地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-EX3 研究者はかく語りき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アプリリウス市を離れ地球、ファウンデーションへと向かうミレニアム。その中の、大西洋連邦から出向してきた一団へと割り振られた区画の一角。

 

 

 MSの機体シミュレーター、モニタリング用に用意されたパソコンにそれが備え付けられたデスクが二つ。そして、二人掛けのソファー。

 飾りっ気のない機能的な、あるいは無機質な空間をタイピング音だけが響いている。

 

 

 

 モニターに映るデータ──シミュレーター内にてモニタリングされているゼフォーのバイタルを横目に、ライ・メイディ大尉は今回の経過観察レポートですでに打ち込めるものを打ち込んでいた。

 

 

 

 

 

 「そんなに熱心に打ち込めるものがあるのかね、そこまで条件は変えてもいないのに」

 

 

 

 

 そんな気の抜けた声にチラと視線を向ければ頬杖をつきながらモニターを見ている、形式上では上官であるミリカ・セーディ中佐の姿。

 そのだらしのない格好に、溜息を一つ。そのまま言葉を返す。

 

 

 

 

 「貴女がレポートをこちらに投げるから、早めに作成しているだけですよ。そんなに退屈そうなら貴女がやれば良いでしょうが」

 

 「なに、適材適所というヤツだよ。今はたまたま私向きのタスクがないだけで」

 

 

 

 

 

 いい加減な態度にライは思わず文句を口にしたが、ミリカにはまるで響いた様子はない。

 ライの向ける白けた視線も意に介さず、ミリカはグイと椅子の背もたれへと寄りかかるように背筋を伸ばす。

 反らされた背筋に比例するように、女性らしい起伏を強調するような姿勢をとるミリカから、特に感慨も覚えずライは視線をモニターへと戻した。

 

 

 

 

 「ハァー、相変わらずつまらん男だねキミは。もっとリアクションしたまえよ、ゼフォー君がいる時のようにさ」

 

 「必要性が感じられませんので」

 

 

 

 

 

 呆れた声色の言葉に、出来うる限り平坦な声色で返しながらライは再び視線を向けた。

 ニマニマと、人を食ったような笑顔がそこにある。整った容姿と女性らしさを強調している姿勢と合わせて、ともすれば蠱惑的ともいえるだろう。

 だが、人の尊厳を踏み躙る所業とそれを為してきた人倫を軽んじる内面を知るライからしてみれば、口を開いた食虫植物のように感じた。

 

 

 

 

 タン、と現状でレポートに打ち込める情報の入力を終えたライは、手持ち無沙汰にシミュレーターの様子をモニターへと呼び出した。

 バイタルデータとは別に、シミュレーター上のMSの挙動を第三者視点から観察するものだ。

 

 

 

 

 

 「おぉ、相変わらず派手に動かしているねぇ。ゼフォー君は」

 

 「……わざわざこっちに来なくても、そちらのモニターで見ればいいでしょう?」

 

 「釣れないことを言わないでおくれよ、ライ大尉。この手の知識はあまり無いんだ、どうせなら解説してくれたまえ。適材適所ってヤツさ」

 

 「さっきから私にしか負担かかってないじゃないですか」

 

 

 

 

 いつの間に移動してきていたのか、ライの肩越しにミリカがモニターを覗き込んでいた。

 先ほどは食虫植物などと内心でこき下ろしていたライだったが、不意打ち気味に視界に入る美貌に息を飲み、誤魔化すように悪態をついた。

 それを知ってか知らずか、ミリカは飄々としたいつもの態度だ。どのみち手持ち無沙汰だったライは、文句を言いつつも結局ミリカの求め通りにゼフォーのMS操縦に対して自身なりの所感を口にする。

 

 

 

 

 

 「私だって、それほどMSの操縦がどうこうは詳しくありませんよ。それでも構わないなら……反応が速いですね、銃を向けられたとほとんど同時に加速するか一部のスラスターを吹かして機体を大きく動かしてる」

 

 「それだけ聞けば簡単そうだが?」

 

 「簡単に出来るなら苦労しないですよ。全身十数箇所あるスラスターのうち、どこをどれだけ吹かせば良いのかを文字通り瞬間的に判断するってことですから。しかも狙ってくるのは一機だけじゃないですし」

 

 

 

 

 ゼフォーの駆るウィンダム・ベヴァイズンが、複数のウィンダムやダガーを相手取って一機、また一機と撃墜していく様を見ながらライは自身が読み取れることを口にしていく。

 

 

 

 

 「……言い方は悪いですが、さすが生体CPUとでも言いますか。連合のMS部隊ならエース扱いじゃないですかね」

 

 「……生体CPU、ね」

 

 

 

 

 

 思うところのありそうなミリカの言葉に、ライは思わずその顔を凝視した。

 少なくともライの知る限り、生体CPUという言葉に感傷的になるような感性はミリカにはなかったはずだと。

 

 

 

 

 「何か、ありますか?」

 

 「いや、なに。個人的な推測に基づく疑問があるだけさ。別に大した話じゃない」

 

 「疑問、ですか」

 

 

 

 

 大した話ではない、と言われてもライはむしろ気になってしまった。何せミリカ・セーディという人物は、生体CPUという存在の先駆けとも言うべき『後天的措置による人間の身体機能強化』に類する論文を発表し、ブルーコスモス傘下の研究施設に所属していた研究者だったのだから。

 

 

 

 

 

 「なんの確証もない、それこそ報告書にまとめるまでもないようなモノだよ」

 

 「そう言われると、逆に気になりますが」

 

