ドラゴンクエスト~Ars, please take me with you~ 作:プニたけっち
損傷だらけの鎧を身に着けたまま竜王城へ帰還した悪魔の騎士は群がる魔物を振り払い傷の手当を行う。彼は以前ホイミを使う事ができたが今は使用できない。彼が悪魔の騎士になった時の代償なのか、使える呪文はただ一つである。
(傷の治りが遅い……)
むき出しともなったその素肌とアルスとの戦いで受けた切傷は、鎧の中身が人間である事を示していた。だが今の彼はとても人間とは言えない。鋭く尖った犬歯、人間であるにしては狂気をはらんだその瞳、竜王配下の魔物の特徴である『強い肉体を持つ代わりに回復呪文の効き目が弱い』という特性を得てしまった彼は出血も鎧の損傷も治りが遅い。少しずつ治ってきている傷、損傷、それは彼が人間のままならば既に完治していたもののはずなのだ。全ては彼が人間を辞めたが故に……。
(早く、もっと早くだ!もっと!)
治療中の悪魔の騎士は立ち上がり竜王城の地下で吠えた。
「いいえ!もっと早く治れェッ!」
悪魔の騎士は相も変わらず奇妙な言葉を並べ自身の細胞に喝を入れていたのだった。
一方、水晶球にて何かを覗いていた竜王は響いてきた悪魔の騎士の叫び声を耳にすると鼻で嗤い配下の大魔道と一匹のドラゴンを呼び寄せた。
「お呼びでしょうか竜王様」
「来たか大魔道。貴様に命ずる、南方にあるメルキドを攻め滅ぼしてこい。方法は任せる」
「はっ……ですが、たしかそれは悪魔の騎士にやらせるはずだったのでは?」
ドラゴンの杖を向けられた大魔道という黄色いローブを身に纏った魔物は命令を受けつつも疑問をぶつける。大魔道は別の任務に就いており各都市の侵略は悪魔の騎士が執り行ってきたからである。
「ああアレか、アレはもはや役に立たぬ」
竜王は無情にも悪魔の騎士を切り捨てる。竜王にとって悪魔の騎士は居れば少しは役に立つ手駒程度にしか考えていなかったのだろう。
「所詮は元々人間よ、精々執着している戦士でも道連れにしてもらおう」
「畏まりました。ではさっそく」
大魔道は竜王の言葉を受け取りその場を消した。次に竜王の下を訪れたのは一匹の巨大なドラゴンだった。野に放っているドラゴンとは一回りも違う身体は明らかに他の個体とは違う事を表していた。
「さて、貴様は儂と同じドラゴン族。言葉を使うよりも術を使ったほうが早い。受け取れ」
竜王はドラゴンに向けて思念を送る。ドラゴンの脳裏には先程竜王が水晶球にて確認していた光景が浮かび上がる。
※ ※ ※
「はあ~……あ。魔物の前で姫様のお芝居も疲れるわね……」
竜王城の奥深くに用意された一室でローラ姫は独りきりになったのを入念に確認すると思いっきり背伸びをした。ラダトーム城でローラ姫として誘拐された本物のセシールは奇跡的にも未だ正体が露見する事なく監禁生活を続けている。部屋には意外にも大きなベッドや湯汲場、鏡台に化粧品と大抵の家よりも豪華な物が用意されており、本当に誘拐されたのかわからない質の生活である。ひょっとしたらセシールだった頃に住んでいた自室よりも豪華かもしれない。
「それにしても、ほんっと、自由が無いったら、ありゃしないわ」
ドレスを脱ぎ凝り固まった筋肉を解す為ストレッチをしながら独り言を呟く。周辺には魔物の気配はあるがローラは部屋の中から勝手に出さえしなければある程度の自由は許されていた。それは"絶対に脱走はできない"という魔物側の自信の表れでもあったのだが。
「姫様無事かなぁ……私の無事を知らせれればいいんだけど、さすがに無理だよね……」
ストレッチを終えたローラは湯汲場で身を清める。城の地下には源泉でもあるのか大地の恵みの一つとも言える温かいお湯が流れ出ていた。
「今頃本当に彼氏でもできてたりして……まあ私の身体でも中身が姫様だから気品溢れる感じになってたり、ちょっと見てみたいかも」
一人で思いだし笑いをしながらローラは湯船の中に身を沈め、湯船から長い足を出しながら王宮楽師団が演奏していた曲を思い浮かべ鼻歌を鳴らすのだった。
