アズールレーンの日常   作:全智一皆

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我が嫁一号。擬人化系のゲームにおいて好きだったのが艦これだけだった作者を、アズレンにどハマリさせた偉大なる艦船の一人。


第一話「綾波」

■  ■

 白銀の世界を照らす、綺麗な青空に浮かぶ燦々とした太陽。今日も良い天気である。

 雪が積もった母港では、朝早くから駆逐艦や潜水艦の艦船達がはしゃぎながら―――その様子を眺める変質者的な空母も居た―――遊んでいた。

 陽光に照らされながらも、しかし特別暖まるでもなく、気休め程度にしかならない冬の季節。だがまぁ、春夏秋冬の中では一番好きな季節である。

 そんな平和な母港の執務室にて。朝早くから起床し、今日も今日とて書類仕事に張り切る我らが指揮官はと言うと。

 

「はぁぁぁぁ………あったかーい」

 

 炬燵(こたつ)に入ってのんびりとしていた。いつもの軍服ではなく重桜製のちゃんちゃんこを身に着けて、蜜柑と暖かい緑茶を味わっていた。

 そこ、勘違いをしてはいけない。別に彼は仕事をサボっている訳ではないのだ。というか、この母港において指揮官が仕事をサボる事など出来る筈もないのだ。

 宿題を出す教師の様な重巡洋艦(トリエステ)、生半可な成果は許さない戦艦(ネルソン)など、指揮官のサボりを許さない艦船が居るのだ。

 勿論、それは彼の為である。指揮官も決してそれを鬱陶しく思う事はないし、寧ろ感謝するくらいのものである。

 ので、決してサボってはいない。ただ執務用の机でやる作業を炬燵でする事にしたというだけである。

 別に年老いている訳ではないのだが、大人にもなるとやはり寒さは堪える。こんなんでも彼も一応は軍人なのだが、まぁそこは置いておくとしよう。

 

「やっぱり炬燵は良いなー。身も心も暖まる……油断すると寝ちゃいそうになるけど、一度入ったら出たくなくなるけど、これは癖になる…」

 

 炬燵。それは暖房やヒーターをも越える技術の結晶。一度でも味わえば二度と忘れる事は出来ない、まさしく至高の品である。

 指揮官もまたその魅力に取り憑かれた一人であり、態々自腹で購入するくらいには魅了されていたりもする。

 そんな炬燵の魔の手が―――今日、一人の少女を襲う。

 

「指揮官、綾波です。入っても良いです?」

「おぉ、綾波。良いよ、入ってきて」

 

 ガチャ、と開かれる扉。そこから現れたのは、この母港における古参の一人にして母港最初の艦船。

 吹雪型駆逐艦の改良型。綾波型駆逐艦のネームシップ「綾波」。指揮官が初めて『ケッコン』した艦船であり、指揮官と最も付き合いが長い艦船の一人である。

 

「おはよう、綾波」

「おはようです、指揮官。えっと…なんで、指揮官は炬燵に入ってるのです?」

「いやー、流石に寒くなってきたからね。炬燵で仕事しようと思ってさ」

「確かに…最近は前よりも寒くなった様な気がするです。綾波も、上着を着る様になったのです」

「ガーディガンだね。似合ってるよ」

 

 いつもの制服の様な格好に、黒いガーディガンを着たその姿はやはり女子高生を彷彿とさせる。

 しかし、ガーディガンを着ている制服とは言え、その格好はこの季節だと寒いのではないかと思う。

 へそは見えているし、スカートも決して長いとは言い難い。いや、それが良いのだけど。そこが大変叡智なのは確かにそうなのだけれど。

 しかし、彼としては寒そうだと思うのだ。

 実際、設備が整っている母港の中とは言えどやはり冷えているのだろう。彼女の頬、太腿や指はほんのりと赤くなっていた。

 

「よし。綾波、ここおいで」

 

 正座を崩して胡座をかき、そこをぽんぽんとしながら手招きをする。

 

「指揮官の膝の上…です?」

「うん。嫌かな」

「いえ、嫌ではないです。ただ…ちょっと、恥ずかしいです」

「可愛いかよ」

「なっ…」

「あ、つい本音が」

「むぅー」

「ごめんごめん! ほら、蜜柑上げるから。機嫌治して?」

「綾波は…ものでは釣られない、です」

 

 とか言いながら、すっぽりと指揮官の膝に座り込む綾波。ぬくぬくの炬燵と指揮官を同時に味わって、ほわぁ…なんて間抜けな声を出しながら、机に顎を置く。

 これが炬燵の力。炬燵の魔力。一度でも入ってしまえばそれだけで炬燵の虜になってしまうのだ、なんと恐ろしいことか。

 

 今日も、我が母港は平和である。


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