異世界緋想天 ~天子と衣玖の異世界旅行紀~   作:火也(かや)

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メリークリスマス!

今回は凄く短いです。


45話 関所の町

 小鳥のさえずりと共に衣玖に叩き起こされ、二人は厩舎の前で待っているベルトのところに行った。既に出発準備を終えていたベルト共に出発し、天子はドスランポスを呼んで再び関所に向かって歩き出した。

 ここまで来れば関所までそう遠くないらしく、順当に進めば昼過ぎには三時ごろには到着するらしい。これまで進んできた景色と相違点も見当たらず正直な感想少し退屈な道のりであった。

 森のようにモンスターの宝庫でもない平原には退屈しのぎとなるものが何もなく、天子は再びドスランポスから降りて御者台に乗り、他愛もない会話に明け暮れた。周囲の警戒は、見通しがよくなり普段通りの索敵能力を取り戻した衣玖が行っていた。森を出た瞬間から接敵は全くなくなり、遥か遠くで何かの群れが移動しているのを確認しただけだった。それもおそらくモンスターの類ではなく、野生動物のものだと思われる。

 

 ガタゴトと馬車に揺られながら、護衛としての最低限の注意を払いつつゆったりした時間を過ごした。会話を済ませたあとは荷台に寝転んで青空に浮かぶ白い雲を眺めたりしていた。「漫遊ってこんな感じなのかな」と緊張感に欠けた台詞などつぶやいていた。

 そんな感じで馬車に揺られること数時間。変わり映えのしない大地の向こうに建造物が見えた。

 

 

「あれが関所だ」

「あれが? 関所っていうくらいだからもうちょっと大きな町をイメージしてたんだけど。国と国の境界だし」

「まあ辺境だしな。王国に通じる関所のうち最も北にあるのがここの関所なんだ。必然と人も少なくなるし、そうなれば町の規模もそこまで拡張しないし……それに、最も人が集まる帝都からは王国まで船便があるからわざわざこんなとこまで来て王国に渡ろうとする奴は少ないんだよな」

「わざわざこんなところまで来て王国に行こうとする人の前で言う台詞かしら。私たちは友人のアドバイスに従ったまでよ」

「ほう、それは?」

「最近帝都の治安が不安定だから王国に行けって、知り合いの商人から聞いたのよ。そいつは丁度帝都から戻って来たばかりだから信用できるんじゃない?」

「そいつは興味深い話題だな。もしそうなら商品の仕入れにも影響するかもしれないから、今後の動きに注意が必要だな」

「経済の話もよろしいですが、そろそろ到着しますよ」

 

 

 さらに馬車を走らせ、いつも通りドスランポスを町の手前で放す。最近別れ際に寂しく鳴く居たたまれなさをぐっと堪えて心を鬼にする。住民を徒に怖がらせるわけにもいかない。

 

 

「いつか、堂々と中に入れたらいいのですが」

「大きな町だと意外とそういうのに寛容かもよ」

「何を言うかと思えばこの娘は┐(´∀`)┌ヤレヤレ」

「なんだその態度はおら。逆に考えてみなさいよ、大きな町ほど異色を受け入れる収容力(・・・)ってものがあるでしょ。王国の首都ほどにもなればドスランポスの一匹くらい平気でしょ!」

 

 

 いい加減、天子もドスランポスだけ仲間外れにするのが心苦しくなってきている。一人、いや、一体にしておくのが不安というのもあるのだが、やはり共に一緒にいたいという気持ちが増しているのだ。

 出会ってまだそう月日も経っていないが、ドスランポスは既に二人の大事な仲間だ。ただ純粋に慕ってくれている存在は、たとえモンスターといえど二人を和ませてくれる、一種のペットのようなものである。

 

 

「むしろ反対だと思うんですがねえ。まあ、なるようにしかならないというか……」

 

 

 衣玖の言う通り、どうにもならないのも事実。現状はこうして町の外で待機してもらうより他ないのだから。

 

 

 関所の町は、町の出入り口から関所の門まで走る一本の道を中心にできた町だった。横幅十五メートルほどの門まで続く長い直線道路は敷き詰められた石畳で緻密に整備されており、その両側に建物が軒を連ねるといった具合だ。

 関所の町ということでそこそこ大きな町である。宿屋だけでも四、五軒あるうえ、商店の数はこれまでの小さな町とは比べるべくもない。流石は国境付近を管理する関所を抱える町というだけのことはある。

 

 一行は入口近くの通行人の邪魔にならない場所に馬を止め、荷下ろしにかかった。本来ならここまで天子と衣玖がする必要はないのだが、どうせなら、ということで少し手伝うことにしたのだ。

 帆布を取り払い、荷台に乗せた重い木箱を下ろす。中身は何かわからないが結構重く、大の大人でない限り持ち上げることは厳しいが、二人にとっては関係なく。テキパキと作業を済ませた。

 

 

「すまないな、荷下ろしまで手伝ってもらって」

「いえいえお構いなく。好きでやったことですので、そちらがお気になさる必要はありませんよ」

「そう言ってくれると助かるよ。んじゃ、関所に着いたことだし……依頼完了だな。これが報酬金だ、確認してくれ」

 

 

 そう言ってベルトはじゃらじゃらと鳴る皮袋を衣玖に手渡す。ひーふーみー、と確認作業を行う衣玖は、それが終えた時点で報酬金の額が決まっていた額より多いことに気づく。

 

 

「少し多いのですが?」

「出来高だよ。ばっちり依頼をこなしてくれたからな、その分上乗せしておいた。面白いものも色々見たり聞かせてもらったりしたしな」

「おおー太っ腹ー! やっぱできる大人は違うわねー」

「王国に行くんだろ? ならそのお金で山越えの準備でもしておけ」

「ありがとうございます。ありがたく頂戴しますね」

「やっぱやめたーなんてなしだからね! もう返さないわよ」

「はは、今更未練がましいことなんて言わないさ。それじゃあな、二人とも。短い間だったけど楽しかったぜ」

「私も楽しかったわ。ありがとう」

「お世話になりました」

「二人の旅路に限りない幸あらんことを」

 

 

 ベルトは祈りの定型句のようなものをつぶやく。天子と衣玖は手を振って別れを告げる。一期一会という言葉が象徴するするように、三人の別れは酷くあっさりしたものに終わった。

 出会いがあれば別れもある。特に旅をしている二人にとっては尚更この言葉の重みは増してくることだろう。出会いと別れが繰り返される集合体が、すなわち旅というものなのだから。

 




メリークリスマス!(大事なことなので二回言いました)



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年末年始も予定通り投稿します。頑張って投稿します。
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