異世界緋想天 ~天子と衣玖の異世界旅行紀~   作:火也(かや)

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決着


39話 死闘の末に

 夕刻に染め上がる黄昏の空。雲一つ、遮るもののないどこまでも純粋で穢れを知らない空は、ペンキをぶちまけたような単一な青さから燃え盛る炎のような橙色へと変化しつつある。背後に頂く真円の太陽は昼間の天辺のそれとは違い、遥かに巨大なそれだ。灼熱の業火をもって地表を飲み込み焦土と化さんと接近しているようにも見え、いずれ暗黒に包まれる夜を想像すればそれもあながち間違いとは言い難い比喩となっていた。

 その高温故か赤色とか黄色ではなく白く見える太陽をバックに、夕暮れの砂漠を駆け回る三種の影が光背を纏ったようにまぶしい。そのうちの一つの影は残りの二つに比べて圧倒的に巨大でそして直線状に荒々しく動いており、その残り二つはその巨大な影に離れて付かずの距離を保ちつつ縦横に忙しなく動く。性質の異なる動きだが、どちらも共に止まることなく接近し、離れたりの動作を展開している。

 

 

「はああああああ!!」

 

 

 その影の一つ。短く切り揃えられた髪を風になびかせ、夕日に照らされた青髪は瑞々しい艶を保っている。天子は対照的な赤黒い緋想剣をディアブロスの甲殻と甲殻の間隙にねじ込み、ギャリギャリと音を立たせながら裁断する。比那名居の秘宝である緋想剣は代々伝わる長大な歴史さながらの業物で、岩窟の如き堅固さを誇るディアブロスの甲殻の前でも刃一つ欠けることなく鈍く輝いている。

 尻尾をハンマーのように振るってくるディアブロスの攻撃をギリギリで回避し、躱した直後に再び剣を振るっていく。既にこの行為を、天子は幾度なく繰り返しており、ディアブロスの甲殻にもよく注視してみれば幾重にも傷が入っていたり砕けた箇所があったりする。

 それは、この戦いがもう長い間続けられていることを如実に伝えるものである。

 

 

「斬! 斬! 斬ッッ!!」

「総領娘様! 突っ込みすぎです……!」

「らああああああ!!」

「もう周りを見る余裕すらありませんか……!」

 

 

 回復薬の類はとうの昔に底を尽きており、ディアブロスの攻撃に対する回復手段は無くなっている。それはつまり、怪我の痛みを緩和することができなくなっていることを意味する。「無念無想の境地」はそう何度も使える代物ではないうえに、あれは根本的治療ではない所謂ドーピングなのでその後の影響が怖い。最悪効果が切れたらもう立てなくなることも考えられ得る。

 天子を支えている唯一のモノは、絶対に倒れないという気力と絶対に倒してやるという気概だけであった。

 

 

「私だって、もう体力の限界ですよ……!」

 

 

 そうやって愚痴を吐ける分だけ天子よりはマシだが、それでも長時間の戦闘は彼女の体力を著しく削り取っていた。

 しかも衣玖は援護に徹し、天子の状況を鑑みて立ち回りを考えているため体だけでなく精神力も消耗している。最初よりも電撃の威力が落ち込んでいるのは、目に見えて明らかだった。

 それでも威力を落としてしまえば通る攻撃も通らない。衣玖はより多くの魔力を練り上げ前方に電撃を照射し、ディアブロスの背中に雷を撃ち落した。脆くなった甲殻が電撃で弾け飛び、何万ボルトという電気がディアブロスに襲いかかる。

 

 

「はあ、はあ……はあっ!――― ゲホッ!」

 

 

 電撃攻撃で怯みのけ反ったところに天子がすかさず剣を通す。息が乱れている最中に無呼吸で無理やり行った攻撃のため、攻撃終わりに酸素を求めて大きくむせ返した。

 その一瞬の隙を突くようにしてディアブロスは尻尾を振り回し、慌てて回避しようとした天子を後方へ吹き飛ばした。幸い尻尾の先端ではなかっためダメージ量は少なく、即座に起き上がることができた。

