異世界緋想天 ~天子と衣玖の異世界旅行紀~   作:火也(かや)

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天子とロビンの戦闘ダァーーーッ!拙い戦闘シーンでスマヌ。


9話 決闘

「あの人ね、実は昔冒険者だったの。若い頃、商会に入って行商をする前は冒険者でモンスターとか魔物とかと戦っていたのよ」

「だから商人なのに無駄にムキムキだったんですね」

「ステキでしょ?」

 

 

 合点がいった。以前に冒険者をやっていて鍛えていたのならその筋骨隆々な体も納得いくものだった。やはりその体には斧とかが似合うと思った自分の感覚は間違いじゃなかった、と衣玖は思った。

 それと同時に惚気は止めてほしいと思う衣玖だった。皮肉のつもりで言ったのに、それで喜ばれては意味もクソもない。

 

 

「でもね、アリアが生まれて一年経ったくらいかな、モンスターとの戦いで怪我しちゃって。帰ってくることはできたんだけど、二度と無茶できない体になっちゃったの。それから冒険者稼業は廃業して、元々得意だった金勘定と交渉術を生かして商人になったってわけなの」

 

 

 そう広くない広場で準備体操を行っている天子とロビンを遠い目で見つめながら、ベティは自分の記憶を語りだす。

 

 

「でも、私はそれで良かったって思ってるの。依頼を受けて町から出ていく夫を見送っていくのは心苦しかったし、何より心配だったから。魔物やモンスターは私には恐怖でしかなかったから、あの人がそんな恐ろしいところから帰ってきてくれて本当に心から安堵したの」

「………」

 

 

 天子とロビンが広場の中央付近で二人揃って体操をしている中、衣玖とベティは広場の隅っこで二人を眺めていた。アリアは二人に濡れタオルを用意するとか言って家に戻っていった。よくできた娘である。

 ベティは自分の夫の冒険者廃業の素直な気持ちを吐露していた。自分の夫が危ない橋を渡っていると知りながらも止めることのできない自分、そして橋から引き返してくれたことに安堵している自分の素直な気持ち。

 伴侶や、大切な誰かを持っていない衣玖には、言葉の概念の上では理解できても本当の意味でベティに共感することは不可能だった。一般論的な理解でしかベティの気持ちを納得できない。

 衣玖は、そんな自分を少しもどかしいと感じた。

 

 

「だから……だからこそ、あの人は魔物やモンスターの危険さを知ってる。冒険者稼業がどれほど危険と隣り合わせな稼業か身をもって経験してるから……」

「私たちに、冒険者になってほしくないと?」

「自分の娘のアリアと同い年ぐらいに見えるから、なおさらそう思うんでしょうね」

 

 

 ベティは、準備体操を終えたのかロビンに渡された木刀を握りしめている天子を見つめていた。木刀の感覚をものにするために、何度も何度も握り直して縦に振って重さを感じている天子の顔は、確かに年相応の少女のもので、アリアとそう変わらない顔つきである。

 ただし、実年齢はアリアどころか親のロビンやベティよりも遥かに年を取ったおばあちゃんだが。それは言わないお約束である。

 

 

「しかし、怪我で冒険者を廃業したんでしょう? 今更言うのもなんですが大丈夫なんですか、木刀なんて振って?」

「長時間振り回すわけじゃないから問題ない、って言ってたからきっと大丈夫なんでしょう」

 

 

 一応心配はしてみたが、杞憂だったようだ。確かに、木刀を無尽に振り回すロビンにはどこも異常らしきものは見当たらない。心配するだけ無駄なようだ。

 どうせ始まってしまった決闘をもう止めることは衣玖にはできない。二人とも嬉々として準備をしてむしろ楽しみにしている風にさえ見えるからだ。今止めに入ればむしろこちらが標的にされかねない危険を冒してまで止める意味を衣玖は見出せなかった。

 

 準備が済んだのだろう。天子とロビンは互いに相槌を打ち、観戦組の衣玖とベティの方を向いて声をあげた。

 

 

