ドラゴンクエスト~Ars, please take me with you~   作:プニたけっち

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今回聖なる祠の名前を虹の祠、中にいた老人は虹の賢者と明記致しました。また、今回からタイトルの横に第何話かわかりやすいよう数字を入れてみました。過去三話もタイトルの横に数字を入れておりますm(_ _)m


4.ロトの印

ラダトームから海を挟んだ陸地には澱んだ雲が覆いかぶさっていた。かつて魔王の拠点であった城に別の悪が住み始めアレフガルドを再び恐怖で支配した。アレフガルドの住民は口を揃えてその城をこう呼ぶ。

 

竜王城と。

 

 

「…悪魔の騎士よ、おるか?」

 

竜王城の最下層は光が一切届かない空間のはずだった。だがラダトーム王家から奪い取った光の玉により眩い光に包まれレミーラの呪文が無くとも周囲が見渡せるようになっている。その更に奥、禍々しい玉座に座りドラゴンの杖を手に持つ青い肌の魔物…竜王が声を出した。

 

「はい、御前に」

 

すると少し離れた場所からガシャンと音を立てながら全身を灰色の鎧に身を包んだ騎士が現れた。竜王の言葉をそのまま受け取れば、この雄か雌かもわからないこの生物が悪魔の騎士というのだろう。

 

「見つけたか?」

 

「はい。御命令通りドムドーラ滅ぼして参りました。ご所望の物もここに」

 

竜王の言葉はそれだけ。だが悪魔の騎士からすればそれは十分すぎるほどの言葉だったのだろう。悪魔の騎士は後ろから青い金属製の全身鎧を取り出した。その鎧を見ると、竜王は誰かを嘲笑うかのように嗤った。

 

「ドムドーラの連中も愚かよのう…こんな鎧が街にあるが為に命を落とすことになるとはな」

 

竜王は心底可笑しそうに嗤う。次第に飽きたのか、続けて竜王は悪魔の騎士にドラゴンの杖を向けて言葉を発する。

 

「褒美じゃ、その鎧はくれてやる。まぁ今の貴様に装備できるとは思えんがな」

 

「…はい。ありがたき幸せ」

 

竜王の言葉にどんな意味があるかは不明だが、また竜王は酷く面白そうに今度は悪魔の騎士を嗤った。

 

「悪魔の騎士よ、貴様に命ずる。かつて勇者ロトが用いたという太陽の石、雨雲の杖、ロトの印を見つけ儂の元へ持って来い。まぁ無いとは思うが、また虹の橋をかけられでもしたら面倒なのでな」

 

「はい。畏まりました」

 

竜王の命令を聞くと悪魔の騎士は後ろを振り向き青い鎧を持ち玉座の間を退出していく。

 

「人間とは愚かよのう悪魔の騎士よ。最早装備できない最高の鎧を持ち貴様は何を思う?のう?    よ。

 

はっはっはっ!」

 

竜王の表情は醜く歪んでいる。悪魔の騎士の正体を知りながら敢えて戦利品である鎧を手渡したのだから。

 

※ ※ ※

 

雨爺さんの教えを受けマイラを南下したアルスは海底洞窟を抜けリムルダールへと到着した。洞窟を抜けた先ではさらに強い魔物が待ち受けていた。素早く獰猛なリカント、呪文を唱えてくるまどうし、以前のアルスならばリカントの鋭い爪と牙で八つ裂きにされ旅が終わってしまったに違いない。しかしアルスは呪文の有利性を活かし、リカントはラリホーで眠らせ攻撃、まどうしはマホトーンで呪文を封じ接近戦に持ち込み倒すという戦法を取った。その結果、アルスは少ない被害で目的地に辿り着く事ができたのだった。

 

「ここがリムルダール、マイラとは違って別の活気があるなぁ」

 

マイラは森と温泉の町だがこのリムルダールは竜王の城に最も近いと言われた町である。距離だけならラダトームの方が近いが、以前リムルダールの北西には勇者ロトがかけた虹の橋があった。今は竜王の手先によって破壊されてしまったが昔は歩いて竜王城まで行けたのだ。

 

したがってリムルダールは危機感が強い町であり、今でも腕利きの冒険者が多くいるのである。

 

