地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
「だらっしゃぁいッ!」
『ゼフォーッ!!』
思わず声をあげながら、機体を翻して回避。遅れて気づいたらしい、キラさんの呼びかけを聞きながらビームを見送った先。
俺の知るものと頭部形状の異なるディン──おそらくファウンデーションの運用する無人仕様機……だったはず、その胴体へと吸い込まれるようにビームが直撃する。
瞬間、緊迫感が満ちる。無人機故に人的被害は無いが、ユーラシア側がファウンデーションのMSに攻撃したことに変わりはない。
一発だけなら誤射……っ!一発だけなら誤射かもだから!頼むから、落ち着いて司令部の判断を仰いでくれチンピラナイツ。
そんな内心を他所に、続け様に撃ち込まれるビーム。先ほど攻撃してきたMSが、ライフルを乱射している。
「乱れ撃ってんじゃねぇよバーカ!!」
マトモに狙いがつけられていないが故に、いつ不意にコチラヘ飛び込んでくるか分からないビームを避けようと注意を向ける。
こちらに向けて攻撃をしているのは一機だけで、周りは困惑している様子だった。
『一体どういうつもりなのか、ご説明いただきたい!』
『あ、アレは我々の意思では無い!現場の独断だ!!』
『そんな言い分が、通ると?』
『う、ぐうぅ……』
スピーカーから漏れ聞こえる、オルフェ宰相とユーラシア将校の焼き直しのような問答。
こちらから見て取れる様子としては、ユーラシア側の主張のように現場の──というよりも一兵卒の暴走と思える。
件のMSは、周囲の制止を他所にいまだに攻撃を続けている…………?何か、既視感を覚えた。
『ヤマト隊長とゼフォー特務少尉は国境線から遠ざかっていた!!そこへ攻撃を行うなど……もはや侵攻行為と受け取らざるを得ない!』
『なっ、バ────を──なッ』
司令部のやり取りが意識から外れるほどに、考え込む。
悪意を知覚した後、まるで錯乱したかのように周囲の声も耳に入らぬ様子になった。まるで先程までのキラさんのような……。
ハッと息を呑み、より強く深く意識を暴れているMS──そのパイロットへと向けようとして。
自身の後方からのビームが、ダガーを貫き爆散させる。
『なっ、何をしているんだッ!!』
『奴らの行動は、我々への侵攻行為と判断した!』
やりやがった!!マジかよあの野郎ッ、やりやがったッ!!キラさんの問いかけに、シュラが後ろめたさを感じさせない様子でハッキリと答える。
判断が早い!……ふーざーけーるーなー!!!あああああああ!!なんの!為に!俺が!キラさんと!戦ったと思ってんだよぉ、えぇ!?
オルフェ宰相ォ!!お宅んところの
ふと、気づく。司令部と繋いでいた筈の通信から、ノイズしか流れていない。
顔が引き攣り、血の気が引く。
『ラクスさんッ、応答を!ラクスさん!?』
『──────』
慌ててマイクで司令部へと、ラクスさんへと声をかけるが帰ってくるのはノイズだけ。
大規模な通信妨害……?ブルーコスモスの仕業だと考えるには、あまりにもタイミングがおかしい。もっと早い段階で行われていてもおかしくはない筈だ。
まるで、ユーラシア側からの攻撃をキッカケにしたような……。
そんな風に困惑している間にも、コチラの状況は切迫していく。ブラックナイト含めたファウンデーション勢が、ユーラシア国境へと向かおうとしている。
先ほどの攻撃で浮き足だっていたユーラシア側も、その動きに慌てて迎撃態勢を整える。
そして、避けられぬ激突を防ごうとキラさんはちょうど中間地点へと位置取っていた。
『止めるんだ!敵は彼らじゃ……ッ!!』
《そうだッ!奴らじゃない、敵は貴様だ!!キラ・ヤマトっ!!》
《二分で片付ける!》
《キャハハハッ!さっきまで味方と戦ってたヤツの言うセリフじゃないよねぇ!そんなんだから、ラクス姫を泣かせちゃうんだよぉ!?》
