地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
左手に持った対艦刀でもって、左袈裟斬り。眼前のダガーの持つビームライフル諸共に、右腕部から右腿までを両断した。
戦闘力を喪失したダガーの肩越しに、こちらに狙いをつける更なる敵機を認識してスラスターを吹かして跳躍しようとする。
だが、重い。つい先日の仕様変更にて追加された『ミシェンクレイド』──ドイツ語で、混ぜ合わせるドレスを意味する名を持つ増加装甲。その分の重量によってだ。
それに伴う機動力低下を補うように、スラスターも追加されてはいる。だが、咄嗟の反応ではまだ以前の感覚での操作を行なってしまう。
対艦刀を手放して、意図的にバランスを崩した形でのスラスター噴射による錐揉み機動でどうにかこちらに放たれた緑の光芒を回避する。
その光を見送って、左腕のワイヤーアンカーを射出。対艦刀の柄部へ巻きつけて、引き寄せる。
上昇しながら、オオトリのビームランチャーを展開。お返しとばかりに、先程こちらを狙ったダガーに狙いをつける。オートロックを外して、照準を頭部と腕部へ微調整しながらビームライフルと合わせ計三発撃ち放った。
巻き取られた対艦刀を左手で掴む。放ったビームは一発はハズレ。一発はライフルを掠める形で当たり、ラストは見事に頭部を吹き飛ばした。
……これをフルバーストでぶっ放して、精度は必中レベルとかヤマト隊長やっぱりとんでもないな。
こちらへ向かってくるウィンダムへと翼部に懸架されている空対空ミサイルを放ち、牽制しながら感嘆の念が脳裏を過ぎる。
放ったミサイルが自機と敵機、その中間付近に至ったのを認識し頭部バルカンを放つ。僅かに逸れるが、すぐにミサイルに着弾し爆発。もうもうと広がる爆炎に、スラスターを吹かし突っ込んでいく。
盲撃ちの相手のビームが煙を割くが、構わずスラスターの出力を上げながら突っ込む。爆炎を抜けると同時に、ライフルを自機から向かって右手側のウィンダムへと放ちながら更に加速しつつ対艦刀を下段に構える。
追加されたスラスター分の、重くなったGを歯を食い縛りながら受け止めつつ向かって左手側の敵機に肉薄する。
想定以上の速度だったか、相手の銃口がこちらを捉えきれていないことに気をよくして逆袈裟懸けに対艦刀を振り抜いた。
左膝、右腿部に続いてライフルごと右腕部を切り飛ばし対艦刀の切先──実体剣部分にいたってはジェットストライカーの翼部の中程に達していた。そしてそのまま、懸架されているロケットランチャー部へと……。
「……ア"ッ」
爆発。ロケット弾複数発の生み出した爆風は、こちらの体勢をも崩すほどであり。
先程放ったライフルを回避していたウィンダムの銃口が、こちらを捉えていることを認識しながらも爆風に揉まれた機体の姿勢制御はままならず。
ウィンダムの放ったビームが、吸い込まれるようにこちらの胸部──コクピット付近へと放たれた。
撃墜判定が表示されているモニターを見ながら、フゥと息を吐く。もう何度もこの機体データで戦闘シミュレーションをこなしているが、まだ慣れているとはいえないなぁ。
ベルトを外し、シートから立ち上がる前にグイと身体を伸ばす。今しているのは、ミレニアムにて大西洋からの出向組がまとまっているセクションにあるシミュレーター室。そこで試作の薬液を投与しての戦闘シミュレーション中、及び終了後のバイタル検査だ。
その際に使用する機体データを、ミケール大佐捕縛作戦前日に受領する新型……?改修機?とにかく、以前と様変わりした愛機のものへと差し替えて行っている。
……アスカ大尉やルナマリア中尉とのシミュレーター?ミリカ中佐からの許可が出なくてダメでした。
別にウィンダムに毛が生えたようなものなんだから、機密なんてあるようなものでもないと思うのだが、何故だろうか。
まぁ、実際の作戦行動と条件を合わせるとP.G-3.5の投与もしないといけないだろうから、あまり気軽にしていいわけでは無いのだろうけれど。
「どうかなゼフォー……ふん、ふん。大丈夫そうだな、やはり」
「近いっス、ミリカ中佐」
脳波を含めたバイタル測定の為に被っていたヘルメットを脱げば、ミリカ中佐が声を掛けながら顔を覗かせた。かと思えば、コチラの頭を押さえてグイと顔を近づける。
タレ目がちな青い瞳、少し厚めの唇に緩いウェーブがかった金髪。女性的な起伏の目立つ体型と相まって、少し離れて見ればモデルかタレントと言われても納得できるかもしれない。
