翌日。
「いよーっし、みんな揃ったねー?」
「「「………」」」
………本当に翌日決行になってしまった。
実践までもう少し日が用意されるのではないかと
思ってしまったが、そんなことはなかった。
何かの冗談かと最後まで思ったが、そういえば、と
俺は改めて思い出した。
・・・・・・・・・・
五条悟とはそうゆう人なのだ。
あからさまに下がっているムードなんて気にもせず
五条先生は少しテンション高めで……
「そんじゃ早速今回の任務を確認しておこうか!」
と言いながら、俺の後ろに立っていた伊地知さんを
手招きする。
直前まで、黒い車のバックミラーを拭いていた彼は
急いで五条先生の横に並び、軽ーく咳払いをすると
俺達に説明を始めた。
「で、では今回の任務の説明をさせて頂きます……
場所はこの、旧型の発電施設ですね。この施設では
原子炉を用いて発電をしていたので、撤去作業等が
あまり進んでいなかったのですが、その間、破れた
フェンスを潜って、夜な夜な肝試しをする人々が、
年々増えていきまして……あれよあれよと言う間に
呪いの溜まり場になってしまったのです」
つまり俺達は、この発電施設に這っている呪いを、
片っ端から祓っていく、ということだ。
すると、横から五条先生が補足してくる。
「一応、定期的に高専から術師を送ってはいるから
呪いを少しずつ減らしているつもりなんだけどね。
今回は3人に、その総仕上げをやってもらうよ」
「もし危険な事……例えば強力な呪霊を確認したり
呪詛師が乱入してきたり、これは無いと思いますが
特級相当の危険な任務と判断した場合、すぐに私か
五条先生に連絡を入れてください」
「「はい」」
「しゃけ」
いよいよ、俺達の初陣が始まる。
人生で初めて本格的な呪いとの御対面だ。
身と気を引き締めて、頑張らねば。
「では、帳を下ろします」
『闇より出でて 闇より黒く』
『その穢れを禊ぎ祓え』
伊地知さんがそう唱えると共に、周辺は暗くなる。
空に巨大な幕が現れ、夜のような黒い空へと色を
染め替えていく。
『帳』
外から中への侵入を防ぎ、内部を視認できないよう
にする結界術の一つ。
これによって呪術師は民間人に見られない様に活動
する事ができ、更にこの帳には、隠れた呪いを炙り
出す効果が含まれている。
伊地知さんの開いた帳は徐々に大きくなっていき、
最終的に地面に着いて発電所全体に覆い被さる。
「……では皆さん、お気を付けて」
「気張って、いってらっしゃ〜い」
伊地知さんと先生は僕らに手を振り、帳の黒い壁を
ヌルっと抜けて外に出ていった。
……さて、どうしよう。
先程から気張ろう気張ろうと意気込んでいるものの
いざ五条先生と別行動となると一気に足が竦む。
五条先生という安心できる存在が消えたのもあるが
それ以前に、俺は新夜くんや円呼さんとの親睦が
全くもって築けていない。
俺が聞いているのは、二人の戦闘スタイルだけだ。
これからどうしよう……
「……おい………おい、柊木…!」
「……!?」
何回か新夜くんに大声をかけられてた俺は、遅れて
それに反応する。
「何ボサッとしてんだよ」
「あっ……ご、ごめん……なんか、五条先生が横に
いないと、ちょっと不安になって……」
「んだよ、あのグラサン野郎のことか」
新夜くんはケッと愛想尽かしてそっぽを向く。
こんな態度を取られると嫌われてるんじゃないかと
邪推してしまいそうだ。
すると。
「ツナマヨ、すじこ」
「まぁ確かにあのグラサン野郎が強いのは事実だし
そうなる奴もいるっちゃいるのか……」
おそらく、円呼さんと新夜くんが会話している。
円呼さんが彼に何と言っていたのかはわからないが
新夜くんの様子から察するに、俺と彼の合間に入り
仲介しようとした……のだろうか?
〔んんまぁぁぁああぁぁあだぁぁぁあああ……〕
「「「……!?」」」
すると、それは本当に突然始まった。
震える人の声が俺達の後ろから一つ二つ三つと
数を増やしていく。
3人一斉に、後ろを振り向いた。
その先には、巨大な人型の異形が7体いた。
身長はぱっと見3mほどで、若干だが小太り気味。
剥き出しのヘソに眼球が埋まっていて、その腕は
とてつもなく太くて屈強。
形ある呪い…………呪霊の群れだ。
「これが呪霊…よし、一人2体ずつ相手するぞ!」
「しゃけ!」
「うん!………ん?」
待って、それだと1体余って……?
「『爆 ぜ ろ』!!」
「…!?」
円呼さんが、おにぎりの具以外の言葉を喋った。
それにも少し驚いたが、問題はその言葉を聞いてた
呪霊の肉体だ。
彼女の『爆ぜろ』という言葉を聞いた呪霊の肉が、
文字通り火を散らして爆散したのだ。
……これが、呪言か。
「……シン・陰流 居合『夕月』」
ザシュッと、刃物が肉を削ぐ音が鳴る。
パッと確認してみると、それは新夜くんだった。
彼の足元には呪力を用いた小さい円形状の結界……
簡易領域が広がっている。
新夜くんの放つ鋭い抜刀は、あっと言う間に2体の
呪霊を塵に変えてしまった。
………っということは…………
〔ぃぃいいそぉおおおいいいいでえええぇ!〕
三体の呪霊が、俺に向かって突撃してきた。
やっぱり、俺だけ3体相手しなきゃいけないの!?
……でもまぁ、来たなら来たで迎え撃つだけだ。
五条先生に教わった通りに………
……右拳に、呪力を込める。
五感と第六感を研ぎ澄ませろ………
ここぞという時………タイミングを見計らって………
〔かぁぁあああええぇぇれええええ!!!〕
「そう簡単に帰るか…!」
…拳、そして、俺の術式を絡めて、呪力を放つ。
刹那、黒い火花が、空中を舞った。
「『黒閃』ッ!!」
〔〔〔……!?!?!?〕〕〕
「「……ッ!?!?」」
ーーーーーーーー以上
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