地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-19 理外の理、理外の力

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファウンデーションに足を踏み入れた際に知覚したモノ、憎悪の滲むそれよりもなおドス黒い悪意を感じ取って、思わず周囲に注意を向ける。

 

 

 自機より上方に、見慣れぬ姿。西洋の騎士を思わせる、今まで見たことのない意匠のMS。

 それがビームをマントのように背にたなびかせ、高い空から戦場を俯瞰していた。

 

 

 

 

 「確か……ファウンデーションのブラックナイト?なんで、ここに?」

 

 

 

 

 口をついてでた疑問は、すぐに自己解決できた。市街地近くに展開していたのだから、ブルコスの外道戦術への対応のために動いたんだろう。

 ……うん?だとしても、なんで市街地じゃなくてこっちに来てるんだ?

 

 

 

 抱いた違和感は、突如として旋回し砦跡から飛翔していくフリーダムの姿に掻き消えた。

 よりにもよって、ブリーフィングで接近を禁ずる旨が説明されていたユーラシアの国境方面へと向かったこともあってだ。

 

 

 状況が変わったのかとも思ったが、アスカ大尉のジャスティスも面食らったような様子だ。

 ……妙な状況に、心臓が早鐘を打ち嫌な予感が脳裏をよぎる。フリーダムの方向へと機体を進ませながら、通信を繋げて問いを投げかける。

 

 

 

 

 

 『ヤマト隊長?どうかしたんですか?』

 

 『ミケールだッ!奴を捕縛する、援護をッ!』

 

 『はぇッ?!』

 

 

 

 

 

 もたらされた返答に、素っ頓狂な声が漏れ出る。錯乱はアスランの持ちネタでしょう?!

 向かっている先には、何も…………。

 

 

 

 そ……ッ、そうきたかァ〜〜ッッッ。

 

 

 連合所属と思われるMS群をロックオンするヤマト隊長が映る予告映像、精神攻撃の類いと思った出所不明の強い思念波、国境に展開するユーラシア軍。

 点と点が繋がる感覚、アレって闇堕ちじゃなくて洗脳の部類かよ。そして、オルドリンでのブルコスを追撃する現地軍をこの場ではヤマト隊長にやらせると。

 

 

 

 

 スラスター出力を上げ、フリーダムに追い縋りながら通信を繋げる。今この現場での最上位者になるであろう、フラガ大佐へ。

 ていうか、速すぎィ!あんな速度で追わせるとか、不自然極まりないんですけどォ?!

 

 

 

 

 

 『キラッ!クソッ、どうなってる!?』

 

 『フラガ大佐ッ、明らかに様子がおかしいです!後を追います!俺なら抜けても大差は──』

 

 

 

 

 

 フラガ大佐への意見具申の通信に、アスカ大尉の声が割り込んでくる。

 

 

 

 

 

 『隊長を追うなら、オレがッ!フリーダム相手なら、ジャスティスの方が!!』

 

 『……ゼフォー、頼めるか?』

 

 『ハァ!?おっさん、なんでだよ!?』

 

 『おっさんじゃない!!ミケール捕縛を蔑ろにするつもりかっ!』

 

 『ッ!でもッ──』

 

 『……アスカ大尉。ミケールの捕縛、頼むッス!』

 

 

 

 

 フラガ大佐とアスカ大尉の通信に割り込んで、強引に話を進める為の言葉を発する。

 アスカ大尉の主張は理解はできるが、この作戦における彼の抜けた穴は俺には埋められない。

 俺が抜けた場合とは、穴のデカさが違いすぎる。

 

 

 

 

 『……ゼフォー。ああ、クソッ!無茶するなよなッ』

 

 『行けるんだな、ゼフォー』

 

 

 

 

 

 フラガ大佐に、正直な言葉を返す。

 

 

 

 

 

 

 『……想定しうる、最悪の事態の前には間に合うかと』

 

 

 

 

 

 

 ユーラシア国境に展開する部隊から、フリーダム──ヤマト隊長への攻撃、もっと悪ければそれをきっかけとした交戦。ユーラシアとの関係は、絶望的なほどに悪化するだろう。

 

 

 

 

 

 

 『ヨシ…………キラを頼んだ』

 

 『了解!』

 

 

 

 

 

 

 フラガ大佐の言葉に答え、全スラスターのリミッター解除コードを打ち込む。

 

 

 ヨスタ曹長、お許しください!

