黑火   作:球天 コア

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呪詛、到来

 

 

 

 

……初任務から一ヶ月。

夏の暑さが一足早く目立ってきた頃。

 

あれから俺達は数々の任務と授業……そして五条先生の無茶振りを沢山こなして来た。

 

元々俺達に振られた階級が平均的に高かったのもあり出てくる任務は術師ピカピカ一年生がやるには相当な難易度のものばかりであった。

 

おかげでしょっちゅう大きい怪我を負い、毎回のように家入さんの世話になったものだ。

 

 

 

ちなみに家入さん……家入(いえいり) 硝子(しょうこ)は呪術高専に所属する医師であり、習得が非常に困難とされる「反転術式」を使いこなす凄い人である。

 

何が如何に凄いか?

 

そもそも反転術式とは「負のエネルギー」である呪力を掛け合わせることで産まれる「正のエネルギー」を利用して様々な効果を得れるものだ。

 

そんな反転術式は、主に損傷した肉体の再生、回復に使われる事が多い。

だが前述の通り修得が難しいので、使える術師は五条先生を含めて少数。加えてそんな反転術式を自身ではなく他者に施せるという部分まで見れば、五条先生ですらそのフィルターに引っかかってしまう。

 

それをすり抜けたのが、何を隠そう家入さんなのだ。

 

現状、他者に反転術式を施せるのは彼女だけであり、故に多くの術師が彼女にお世話になっているそう。

家入さん本人曰く「めっちゃダルい」らしい。

 

 

 

 

……おっと、話が逸れてしまった。

とにかくそんな人に度々お世話になりながら、俺達は成長したというわけだ。

 

 

 

 

……そして、今日は日曜日。

 

学生達が伸び伸びとしてるか、課題に明け暮れているであろう休日に、俺は分校内にある資料室に積まれた呪術に関する書物を持ち出し自室で読み漁っていた。

 

一ヶ月経ったとはいえ、呪術師の世界の奥深さは計り知れない。

 

授業の大半が外での体育(というか五条先生が座学とかの授業を殆どしてくれない)であり、それに加えて授業の間に任務を挟むとなると習ったことを忘れてしまう事も多いのだ。先刻の反転術式の知識もそうである。

 

そうゆうわけで俺は五条先生から資料室の鍵を借り、呪術の知識の復習、並びに予習をすることにした。

 

 

 

現在は、呪霊の種類と登録済みの呪霊に関する書物を読んでいる。

簡単に言えば「呪霊専門の図鑑」と言ったところか。

 

 

読んでみると、これがまた面白い。

虫や恐竜の図鑑を読んでいる時と同じ気分になる。

 

本の厚さは通常の図鑑の比ではないが、まぁスラスラ読み進められるので無問題(モーマンタイ)だ。

 

 

 

 

中でも目に留まったのは有名なトイレの花子さんや、初任務の際に祓った蜘蛛型の呪霊である。

 

 

花子さんや口裂け女といった妖怪や都市伝説の類いは呪霊にもいるらしく、仮想怨霊と言われている。

しかも、それらは総じて階級がアホみたいに高い。

 

花子さんに至っては特級に区分されている。

アニメや児童書でよくデフォルメされて描かれる妖怪であるが、末恐ろしいったらありゃしない。

 

 

初任務に遭遇した蜘蛛の呪霊は、巣の作り方や住処等によって個体差はあるものの、呪いの集め方は大体が蜘蛛の巣による対象の捕獲に寄っている。

 

蜘蛛型ゆえに、生態も本物の蜘蛛に近いようだ。

 

 

 

そんな感じで次から次へとページを捲って読み進めていると、部屋の扉からノックする音が聞こえた。

 

本片手に開けてみると、そこには五条先生が。

 

 

「あっ、先生!こんにちは」

「練徒は勤勉だねぇ……目とか疲れないの?」

「本を読むのは昔から好きなので……」

 

「…それだけ勤勉なのに高校受験落ちたってマジ?」

「…………」

「あ、ごめん」

 

 

睨みつける俺に先生は軽く、本当に軽く謝った。

 

 

「……それで、五条先生はどうしてここに?」

「あぁ、それね。また依頼が来たから、その報告に」

 

「へぇ……依頼……どんな感じのですか?」

「今回は、練徒初の単独任務だよ」

「…!」

 

 

 

五条先生から伝えられたのは単独任務の内容だった。

 

だが本来なら単独での任務遂行は二級呪術師になってからのはずだが……?

 

 

「俺、もう単独で行っていい階級でしたっけ?」

「あれ?言ってなかったっけ、練徒もう準一級だよ?」

 

「…じ、準一級!?」

 

 

俺、そんなに階級上がってたの!?

いやでも、だとしたら生徒証にある階級の更新とかで聞く機会はあったはずだが………

 

……さては五条先生、手続き勝手に済ましたな?

