランク制度について完 全 論 破したでしょうが。見ろ、見事なカウンターで返した」

「黙れ黙れ!! お前ら、女だからって手加減すんな! 相手も冒険者だ、女だからって容赦するこたあねえ!」

 

 

 ゲンがそう叫び、他の二人も怒りを剥き出しにして天子に向かって来る。周りの人は見てて叫ぶだけで、やはり動こうとはしない。

 

 

「アンタら相手に緋想剣なんて必要ない。拳だけで片付けてあげるわ!」

 

 

 正当防衛が立証されたところで、天子はこの社会のゴミを即座に掃除することにした。

 

 

「おらあっ!」

「ヨミヨミですよ? お前らの攻撃は!」

「ぐはっ!?」

 

 

 大振りの右ストレートを天子は左手で軽く受け流してお返しとばかりに力を込めた右ストレートをぶち込む。天子の細腕からは到底想像できない一撃が汚い男Bを襲い、くの字に折れ曲がった体はそのまま後方へと吹き飛ばされる。

 

 

「なっ!?」

「余所見してる場合かっ! 顎パンチ!」

「あがっ!?」

 

 

 男が吹き飛ばされて呆然とする汚い男Cに向かって天子は渾身のアッパーを繰り出す。ゴキッと嫌な音がしたかもしれないが、それは天子の気にするところではなかった。

 残りは一人、汚いハゲ男Aことゲンだけである。

 

 

「あとはアンタだけよハゲ!」

「ちょ、まっ――」

「待つかハゲ!」

 

 

 天子の猛攻を目の前で見せられ後ずさりしながら懇願するゲンだが、それを聞き入れるほど天子は甘くない。サッと間合いに入り回転して勢いをつけながら頭部側面に回し蹴りを放つ。

 一八〇センチ近くあり体格も冒険者らしいゴツイ体をしているにもかかわらず、天子の回し蹴りでゲンは軽々と吹き飛んでいく。三メートルほど吹き飛び、ゲンは気絶したのか鼻血を垂らしながらピクリとも動かない。

 そして、あっという間に決着がついた。天子は途中で落ちてしまった帽子を拾い直し、かぶりながら地面に倒れている三人に向かって言った。

 

 

「今度私の友達に手を上げたら、そのときがアンタらの命日になるから」

 

 

 聞こえているかどうか怪しいが、一応言っておく。どちらにしろ、天子も衣玖も彼らの敵う相手じゃないことが分かった以上、もう下手に近づいてこないだろう。

 一瞬場が静まりかえったあと、エールや拍手喝采の声が届いた。割れんばかりの歓声に天子は少しばかり驚く。

 ギャラリーから見れば、天子は悪漢から少女を守った英雄的存在だ。そんないかにも物語的な出来事に、周りが反応しないはずがない。

 

 

「天子さん、助けてくれてありがとう!」

「うわっ、アリア!?」

 

 

 少し驚いて照れ笑いしている天子に、アリアは正面から抱きついた。

 

 

「凄く怖かったけど、天子さんならなんとかしてくれるって思ってた! ありがとう、大好き!」

「ちょ、ちょっとアリア、こんな大勢の目の前で抱きつかないでよ」

 

 

 胸の中で満面の笑みで顔をすり寄せるアリアに、天子はたじろいだ。悪漢を一撃で沈めた天子も、こんなスキンシップは初めてでどうしたらいいか分からなかったからだ。

 ギャラリーからも「ヒューヒュー」だとか「か、かっこいいタル~」だとか「お似合い~」だとか「百合だ…最高ッッッ!!!」だとか妙な歓声が響いていた。最後のは、多分ヤバ気な人だ。

 

 

「なんだなんだこの惨状は……って、天子ちゃんじゃねえか」

「あれダニエル? それに他の皆も」

 

 

 アリアの抱擁を受けていたとき、ギルドで見慣れたパーティが近づいてきた。「琥珀のブローチ」の面々だ。

 

 

「こいつぁ一体どういう状況だ? なんか三人倒れてるし」

「あーー……それはね」

 

 

 少女説明中……。

 

 

「……なるほど、またこいつらの騒ぎか」

「また?」

「こいつら何度もこんな感じで騒ぎ起こしてギルドから度々お咎め食らってんだよ。迷惑行為冒険者としてこの町じゃ悪い意味で有名なんだ」

「大してランクも高くないくせに、低いレベルの奴らを恫喝する小悪党よ。皆煙たがってたのよ」

「今回の騒動は決定的だな。もうこいつらの末路は見えたもんだ」

「どうなるの?」

「冒険者としての地位を剥奪、下手すれば町を追放だな。駐屯兵にも散々迷惑かけてきたからな。野次馬もたくさんいたし、言い逃れはできんだろ」

「ふーん。まあ、ざまあみろとしか言いようがないわね」

「まったくだ」

 

 

 天子は抱きつくアリアを引き離して馬鹿三人をゴミを見るような目で見た。やはりゴミはゴミらしく処分されるのがお似合いだ。

 

 

「事後処理は兵士が勝手にやってくれるだろ。余計な騒ぎ増やしたくなかったら、お前もさっさと行け。あとは俺たちが引き受ける」

「いいの?」

「兵士に事情聴取で一時間近く拘束されるぞ」

「よし行こうアリア」

 

 

 拘束、という言葉に反応した天子は素早く反転してアリアの手を引っ張る。流石に一時間も拘束されるのは勘弁願いたい。ただお茶しに行くだけでそんなことになるのは嫌だ。

 天子はアリアの手を引っ張って歩きながらダニエルの方へ顔を向ける。

 

 

「ありがとう、ダニエル!」

「なあに、先輩として助けてやったまでさ。それに、この前の飲み比べのときにも世話になったからな」

「絶対そっちがメインでしょ」

「はは、違いねえ」

 

 

 お互い手を振りあう天子とダニエル。二人は数日前の飲み比べですっかり意気投合して今では互いに認め合う良き友となっていた。

 ガハハと快活に笑うダニエルとニシシと面白そうに笑う天子。きっと、性格のベクトルが似通った者だからこそ、これほど短期間で仲良くなれたのだと思う。

 広場をささっと離れた二人は、予定通りの時間を過ごすことにした。

 

 

「んじゃアリア、当初の予定通り…」

「はい、ケーキ食べに行きましょう!」

 

 

 ケーキ、ケーキと先程までナンパされていたことも忘れてしまったかのような朗らかさでアリアは天子と手を繋いでいる。少し恥ずかしかったけど、まあいいかと天子はそのままにしておいた。

 

 この日二人で食べたケーキは、これ以上になく美味しく感じられた。

 




作者は百合はかーなーりーニガテなので誰がどうと言おうとこの回は百合じゃないと言い張ります。

作者「百合じゃないっ!」

なぜか百合っぽく出来上がってしまったんだ^^;


あと、夏休みが終わったのでこれからは毎日投稿は無理になります。週二回ぐらいを目安に考えているので、自分勝手だとは思いますが、何卒ご了承願います。
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