そんな中アルスは早速宿を取りお上りさんのように町をキョロキョロしながら見て回る。町の広場で『俺が竜王を倒す』と息巻く戦士、待ち合わせ場所を間違えて中々出会えないカップルに事実を教えてあげたりと歩き回った末に辿り着いたのはやはり武器屋だった。

 

「こんにちは、売っている物を見せてください」

 

「いらっしゃいませ、当店のラインナップはこんな形になっております」

 

アルスの挨拶に丁寧に答えた武器屋の店主は商品の説明を始めた。マイラの店主は最初偽物の地図を売ろうとしていたがここの店主はきちんと説明をしてくれている。アルスは気が付かなかったが、このリムルダールは冒険者で溢れる町。そんな場所で詐欺だの何だのやらかしたら何をされるかわかったものではない。なので店員は自分の安全の為、冒険者相手に商売をする為に懇切丁寧な接客を心がけているのだった。

 

「これは…鋼鉄の剣」

 

「お目が高い!それは冒険者が一人前である証と言われる武器でございます。お客様であれば使いこなせることまちがいなしです!」

 

アルスが鋼鉄の剣に興味を引いた事に気づいた店主は今だと言わんばかりにアルスを褒めちぎり買って頂戴と猛烈な圧をかける。だがこの店主の言うことも間違いではなくアルスも知っている。鋼鉄の剣、鉄の鎧、鉄の盾を買って使いこなせるかで冒険者として一人前と言えるかが決まる。

 

ゴクリとアルスの喉が鳴る。自分が一人前の戦士に…と興味を惹かれるのも無理はない話しだろう。男である以上どうしても肩書は持ちたいものである。

 

「店主さん、これをくださ…」

 

アルスが鋼鉄の剣を購入しかけたところで脳裏に雨爺さんの言葉が浮かぶ。

 

『強い武器を手に入れるのはいい。だが手に入れたとしても驕ってはならんぞ、強くなった気になってはならん』

 

出かけた声は止まり、アルスは深く息を吸って吐き呼吸を整える。

 

「店主さん、試し切りをさせてもらってもいいですか?」

 

「は?え、ええどうぞ」

 

店主も多くの客を見てきた。値札を見て諦める者、武器を手に入れ喜ぶ者、さっさと代金を支払ったら退店する者。

 

それらの客は二度と店に来る事はなかった。冒険者を諦めた者、自分の力に自惚れ命を落とした者、自分の力量を比べ中々前に進まない者、様々な客を見てきた。

 

思えば久しぶりだったのだ。試し切りをさせろと言ってくる客は。あくまでごく僅かな例であるが、そういう客は…大成する。

 

 

アルスは店主が用意した藁巻きを前に鋼鉄の剣を片手で持つ。左手は空いているが使わない。普段ならばそこには盾があるのだから。鋼鉄の剣を握りしめ斜めから藁巻きを斬る、続けて逆から切断、最後に剣で突く。剣の切っ先には藁巻きが突き刺さっている、これを見て使って実感して、アルスは鋼鉄の剣を持っても大丈夫なのだと肌で感じ取ることができたのであった。

 

アルスは店主に振り向き、熱に浮かされる事無く真っ直ぐな目で話した。

 

「ありがとうございました。この鋼鉄の剣、買わせていただきます」

 

そう話された店主も思わず返事をする。

 

「お買い上げありがとうございます!」

 

店で普段から行っているやり取りだが、店主にはアルスが他の客とは違って見えた。まず買わせていただきますなど普通の客は言わない、それに実直なまでに真っ直ぐな目を向けてくる戦士など今までいなかったのだ。身の程知らずな欲も無く、だからといって卑屈でもない塩梅の男…ふと店主は代金を支払い退店しようとするアルスに向かって声をかけていた。

 

「お客様、実はもう一つ掘り出し物があるのですが」

 

「掘り出し物?」

 

店主は店の奥から青く光る鎧を持ち出してきた。

 

「これは魔法の鎧と言いまして、身に着けて歩くだけで傷を癒やし、魔法によるダメージを軽減してくれる代物で当店にも一つしかない掘り出し物なのです。これを上回る鎧は伝説のロトの鎧くらいしかないでしょう」

 

店主にはこの魔法の鎧に関しては絶対の自信があった。かつて勇者ロトがいた時代、リムルダールでは鋼鉄の剣など比べ物にならない程に強い武具を売っていた。この魔法の鎧は現存する唯一の品でありお値段にして7700G!