 そして吹っ飛ばされたショックで、冷水をぶっかけられたように熱され沸騰していた頭が急速に冷え込んでいくのが感じられた。

 

 

「はあ、はあ……」

 

 

 態勢を整え、息を吐く天子。体の痛みは、不思議なことに感じられなかった。しかしそれは痛みをデフォルト、普通の状態と感知していることであると理解すると乾いた笑みが天子の顔面に張りついた。

 

 

「流石に、ヤバいかしら、ね……」

 

 

 今の天子の体が普通の状態でないと分かっていても、それでもなおここで引くという選択肢は出現しなかった。引けない理由がある、といえば聞こえはいいが、ただ単純にこのまま引き下がるのをディアブロスが黙って見ているわけがないというのが本音だ。撤退の途中に追い討ちをかけられたら目も当てられない。

 勿論、引けない理由があるのは正しいし、それが理由でもあるのだが。

 

 キッ、と天子はディアブロスを睨みつけ、絶対に倒れてやるもんかと意思表示をした。ディアブロスはグゴゴ、と吐息を漏らし同じように天子を睨んでいた。

 最初こそあまりにも硬い甲殻に右往左往していた天子たちであったが、天子が緋想剣を、衣玖が電撃をそれぞれ加え続けていったことで傷が入ったりひび割れたりして砕けるに至っている。砕けた先は甲殻ほどの堅固さは持たない鱗に覆われており、そこは剣が幾分か通りやすい部分となっている。

 攻撃が与えやすくなったディアブロスは、しかし攻撃に衰えを感じさせず相変わらず重い。最初よりは若干遅くなっているような気もしないではないが、それは天子も衣玖も同じなのでお相子だ。

 疲労の蓄積を感じさせないポーカーフェイスは、どれほどダメージを与えたのか目安にできないので厄介だった。ポーカーフェイスというよりは頬筋が豊かな表情をとるために発達していないだけだろうが。

 

 天子も衣玖も肩で息をし、既に余計な言葉を発することなく戦闘に当たっていた。互いに言葉が不要なほど正確な連携を取れることが幸いである。血の一滴すら無駄にできない現在の状況は、長い間共に過ごしてきた関係に感謝すべきであった。

 二人の今の状況は、丁度糸を限界まで張り伸ばした状況に近い。ピンと張った糸はいつブチッと切れるか分からない危険性を孕んでおり、二人は危ない綱の上を目隠しで歩いている思いに駆られる。

 

 

「はあ……はあ……」

 

 

 何度剣を振るっても、幾度電撃を撃ち落せどもディアブロスは倒れず砂漠を駆け続ける。もしや攻撃が通っていないのでは、と猜疑心すら浮かんでくるほどだ。

 これが、砂漠の暴君。ディアブロス。並大抵の冒険者など歯牙にもかけず打ち払ってしまう、最恐の存在。沈みゆく太陽を背に、だれにも頼ることなく砂嵐を切り裂いて進むその存在は、まさに孤高の戦士と称するに相応しい。

 

 

「……滅茶苦茶強いわよアンタ。その暴力的な力で、一体どれだけの冒険者を屠ってきたのかしら……」

 

 

 そんなディアブロスを、改めて見つめ直す。振り続けた剣を警戒しつつも下ろし、天子は言葉を紡ぐ。「けど、」と言った天子の瞳は、色褪せず煌々と輝く意志の炎が盛んに燃え続けていた。

 

 

「今度はお前が―――狩られる番よ…!」

 

 

 この世界に来てから、天子の中で何かが変わっていった。それを明確に言語化できるほど、天子にはそれが何なのか分かっていなかったが、それでも“変わった”ということだけは理解できていた。

 天子も衣玖も、自分の体力の限界値からもう長くはもたないことをひしひしと感じていた。終止符が打たれるときは近い、と。

 

 果たしてディアブロスが砂漠に君臨する王として威厳と王位を保ち続けるのか。

 それとも天子と衣玖が不屈の闘志で下剋上を行うのか。

 

 天子が駆けだそうとしたとき、ディアブロスが大きく動いた。

 

 

 ヴゴオォォ―――!!