※ ※ ※
ドラゴンは軽く首を傾げた。
『あれが姫 ? 』
もしドラゴンが言葉を発する事ができたのならきっとこう話しただろう。
「貴様の疑問は正解じゃ。まんまとやられたが、あれはローラ姫ではない。いや、中身はローラ姫ではないと言った方が正確じゃな」
ドラゴンは益々わけがわからなくなった。中身が違うとはどういうことなのかと。
「現代では失伝した呪文や術も多い。しかしそれらがラダトーム王家に幾つか残されていたと仮定した場合、魔力の高いローラ姫が切り札として用意しておいたと考えてみれば不思議な話ではない。やられたよ、儂もよく観察せねばわからなんだ」
竜王が水晶球を宙に浮かべくるくる回し遊ぶ。偶然ローラの生活を見てみなければ疑問もわかなかったであろう。ドラゴンは口を開け鋭い牙を見せる。自分の役目は竜王を騙した偽ローラ姫を喰い殺す事なのかと。
「逸るな、あの身体そのものは間違いなくローラ姫じゃ。この女はもうしばらく生かしておいてやろうではないか。儂らを騙してきた度胸に免じてな。貴様は軍団を率いてラダトームを襲い本物のローラ姫を生かしたまま連れてこい。見せしめに人間どもは殺しても構わん。むしろそうした方が自ら出てきてくれるだろう、お優しい姫君ならな。出てこなければそのままラダトームが灰燼に帰すだけよ」
竜王はくくっと嗤いながらドラゴンの杖を高らかに掲げた。
「ゆけ、そしてローラ姫を捕えてくるのだ ! 」
ドラゴンは天に向かって雄たけびをあげ、他の魔物もそれに続いた。竜王の城から魔物の群れが続々とラダトームへ向けて進軍する。目指すはラダトーム、それはかつての襲撃事件を彷彿とさせるものであった……。
ローラ姫となったセシールはラダトームと本物のローラ姫と自らの身体の危機を知らず呑気に鼻歌を歌うのだった。
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一方その頃、アルスと幽霊のガライはドムドーラ……を通り越し更に南方を行きメルキドに向かって進んでいた。
「あの、ガライさん。ドムドーラを無視してよかったんでしょうか ? 悪魔の騎士が……あの勇者が現れるかもしれないのに」
アルスが心配そうにガライへと語り掛ける。悪魔の騎士はドムドーラで待つと言った、そしてガライの墓で交戦した時に逃げたら町の住人を殺すと言った程だ。アルスが気になるのも無理はない。
「あれかい ? 何故奴に一々付き合ってやる必要があるんだい ? あんなのは奴の勝手な都合だ、放っておけばいい。奴は負けたんだ、君は勝った。奴から逃げずにね。そこまでしてやったんだから文句など言わせなければいい」
珍しく辛辣な言葉を出すガライに、でも……とアルスは言い淀む。その様子にガライはしばし考え込むと……。
「アルス、あの戦いは作戦が上手くいったから勝てたんだ。もう一度君が戦えば負ける可能性は高い、今度は油断もしてこないだろうし。それなら、奴が動き出す前に君がする事はなんだと思う ? 」
ガライからの問いかけにアルスはほぼ反射的に答えた。
「強くなることです」
「その通り。強くなるためには鍛える他に ? 」
「装備を整えることです」
「その通り。君はまだメルキドへは行っていないだろう ? 町の人が言っていたけどメルキドには強力な装備が売っているらしいからね。少しでも勝つ可能性を増やす為にも装備は一新した方がいい。どうも君は考えが一方向に向かいやすいようだね」
ガライからの指摘にうっと言葉を詰まらせるアルス。敵の思考に誘導されていた事に気が付いた、気が付かされたアルスはバツが悪そうに頬を掻く。
ガライはというと内心やはり不機嫌であった。アルスから聞いた悪魔の騎士の正体、ラダトーム王家から認定を受けた勇者である。理由は知らないがそんな男が魔に堕ちた。ガライは本物の勇者を知っている。勇者ロトと呼ばれた女性を。死に物狂いで単身大魔王と戦い抜いた女性を。勇者というよりも彼女の戦いを汚されたような気がして仕方がなかったのだ。