「準備できたぜ!」

「私もよ!」

 

 

 腕をぐりんぐりん回して余裕の表情を見せる天子とほんの僅かに緊張した面持ちのロビン。

 勝負の開始は、アリアが家から戻ってきてからになるようだ。

 

 

「ねえ、衣玖さん? 天子さんは強いのかしら?」

 

 

 ふと、何気なしにベティが聞く。見た目十五歳前後の少女にしか見えない天子が、そういう疑問を持たれるのはまず間違いのないことだった。ベティが疑問に思うのも不思議ではなかった。

 しかし、誰よりも天子の近くにいた衣玖は、天子のことは誰よりも把握している。

 

 故に、言ってやった。

 

 

「……ええ、強いですよ」

 

 

 天子の強さを誰よりも知っている衣玖は、ベティの疑問を打ち消すように力強い意志を持って、答えた。

 

 

「並みの人間では、到底敵わないほどに……」

 

 

 

 

 

 

 濡れタオルを水の入ったバケツごと持ってきたアリアが広場にやって来たところで、ようやく始めることになった。既に両者二人のウォーミングアップは終了している。

 決闘始めの合図は、いつも母親のストッパーを務めているアリアがコイントスでコインが地面に落ちてからスタートということになった。いかにも決闘らしくてカッコイイと天子は何やら勝手に意気込んでいた。

 勝敗の判定は、相手に先に少しでも打ち込んだ方の勝利ということになった。これは流石にアリアでは荷が重すぎるので衣玖が務めることになった。

 

 

「衣玖、審判(ジャッジ)だからって私に依怙贔屓しないでよ?」

「むしろやられてほしいです」

「どういうことよ!!」

 

 

 そんなやりとりもあったが、衣玖が審判を務めるということは特に意見は出なかった。ベティやアリアはこの手に関しては完全に素人だから、天子に推薦された衣玖が審判をするのは自然な流れであった。

 

 

「衣玖なら大丈夫よ! だって私の()くらいに強いから」

「ロビンさん。決闘が終わってからでもいいので総領娘様の鼻っ面を後で思いっっっきりしばいといてくれませんか?」

「おい衣玖、アンタとは一度拳で語り合う(口で話し合う)必要がありそうね……?」

「いいですよ、その伸びきった天狗の鼻を一度へし折る必要があるでしょうしねぇ?」

 

 

「「よろしい、ならば戦争だ……」」

 

 

「おいおいおいおいおい! 違う相手と戦うな! やめんかお前ら」

 

 

 ロビンさんに引き離され定位置に戻った天子と衣玖はいつか絶対ぶん殴ると心に誓い、天子とロビンの決闘に意識を戻すのだった。

 

 ある意味で決闘以上にハラハラだったこの場も二人が真剣な表情になると途端に静かになった。衣玖はまだしも、戦いというのにあまり耐性のないベティとアリアは場の雰囲気に呑まれかけていた。体を強張らせて唾を飲み込むことさえ気にしてできなかった。

 

 緊張、そして静寂。

 

 半身になって木刀を両手で握り、そのまま袈裟懸けに一気に振り下ろせるように剣先を前方に向け、やや前傾姿勢の構えをとっているのはロビンだ。オーソドックスな構えで隙も無く、それでいて攻撃にも防御にも適応できる構えだ。一撃で勝利が決まるこの決闘においては無難な策だろう、と衣玖は分析した。

 そして構えもとってつけたような付け焼刃のものではなく、きちんと精練されたもので彼がかつて冒険者だったというのは嘘でも伊達でもないというのが証明された。若い頃は、それは腕のいい冒険者だったに違いない。

 

 そして対する天子は正面を向いて木刀を片手で握り、それを体の中心線に合わせるような構え―――剣道で竹刀を両手ではなく片手で持った姿と思えばいいだろう―――である。

 しかし、その構えは決闘においてはやや消極的と呼ばざるを得ない。正面を向くということはそれは相手の攻撃を迎撃することを意味することで、攻撃の手数が多い方が有利になる決闘では滅多に見られない構えだ。攻撃は最大の防御と豪語する天子にしては珍しい構えだ、と衣玖は評価した。

