地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
C.E.75、地球連合とプラントの二つの勢力による二度に渡る大戦を乗り越えて尚、世界は安寧とは程遠い。巻き起こる独立運動、遺伝子操作によって生まれたコーディネイターと呼ばれる人々を敵視し排除しようとする、ブルーコスモスと呼ばれる過激な思想団体による大規模な軍事行動。
巻き起こる暴力と悲しみ、破壊と死を伴う混乱。それに対抗し、終わらせる為に設立された世界平和監視機構コンパス。その活動の中心を担う旗艦、スーパーミネルヴァ級強襲揚陸艦『ミレニアム』。その中の居室、その一つで俺、ゼフォー・ローワンは居た。
「このぐらいまでになったら、そろそろ切っていいかな。髪」
姿見の前で、自身の身嗜みを気にしながら。いや、こんな表現だとナルシシズムが過ぎるかもしれないが。
実際にはオシャレを意識してなんてポジティブな意味合いでなく、首筋というか頸椎の辺りに存在する大きめな傷痕を、手鏡と合わせて確認しているんだからしょうがない。
「……はあぁぁぁ」
手鏡から手を離し、大袈裟に溜息。大仰なしかめ面を浮かべたつもりだが、目の前の姿見に映る茶髪に茶の瞳なミディアムボブカットの、造形だけでいうなら快活さを感じさせる少女に見える顔面は僅かに眉を顰めた程度の表情しかない。
「だが、男だ」
今度は腹が立つほどのドヤ顔を浮かべ、出来る限り低い声を出そうとしたが失敗。
口角が僅かに上がった口元から、中性的としか言えない声が出てくる。
自身の後方に浮かんでいると知覚できているヘルメットへと手を伸ばしながら、モソモソと半端な状態のパイロットスーツを着込む。次回の出動には俺も合流する以上、即応態勢でカタパルトデッキ付近に行って挨拶やら機体の確認やらをしておこうか。
すれ違う人を横目に、廊下を泳ぐように進む。160cmにも届かない背丈ゆえに、悠々と進む。
こんな所では便利だなと思う一方で、周囲の視線が子供を見るような生暖かさと、バツの悪さの入り混じったものであることにむず痒さを覚える。我が身の境遇を顧みれば、寧ろ周りの善性に感謝すべきまであるとは分かっているけれど。
しばらく進むとそんな視線の種類がガラリと変わったように感じる。正直に言って自身でも正確な表現の難しい感覚……自身の
とはいえ仕方がない。さっきまでは地球連合を構成する勢力のひとつ、『大西洋連邦』から出向のクルーがほとんどなセクションで、ここからはプラント側の『ザフト』出向のクルーがいるセクションなのだから。
そもそも、ミレニアムの所属も本来はザフトなのだから、異物どころかかつての敵国所属の相手に向ける視線に籠ったものと考えれば寧ろ変わらない方が怖い。
そうして歩みを進め、或いは体か?兎にも角にもカタパルトデッキ近く、MSパイロットの待機場所となっている部屋へと後少しだ。
『コンディションレッド発令、コンディションレッド。アフリカ共和国、オルドリン自治区領内へブルーコスモスと思われる攻撃部隊が侵攻』
サイレン、それに続き響く放送に眉間に皺が寄るような感情が湧く。表情筋と感情のリンクが上手くいっていないのか碌に表情が浮かばない以上、実際にはぴくりとも動いてはいないだろうが。
『パイロットは搭乗機へ、各隊員は速やかに所定の作業を開始せよ』
周囲のクルーは淀みなく作業へと移り、目的地だった待機部屋から水色を基調としたパイロットスーツの女性と、それに続いて赤を基調としたスーツの男女一名ずつ……今回参加するヤマト隊のメンバーが各々の搭乗MSへと向かう。
「急げよ、ゼフォーっ!」
「うっス!」
こちらに気付き声をかけてくれた赤いスーツの男性、シン・アスカ大尉に返事と敬礼を行いながら自身の搭乗MSへと向かう。
……色々と思うことはあるが、今は置いておく。
自身に関わる放送を聞き逃さないよう気をつけながら向かえば、前方から整備士……俺に専属でつくことになっているヨスタ・デイビス曹長がPDA片手に横に並び声をかけてくる。
「お早い到着で、特務少尉*1」
「たまたまっスよ、たまたま。後その呼ばれ方こそばゆいっス」
自身と同じ大西洋連邦からの出向であるヨスタ曹長と、軽い挨拶を交わして変更箇所なんかの報告を受ける。
「『ムラサメ』の頭部へと改造したことによるモニター配置、及びヤマト隊共通の大気圏突入ユニット装備のための小改修によるバランス変化は、この前送ったシミュレーターデータ通り。触ったのはどの程度だい?」
「軽く15時間ほどっス。ここまで早いとは思わなかったっスね」
「入れた時期考えたら、そこまでやってりゃ十分だわな。あと、前言ってたワイヤーアンカー、もう装着して使えるぞ」
思いもよらない言葉に思わず移動しながら顔を向けてしまう。
「マジっスか、早いっスね」