「わかってくれればいいさ。それよりも……」
アルスの歩く速度が少しずつではあれど遅くなっている。正確には慎重になってきている。
「ここら辺の敵は……強い」
「わかるのかい ? 」
「はい……」
アルスの鋼鉄の剣と鉄の盾を握る手が強くなる。敵の強さを感じ取れるだけアルスの腕前が上がったとも言えるが、橋を越えれば超える程、森を抜ければ抜ける程敵が凶悪になっていく。『かげのきし』『スターキメラ』といったこれまでとは一線を画す魔物が闊歩する魔境だったのだ。
(落ち着け、大丈夫だ。これまでの戦いを思い出せ、強さは違っても種族は同じだ)
アルスはこれまでも行ってきた情報収集をしながら歩を進める。考えていた通り違うのは強さのみであり対処法は同じであった。かげのきしはがいこつと同じで状態異常が効かない。ならば正攻法で叩き潰す。
鉄の盾を掲げて突撃し敵の態勢を崩す、そのまま鋼鉄の剣で斬撃を繰り返し敵をバラバラにする。当然敵の反撃も受けるが痛みを気にしてはいられないし黙っていては逆にやられてしまう。手持ちの薬草にも限度があり本来ならばジリ貧だっただろう。アルスにとって幸運だったのはリムルダールで魔法の鎧を購入できた事だった。歩けば体力が回復するのは非常に大きく、これで薬草やホイミの使用回数を抑える事ができたのだった。
その恩恵はスターキメラ相手でも活きる。アルスが度肝を抜かれたのは上級回復呪文であるベホイミを使用してきた事である。以前から雨爺さんからの座学で名前は聞いていて、ガライの墓での強引なレベルアップで習得していたが、アルスがスターキメラにダメージを与えてもベホイミで回復され、こちらは受けたダメージが蓄積する。鋭い嘴がアルスの身体を傷つけていくのだ。
ならばマホトーンだと判断し回復を封じ真っ向勝負に持ち込むのだが、これが正解だったのか被害を少なくすることに成功。柔らかい胴体に鋼鉄の剣を突き刺し絶命させていくのだった。
次々と敵を葬っていくうちにレベルも20に到達、同時に巨大な城塞がアルスの視界に入った。
「あれは……」
「懐かしいね、あれが城塞都市メルキドさ」
「そう、ですか……よかった、たどり着けた……」
アルスは既に満身創痍であり、魔法の鎧がなかったら既に全滅していたかルーラで撤退していただろう。鉄の盾は既にヒビが入っておりあと一撃でも強い衝撃が加わったら間違いなく真っ二つになるのは間違いない。
鋼鉄の剣も同じであった。短期間の間に酷使し続けてきたが為に刃こぼれが目立ってきており何時折れてもおかしくない状態にまできていた。アルスをメルキドまで生きて連れてくることができた、鋼鉄の剣と鉄の盾は無事その役目を全うしたのである。
とはいえ、今の状態で魔物と戦闘は避けたい。アルスは急いでメルキドへ入ろうとしていたのだが、入口を目前としたところで何者かから声がかかる。
「止まれ。君は何者か?」
アルスは頭上から声をかけられた事に驚き周囲を見渡すと、城壁だと思っていた岩の塊からの声だということに遅れて気がついた。
「な、土が喋った!?」
アルスが見たもの、それは土で出来た巨人であった。頭部は煙突を逆向きにしたような形で両手両足のある大きな巨人。以前戦ったゴールドマンよりもずっと大きな巨人である。
「再度問う、君は何者か。何の用でメルキドまで来た?返答次第ではこのゴーレムの拳を喰らわす」
物騒な言葉に慌ててアルスは答える。
「お、俺はアルスという旅の者です。ここへは強い武具を求めて買い物に来ました!」
「なにぃ?買い物ォ!?」
「はい、そうです!」
ゴーレムは大きな二つの眼を向け怪訝そうな様子でアルスを睨むと、数秒後には横へ動いた。
「ならいいか。ようこそ城壁都市メルキドへ」
アルスは突然の歓迎ムードに転けそうになるもギリギリのところで耐える。
「あ、ありがとうございます」
なにはともあれ、アルスは命からがらメルキドへ入るのであった。