 

 衣玖はこの決闘においては審判だ。決闘について口出しすることは許されないから衣玖は黙るより他なかった。ロビンも訝しげだったが、集中力を乱したくないのだろう、特に言及することもなく、誰も特に何も言わずに時間が進んだ。

 

 互いの距離はおよそ七メートルほど。踏み込めば一秒とかからない距離。

 

 高まる緊張。

 

 膨れ上がる高揚感。

 

 塵の動き一つさえ見過ごさない集中力。

 

 お互い握る木刀への握力が図らずも強くなる。

 

 あまりにもの緊張に自分の役割を忘れかけていたアリアは弾かれたようにコインを取り出し、指の上に乗っけて、そして。

 

 

 ピィィィン…

 

 

 弾いた。

 

 

「………!」

「…………」

 

 

 くるくると球体を描くように回転するコイン。コインの音に呼応するように反応し、構えを強固にする二人。

 回転数を緩めないコインはそのまま最高打点まで達し、その後は重力に従って落下を開始する。

 世界がスローになっていくのを感じていた。コインが地面に到達するまで一秒ほどしかかからないのに、まるで数秒も止まっているかのような錯覚に陥る。

 

 超スローカメラで捉えた映像のごとくゆっくり始動していくコインが、やがて――――――落ちる。

 

 

 キン……

 

 

 再び世界が同じ速度に戻る。

 

 

「らあっ!!」

 

 

 最初に動いたのは、ロビンだった。七メートルの距離を一瞬で詰め、上段に構えていた木刀を走りこむ勢いを加味して袈裟懸けに振り下ろす。

 

 

「……っ!」

 

 

 カァンと木と木を打ちつける鈍い音が響く。右斜めに斬り込んできたロビンの木刀をそれに対して垂直になるように両手で迎えうった。

 天子の予想を僅かに超えた一撃。冒険者を止めて既に十年以上経ち、年も四十に近づこうとしているというのにロビンの斬る速度は衰えを感じさせないものだった。突進してきたスピードによる重さも加わって、ぐぐっと天子の持つ木刀が僅かに押し込まれる。

 

 

「これ、しきっ!」

「うおっ!?」

 

 

 しかし、天子はこういう膠着状態になることを予想していた。むしろ、望んでこの構図になるように仕向けてさえいた。だから、天子はわざと防御の構えを取り、相手に攻撃させようと初めから見せつけていたのだ。

 パワーは大人の、しかも前冒険者で体格も圧倒的に勝るロビンの方が上だと誰もが思っていた。どう見ても勝負にならないと考えていたから、ロビンも天子の挑発行為を正面から受けたのだ。

 だが、天子は人間を超える力を持つ天人だ。その天子の細腕からは考えられないような力を持っており、ある意味で勝負は既に決していたのだ。

 

 予想外の天子の怪力に木刀を押し返されてたたらを踏みかけるロビン。その隙を逃さんと天子はさらに追撃をかけるために右足を踏み込むようにして、押した木刀を下から斬り上げる。

 

 

「くっ、」

 

 

 しかし、ロビンも伊達に冒険者をやっていたわけではない。崩れかけた態勢を瞬時に戻し、下から斬り上げてくる天子の木刀をまるで水のごとく己の木刀で受け流して難を凌いだ。

 

 

「ちっ」

 

 

 力の込めた木刀の一撃を受け流され力が分散していくのを感じ舌打ちを打つが反撃は緩めず、返す刀でもう一度振るったが既にロビンは後方に大きくジャンプして木刀の射程範囲から脱していた。

 攻撃が空振りに終わった天子は反撃を恐れ、即座に木刀を引いて態勢を整えた。策は空振りに終わったため、もう同じ戦法は通用しない。正攻法で行くしかないと考えた天子は、右に半身になり右手に持った木刀を下方に構えて下段からの攻撃を彷彿とさせる構えをとった。