 

 

 両翼を大きく広げ、頭部を低くしての前傾姿勢をとって突進のモーション。角度の低いV字型のそれは、天子を何度も苦しめてきたそれだ。

 これまでは足下に潜り込んだ状態からの突進が多く、その結果足に引っかかることが多かったが、今はそれなりに距離が離れている。まともに直撃しようものなら一発で戦闘不能は必至だ。

 ズドンズドン、ともはや地震のそれと遜色ない地響きを立ててディアブロスの巨体だが迫ってくる。どこにそんな体力が残っているのかと疑いたくなり、天子はガクガクと笑う膝を叱咤してギリギリのところで横っ飛びに回避した。

 

 ドゴォォォン!!

 

 

 ウボアアアアアアアアアア―――!!?

 

 

「な……!?」

 

 

 ディアブロスが突き進んだ先、つまり天子には巨大な岩山があった。何重にも折り重なった地層が肉眼で確認できる、平たい垂直の壁であった。

 そこに、突進の勢いを御しきれずディアブロスは頭から岩山に突っ込んでいったのだ。超重量級のモンスターが後先も考えずに突っ込んだことで岩山は一部が崩れ、ボロボロとなって落ちそうになっていた。

 しかも、ディアブロスは―――

 

 

「角が、壁に刺さって抜けなくなってる……!?」

 

 

 ディアブロスの角は、長く太い。それは槍のように貫き通すのではなく質量で押し潰すというように使うのであろう。

 そんなディアブロスの代名詞とも呼べる角が、その鋭さが災いして壁に突き刺さったまま抜けなくなっているのだ。呻き声をあげ必死に抜け出そうともがいているが、余程深く刺さったのか簡単には抜けずにいるようだ。

 

 天子の前に訪れた最大の好機。今の今まで少しも隙を見せずにいたディアブロスの、最初で最後のチャンスだった。

 これを逃せば次はもう二度と同じ失態は冒さないだろう。

 

 

(なんだっていい! 奴にトドメをさすチャンスだ……!)

 

 

 天子は緋想剣を構えてこれまで以上に大胆にディアブロスに接近し、頭部の硬い甲殻に向かって全力で剣を振り抜いた。

 

 この最後のチャンスに、全てを賭ける―――

 

 

「ああああああああ!!」

 

 

 全ての力を腕に込めて、後先のことなど考えずに、ただひたすらに天子は剣を振り続ける。硬い甲殻が天子の本気の一撃で砕け散り、一枚下の鱗を晒す。その何重にも重なった鱗さえも真上から叩き割っていく。

 全身から闘気すら滲み出るような純化された攻撃はディアブロスの硬い装甲を少しずつ削り取る。皮膚を引き裂き、その拍子に噴き出す返り血を浴びながらも、弾け飛んだ甲殻の破片が頬を切って血が流れても、全てを賭ける有言実行の勢いで使い物にならなくなりつつある腕を叱咤して剣を振るい続ける。

 これ以上は危険だと最終警告を叩きつけるように痛みが再燃し出すが、天子はそれらを全て無視。

 

 

(この後体がどうなっても構わない、だから、今だけは―――!!)

 

 

 言葉通り全てを賭けた思い。思いは剣に乗り、剣筋に反映されて煌めく。純粋な思いであればあるほど剣は鋭く輝き、切れ味を増していく。

 今の天子の斬撃は、これまでで最も鋭く、かつ輝いている。

 

 もがき苦しむディアブロスは、突き刺さった角と天子の斬撃の両方に苦しめられながら暴れる。そして壁を破壊するようにしてディアブロスは壁から角を抜き、その反動でディアブロスは数歩後ずさりした。

 ディアブロスは、未だ健在だ。

 

 

 ―――仕留めきれなかった?

 

 

 ―――いや、まだだ!!

