地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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 ラクス様の話し方難しい……。こんなこと言うかわからん……。キャラ崩壊、アンチ・ヘイト描写にご注意お願いします。











PHASE-15 静かであって欲しい夜に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界的歌姫にして二度の大戦を終わらせた英雄。そして、世界平和監視機構コンパスの総裁。

 そんな仰々しい肩書きの数々をお持ちなのが、今目の前でスペース陣羽織を着こなしてその手にハロの形に握られたおにぎりの載せられたトレイを持っている彼女、ラクス・クラインである。

 

 

 あのスペース陣羽織、普段着としても着用してるんだ……。いや、一応公務中だから普段着扱いは違うか?

 

 

 

 

 

 「こうして直接、面と向かってお話しするのは初めてですわね。改めまして、私はラクス・クラインと申しますわ」

 

 「俺はゼフォー……あっ、いや、大西洋連邦より世界平和監視機構コンパスへと出向させていただいている、ゼフォー・ローワン特務少尉です!」

 

 

 

 突然のエンカウントに半ばフリーズしていた思考が、クライン総裁の柔らかな声色の挨拶で引き戻される。

 思わず砕けた口調が出かけてしまい、慌てて姿勢とともに正した口調で言葉を返す。

 

 

 クライン総裁の言う通り、実はこうして直接顔を合わせて話す機会には恵まれていなかった。

 彼女は普段はアプリリウス市におり、俺がコンパスへ出向してきた当初は地上のアークエンジェルへと詰めていたからだ。

 出向直後、着任の挨拶もビデオ通話で一言二言言葉を交わした程度。正直に言えば、その時はガチガチに緊張していてなにを話したかも曖昧である。

 

 

 

 「そこまで固くならずともよろしいですわ、ゼフォーさん」

 

 「は、はい。……えと、クライン総裁はヤマト隊長へ夜食をお届けに?」

 

 

 

 

 流石に所属組織の、所謂最高権力者にそう言われてもなかなか柔らかくなれるものではないんです……。

 とりあえず、視界に写っている夜食の載ったトレイを会話の切り口に選ぶ。よく見るとかなり手が凝ってないか、このハロおにぎり。なんか、それなり以上にボリュームある気がするけど。

 

 

 

 

 「……えぇ、今私がキラにできるのはこのぐらいですから」

 

 「……?」

 

 

 

 

 こちらの言葉に、視線を伏せながら。けれど笑みを浮かべクライン総裁は言葉を返した。

 だが、なぜだろう。確かに視線はこちらではなく、手元のおにぎりに向いているだろうに。その顔には笑みが浮かんでいるのに。

 

 

 心を締め付けるような悲しみを、知覚している。

 

 

 ……ファウンデーションに足を踏み入れたあの時、あの感覚に近いか?音として認識するほどではないのだが。

 もしかして、俺のこのよくわからん感覚が進化して、直接向けられてないものも拾えるようになったとか……?

 

 

 

 どっちにしろクッソ強い憎悪の持ち主がいるじゃねぇか。一瞬今までの不安を気のせいで流せそうな気がしたが、そんなことは無かった。現実は非情である。

 

 

 

 「ゼフォーさんも、明日は出られるのでしょう?もうお休みになられた方がよろしいのでは?」

 

 

 

 

 伏せていた視線をこちらに戻してクライン総裁がおっしゃる。ミケール捕縛作戦のことだろう。実際に夜も更けている、さっさと用を済ませて休んだ方がいいのだろう。

 ただ、今度はこちらに向けられた視線。それで知覚できるものが先ほどのものと合わせて気になる。

 

 

 罪悪感。それに先ほどの悲しみ。恐らくは、クライン総裁のもの。このまま、はいサヨウナラと別れようとは思えなかった。

 

 

 

 

 「いえ、出過ぎた真似かもしれませんがヤマト隊長のところまでご案内いたします。あと、その〜。折角の機会なので、もうちょっと話してみたいなぁ。……なぁんて」

 

 

 

 

 ヤマト隊長の姿は調整が終わった際に整備指揮所で見かけたから、案内できるのは本当だ。

 それにしたって、後半があまりにもお粗末な言い方だが。下手くそなナンパかなにか?……お上手なナンパの仕方なんて、わからないけれども!

 

 

 

 

 「……フフッ、えぇ。もちろん、よろしいですわ。どうせなら、もっと砕けた話し方をしてくださってもいいのですけれども」

 

 

 

 

 俺の申し出が意外だったのか、パチクリと水色の目を瞬いたクライン総裁は小さく笑うと俺の言葉を快諾してくれた。

 その上で砕けた話し方をして欲しいと言われたのはこちらが驚いたが。まぁ、事実上最上位の上司に乞われたなら、仕方がないということで。

 

 

 

 

 「っス。お言葉に甘えさせていただくっス」

 

 「あら、ずいぶんと変わった喋り方ですわね……」

 

 「あっ、お気に障るようなら直します」

 

 「いえ、そういうわけではございませんわ。ただ本当に、珍しい喋り方でしたので」

 

 「ならよかったっス。トレイ、お持ちした方が……」

 

 「私が運びますわ」

 

 「えっ……」

 

 「私が、キラの元へと運びますわ」

 

 「あっ、はい」

 

 

 

 

 口調を崩した時の反応に、段階を飛ばしすぎたかと焦ったがそういうわけではないようで胸を撫で下ろした。

 そのあと、トレイを持とうかと提案しようとしたら食い気味で主張された時は違う意味で驚いたが。

 

 

 ……パーティのあと、ドレスからの着替えもあったろうにかなり手の込んだ夜食を作り、直接ヤマト隊長の元へ運びたがる。そういえば、自宅も一緒だと聞いたような。

 そして薄れゆく記憶の中、確かこの二人は何年か同居していたような……?