※ ※ ※
城壁都市メルキド。高い城壁と強い武具、そして町の最大戦力である土の巨人ゴーレムによって竜王の軍勢を相手に唯一善戦できている都市である。それ故に町は活気に包まれ、アルスが見てきたどの町よりも勢いがあると感じていた。
町の人に店の場所を教えてもらうが、店の数は膨大で見て回るだけでアルスは目眩がする程である。何処へ行っても店、店、店、武具屋だけでなく果物屋、八百屋までもあり城塞都市というよりも商人の町といった様相だ。先に宿を取ったアルスは幾つかの店を訪問するが歩くだけで疲れてしまう。それに大体の店で売っている物がこれまでに訪れた店での品物と変わらない。アルスとしては何とか新たに性能の良い品物を手に入れたいところではあるのだが、メルキドへ来るまでの疲れもあり既に疲労困憊。この店で最後にしようと思い入店する。
「失礼します、売り物を見せてほしいのですが」
「はいはいいらっしゃい」
アルスが訪問した店は他の店よりも外装に金をかけているような店であったが、逆に言えば他の店よりも儲けているとも言える。店主は恰幅の良い如何にも商人と言える見た目、どれだけ食べればこれほどまでに太れるのかと伺ってみたいものだとアルスとガライは考えていた。
「……この店でもダメか」
「おや、当店の売り物がお気に召しませんか ? 」
「あ、すいません……なるべく性能の良い物が欲しいのですが、品物が他の店と同じで……」
アルスの独り言に反応した店主が声をかける。言葉の額縁だけを取れば売り物に文句を言ったようにも聞こえる為謝罪して事情を説明した。店主はアルスの装備品を見ると、ふむと二重顎を撫でながら別の装備品を取り出した。
「これならばどうでしょう」
「これは……」
店主が取り出した剣と盾は明らかに質が違った。真っ赤な刀身にギザギザ感のある両刃剣……の見本、女性を模した美しく磨かれた白銀の盾。
「炎の剣、水鏡の盾といいます。この町で間違いなく一番の品です、勿論お値段も張りますが……」
店主の言葉に嘘偽りなし、文句なしの逸品である。
「あの、どうしてこれを先に出してくれなかったんですか ? 」
「ええ、まあ……それには色々と事情がありまして……」
この店主が儲けていたのは今出した品物が理由なのだが、あまりにも売りすぎて他の店の嫉妬も買ってしまい危機感を感じた店主は品切れという事にして他の店と同じような物を売る事にしたのだった。しかしアルスは魔法の鎧を装備しておりお金は持っていると判断。さらに持っていた鋼鉄の剣と鉄の盾をよく見れば耐久限界ギリギリまで使用している事から武具の性能に頼る事ない戦士だと見直し商品を出しなおしたのだ。
「ええと……何とか足りますね」
剣と盾、お値段にして合計約27000G。魔法の鎧よりも金額が違いすぎるのだが、アルスは以前ゴールドマンを乱獲した際に手に入れた大金がある。加えてその後の旅で手にした分も加えると本当に全財産はたけば買える。
「おお……両方とも購入できる方はここ最近おりませんでしたのに……」
「以前ゴールドマンを倒してそれで……ところでこの剣の見本というのは ? 」
「この炎の剣なのですが他の武器とは勝手が違いまして、一種の魔法剣というやつなのです」
魔法剣ーー剣自体に何らかの魔法による特殊能力が内包されている武器である。勇者ロトの時代でも数が少なく、今や現存し流通しているのはこの炎の剣一種類のみ。内包魔力は無限ではないので都度剣に補充しなくてはならないし、最近は買い手もいなかったので魔力補充を怠っていたのだ。
「……」
「そ、そんな目で見ないでくださいよ……」
アルスの店主を見る目は冷たい。ラダトームの店で働いていたアルスにとって売り物に不備があるのはどうしても許せないのだ。
「わ、わかりました。魔力補充は無料にしますし個人での方法もお教えしますから……」
「……まあそれなら」