 

 

 抜けた後の壁は無理やり引き抜いたせいか大きくひび割れており、その穴から二、三メートル大の岩が次々と落下してくる。天子は限界を迎えている体に最後のブーストをかけ、落下してくる岩を踏み台にして上空へと跳び上がる。

 真下にはディアブロスの顔。天子は宙で緋想剣を振りかぶり、重力に従って落ちる勢いを合わせた一撃を放つ。

 

 

「くらえええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 

 

 ガキンッッ!!

 

 天子が真上から振り下ろした剣は、丁度ディアブロスの頭部から生え伸びている双角のうち一本に斬りつけた。天子の全てが込められたその一撃は天に向かってそびえ立つ角を中ほどからへし折った。

 

 

 ウボ、アアアアァァァァ―――!?

 

 

 明らかに今までとは違った声色の、悲鳴とも呼べる声を発し、ディアブロスは一歩、一歩と鈍重そうに後退った。

 

 

 ウボオォォォ………ァァァァァ―――

 

 

 段々と声が掠れていき、最後に断末魔の声をあげたディアブロスは高く天に向かって伸びあがった直後、音をたてて大地に崩れ落ちた。

 砂漠の強者の、最期だった。崩れた後の、ディアブロスの瞳には、もう生気の色を感じ取ることはできなかった。

 命の灯火が、名残惜しく消えてゆく。

 

 膝立ちの状態で、ディアブロスが倒れていく光景を天子は呆然と眺めていた。小山が崩されるような、人の手ではどうにもならないシーンを目の前で見せられ、天子はしばし息吐く暇も忘れてその光景を見入った。

 頭の中が真っ白だ。ぐちゃぐちゃに描き殴ったカンバスを、新たな白いカンバスに取り換えたような。いわばやっていたことにおもむろに水を差されたような感覚と言えばいいか。

 

 

「……………うそ? やったの、私……?」

 

 

 戸惑いの言葉だけが口から飛び出てくる。

 言語化されたことを皮切りに天子の頭は次第に冷やされていき冷静さを取り戻した。同時に、今目の前で起こったことも、断片的に脳内で再生されるようになった。

 信じられない―――けど、確かに、私はやったのだと。じわじわと実感が胸の内に押し寄せ、決壊寸前の堤防の如く歓喜の思いが溢れかけていた。

 

 

「総領娘様」

「衣玖……」

「お疲れ様です」

 

 

 衣玖は天子に手を差し伸べ、衣玖の手を掴んだ天子はすくっと立ち上がった。

 戦いが終わって立ち上がって見たこの世界は、今までよりも何倍も広く見えた。

 

 

「衣玖」

「何ですか?」

「……ありがとう」

 

 

 天子は、スッと拳を掲げる。

 

 

「……こちらこそ、総領娘様」

 

 

 ゴツン、と互いの拳をぶつけ、戦いが終わったことを確かめ合った。

 天子と衣玖の長い戦いが、夕暮れの空と共に終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

「いてて……」

「まったく、無茶しすぎです」

 

 

 ディアブロスとの戦闘が終わり、遮断されていた怪我の痛みが再びぶり返して天子の体を蝕んだ。砂の上に座り込んだ天子にまだ少しだけ残っていた包帯を巻きつけていく。

 終わった途端の衣玖の小言に、天子は不機嫌そうに頬を膨らます。

 

 

「しょーがないでしょ。弱音を吐くわけにはいかないんだから」

「それはそうなんですが……その」

「その、何?」

「……やっぱり何でもありません」

「ちょ、言いかけてやめないでよ。気になるじゃん―――って痛い痛い!」

 

 

 天子が問い詰めようとしたところに衣玖は包帯をきつく巻き直す。

 ニコニコ笑いながら仮面をかぶった表情だ。

 

 

「ほら、こんなに怪我してるじゃないですかーまったくもー(棒)」

「アンタ明らかに話逸らそうとしてやったでしょうに! 大根役者すごいですね!」

「それほどでもありません……………ん?」

 

 