 

「…買えません」

 

そりゃそうだ。確かに性能は高いが鋼鉄の剣の約5倍もの値段がする鎧など変えるわけがない。だが店主もこの男なら払えると考えとっておきの情報を教える。

 

「お客様、実はですねここから南に行くと虹の賢者とかいう老人が住んでいる祠がありまして、お客様の地図でいうと…ここです」

 

店主はアルスの地図に点を記し祠の場所を教えてくれた。そこは南にある離れ小島のような場所の中央辺りだった。

 

「でね、その辺りにゴールドマンという魔物がいるんです。そいつがかなりの強さでして、でも沢山のお金を落とすらしいんですよ。お客様、見た所修行の旅の途中でしょ?なら、いっちょ路銀稼ぎも兼ねて挑戦しません?」

 

非常に胡散臭い店主の誘いに乗るか悩むアルスだが、どの道雨爺さんに頼まれた虹の賢者の下へは行かなければならないし、今の自分がどこまで通用するか確かめたい欲もあった。いざとなればキメラの翼やルーラで逃げることもできると考えた結果…。

 

「…やりましょう」

 

「さすが漢だお客様!ついでにお教えしますがね、そのゴールドマンには呪文が全然効かないみたいですから直接攻撃で戦った方がいいですよ!」

 

戦うべき相手の事前情報を知ることができたアルス。翌日には購入したばかりの鋼鉄の剣を腰にさし、リムルダールから更に南へと突き進んでいく。

 

※ ※ ※

 

さて、金稼ぎの為に早くも南下したアルスだったが早くも新たな魔物の洗礼を浴びた。リカントの上位種であるリカントマムル、空を飛び鋭い嘴で攻撃してくるキメラといった魔物の襲撃を立て続けに受けたのだ。いかに現段階で買えるだけの装備を整えたにしろダメージは蓄積していく。今アルスが進んでいる場所は魔物のテリトリーである森林地帯、休む間もなく厄介な魔物がアルスを襲うのだ。

 

「落ち着け、大丈夫だ…行くぞ!」

 

アルスはラリホーを駆使して魔物の襲撃を凌ぐ。たとえどれだけ敵が強くても今のアルスは雨爺さんからの教えがある。呪文を試し、戦法を考え実践する。その答えがラリホーだったのだ。実際この辺り一帯の魔物にラリホーはよく効くようで作戦大成功といった所だろう。

 

そして問題のゴールドマン…。

 

アルスの身長を有に凌ぐその巨体はピカピカ光る金属そのものでできていた。攻撃方法は自らの巨体を使った踏みつけと拳である。先手を取れるかと考えたアルスだがその甘い考えを即座に捨てる。ゴールドマンは見た目からは想像できない程俊敏に動く。近くの木を薙ぎ倒しながら敵と定めたアルスを攻撃してくる。

 

事前に呪文は効かない事を知っていたアルスは鋼鉄の剣を抜き胴体に攻撃を仕掛ける。さすがにゴールドマンの身体は頑丈だが鋼鉄の剣はいい仕事をしてくれた。リカント達の時もそうだが鉄の斧を上回る切れ味で敵の皮膚を切り刻む事ができる。ゴールドマンとて例外ではなくアルス自身の力もあり次第にゴールドマンの身体にヒビが入り次々と身体が崩壊していく。十回程の斬撃の末、ゴールドマンはただの金と化したのであった。

 

だが一体倒しただけではまだ目標金額には全然届かない。せめて十五体は倒さなければならないのだ。だがまともに戦っていてはこちらが力尽きてしまう。そこでアルスは戦いの中で考案した対ゴールドマンの戦法を試してみる事にした。

 

ゴールドマンは金属の塊なので魔物の中でも非常に重量級である。それならば足元を破壊すれば簡単に崩れて倒せるのではないかと考えたのだ。アルスは鋼鉄の剣ではなく鉄の斧を構え敵の攻撃を躱しながら鉄の斧で足の関節部分を攻撃粉砕していく。アルスの読み通り足元が覚束なくなったゴールドマンはその場に転倒し自らの重さで崩壊していくのだ。トドメとばかりに鉄の斧を振り下ろしバラバラに細かく砕く。