 

 

 増設されたスラスターを含め、安全域を超過した出力で燃焼ガスを吹き出すことで生まれるスピードとそれに比例する強いG。

 以前のものよりも圧倒的に強いそれを、歯を食いしばって耐えながらフリーダムへ追い縋る。

 データ上では、直線の最高速度なら最新鋭機に引けを取らないスペックだったのは嘘では無かったようだ。

 ジリジリとフリーダムとの距離が縮んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 状況把握の為に繋げた通信からは、ピリピリとした空気。ファウンデーションの司令部では混乱が広がり、ユーラシア側の人員のものらしい怒号が響く。

 

 

 

 

 

 

『フリーダム、ただちに引き返してください!キラ!』

 

 

 

 

 

 

 

 クライン総裁の必死の呼び掛けにすら、ヤマト隊長は減速すらしない。彼女の言葉で無理ならば、もはや言葉での制止は無理筋か。

 ……どうやら悲しいことに、昨夜の覚悟は無駄にはならなかったらしい。

 モニターに映る国境との距離を見て、歯噛みをしながら小物入れへと手を伸ばす。

 

 

 

 手に取ったのは、()()()と呼んでいる無痛注射器。それには、『P.G-1.5』と書かれたラベルが貼られている。

 『プロト・グリフェプタン-ver1.5』、今現在使用しているP.G-3.5以前の試薬。純度が高く、その効能も高いが副作用・禁断症状も余り抑えることのできていない代物だ。

 

 

 

 生体CPUとしてのスペックを、今以上に引き出さねば切り抜けられない緊急事態を切り抜ける為のモノ。

 尤も、そんな事態になったら悠長に投与する猶予などないだろう、と冗談めかしていたモノがまさか役に立つ場面が来てしまうとは。

 

 

 マイカ中尉、お許しください!ミリカ中佐……データが取れると喜びそうだなぁ。

 

 

 

 首筋、パイロットスーツの上から投与する為の金具──インジェクターポートに注射器を押し付け、投与。

 ドクン、と常よりも強く込み上げる衝動とともに、視界が押し広げられるような感覚。

 活性化の兆候だ。この状態だと、まるで後ろに目がついたかのような錯覚を覚える程に、周りの状況を把握できる。

 

 

 

 ……あぁ、()()()()()()()()()()()()()。ミケールが乗り込んで逃げていそうなものは。

 僅かな希望も摘み取られた。ならば、あとは。

 

 

 

 

 

 前方、フリーダムすら超えた先。国境沿いに展開する部隊に動きが起きる。

 おそらく、警告射撃だろう。だが、その前に俺が動く。

 

 

 

 

 

 

 

 『隊長おぉぉッ!止まってくだしゃああぁぁぁッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 叫びとともに、左腕のアンカーワイヤーをフリーダムの足首目掛け放つ。興奮作用のせいで呂律が怪しいが、言葉は不要か。

 

 

 

 射出されたワイヤーが空を切る。ほぼ真後ろからなのに避けるとか、隊長って後ろに目があるタイプ?

 そんな戯けた思考も、知覚した敵意で遮られる。

 

 

 

 シールドを分離させながら、上昇することでワイヤーを躱したフリーダムがその場で反転。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『隊長!』

 

 『キラ、やめろ!』

 

 『駄目よ、キラくん!』

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらに注意を向けていたらしいアスカ大尉、フラガ大佐、ラミアス艦長の制止の声が響く。

 だが、ヤマト隊長は止まらず。

 

 

 

 

 

 

 

『終わらせるんだ、ここでっ!』

 

 

 

 

 

 

 

 フリーダムは、味方である筈の俺に──ウィンダム・ベヴァイズンに向けてビームを放った。

 

 

 

 

 

 

 

 「ほおおおおぉぉぉあああ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 撃つ覚悟はしていたものの、撃たれる覚悟は正直そこまでだった俺は奇声を上げながら咄嗟に構えていたシールドでビームを受ける。

 多分いつもなら──P.G-3.5使用下での反応速度だと間に合わないくらいだったわ、コレ。というか、見た目はかなりウィンダムから離れてるのに躊躇わず撃ってくるのか。もしかしてものすごくガッチリ洗脳されてらっしゃる?

