銀色の閃光   作:テクノクラート社員

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mission-2 男達の日常

―アイザックシティ近郊―

 

ザムシティでテロリストもどきを始末した翌日、俺はアジトへと向かっていた。

ザムシティから山を一つ越えた先の平原にある地下世界最大の都市アイザックシティ、その都市部から少し離れた小高い丘に目的の場所はある。

一見すると丘の上にポツンと小さな建物が立っているだけだが、この建物はダミーであり、実際は丘の地下全体が施設となっている。

俺はACを乗せた大型トレーラーをカムフラージュされた入り口の前につけ、中で待つ人物に連絡を入れた。

 

「着いたぜ博士、開けてくれ」

すると、すぐにやたらと陽気な声が帰って来た。

「僕のことはドクター唐澤と呼んでくれと言ったじゃないか、はいはーい、今開けるよ~♪」

ゴウンゴウンと低く大きな音を立てながら、二枚重ねの扉が上下に、続いて左右に開いた。

俺はいつもの位置にトレーラーを止めると、車を降りて愛機に乗り込んだ。

通常モードを起動し整備ハンガーまで歩いて行き、機体を整備スペースに固定した。

機体がきちんと固定されたのを確認し、コックピットから降りると、そこには赤ら顔の初老の男が立っていた。

 

「待っていたよガルシア君、遅かったじゃないか~」

「また飲んでるのかよ酔っぱらい、まだ昼前だぞ」

「ハッハッハー!この地下世界に昼も夜もないさ、それはつまり何時でも酒を飲んで良いということだよ!」

「そりゃあ、さぞかし酒造業者が儲かるだろうよ。これは土産だ、一日で飲むんじゃねぇぞ」

 

俺は帰り道にシティの闇市で買った現在では高級品となっている米で造られた酒を渡した。

博士は満面の笑みで俺に礼を言う。

 

「嬉しいな~僕の故郷の酒じゃないか!早速、飲もう!」「おいおい、まず仕事の話を…」

「飲みながらで良いじゃないか、こっち、こっち!」

 

博士は少年の様な笑顔で俺をハンガー脇のテーブルに連れて行くと、早速酒瓶の封を切りグラスに注いだ。

テーブルの上には、グラスの他に干した肉を焼いたものや野菜の酢漬け、薄切りにされたチーズなどが並んでいた。

端から飲むつもりだったんだな、このオッサン。

良くこの歳でそこまで飲めるな、肝臓を自分で改造してるんじゃないだろうな。

俺がそんなことを考えていることを知ってか知らずか、博士は笑顔でグラスを掲げてこう言った。

 

「まずは君が無事に帰って来たことを祝して、乾杯」

「乾杯」

 

博士も俺もグラスの酒を一息で飲み干す。

微かに白く濁った酒の自然な甘味が喉を通って胃に染みる。自分がまだ人間らしく生きていることを実感する瞬間だ。

 

「くぅ~!やっぱり故郷の酒は良いね、どんなに時代が変わって技術が進歩してもそれだけは変わらないよ」

「そんなもんかね?まあ旨ければ何でもいいが」

「そういうものさ、君にもいつか分かるといいな」

そう言って笑いながら博士は空のグラスをこちらに向ける。俺は黙ってそのグラスに並々と二杯目を注いでやる。その顔は実に嬉しそうで、とても六十歳を過ぎている様には見えない。

しばらく仕事の報告や雑談をしながら飲んだ後、博士が俺に話を振ってきた。

 

「どうだい、あの銃は?」

「分かってはいたけど凄い威力だな、少し怖くなったよ」

 

素直な感想だった。あれほどの力を手にすれば、油断も慢心も生まれる。そしてそれは地下世界の戦いにおいて破滅を招くものであると俺は考えていた。持ちすぎる者は妬まれ、狙われる。自分が高みを目指すのではなく、周囲の人間を自分のいる場所或いは、それ以下に引き摺り下ろそうとする。それが暗黒時代と呼ばれる現代の地下市民に染み付いてしまった考え方であった。

 

「君がそう感じるならあの銃を託したことは間違いではなかったかな?」

「さあ、どうだろうな?」

 

俺はどう返して良いか分からず曖昧に答えた。そんな俺を見て、博士はまた楽しそうに笑っている。俺はなんだか居心地が悪くなり、グラスに残った酒を飲み干して席を立った。

 

「じゃあ、俺は寝かせて貰うぜ。徹夜で峠を越えてきたんでな」

「ああ、機体の整備は僕とテックボット達でやっておくからゆっくり休みなさい」

 

俺は手を挙げて博士に答えると、自室へと向かった。ハンガーから出る際にテックボット達とすれ違う。

工場等で使われいる無人機械を博士がACの整備用に改造したものだ。

テックボット達は装甲の状態をチェックしたり、カメラで内部をスキャンしたりと整備を進めているが、博士はそれを眺めながら笑顔でグラスを傾けている。

若干の不安を感じつつも博士の腕を信用しているので、何も言わず、俺は部屋に向かった。

 

ガルシアがハンガーから出たのを横目で確認すると、唐澤は一人呟いた

 

「怖くなったか…そう感じることが出来るなら君はまだ人間さ、きっと大丈夫だよ」

 

そう言って目の前のACを見る唐澤の目は喜びと悲しみが入り交じった様な深い色をしていた。

 

To be continued…

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