 

 

 ふーん、へー、ほーう?表情筋が死んでて助かった。生きてたら粘着質という他ない表情になっていただろう。

 

 

 

 そんなお外に持ち出せない思考を巡らせながら、クライン総裁と足を進める。

 

 

 

 「そういえば、ヤマト隊長って結構食べるんスね。知らなかったっス。……というより、俺ヤマト隊長のこと、実はあんまり知らないんスよね」

 

 「いえ、これはキラと私とで食べようと思っていたのですわ。でも、意外ですわ。ゼフォーさんはミレニアムに乗っていらっしゃるのですから、キラのことを知る機会は多いのではなくて?」

 

 「いやぁ、ヤマト隊長はお忙しいっスから。MS隊の隊長だけじゃなくて、確か技術部の方にも顔を出して何かを開発にしてるって話もあるっスからなかなか話す機会はないっスねー」

 

 

 

 

 話がしたいと引き留めたはいいものの、相変わらず行き当たりばったりなせいで会話の話題は共通の知り合いであろう、ヤマト隊長のものへと自然とシフトしていった。

 その上で改めて振り返ると、ヤマト隊長との関わりが薄いと我ながら驚いてしまう。クライン総裁に話した通りに理由はあるのだけれど。

 なので、会話がこちらからの問いかけになってしまうのも自然な流れではあった。

 

 

 

 「むしろ、ヤマト隊長とクライン総裁のこと聞いてみたいっス!」

 

 「私と、キラですか?」

 

 「っス!周りの人から色々聞いてはいるっスけど、やっぱり聞けるんなら直接聞いてみたいっス。……お二人が付き合ってらっしゃるって、ホントっスか?」

 

 

 

 その問いかけに、クライン総裁は固まった。ただし、俺が勝手に想像していた恥ずかしがって赤くなるとかでは無く。

 それこそ、時が止まったような、冷たさの伴うようなそれであった。

 

 

 

 「えぇ、その認識であっていると、思いますわ」

 

 

 

 絞り出すような声に、自身の失敗を悟る。一ヶ月ぶりのアプリリウス市へのミレニアムの寄港及び休暇、そこからの休暇取り消しでの緊急任務。

 恋人同士の仲がギクシャクするかもと思い至ってもいい状況で、あからさまな地雷を踏んでしまったかも……。

 

 

 ええい、もう後には引けん!全速力で突っ切って話題の軌道変更するしかない。

 

 

 

 

 「やっぱりそうなんスね!ヤマト隊長のどんなとこに惹かれたんスか!?」

 

 「キラは、とても優しくて。でも私は、その優しさに……」

 

 

 

 

 うわぁ!?二個目の地雷を踏んだ感触ゥ!こうなりゃヤケだ、刺激強めなブラック気味なジョークで無理にでも空気を変える!

 

 

 

 「確かに!ヤマト隊長は優しいっス!俺が志願したとはいえ、大西洋連邦が厄介払いみたいに出向させてきた人達を受け入れてくれたっス。あ、ちゃんとクライン総裁のことも優しいと思ってるっス!」

 

 「……え、自身で志願した……?」

 

 「え、ハイ。そうっス」

 

 

 

 

 空気変わったけれど、思ってたんとちがう。けどまあさっきよりはマシだ。

 なにがあったかはわからないけど、クライン総裁思考が負のループになりかけてたし、勢いで完全に空気を変え切ろう。

 

 

 

 

 「いやぁ、色々検査とか終わって身の振り方をどうするかって聞かれて。コンパスで平和のために何かしたいって答えたらあれよあれよという間にコンパスへの出向が決まってて。ホントビックリしたっス」

 

 「……ゼフォーさんは、それで良かったのですか?」

 

 「それはもちろん。ばっちこいって感じだったっスよ。いやでもまさか出向する人員でMSパイロットが俺一人とは思わなかったっス」

 

 

 

 

 明らかな厄介払いじゃねーかって、元々低い大西洋連邦への好感度がマイナスまで振り切ったなぁ。コンパスをゴミ箱か何かと思ってらっしゃる?って感じで。

 

 

 

 なんとなく空気も変わったな、としたり顔(当社比)で腕を組んでウンウンと頷く。

 そこにクライン総裁が口を開いた。

 

 

 

 

 「ひょっとして、事情をお聞きになってらっしゃらないのですか……?」

 

 「事情、っスか?厄介払いなんじゃないんスか?ちょっと思いつかないっス」

 

 「…………フフッ、フフフ。フフフフフフッ」

 

 

 

 

 あれ、今笑いどころあったかな?

