……2日前。
「…はぁっ!!」
俺は先生に言われた通り、拳に呪力を込めて先生の
手のひらを思いっきり殴ってみる。
刹那、俺の拳と五条先生の間に迸る"黒い火花"。
その衝撃による強風が俺の髪を靡かせた。
初めて出たそれに驚いた俺は後ろに蹌踉めく。
対し、五条先生は髪はおろか身体すら一歩たりとも
動くことはなかった。
「……うん、飲み込みが早くていいね」
「ご、五条先生、今のって………!?」
「さっきやったのは「黒閃」ってゆーんだけどね。
詳しく説明すると………」
まず、呪力と拳が同時にぶつかる間には必ず"差"が
存在する。
その差わずか0.000001秒以内に呪力が衝突する。
すると、その瞬間に空間が歪み、呪力が黒く光る、
一つの現象が発生する。
それが、「黒閃」。
威力は通常の打撃より遥かに凄まじく、その威力は
単純計算で平均2.5乗にも上がる。
そして黒閃を発生させると、呪術師はスポーツにおける『ゾーン』に入った状態になり、一時的にでは
あるとはいえ、呪術師が意識的に行っている呪力の
操作が呼吸するかのように自然と行われ、圧倒的な
全能感を味わう………らしい。
俺の場合、全能感……はないにしろ、確かに身体の
中のポテンシャルが跳ね上がったような、例えると
気分の高揚に近しい感覚は感じられる。
すると。
「…そして、ここからが本題だよ。練徒」
「えっ?」
本題…?
もしや、今度は術式のほうだろうか?
と一瞬思っていた俺の思考は、五条先生の次の一言
でごっちゃになった。
「君は今、黒閃を発動したと同時に、術式も一緒に
発動していたの、気付いた?」
「…???」
先生は、俺が無自覚に術式を発動させたと言う。
……何を言ってるんだ、この人は?
術式は呪力を流さないの使えない。
だが俺は、術式に呪力を流した覚えなどない。
ましてや術式がどんなもので、どんな感覚なのか
知覚すらしてない。
一体どうゆう意味なのだろうか?
「君の術式は近年よくある変わり種の間でも中々に
癖の強い術式でね。式神とか、結界とか、領域とか
についてるタイプと違って、君の体内を廻っている
"呪力そのもの"に術式が刻まれてるんだ」
「呪力…そのもの?」
「その呪力は、黒閃の黒い光と空間の歪みを絶え間
なく蓄えていて、何かに呪力を込めて放とうなら、
それら全てが「黒閃」という一撃に変わる」
「……!!」
直後、俺は五条先生の理解と己の術式の恐ろしさの
2つに襲われた。
続けて、五条先生は言う。
「この術式に名前を付けるとするなら……」
〈『
ーーーーーーーーそして、現在。
俺の一撃は、迫り来る呪霊の腹に風穴を空けた。
続け様に襲いかかる2体の呪霊の攻撃を躱しつつ、
呪霊の巨大な手を足場にし、脚部に呪力を込めて
1体の顔面を蹴ると、呆気なくそれは爆散。
そして、その勢いで身体を空中でスケートのスピン
のように回転。拳にその勢いと呪力を込めて、最後
に残った呪霊の脳天に再び黒閃を放つ。
今度は指一つ残らずただの肉塊に変えてみせた。
そしてよくあるスーパーヒーロー着地を決めて華麗
に終了……と思ったけどコケちゃった。
………初戦闘にしては……まぁ、いいのかな?
2日前に五条先生に片っ端から鍛えてもらったのと
今までフリーターでコツコツ筋肉つけておいたのが
良かったのかもしれない。
俺は黒閃とは別に、ちょっとした高揚を覚えた。
………すると。
「お、おい………柊木……お前………」
「………ん?」
呪霊を祓い終えた新夜くんが、何かにビビっている
かのような表情でこちらにやって来た。
「新夜くん、どうかしたの?」
「どうかしたの?じゃねぇよ……なんだよ、今の……
黒閃を3回連続で決めるなんて………」
「えっ、俺の黒閃、なんか変だった?」
「いやいやいや…無自覚なのがおかしいだろって!
黒閃を狙って出せるヤツなんかそうそう…っつーか
絶対いねぇよ!?」
「でも、そうゆう術式だから、としか………」
「……ええ……引くわ………」
………なんか引かれた。
どうやら彼の畏怖の対象は俺だったらしい。
まぁ、無理もないだろう。俺みたいなタイプの術式
は全く見ないって五条先生も言っていたし。
ここで俺は(あっ、そういえば)と思い円呼さんの
方に顔を向けた。
「円呼さん、そっちはどうで……………っ!?」
瞬間、俺はびっくり仰天。
後ろを向いた途端、目の前に円呼さんの顔がある。
その顔は目を輝かせながら、俺のことだけをじっと
見つめていた。期待の眼差しに似たような表情だ。
「ずじご、じゃげ…!めんだいご!!」
「………」
……何言ってるかサッパリわからないけど。
しかもなんか声枯れてるし。
だが、この中で唯一、彼女の言葉を理解できる新夜くんが俺の横から翻訳をしてくれた。
「「今のすごいね!かっこいい!」……だってよ」
「えっ…ええ?ええっ、そ、そうかなぁ……」
「うっわ、コイツあからさまに照れてる」
「ちなみに円呼さん、なんで声枯れちゃったの?」
「呪言の副作用みたいなもんだ。強力な術式である
故に、使用者の声帯や喉に負担がかかるんだよ」
すると新夜くんはポケットからのどスプレーを取り
出して、円呼さんに投げ渡す。
円呼さんは綺麗にキャッチし、マスクを下げて薬
をのどの奥にプシューっとかけた。
そして俺は、ここで初めて円呼さんのマスクの下を
初めて見た。
口元には蛇の目の模様……いわゆる呪印が浮かんで
おり、口の脇から伸びている。
よく見ると舌の方にも牙のような呪印があった。
そして円呼さん……中々の美貌である。
五条先生並みの白くて綺麗な肌に、濃いめの翠眼。
薄い桃色で柔らかそうな唇、と。
見れば見るほど、見入るくらいに綺麗で………
「
「えっ、あっ、ご、ごめん………」
赤面し、恥ずかしげに俺を睨む。
途端に彼女がとったその仕草に、俺は慌てて目線を
帳の方に逸らした。
……ん?待てよ……?
今さっき、円呼さんの言葉が理解できたよな…?
もしかして、言葉はわからずとも表情や仕草とかで
判断していけば………
「おーい、そろそろ次行くぞー」
「「…!?」」
俺達はいつの間にか先に進んでいた新夜くんのあとを、急いで追いかけた。
ーーーーーーーー以上
お久しぶりの投稿です。
長ーい間失踪してしまい申し訳ありませんでした。
理由としては進路活動が忙しかったのと、呪術廻戦本誌との齟齬をなるべくなくすために色々修正を重ねていました。
投稿頻度は非常に低いですが、それに見合うクオリティの二次創作を皆さんに提供できるよう奮闘していく所存でございます。