 「……視点の異なる意見もあるに越したことはない、か。わかった、ゼフォー君もしばらくかかりそうだ。話すとしよう」

 

 

 

 

 

 ミリカはそう言ってソファーへと身を沈めた。ライも少しばかり姿勢を正し、ミリカへと向き合った。

 

 

 

 

 「私の中にある疑問は、言葉にすれば至極単純だ。……ゼフォー・ローワンは果たして本当に生体CPUと呼称されうるべき存在か、だよ」

 

 「……はぁ、どうしてそう思ったので?」

 

 

 

 

 

 開口一番、あまりにもシンプルな言葉にライは細かな説明をミリカに促した。

 ライにとって生体CPUとは、人体への悪影響を度外視した上で薬物や外科的措置によって身体能力を強化された存在、という認識である。

 この半年近くの勤務で目にしたゼフォーのカルテで読み取れる情報では、その認識との差異は無いように思えたからだ。

 

 

 

 

 「生体CPUの定義に、ゼフォー君はイマイチ当てはまらないからだよ」

 

 「身体能力を強化されただけでは違う、と?」

 

 「私にとっては、だがね。だから言ったろう、個人的な推測に基づくと」

 

 

 

 

 ミリカはそう言って足を組むと、ふぅと小さく溜息を漏らす。

 

 

 

 

 「まぁいい、続けよう。私の中の定義ではね、あくまでMSの制御部品としての完成度を高めたからこその生体CPUという呼称さ」

 

 

 

 

 普段の半ばおちゃらけた態度とは異なる、落ち着いた口調。知らずライは息を飲んだ。

 

 

 

 

 「反応速度、情報処理能力、耐G能力、そして制御手段。少なからずこの四つは備えてあるべきだと思うね」

 

 「……制御手段?」

 

 「そうとも、銃に安全装置があるようにね。極めて依存性の高い薬物を用いたり、あるいは都合の良い記憶を植え付けたり」

 

 

 

 

 なんてことも無いように、ろくでもない言葉をサラリと口にするミリカに思わず眉を顰めながらもライは口を噤んで耳を傾ける。

 

 

 

 

 

 「その上でゼフォー君はと言えば、だ。外科的措置は頭部──脳に数箇所、γ-グリフェプタンの服用は緩和剤の投与を考慮しても半年足らずでほとんど影響が無くなるほどの最小限ときた。反応速度、情報処理能力は高いが身体能力は推定される年齢からすれば平均的。それに伴って耐G能力もそこまでじゃない」

 

 「まぁ、言われてみれば確かに」

 

 「ハッキリ言えば中途半端だよ。この措置を施した人間は何がしたいのかまるで分からん、理解に苦しむ」

 

 「なるだけ手間をかけずに、どこまでやれるかの試行だったんじゃ?」

 

 

 

 

 

 ライの言葉にミリカは顎に手を当て考え込む。

 

 

 

 

 「だとしても手間をかけ過ぎているように思うがね。外科的措置を施すのなら、わざわざデリケートな脳周辺に手を出すのはリスクが高い」

 

 「……なんなんでしょうね、一体。生体CPUなんて建前で、まるで脳そのものに用があるように思えますが」

 

 

 

 

 

 話を聞いているうちに、ライもミリカの抱いた疑問に同意せざるを得ないと思いだしていた。

 思わず特に理屈もない、勘としか言いようのない突拍子もない意見を口にする程度には。

 

 

 

 

 

 「はぁ、データが残っていれば良かったんだが研究者共々吹き飛んでいる以上確認のしようもない、ときた」

 

 

 

 

 

 そうぼやくミリカは、頬杖をつきながら視線をシミュレーターへと向けていた。その視線は何処か危うい熱を孕んでいて。

 

 

 

 

 

 

 「頭、開いて色々見させてくれないかなぁ…………ちゃんとキレイに戻すからって言えばヤラせてくれるか?」

 

 「それゼフォー君に直接言ったら、流石にしばきますよ?」

 

 「仮にも上官に対する口のきき方かね、それは!」

 

 

 

 

 

 ライにとってその言葉は、あまりにも洒落になっていないからであった。

 なにせゼフォーが耐性を持ってしまうほど鎮痛剤を服用していた痛みの原因であった頭部のマイクロ・インプラントの神経系への干渉を、開頭手術でもって対処しキレイに治した実績がミリカにはあるからである。

 

 

 

 

 

 

 「まぁ、なんのかんのと言ったところで具体的なデータもない推測だ。ましてや報告したところでなんの意味も無い、個人の興味の範疇と言ったところかね」

 

 

 

 

 

 そう締め括ったミリカはソファーから腰を上げ、空いているデスクへと向かう。そのままライが行ったようにシミュレーターの様子を呼び出した。

 

 

 

 

 

 

 「個人の興味と言えば、だ」

 

 

 

 

 

 

 

 そして、シミュレーター内のモニタリングで意図的に切られていた内部音声のミュートを解除した。

 

 

 

 

 

 

 

 『フウウゥゥゥッ!!頭部をボールに見立ててシュゥゥゥットッ!!超ッ!!エキサイティングッ!!アッハハハハァッ!!』

 

 「こんなテンションになる癖に作戦行動中はどうやったらあそこまで猫被れるのか、だいぶ気になるところだねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 異様に高いテンションで、出会い頭にダガーの頭部をウィンダムで蹴り飛ばすゼフォーの声が部屋に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







 生体CPUの定義だとか、生体CPUの先駆け的な論文云々は公式には一切存在しないオリジナル設定です。ご了承下さい。


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