 

そんな事を繰り返すうち、アルスの下には目標金額を軽く超えるお金が手に入ったのであった。

 

「少しやりすぎたかな…でもいいか、今後の事を考えればお金はあったほうがいいし」

 

リムルダールの敵とも互角以上に渡り合えることを実感したアルスはゴールドマン狩り及びリムルダール周辺での修行を終了。一度リムルダールへ引き返し魔法の鎧を購入した。当然こんな短期間で7700Gを稼いで来るなど思ってもみなかった店主の目玉は飛び出しそうになっていたが…。

 

い、いや〜さすがはベテラン冒険者!と店主渾身のおべっかを尻目にアルスは目的地である虹の祠へと向かう。祠に着く頃には、アルスのレベルは15に到達していたのだった。

 

※ ※ ※

 

時はアルスが虹の祠へ続く橋を渡った頃。

 

「…何者じゃ」

 

虹の祠の祭壇では虹の賢者が勇者ロトの残した鳥が描かれたエムブレム、ロトの印を持ち突然の来客に身構えていた。

 

「はい。私は悪魔の騎士という…貴殿が持つロトの印を頂きに来た」

 

悪魔の騎士は斧と盾を持ち祭壇まで乗り込んで来ていた。賢者はとっさにロトの印を庇うように悪魔の騎士を見据える。だがみるみるうちにその表情は驚愕へと変わっていった。

 

「何故じゃ…何故そなたが竜王の手先なぞに…」

 

「いいえ。答える必要は無い。印を渡せばよし、渡さなければここで貴殿を、殺す」

 

賢者は手元からキメラの翼を取り出し移動する場所を思い描いた、が。

 

「いいえ。無駄だ」

 

悪魔の騎士は素早くキメラの翼をバラバラに刻み落とし、そのまま賢者の胸までも切り裂いた。

 

「か、かは…っ」

 

胸を裂かれた賢者の息は白く漏れ、おびただしいまでの出血はロトの印を血で染める。

 

「はい。悪く思うな」

 

悪魔の騎士は賢者の手からロトの印を奪い去ろうとしたが、賢者は最後の力を振り絞り祠の入口に向かって印を放り投げた。悪魔の騎士が賢者を向くと、既に賢者は苦悶の表情を浮かべ事切れていた。改めて悪魔の騎士はロトの印を回収しようと入口に向かう。コツコツと足音が聞こえ、悪魔の騎士の動きが止まる。

 

「すみません、虹の賢者様はいらっしゃいますか?」

 

魔法の鎧を身に着けたアルスが祠へと入ってきたのだ。中を覗くと異様な光景に息を飲んだ。灰色の鎧を着た騎士と足元に転がる虹の賢者の遺体があったのだから。

 

「ッ!お前は誰だ!賢者様を殺したのか!?」

 

「はい。私が殺した」

 

アルスは騎士の奇妙な返答に違和感を覚えながらも自らの足元に転がるロトの印を拾い上げ懐にしまい込んだ。

 

「いいえ。そのロトの印をこちらへ渡せ」

 

「…断る!勇者ロトの道具をお前なんかに渡すわけにはいかない!」

 

威勢よく戦闘態勢を取るアルスだが脳裏には一つの結論しか無かった。

 

 

勝てない

 

 

「はい。では死ね」

 

幸いにもアルスの立ち位置は祠の入口に接していた。その距離僅か2歩、その2歩がアルスの命を救った。

 

「ルーラ!」

 

悪魔の騎士が攻撃するよりもアルスのルーラが早かった。急いで悪魔の騎士が外に出るとアルスの姿は遥か空の彼方まで遠ざかっていく。今から追いかけたのでは間に合わない。

 

悪魔の騎士は今まで任務の失敗は無かった。だが今回初めて任務に、ロトの印の奪取に失敗した。

 

チッと悪魔の騎士はまるで人間のように舌打ちをしアルスが飛んでいった方向を見つめるのだった。

 

 

 

 




お読み頂きありがとうございますm(_ _)m
悪魔の騎士との戦いはまたいずれ…。
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