 グルルと唸る天子をどこ吹く風で受け流し、天子の腕に包帯を巻きつけていく。残りの包帯分全て巻き終え、衣玖は奇妙な気配がするのを感じた。

 ―――モンスターではない。モンスター独特の野生が持つ雰囲気ではない。これはむしろ……。

 

 

「どしたの衣玖?」

「……人間の気配がします」

「え!? ど、どこっ?」

「あの洞窟から……」

 

 

 衣玖が指さした先には岩山があり、その一角に小さな亀裂が見える。人一人がギリギリ通れるかといったぐらいの小さなものであった。

 その空洞から外へと噴き出す風に、砂漠の暑苦しい熱風ではなく、生きたものが持つ生の生温かい風が混じり込んでいたのだ。

 

 

「もしかして生き残り?! 探しに行き、痛っ……」

「大丈夫ですか総領娘様? 本当に早く治療しないと後遺症とかが…」

「……大丈夫。あそこに行くくらいならそんなに変わらないでしょ……それに、モンスターとかじゃないんでしょ? なら平気」

「……分かりました」

 

 

 天子の決意に、衣玖は反論したくなるが口には出さず頷き返した。天子の思いを慮り、それを理解できたから、衣玖は何も言わないことにしたのだ。

 天子は衣玖に肩を抱えられつつ、ゆっくりと亀裂に向かって歩いて行く。ディアブロスの脅威は去ったとはいえ、ここが安全とは言えないフィールドであることには変わりない。どんな奴が出てきてもいいように、緋想剣の柄だけは握っていた。

 亀裂は縦に一直線に走っていて、横の広がりは全くと言っていいほどない。縦は高さ三メートルほどあるが横は一メートルもなく、これではモンスターの行き来は不可能であろう。天子と衣玖は一人ずつ亀裂の中の空洞に入っていった。

 亀裂の中の空洞は別段広くもないが、入口の狭さに比べると意外な広さに驚く。どうやら地下水が湧出しているようで、半径五十センチほどの小さな池が湛えられていた。

 そしてその奥。

 二人は、最も出会いたかった人物に出会う―――

 

 

「「―――ロビン(さん)!!」」

 

 

 空洞の奥で岩に背中を預けているのは、見間違えようもなくロビンであった。服はボロボロになっており、頬も痩せこけて肉が減っていて一瞬別人のようにも見えたが、それでも彼の出す雰囲気は間違えるはずもなかった。

 ロビンは薄目を開けてこちらを見ており、少なくとも死んでいるわけではないようだ。おそらく池の水を飲んで何とか生き永らえていたに違いない。

 

 

「無事だったのね……! ホント、ホント良かった……!」

「……おう。まだ、死んでたまるかってーの……」

「本当に、良かったです…。さ、これを」

 

 

 衣玖はもし生存者がいた場合に備えていた携帯食をポーチから取り出し、ロビンの口に押し込んだ。モグモグと咀嚼する動作を見て、衣玖は安堵の気持ちが心の割合を占めた。

 

 

「……お前らが、ディアブロスと戦ってるところをここから見てた」

「え……」

「まさか、あの怪物を倒しちまうとはな……。俺でさえ、かつてBランクだった俺でさえ敵わなかったアイツに、お前らは勝ちやがった。大したもんだよ、まったく……」

 

 

 はは、と苦笑を浮かべるロビン。その表情には緊張感から解放された安堵感が切々と伝わってくる。

 帰れる。やっと。

 何日の間もディアブロスの恐怖に怯え、食料も満足ない状況の中で、帰りたい、ただそれだけを思い続けてきたのだから。そんなロビンを見て、二人はロビンに手を伸ばした。

 言葉はもはや不要だ。今は一刻も早く、ロビンを町に連れて帰る。連れて帰ることが、彼の最も望むことなのだから。

 

 

「帰ろう? 私たちの町に―――」

 

 

 だらんと下がった手を取り、天子はそう言った。その言葉を聞いたロビンは目を見開かせ、ギュッと握る手の力を強めながら口に出した。

 

 

「ああ―――」

 




【システムメッセージ】

メインターゲットを討伐しました
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