だが、くっきりと浮かんだ隈とこちらの身体の状態を見る為に忙しなくギョロギョロ動く目を至近距離から見てしまうと、むしろ整った容姿とのギャップで恐怖が大きい。
生体CPUに異様に詳しいことを知っているのと、一個人というより研究サンプルへと向けているとでも言った方が適切と思えるような、純度の高い好奇心を知覚してしまっているからこその感覚なのかもしれないけれど。
そして、こちらの身体の見聞が済んだのかパッと手を離しなにやら一人で納得したように言葉を紡ぐ。
問いかけの形で言葉を発していたのに、俺の言葉を聞く気が無さそうなのはなんなんだ。身体に聞いたから満足したんだろうか。……してそうだなぁ。
「さて、これでオルドリンで副作用が出たとされる時間より40分は経過しているわけだが。試作の出来が良いと考えても、ピンピンしすぎだろう。普段はフワフワ軽い態度なのに、あの一件は気にしすぎじゃないかい?」
「なに言ってんスか。こんなカッチカチで重量級な人間はそうそう見当たらないっスよ」
「そういうとこだよ、そういうとこ。……さっきまでのシミュレーターで妙にお上品に戦ってたのも、関係あるのかね?少なくとも、普段より結果は芳しくないようだが」
ふわりとミリカ中佐の脇を抜けて、ソファーの近くに漂っていたドリンクに口をつければ真面目なトーンの言葉が掛けられた。
お上品、パイロットを殺さない無力化を狙っての戦闘のことだろう。うぅむ、言うべきでない理屈──あまり頼らない、考えないと思っていた前世での認識に基づいているから、説明しづらい。
「まぁ、ヤマト准将やアスカ大尉が不殺を狙っているからなんだろうけど……あれは正直、あまり真似すべきでは無いと思うよ」
どう答えるのか、考えあぐねていた俺を見かねたのかライ大尉が口を挟んだ。実際、その通りだろう。俺みたいな中途半端な強さな人間がやろうとすべきでは無いのは分かっている。
現に、これまでの生死問わないやり方なら8から11機くらいまでは相手取れていたのに不殺を狙ってからは5から8機程度しか墜とせていない。
それでも、今になって不殺を狙って戦い始めたのはどうしても脳裏を過ぎる『キラ・ヤマトの闇堕ち』。それが、今回のミケール大佐捕縛作戦で起こるかもしれないと思ったからだ。
少しでもヤマト隊長の精神への負荷を少なくする、なんて浅知恵でしかないが。
「あのキラ・ヤマトの真似ってことかい?なんでそんなこと……短距離走の選手が、チーターより鈍いから四つ足で走る練習しますって言ってるようなものだろう?無駄だよ、無駄無駄!アレはもう身体の作りから違うレベルだろうさ」
「ミリカ中佐、お願いだからちょっと静かにしててもらっていいですか?」
言いたいことはわかるんだけれども、あー、その、人の心をもう少し機能させてくれませんか……ミリカ中佐?
ゲンナリとしたライ大尉は、それでもめげずに口を開く。
「とりあえず、あの人の言ってることは頭からポイしてくれ……」
「っス。言われなくてもそのつもりっス」
「うん、ありがとう……。ともかく、無理はしない方がいいと思うんだ。それで君が怪我したり、ましてや死んだりしたらその方がきっと気に病むだろうから、さ。……あの人達がいい人なのは、僕でも分かるよ」
「ゼフォー、君が死んだら私も悲しむからな?とりあえず、手足の1・2本千切れても帰ってきたまえ!それならデータが……」
「アンタは静かにしてろっつったろ!!しかもワザと言ってんのか、そんなこと!!」
ミリカ中佐とライ大尉のノンデリ漫才に、知らず肩から力が抜けた気がした。
まぁ、ライ大尉の言ってることは10割正しいとは思うのだ。ここは一旦不殺がどうのは忘れて、単純に新たな機体『ウィンダム・べヴァイズン』に慣れる事を優先する事にしよう。
はあ、備えが無いとは言わないが憂いが無いとも断言出来ないのは、少し胃が重くなってくる気がする……。
あと、べヴァイズン──ドイツ語で証明するって意味の単語だったか。それを機体の名前につけられるのは、なんだか期待が重いと考えてしまうのは俺の考え方がネガティブな方向に寄っているからだろうか?
兎にも角にも、ミケール大佐捕縛作戦までの間に俺に出来る備えをするしか無いか。新しい機体に慣れることはもちろん、儀礼関連を習熟することも忘れずに。
「ミリカ中佐、ライ大尉。それ終わったら、緩和剤の点滴お願いするっス!」
とりあえず今は、目先のことを片付けることを優先する事にしよう。そうしよう。