 ロビンは木刀を両手で握ってはいるが、構えは最初の天子の構えによく似ていた。木刀をより低く下げて攻撃にも移れる姿勢になっておりまさか迎撃のためではないだろうから、あの態勢で攻撃に移るのだろう。

 お互い構えを作ったところで、ロビンが口を開いた。

 

 

「まさか、力で押され負けるなんて予想外だぜ。その細腕のどこにそんな力があるんだって言うんだ?」

「乙女にあれこれ詮索するのはマナー違反よ。アンタこそ、木刀で受け流すなんて狡い(こすい)技使うじゃないの」

「技術と呼べ技術と。冒険者時代に会得した技だが、まだ使えるようだな。まったく、ヒヤヒヤしたぜ……」

 

 

 お互い軽口を交わすが、意識では相手をに集中して隙を見せないように気を配り、なんとか出し抜こうと現われるであろう一瞬の隙を見逃さないようにしていた。

 

 一方観戦組といえば、広場の端で二人の凄まじい攻防を眺めていた。ベティとアリアは、ただただ呆然とし、感心するだけであった。

 

 

「……お父さん、凄い」

「あなた、まだこんなに動けたのね……」

「天子さんも、あんなに速く動いてるし……お父さんと互角だよ?」

「力で競り勝つなんて、どこにそんな力が……」

 

 

 二人は素人なりの、拙い決闘の評価を下していた。表現は稚拙だが、それ故にその表現の生々しさが伝わり、彼女たちの感じ方が如実に伝わった。

 

 一方で審判を務めている衣玖は観戦組とは別の場所で一人、この戦闘における批評を下していた。

 

 

(既に引退されたというのに、ロビンさんの動きには衰えが感じられませんね。二人の知らないところで密かに修練していたんでしょう……人間であれだけの動きができれば大したものです)

 

 

 衣玖のロビンに対する評価はかなりのものだった。自分では剣を操れないことから多分な前向きの偏見が混じっているのだろうが、それ抜きでも評価は高かった。

 おそらく幻想郷の人間でも、ここまで技巧を凝らした動きのできる人間はそうそういないはずだ。彼は幻想郷でも生きていけるな、と衣玖は勝手な評価をつけた。

 

 しかし、と衣玖は疑問に思ったことがあった。

 

 

(総領娘様は……本気じゃない?)

 

 

 衣玖には、天子が本気を出しておらず手加減をして互角に戦っているように見せている風に見えたのだ。

 それは、天子の力の片鱗を僅かにでも見たことがある者ならば誰でも感じる疑問であった。

 

 なぜなら、天子が本気をだせば人間相手の決闘など、瞬き一回の間で終了してしまうからだ。

 

 天子が持つ力は、本気を出せば幻想郷でもトップに数えられるほどだ。それは個人で簡単に“異変”を起こしたことからも容易に想像がつく。

 

 この決闘の目的は、ロビンに力を見せつけ冒険者としてやっていけるかどうかの見極めをしてもらうことだ。ならば、本気で相手しなくともロビンを一撃で倒せば十分な評価を得られることは可能だろう。

 なのに、天子はそうしない。むしろ戦いを長引かせて天子の評価を下げかねない行動をとっている。

 それが、衣玖には理解できなかった。

 

 

(総領娘様、一体何が目的で……?)

 

 

 しかし決闘も終わればそれも聞くこともできよう。衣玖は腑に落ちないものを感じながらも決闘に意識を集中することにした。

 

 その後も二本の木刀による剣戟が続き、数回打ち合いがされた。お互い一度も体に木刀を当てることなく試合は膠着状態に持ち越されるかと誰もが、衣玖でさえもそう思った。

 しかし、再び剣戟の構えをとった二人のうち、唐突に天子がその構えを解いたのだ。

 

 

「……うん、大体アンタの強さは分かったわ。人間にしちゃ、なかなかやるようね」

「……何?」

「けど小手調べはもうおしまい。次は本気でいく」

 

 

 そう宣言すると、これまで片手で木刀を構えていた天子が、急にもう片方の手を木刀に添えて、これまでとは全く違う構えをとったのだ。

 その構えは最初のロビンの構えと同じ。しかし、より前傾姿勢でより攻撃的な態勢で、防御は一切考えていないかのような捨て身の構えだった。

 天子の瞳はこれまでとは違う獰猛な目つきだ。獲物を確実に狩る猛禽類のような強烈な意志の光が透けて見え、透き通った宝石の輝きのような美しささえ垣間見えた。

 

 衣玖は、そんな天子の豹変に驚嘆した。

 

 

(まさか……総領娘様、あなたはロビンさんの実力を測っていたのですか!?)