「おいおい、頼むから前向いてくれよ。ドタバタしてんだから」
人や物の配置は感じるから問題はない、と思いたい。
「スミマセン、いやシミュレーターにはあったっスけど実物はもうちょっとかかるかと」
「シールド投げる癖が抑えられるならって、小難しい言い回しの長文を早口で捲し立てられちまったがね。自重してくれな、頼むから」
「…………うっス」
「お前なぁ、そこはキチッと返事してくれや」
いやぁ、ほとんど咄嗟にやっちまうもので。スミマセン。
そうして確認事項を伝えられながらの移動はほぼ終わり、脚部の形状に変更が加えられたり頭が丸ごと挿げ替えられた自身の搭乗機、地球連合主力MS『ウィンダム』のコクピットへと収まる。
こんなに手を加えてしまってもいいのだろうか、と思うところはなきにしもあらず。尤も、救援に入ったつもりの相手に銃口を向けられるどころか、恨み節と弾丸を実際に叩きつけられてしまえばやむなしか。
ウィンダムの起動操作を行い立ち上げる。以前と比べれば多少差異はあるが、比喩でなく文字通り体に刻み込まれた動作への影響はない。
「あっと、忘れてた。コールサイン、ウィンダムから『ウィンダム・カスタム』に変更されてるぞ。それと……あー、『お守り』と『お薬』の一式の場所も変わってない」
「了解っス」
通信を立ち上げる前、
なんとなく普段通りに手元の物入れに手を伸ばしていたので、そのまま作業を続けながら返事をする。そのまま顔を引っ込めたことを認識して、ハッチを閉じた。
タイミングが悪かったとはいえ、気分の悪くなるとこ見せてしまって申し訳ないな。
『γ-グリフェプタン』、そう呼ばれる物を改良或いは改造し身体への悪影響を低くしつつ、マイクロ・インプラントを活性化しうるようにした薬液の充填された無痛注射器を、頸椎の傷痕近くへ押し付ける。
プシュッ、という音。一拍遅れて精神的に、おそらく物理的にも湧き上がっている物を抑えるように意識しながら通信を立ち上げる。
『敵部隊は中隊規模。まぁ現地部隊からの報告ですから、多く見積もっておくに越したことは無いですが、状況は切迫しているようです』
ミレニアム艦長、アレクセイ・コノエ大佐の状況報告が流れる。
『あぁっと、それから。事前に通達があった通り、今回の出動ではゼフォー特務少尉がヤマト隊へ合流。そのまま作戦行動となります。では、よろしく』
「紹介に預かりました、ゼフォー・ローワン特務少尉です。今作戦行動においてヤマト隊へ合流。以後、キラ・ヤマト准将指揮下へ入ります。よろしくお願いします」
モニターに映し出される顔が不自然にならぬよう、カメラを意識しながら敬礼、文言を発声する。はっきり言って凄まじく緊張しているが、そのことを説明はできない。
『宜しく』
『今回も頼むぜ、ゼフォー!』
『よろしくね』
『…………』
キラ・ヤマト准将、シン・アスカ大尉、ルナマリア・ホーク中尉からの挨拶と、アグネス・ギーベンラート中尉からの不服そうな表情。絵に描いたような美男美女。いや、
……いつも通りだな、ヨシっ。
そして、出撃の準備が進む中ヤマト隊長からの指示がなされる。
『フリーダム突入後、シンは政府施設の防衛を』
『……えッ』
『ルナマリアとアグネスは、避難を誘導しつつオルドリン守備軍を援護』
『……ッ!』
『……またぁ?』
常にヤマト隊として共に活動している訳ではないゆえに、俺にとってはなんてことない指示に思えるが、反応を見るに常にこれに近い指示が出ているらしい。
『ゼフォー特務少尉は、ルナマリアとアグネスのカバーを』
『了解です』
『隊長、前線の敵は私が叩きますっ!是非ご一緒に!!』
『隊長、オレも行きますっ!』
そのまま流れで俺への指示を受けとるが、食い気味にアグネス中尉がヤマト隊長へ意見を具申する。そしてシン大尉も同様の意見のようだ。
確かに、機体を確認する限り前線向けだろう。先程接種した薬の効用、それとは別の理由による速くなった鼓動を感じながらそのやりとりを聴く。
『ダメだ、戦場を広げたくない。ハーケン隊はミレニアムを頼みます』
思っていたよりも強い語気での否定に、意外に思う。だが同時に、その理由にどこか納得する自分もいる。
そして、カタパルトデッキが展開し発進が迫る中で俺はずっと思っていた。
一体全体、劇場版で描写されるであろう時間はどこから始まるのだろうかと。
機動戦士ガンダムSEEDFREEDOMを映画館で見る直前の意識から、気付けばこのコズミック・イラの世界へと、ブルーコスモスの施設にて生体CPUに憑依転生してしまったと思われる俺。
画面の向こうに居たはずの存在と同じ世界に生きているという少しだけ喜べる事実と、ネタ混じりではあるものの『頭コズミック・イラ』とまで称される惨劇が巻き起こる世界に生きることになった頭を抱えたくなる事実で板挟みになりながら、兎にも角にも目の前の作戦へと意識を向けたのだった。