ヘルダイバー2ちゅきちゅき日記   作:埴輪庭

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ICBM(上)

 ナントカとかいう赤い藻が蔓延る惑星で、男は無辜の人々を護る為にオートマトン達と日々戦っていた。

 

 この惑星その地表全域が赤い藻に覆われている。

 

 まるで血のように赤い不気味な藻だ。

 

 何故赤いのか、なぜ地表を覆い隠す程に繁茂しているのか。

 

 きっと理由があるのだろうが、男にはどうでもいい話だった。

 

 なぜならば民主主義とは何の関係もないからだ。

 

 藻が繁茂した理由を調べる暇があるなら、冷酷無情なオートマトン共を如何に効率的に抹殺出来るかを考えた方が民主的だ。

 

 ヘルダイバーの勤務時間は民主的に決定されており、基本的には24時間365日だ。つまり今日この日も男は戦っているという事である。

 

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 男はこの日、オートマトンに痛打を与えるべくICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射するという崇高な任務についていた。勿論核弾頭付き。民主主義と核は切っても切り離せない関係にある。

 

「ヘルビッチ、ICBMはオートマトンに少しでも民主主義の素晴らしさを伝えてくれるだろうか?」

 

 男はオートマトンの雑兵を『リベレイター』で撃ち抜きながら尋ねた。

 

 ヘルビッチというのはここ最近男とよく任務を共にする女ヘルダイバーだ。

 

 ちなみに戦場での会話はヘルメット内蔵の通信装置で行われる。

 

 当然回線はオープンで、内緒話などはできない。

 

「血と汗が通わない冷えた電脳で民主主義の素晴らしさを理解できるかどうかは疑問ね。でも撃つ意義はあると思うわ。なぜなら民主主義を理解出来ない不幸な者は、いっそこの世界から消えてしまった方が幸せだからよ。私たちは彼らを殺す為にICBMを発射するわけじゃないわ。彼らを救う為にICBMを発射するのよ」

 

「ブラボー!」

 

「民主主義万歳!」

 

 ヘルビッチの素晴らしい言葉に、チームメイトが賞賛する。

 

 君もまたヘルビッチの言に衝撃を受けた。

 

 そしてヘルメットの中で涙を流す。

 

 自身より遥かに民主主義を理解しているヘルビッチへの嫉妬もあるが、それ以上に余りに素晴らしい民主的思想に心をうたれたのだ。

 

 ◆

 

「小規模基地を見つけた。潰すか?」

 

 チームメイトから通信が入る。

 

「潰すに決まってる。だが俺たちは奴等とは違う。民主的に攻めるぞ」

 

 男は即座に返答した。

 

 彼らの目の前に広がるのは、オートマトンが運用する兵器製造施設だ。藻に覆われた赤い地表に黒く孤立するその施設は、周囲の風景とは明らかに異質な存在だった。

 

 男はスーパーデストロイヤー『プリンセスオブラス』へ戦略支援を要請する。

 

 ──イーグル・エアストライク

 

 戦略爆撃機による絨毯爆撃だ。民主主義とは人と人の輪から成る。ワンフォアオール、オールフォアワンの精神だ。そういう意味で、支援を要請するという行為は完全無欠に民主的と言えるだろう。

 

「見ろ、あれが民主主義の光だ」

 

 男が言う。

 

 爆発によって施設は炎上し、空を赤く染め上げていた。

 

 ヘルビッチは男が作り出した絶景を前に震える。仲間達も言葉が出ない様だった。

 

 果たして自分にあれほどの民主的光景を生み出す事が出来るのかと自問するが答えは出ない。

 

 ──私はもしかしたら伝説のヘルダイバーの誕生に立ち合っているのかもしれない

 

「よし、行こう。ICBMの発射の為には発射コードが必要だ。レーダーによれば方角北北西、距離340の地点にそれはある。ここ最近の任務の疲れをICBMの爆発光で癒そうじゃないか。日光浴みたいなものさ」

 

 タフな男の、タフな言葉であった。

 

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