地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
『────以上がファウンデーションのアウラ女帝からの申し出だ。プラント、
ラクスの視線の先、モニター画面に映る金髪の女性。オーブの代表首長にして、国際平和監視機構コンパスの発起人──カガリ・ユラ・アスハはそう言葉を区切った。
手元に届いた親書、それにラクスは目を落とした。ブルーコスモスの現在の主導者、損害を顧みない特攻紛いの侵攻を繰り返すミケール大佐。
その捕縛に協力したい、という旨の内容の申し入れ。カガリの言葉が正しければ、大西洋にも同様の親書が届けられているという。
本来であるならば、裏付けを取らなければならない情報だろうが相手はカガリ──プラント・地球間の一度目の大戦の時から付き合いのあるいわば盟友である。そんなものは不要だろう、とラクスは視線を戻した。
『かの国はミケールの所在を、かなり精密につかんでいるようです。協力する意義はあると思うのですが……』
カガリの側に控えていたトーヤ・マシマが、口を挟む。その幼なげな声色は興奮を抑えきれてはいなかった。
それも当然だろう、とラクスは思う。ミケール大佐の所在は、実のところある程度の見当は既についていたのだ。
ユーラシア連邦のお膝元、その軍事緩衝地帯。そこまで分かっていながらも手を出せずにいたのは、政治的な問題──という他ない。
ユーラシア連邦はコンパスを承認していない。プラントに対しても強硬的な姿勢であり、ブルーコスモスの存在を黙認しているのでは?とさえ思われるほどだ。
さらに最近──半年程前のブルーコスモス過激派による基地武装蜂起事件をきっかけに、大西洋連邦がコンパスへの協力に対し積極的になった件についても軋轢が強まっている。
同じ地球連合を構成している国家といえど、一枚岩とは言い難いのだ。むしろ対プラントを目的としていた分、反感が強まっていると見るべきか。
ユーラシアとの軋轢が強まるコンパス理事国。そして、軍事緩衝地帯というユーラシアへ責任を追求することも難しく、またユーラシア自体も手に出しにくい場所。そんなある種の聖域とも呼べてしまう場所へと潜むミケール大佐。絶望的とも取れる状況を打破しうる申し入れでは、ある。
だが、それでもと。少なからず政治の場で立ち振る舞ってきたラクスには、楽観視は出来なかった。
『そうだな。だがトーヤ、ものごとには裏と表があるんだ』
カガリも同様に考えていたようで、たしなめるような言葉をトーヤへとかける。
裏と表。何の思惑あっての申し入れなのかが気にかかる。
「……見返りは、何なのでしょうか?」
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その後のカガリとの会話で、ラクスの予想の範疇を大きく飛び越えるようなものは
ファウンデーションの求める見返りは、コンパスへの参加。それをきっかけに、独立国として国際社会に認められることだろうこと。
そして、それを認めるのであるならば現状でさえも軋轢の強まっているユーラシアとの関係がこじれる可能性が高いという問題点。
おそらくはその軋轢を少しでも軽減させる為であろう、
フリーダム強奪事件での協力も、今回の申し出も、あまりにもタイミングが良いことに浮かぶ躊躇い。
ラクスは、この話を保留という結論で終わらせた。
カガリとのビデオ通話を終わらせたラクスは、いまだに頭をめぐる事柄に意識を向ける。
ユーラシアからの独立、それを阻止せんと行使された武力を退けるほどの力。独立を果たしても、ユーラシアとの対立を避ける為に国際社会における殆どの国から独立を承認されていないにも関わらず飛躍的に発展する技術、経済。
その立役者──
自身が否定した、『
──『まさか、大西洋の大統領とビデオ通話での会談どころか、頭を下げられることがあるとは思わなかったぞ。まぁ、今回の件だけが理由ではないだろうが』
大西洋連邦が、オーブに頭を下げてでもブルーコスモス過激派への対抗姿勢を示そうとしていること。
それに対して、ラクスは思わず口に出してしまったほどだ。
──自身の国の掲げる法の下では、未成年たる彼を特例措置でパイロット相応の階級にしコンパスへと出向させ、あまつさえ戦わせてなお足りない……と?
もちろん、理屈の上では理解できるところはあると、ラクスは考えている。
二度の大戦を経て、軍部や政治へのブルーコスモスやロゴスの干渉を排除する方向へと舵を切ったにも関わらず、基地単位でのブルーコスモス過激派の武装蜂起なんて事件が起きてしまったのだ。その上での、オルドリンでの偽装別働隊の一件である。
やんわりと、カガリにも宥められてしまった。それでも、やはり心に痛みが走るのを感じていた。
そう考えているうちに、ふとラクスは思った。自身がデスティニープランを否定した理由のうち大きなウェイトを占めているだろう存在──『ミーア・キャンベル』。
プラント・地球間において最初の停戦協定、その際に表舞台から去った──去ってしまったことで空白が生じたアイドルにして戦争終結の立役者としての『ラクス・クライン』の席。その空席に、デュランダルの手によって据えられた少女。必要であるからと顔を変えさせ、ミーア自身の思いや人生を捻じ曲げ、最後には必要なくなったからと
自身は、大西洋連邦から出向して来ているMSパイロットということになっている少年──ゼフォー・ローワンに形や経緯は違えど、ミーアと同じ事を強いているのではないかと。
あくまでMSパイロットというのは、生体CPUというスキャンダラスな存在を表沙汰にしない為の方便であり、本来はコンパスでの治療および治療法の研究が目的であることも。
実戦での戦闘をさせるという目論見は、大西洋側にはおそらく無かったであろうことも。
必要だからと理由をつけて、思いや人生を捻じ曲げて役割を押し付けているのではないかと。
「……クライン総裁?」
「すみません、少し考えごとをしていただけですわ」
グルグルと渦に巻かれ、沈みゆく思考を引き戻したのはラクスの秘書官。リオ・マオの声だった。
フゥ、とひとつ息をついて思考を切り替える。
久しぶりのキラの帰宅、それに合わせて無理を言って休暇を取ったのだからと。先程までの心の痛みを深くに沈め、自身の責務をこなす為に意識を残された仕事へと向けた。