 

 

 なぜそのようなことを、と衣玖はそこまで考えたとき、天子の考えに思い立った。

 

 

(……この世界の強さの基準を、人間の強さの基準を、総領娘様は知らない。圧倒的な強さは強力なアドバンテージだけど、同時に畏怖される存在になり得る可能性がある。だから、この世界の人間の強さを測ろうとした……)

 

 

 元の世界では、強すぎる力はかえって恐怖されることが多かった。妖怪など、その顕著な例だ。

 故に、力を制御することは、強大な力を持つ者にとって重要なことなのだ。そのことを、ほとんど人間と接することのない衣玖は理解できていなかった。逆に、元は人間だった天子にはそのことが理解できていたのだ。

 

 

(……まさか、そこまで考えていらしてたとは)

 

 

 衣玖は、今回は自分の完敗です、と心の中で負けを認めた。悔しいが、今回は自分の理解不足だったと非を認めるしかなかった。

 

 能のある鷹はずっと爪を隠し続けていた。しかし、その爪は、ようやく出されたのだった。

 

 天子は力を込め続ける。単純な力だけだ、気質の力など必要ない。この戦いで必要なのは単純な物理的な力だけなのだから……。

 なにやら様子がおかしいと感づいたロビンは半歩下がり咄嗟に迎撃の構えをとった。攻撃を一切かなぐり捨て、全てを防御に回したロビンの判断は流石というべきか、賢明な判断で咄嗟に行ったものにしては上出来だった。

 

 しかし、それも無意味であった。

 本気になった、天子の前では―――

 

 

「はあッッッ!!!」

 

 

 神速の一撃。

 何が起こったのか、天子以外見えたものはいない。僅かに感じ取れた衣玖だけが、天子がやったのはただ横に薙いだだけ(・・・・・・・・・)と感じ取ることができた。

 ただその動きが高速すぎて相対するロビンにさえ知覚できなかっただけだ。

 証拠に、天子が通ったと思われる軌跡には土埃が舞っていて、そこを通った一撃であることは明白であった。天子は、ロビンの後方で構えていた木刀を振り切っていたのだから。

 

 

 パキッ、

 

 

「うぐ……っ」

 

 

 突然ロビンの持つ木刀にヒビが入り、同時にロビンが苦痛に顔を歪めて木刀を取り落した。あの瞬間で木刀とロビンの右手の二つにダメージを負わせたのだ。

 

 

 パキィン……

 

 

 天子の一撃によってヒビを入れられた木刀は、落としたときの衝撃で限界点を迎えてヒビを中心に刃の根元の部分で無残に砕け散った。

 

 そして、静寂。何が起きたのか理解できなかった人間の三人は、ただ呆然と起こった結果だけを目を見開いて見ていた。砕けた木刀と、ロビンの右手を。

 腰を深く下げていた天子はやがてゆっくりともったいつけるように起き上がり、くるりと振り返って唖然としている三人を見て満足そうにニヤッと笑った。最後にチラッと衣玖の方に視線を向けると、衣玖は理解したように頷いて言った。

 

 

「勝者、総領娘様」

 




天子は緋想天のラスボスになっているくらいですから、相当強いはずです。ゲームでも技が多彩で使いやすいキャラですし。

この世界での天子の強さはかなりのものです。五段階評価をつけるなら”四”をマークするでしょう。え?チートじゃないかって?ですが、”五”ではないんですよ”五”では。上には上がいるんですよ、どの世界でもね。
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