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「レイヴンか?助かった、後は頼んだぞ!」
そう言うと、ガードの隊員は炎上を始めたパトロール用MT『ガードウォーカー』から脱出した。
「思ったより面倒な仕事になりそうだな」
俺はそう呟きながら下水道を進んでいった。
遡ること数時間前、俺は再びアイザックシティのガード部隊から依頼を受けていた。
「レイヴン、つい先日君に片づけてもらった所属不明のMT部隊がイミネント・ストームの偵察部隊であったことが判明した。奴等は当シティの廃棄された下水施設に新たな拠点を築こうと画策していたらしい。市民の安全の為にも奴等の拠点建設は断固阻止せねばならない。すでにガードの隊員達が先行しているが、彼らだけでは敵の殲滅は不可能だ。至急、現地に向かってほしい。隊員の被害が少なければそれなりに報酬を上乗せしよう、頼んだぞ」
俺に依頼の内容を説明するアイザックシティ・ガードの隊長の声には隠しきれない焦りが滲んでいた。
地下世界最大の都市であるアイザックシティはクロームの管理下にありその下部組織であるイミネント・ストームはガードに度重なる攻撃を加えてきた。
これに対してアイザックシティのガードは徹底抗戦の姿勢を貫き、今回もレイヴンを雇い自らの部隊を繰り出しての戦闘に及んでいる。
このことから、アイザックシティのガードが企業の子飼いとなっている他のシティのガードとは一線を画した存在であることがうかがえる。
だが悲しいかなその志の高さが災いして彼らはクロームの支援をほとんど受けられず、市民の援助によってかろうじて成り立っているのである。
そんな支援者の一人が博士の知り合いだったため、俺にこの仕事が回ってきたというわけである。
報酬額は高くないが、敵の撃墜数とガード隊員の生存数に応じてボーナスが支払われるという話なので、俺は先を急ぐことにした。
事前に話は聞いていたが、この下水施設はアイザックシティの開発初期から存在しており、度重なる拡張工事によってさながら迷宮の様な構造になっていた。
殲滅という依頼を受けた以上、撃ち漏らしがあってはならない。俺は保存されたマップを確認しながら隅々まで探索し敵を撃破していった。
途中、テロリストとガードの戦闘に出くわしたが、敵を倒すことよりもガードの援護のほうが苦労した。俺の射線に割り込んでくるやつを危うく撃つところだったのでブースターを吹かして前に出ると、左手のブレードで敵を切った。
勇敢なのは良いが腕も装備もそれについてきていない、この状態で各シティのガードの中でも屈指の士気の高さを誇っているのだから驚きである。意識が高いのか或いは、指揮官が優れているのかは分からないが地下社会の中では極めて稀有な組織である。まあその分敵が多いわけだがそこは俺たちレイヴンの働き所だろう。
そんなことを考えている間にも前方から『ビショップ』の集団が迫ってくる。俺は敵のリーダーとの戦いに備えてWG-1-KARASAWAの使用を控え、ブースターで距離を詰めてからのブレード攻撃に切り替え先に進んでいく。下水道のような閉所では射線に壁や置き去りにされたコンテナなどが入る為、下手に連射すると無駄弾を撃つことになる。俺は被弾覚悟で敵に近づき、ブレードの連撃を叩き込んでいった。
しばらくそうやって進んでいくと下水道から外れた道の先にゲートのある開けた場所にたどり着いた。入ってすぐの場所に敵MTがいたが、ライフルを一発撃ちこんだ後すれ違いざまにブレードで切り付けると炎を上げながら崩れ落ちた。
周りに敵の反応がないことを確認し、敵のリーダーが待つであろう最深部につながるゲートに向かうと、そこに一機の『ガードウォーカー』が大破した状態で横たわっていた。
一人でここまで突破して来たのか、迷い込んだのかは分からないが機体はあちこちが焼け焦げており、所々内部が露出していた。装甲部が剥がれ落ちた胴部からコックピットが見える。そこには全身から血を流しているパイロットが見えた。一目で致命傷と分かる状態だったが、驚いたことに目の前のパイロットから通信が入った。
「レイヴンか…目標はこの奥にいる、後は頼む…」
振り絞るような声が聞こえてくる。
「何か、言い残したことはあるか?」
そんなことを聞いてなんになるのか、俺自身自分の言葉に疑問を感じながら男の最後の言葉を待った。
「仲間の仇を…」
言い終えることなく、男はこと切れた。
イミネント・ストームとアイザックシティ・ガードは近年激しく争っている。
命を落とした隊員の中に男の友人もいたのだろう。
友の仇を取るために、単身ここまで進んできたこの男はおそらく正義感の強い人間だったのだろう。
血で血を洗う地下社会にまだそんな人間がいることに、感動と共に空しさも感じた。
どれほど高潔な精神も力の前にたやすく踏みにじられる。そして時と場合によっては自分が踏みにじる側になるレイヴンには抱きえない感情だった。
俺はそんな男の躯を一瞥するとゲートを開き下水施設の最深部に足を踏み入れた。
施設のコントロールルームだったその場所に入った瞬間、奥からミサイルが飛んできた。
「レイヴン風情が調子に乗りやがって、くたばりやがれ!!」
そこには全身を赤く塗装されたMTが居た。『ビショップII』と呼ばれるその機体は、『ビショップ』の改修機であり、ラインビームをマシンガンに換装して背部にミサイルを追加、さらに装甲の強化が施された実戦タイプである。
量産型ACを上回る耐久力を誇る機体であるが、武装や装甲を追加したことにより機動力の向上までは行えず、その動きは『ビショップ』と大差なかった。
俺は部屋の中央にある建物を盾にしながら、背後に回り込み、WG‐1‐KARASAWAの残弾を叩き込んでやった。
「畜生!ここに支部を建設したら幹部になれるはずだッたのに…」
俺の眼の前で火を噴いて崩れる機体からそんな言葉が漏れ聞こえた。
「運がなかったな」
俺は一言つぶやくと、最後の一発をコックピットに向けて撃った。放たれた閃光は男の断末魔を飲み込んで虚空に消えた。
誰もが絶望と締観に満ちたこの地下世界で何か望みを抱きながら戦っている。ならば自分は?自分には命を賭けて戦う意味があるのか?一瞬そんな考えが頭をよぎった。
レイヴンが戦うのは生きる為だ、それ以上でもそれ以下でもない。自らの結論に対する違和感を拭えないまま、俺はその場を後にした。
To be continued…
アイザックシティガードの孤軍奮闘ぶりはネタにしやすいですね~