 

 

 そして一息……なんてつけずに、知覚した状況を元にスラスターを吹かすことで姿勢を変える。

 そして、ビーム刃を展開しながら死角から迫っていたシールドブーメランに、リニアキャノンの照準を合わせ撃ち放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 「この盾ッ、硬いッ!ボボボボボボっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 角度が浅かったのか、直撃を受けた筈のシールドブーメランは僅かに弾かれただけですぐに軌道を修正。こちらへと向かってくる。

 すかさず右足のスラスターを吹かす。接近したシールドブーメラン、その裏面に速度を乗せたオーバーヘッドシュートを決めて弾き飛ばした。

 その上で、全身のスラスターを使ってその場を離脱。フリーダムからの追撃のビームをかろうじて回避する。

 

 

 どうにかリニアキャノンの照準を合わせようとするが、フリーダムの機動力に間に合わない。無理に放った超音速の弾は、見当違いな方向へと飛んでいった。幸運にも、国境とは別方向だった。

 

 

 

 

 どうにかやり過ごせたが、たぶんこれはキラさんがミケールの追跡……いや、国境へ向かうのを優先しようとしているからだろう。

 そして、ロックオンを外して武装や手足を破壊する戦い方。その狙いをつけ直す際の一瞬のラグを、敵意である程度行動の先読みが出来るからつける。

 さらに、おそらく。スラスターの増設されている俺の機体を、ブルコスの使う通常のウィンダムと認識しているんだろう。その認識の齟齬で、こちらの挙動を正確に把握できていない。

 

 

 

 ここまでこちらに有利な条件が揃ってなお、かろうじて回避や防御が成立するということに戦慄する。

 その上、こちらの勝ち筋はおそらくほぼない。というか、一つだけだろう。

 

 

 

 そもそも殺す気はないからビーム系統は論外。なのでリニアキャノンを打ち込んで、その衝撃で気絶させるか。あるいは、正気に戻ることを祈るか。

 VPS装甲は、実弾系の攻撃を無効化するが衝撃を全て打ち消すわけではない。

 分が悪い、なんてレベルじゃないなぁ。これは。

 

 

 

 

 

 

 再びこちらへ放たれたビームを、機体を翻し回避。同時に両翼からミサイルを一発ずつ放つ。

 フリーダムがライフルで迎撃する前に上昇、リニアキャノンの狙いをつけようとして全力でスラスターを吹かし急角度で進路変更。

 その眼前を、いつのまにか展開していたシュトゥルムスヴァーハーの砲撃が通過する。

 

 

 

 参ったぞ、あんまり時間がかかると無力化を諦められてサクッと胴体をぶち抜かれるか。

 それとも、サーベルを抜かれてしまうかも知れない。距離をある程度おけているならともかく、近接ではあらゆる面でこちらが劣る。瞬き一つで達磨さんの出来上がりだろう。

 

 

 

 

 

 

 『キラ!キラ!聞こえていないのですか!?』

 

 『ミケールだ!ここでアイツを逃すわけにはいかない!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 通信から聞こえてくるやり取りに歯噛みする。ラクスさんがあんなに必死に呼びかけているのに、返答も挙動もあまりに揺らぎが無さすぎる。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 おそらく洗脳されているのだろうとわかっているのに、八つ当たりめいた憤りに駆られて、まるで睨みつけるかのようにフリーダム──それに乗るキラさんへと強く意識を向けた。

 

 

 

 

 

 

 《フルバーストで、一気に決めるッ!》

 

 

 

 

 

 

 

 …………は?

 

 

 突如、頭に直接流れ込むように聞こえたキラさんの声。思考より先に、身体が動き機体に回避運動を取らせる。そして、脚部のスラスターを吹かして速度の乗った蹴りを後方へと見舞う。

 直後、フリーダムは全ての武装を展開して撃ち放った。一瞬前まで機体のあった空間にビームやリニアガンの弾が殺到する。

 そして、こちらへと迫っていたシールドブーメランに蹴りがぶち当たり、弾き飛ばされる。

 

 

 

 なんだ、今のは…………。訳の分からぬままに、先ほどのように意識をフリーダム──キラさんへと向けてみて顔が引き攣った。

 

 

 

 

 

 

 

 キラさんに、ドス黒い悪意が触手めいて纏わりついていることを知覚したからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なんか、思ってた以上にオカルトじみてきちゃったぞぉ?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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