 

 

「あ、はいこれ。階級更新しといた生徒証」

 

 

五条先生が新しい生徒証を渡してきた。

ほら言わんこっちゃない。

 

……色々と文句を言ってやりたいところだが、これ以上問い詰めたところでテキトーにあしらわれる気しかしないので、俺はもうさっさと本題に入ることにした。

 

 

「……任務の内容は?」

「いつも通り呪いを祓うだけなんだけど……実は、今回目撃された呪霊……かなり厄介でね」

 

「厄介…?」

「……まぁ、詳しいことは追って連絡するよ。明後日に任務先へ出るから、準備しといてね〜」

 

 

五条先生はそう言うと、そそくさと俺の部屋の前から去っていく。

チラッと見えた五条先生の手元には「期間限定」とデカデカと書いてあるスイーツ店のチラシがあった。

 

 

明後日か……しかも初めての単独任務だ。

 

今まで円呼さんや新夜くんの二人、もしくはどちらか一人と一緒に任務にあたっていたので、俺だけで戦うと聞くと少し緊張する。

 

とにかく、明後日に向けて努力しておこう。

 

 

 

 

 

 

 

           ◻︎

 

 

 

 

 

……2日後。

 

 

五条先生と共にやって来たのは、立ち入り禁止の規制線がビッシリ貼られたマンションの前であった。

 

俺は、改めて依頼内容を説明される。

 

 

今回の任務の内容は、マンション敷地内に出現するという呪霊の掃討である。

誰も住んでないはずの場所から物音が出たり、敷地内で空中に浮かぶ黒い影を見たという情報もある。

 

いわく付きの物件と言えばそれまでだが、マンションの片隅にある一室に限らず、敷地内の全体で起こっている現象らしい。

 

住民達は一時別の場所に避難してもらっているそう。

 

 

「……これの、どこが厄介なんですか…?」

 

俺は改めて、五条先生に問う。

 

 

「ここに出る呪霊、未登録の可能性があるんだよ」

「未登録…!?」

 

 

「そう。ここで起こった怪奇現象が、登録されてる呪霊の行動パターンのどれとも一致しなかった。というかバラバラなんだよね。ムラがあるっていうか」

 

「…………」

 

 

……未登録か。

まぁ、相手が誰であれぶっ飛ばすだけだけど。

 

 

「まぁ……とにかく頑張ってね!それと、できれば呪霊の特徴とかも覚えといて!登録する上で実際に戦った術師の意見って超重要だから!」

 

「わかりました……」

 

 

……敷地全体を覆うように、帳が降りる。

 

すると。

 

 

『ぽーっ………ぽーっ………』

 

「……!!」

 

 

……帳が完全に閉まった途端、フクロウのそれにも近い鳴き声が上空から聞こえた。

 

黒い影……間違いない。アレが騒動の原因だ。

 

上空を優雅に漂っていたのは、フクロウ……ではなく、アカエイのような姿をした呪霊であった。

 

……にしても、めっちゃデカい。

大型の呪霊と対峙する機会は何度かあったがここまでデカいのは初めてだ。

ハンググライダー四つ分はあるんじゃなかろうか?

 

一体何から生まれた呪いなのかはさておき、まずは宙に浮かんでる敵を落とさなくては。

 

 

だが、敵はマンションの11階よりも高い位置をフワフワと漂っており、とても攻撃は届かなそうだ。

 

……よし、初めてだけど、やってみるか。

 

 

 

 

生得術式にも、術として出力する形……つまり技や型が幾つか存在している。

 

これは俺がここ一ヶ月で自分なりに広げた術式の解釈で得た技だが、やってみる価値はあるだろう。

 

 

足に呪力を集中させ、一気に練り上げる。

そして限界まで呪力を高めた刹那に、黒閃による空間の歪みから元に戻る際の反動を利用して地面を蹴る。

 

 

「………『黒呪錬術』……『飛天(ひてん)』!!」

 

 

爆音と共に足から立つ黒い火花。

 

地面を蹴ってジャンプした俺の身体は、自分自身でもビックリするくらい高く飛んだ。

呪霊のいる高さも、いとも簡単に超えてしまった。

技名はその場の思いつきだけど、こりゃすげぇや。

 

 

「よし………このまま落とす…!!」

 

 

体が落下に入ったタイミングで、足に集中させていた呪力を右拳に移し、呪霊の脳天めがけて急降下。

呪霊の頭に直撃する。

 

 

「『黒閃』!!」

 

 

呪霊と共に地面に落下。

地面に落ちる時はどうしようとは考えてたが、呪霊をクッションにしたおかげでなんとか助かった。

 

……一方、呪霊の方は灰になって消えていく。

なんか……随分あっけなく終わってしまったな。

 

俺はあんまりスッキリしないまま、帳の外へと出ようと歩き出した。

 

 

 

 

 

……その時。

 

 

 

 

 

 

「……やぁ、柊木 練徒くん」

 

「………!?」

 

 

 

何者かに声をかけられ、俺は瞬時に後ろを振り向く。

 

そこにいたのは、僧侶のような格好をした変な前髪の男性が1人。

 

 

……誰だ?

……どうやって帳の中に入ってきた?

……なんで俺の名前を知っている?

 

 

警戒する俺をよそに、男は言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………私は夏油(げとう) (すぐる)。呪術師の楽園を築く者さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー以上




今日は出来悪めでごめんなさい
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