 

 

 

 

 「ゼフォーさん、お顔に似合わず明け透けに毒を吐くお方だったのですね」

 

 「えっ、あー」

 

 

 

 

 クライン総裁に言われ、自身の言動を省みる。………………ヤケにも程があるのでは?

 

 

 

 

 「あの、クライン総裁……?」

 

 「あら、どうかなさいまして?」

 

 「今の一連の俺の発言、無かった事に出来たりとか。……するっスか?」

 

 

 

 

 具体的には、仮にも自身の所属する国家に対する暴言の部類とか。

 

 

 

 

 「うふふ。さて、どうでしょうか?」

 

 「そんな殺生な!」

 

 「冗談ですわ。ああ、でもひとつだけ」

 

 「な、なんでしょうか?」

 

 「大西洋連邦の方々の名誉のために、私の口から事情を説明させていただきますわ」

 

 

 

 

 笑わせたのか笑われたのかわからないが、とりあえず。完全に空気が変わった、という事でめでたしめでたしということにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから、大西洋連邦が内部のブルーコスモス過激派を把握しきれていないこと。

 コンパスとして元生体CPUの俺の安全を保証するように要求したこと。

 その為に俺の身の安全が保証できないので、コンパスへと出向という形を取って解決としたこと。

 

 

 これらを聞いて、ひとつ。思ったことがあった。

 

 

 

 「あの、クライン総裁?」

 

 「どうかいたしまして、ゼフォーさん?」

 

 「これって、俺が聞いて良かったんスか?」

 

 

 

 

 思いっ切り、国家の恥部みたいなもんな気がするんですが、それは。

 

 

 

 

 「あなた自身にまつわることですので、あなたは知っておくべきだと思いましたわ。それに、ここだけの話にしていただければなんの問題もありませんもの」

 

 「あ、あはは……」

 

 

 

 確かに時間も時間だからか、誰ともすれ違ってはいないけれども。まぁ、でも、いいか。

 

 

 

 

 「いやぁ、クライン総裁が笑ってくれたんなら毒吐いて良かったっス。差し入れをするんなら、笑顔の方がきっと良いっスから」

 

 

 

 

 

 そう言って、満面の笑みを浮かべ──口角が微かにしか動いていないので、両手の人差し指でぐいと持ち上げる。

 

 

 それを見て少し驚いたのか、クライン総裁は水色の目を瞬かせたがすぐにニッコリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 「ありがとうございます。ゼフォーさん」

 

 「どういたしましてっス。それじゃあ、そろそろこの辺で。おやすみなさい」

 

 「えぇ、おやすみなさいませ」

 

 

 

 

 

 そう言って整備指揮所へ向かうクライン総裁の背を見送り、自身も振り返って一歩。

 ゼフォー・ローワンはクールに……去る前にヤマト隊長とクライン総裁の様子を見てぇ。

 できるなら今日一日でささくれだった心を、顔の良いカップルの醸し出す甘酸っぺぇ空気胸いっぺぇ吸い込んで癒してぇ。

 

 

 

 トコトコと歩み、曲がり角を曲がった上でしばらく立ち止まり今来た道を覗き込む。

 

 

 

 整備指揮所の手前まで歩いていたクライン総裁が、なにやら立ち止まっていた。

 ヤマト隊長とハインライン大尉が中で話でもしているのだろうか?あの二人の会話は、独特の雰囲気があって間に入りづらいものがある。

 野暮かもしれないが、行って助け舟でも出すべきか?なんて考えながら足を整備指揮所へ進める。

 

 

 

 

 

 

 

 「あの人、隊長の優しさにつけ込んでるんですよ!」

 

 

 

 

 

 なにしてるんです、アグネス中尉?いや、マジか。どこかでルナマリア中尉に、ヤマト隊長を狙ってるなんて話を聞いたような気がしたが、クライン総裁のお相手なのに?と信じてなかったんだけど。

 なんか、それっぽいことしてる現場に来てしまったみたいだ。

 

 

 ともかく歩みを進めよう。まだ気のせいかもしれない。

 

 

 

 

 

 「私を見て

 

 

 

 

 微かな、聞こえるか聞こえないかの小さな声。気のせいにはできなくなった。

 

 

 

 

 

 「あの人を見返してやりたいんでしょ?

 

 「?どういう……」

 

 

 

 

 ヤマト隊長の声の素っ気なさに、思わず笑いそうになる。この態度のお相手がいる相手に粉かけるとかどんなメンタル?

 VPS装甲でも装備してらっしゃる?

 

 

 

 

 「何のつもりだ!?君は……」

 

 

 

 

 一瞬の静寂。後に怒声。ヤマト隊長のこんな声初めて聞いた、ホントに何したんだよ。

 攻めすぎにも限度あり、だがそのメンタル誉高……。

 

 

 

 「どうしてあんな人がいいの!?私ならしない!愛する人を、その人が助け出した生体CPUを戦場に送り出して、自分は安全な場所でただ見てるなんてこと!」

 

 

 

 

 

 

 なんだァ、てめェ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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