アルスの表情は固かったが一応の落としどころとしてはまあまあか。そう考えたアルスはこれ以上の追い打ちを止め、既に商品として完成している水鏡の盾のみを受け取り、明日また来てくださいという店主と別れ店を出た。
* * *
さて、急だがメルキドの守護神であるゴーレムの話しをしておきたい。
まずゴーレムは良質の土に魔力を練りこみ長い時間をかけて表面を冷やして固め、一つ一つ丹念に積み重ねた職人技によって完成された物体である。基本構想は勇者ロトが大魔王討伐とほぼ時を同じくして出来上がり、それから息子の代で必要な材料を揃え、孫の代……つまり先ほどアルスにゴーレムを通じて話しかけた男『マゾット』が完成させた。まさに強き想いと執念が実を結んだのである。
このメルキドという町はラダトームから距離的に遠く一切の援助が見込めない故に魔物から住民を守る為、いつしか城塞都市という姿へと形を変えたという経緯がある。これは当時大魔王という存在がいた事から当時のラダトーム王家を責めるのは酷だし事情はメルキド側も分かっていた為にわだかまりは無かった。
全ては『自分たちの手で町を守る為』
勇者ロトのような一握りの英雄による救済ではなく自らの手で平和を勝ち取る。なんとも天晴、素晴らしき想いである。ガライは生前メルキドに滞在した折この話しを聞き詩を作った程である。アルスもこの話しをガライや宿屋の主人から聞いた時は素直に尊敬の念を抱いた。
そんなマゾット三代による努力と知恵の結晶であるゴーレムだが実動にあたり二つ難点があった。
一つは"ゴーレムの行動範囲が狭い事"である。ゴーレムは素早く強いが魔物を倒しメルキドを守るという製作者の強い意思のもと作られたが故か、メルキドから離れて動けない。マゾットもこの問題点は解消できず、まあメルキドを守れれば今はそれで構わないと考えていた。
もう一つは"どうやってゴーレムに指示を出すか"である。
ゴーレムは一種の魔道生命体、人間の言う事を聞かせるには何か触媒が必要であった。悩みに悩みぬいたマゾットの父親はガライが残した詩からヒントを得る。かつて勇者ロトは精霊神ルビスにかけられた呪いを解くために"妖精の笛"という道具を使った。もしこの笛を触媒に使えればと考えた彼は手を尽くし妖精の笛をマイラの町で入手。研究を重ねゴーレムの部品である土と妖精の笛の魔力を同調させることに成功。マゾットの手によって完成したのであった。
このゴーレムの強さは竜王軍にとっても脅威であった。妖精の笛の魔力は並大抵の物ではなく笛の破壊は不可能、正面からの攻略はほぼ不可能であった。何せここら辺一帯の魔物はゴーレムを警戒しメルキドには近寄らないのだから。
だが、もしもである。このゴーレムのコントロールが竜王軍に移ったら ?
メルキド攻略を任された大魔道は最初からゴーレムを奪い取る事を考えていた。別にメルキドで何かを探すわけでもなし、ただ町そのものを攻略すればよいのだから馬鹿正直にゴーレムを破壊しなくてもよいのである。
竜王軍の中で竜王の次に魔法を熟知している大魔道はゴーレムの弱点を即座に看破し、誰もが眠る夜更けと共に行動を行った。
ゴーレムの弱点、それは『妖精の笛を吹く者がいなければゴーレムはただの木偶の坊』
大魔道が行った事は攻撃ではなく、動かないゴーレムに対し丹念に魔力を注入していく。ゴーレムを構成する土へ念入りに……。次第にゴーレムの体内を駆け巡る魔力は妖精の笛と同調する聖の魔力ではなく、魔物の体内を回る緑の血のような陰の魔力へと変貌した。
翌朝、大魔道号令の下魔物が攻撃を開始する。やれやれとマゾットが妖精の笛を吹き鳴らし我が子のようなゴーレムに魔物撃退の指示を出す。
しかしゴーレムが行ったのは魔物の群れに正義の鉄槌を浴びせる事ではなかった。
「ど、どうしたというのじゃ ! ? 」
ゴーレムはメルキドの城壁を殴りつける。メルキドの守護神は悪魔へと生まれ変わったのだ。
予定が少々変わりまして、前話あとがきで述べた悪魔の騎士との戦いはまだ先になりそうです。
お読みいただきありがとうございました。