『ッ?!』
キラさんの制止の為の通信、それを無視して驚異的なスピードで進むブラックナイト達。
同時に、頭の中で声が響く。まるでついさっきまでキラさんと戦っていた時、心を読み取っていた時のように。
それはシュラと…………あー、ガラの悪い緑のカリアゲ君に、オレンジ髪のメスガキめいた少女の声だ。
だが、そんなことはどうでもいい。響いた声の一つ、聞き逃せないセリフに頭に血が上る。
そのセリフに動揺したキラさんへ、一際素早い動きで接近した他と比べ豪奢な黒騎士がその手に持った実体剣を振るう。
赤熱化した刀身がフリーダムの持つライフル、その銃身を斬り飛ばす。動揺していたとはいえ、咄嗟に反応したキラさんの回避行動の上でだ。
そこへ遅れて接近し追撃しようとする二体の黒騎士へと、罵倒とともにライフルとビームランチャーの砲口を向ける。
《ピーマンヘアーにニンジンヘアー、オマケにナスビリップ……ミックスベジタブルかな?彩りがキレイだなぁ!でも内面がドブカスっ!総合評価−100、人間テスト落第だオラァァァン!!》
《いきなり何を……あ?なんで出来損ないのテメェが……?》
《話と違くなぁい?》
思っていたのとは違うが気は引けた。動きの僅かに鈍った二機へと、そのままビームを撃ち放つ。
《バカが、効かねぇんだよ!!》
直撃した筈のビームが、装甲の上で弾けて消える……っ?!インチキ!インチキだよアレ!
ビームが効かなきゃ、ライフルなんてただの色付き水鉄砲よ!?
《だったら
《やかましいんだよ、テメェは!!》
すかさずリニアランチャーを展開しようとするが、緑の差し色がされたブラックナイトがフリーダムに匹敵──いや、凌駕する速度で肉薄してくる。
その左手には、対艦刀。
グリップで保持したシールドを前へと押し出すように構え、右手を上に振り上げる。
その勢いのままにライフルを放り投げ、対艦刀の柄へ手にかけたところで頭を駆け巡る敵意。次いで像を結ぶは相手の思考、攻撃のビジョン。
もはや目の前に迫ったブラックナイトが下から切り上げてくる対艦刀へと、シールドをさらに押し出しながらスラスター出力を落とす。
対艦刀に接触したシールドが、熱せられたナイフを押し付けられたバターのように瞬間の拮抗すら許されず、下から三分の一ほどの位置から斬り飛ばされる──寸前に手を離す。
右腰のサーベルを左手が抜き放った時には、シールドと共にリニアランチャーの砲身が斬り飛ばされていた。
「着剣ッ!着ッけェぇんっ!!」
上半身を反らしながら、構わず左手を振り抜く。眼前の黒騎士には掠ることすら叶わず素通りして。
ヴィジョン通りに、左前方に位置取るオレンジの差し色の黒騎士の放ってきたビームを切り払う。それでも出力が高いからか、飛沫のように散ったビームが装甲の表面を幾箇所か焦す。
切り払った際の上半身の捻り、その勢いで右手の対艦刀をこちらに迫るビーム刃へと振り下ろした。
バチィ、と閃光が迸る。だが、拮抗は出来ないと悟る。思った通りに、相手の膂力がコチラを遥かに上回っている。
押し返すのでなく、受け流す為に手首を起こす。相手の膂力によって弾かれることで、距離を取る。時計回りに回転しながら上昇するように、スラスター出力を操作した。
僅かに軌跡を変えた相手の対艦刀が滑るように振るわれて、避けきれずに頭部のブレードアンテナ。その左側が半ばから断ち斬られる。
追撃させない為に逆手にサーベルを持ち替えた左手を振るうが、黒騎士は驚異的なスピードで離れており空を裂いた。
上昇しながら、両腕のアンカーでシールドとライフルを回収しようと試みる。
だが、流石にそのまま見逃されることはなかった。放たれるビームを避けながら、翼部のミサイルを放つ。
それは背中──マントのようにたなびく装備から虹色の輝きを放つ黒騎士へと迫って……。
ゾクリ
背を走る悪寒に、引き寄せていたライフルを知覚した敵意の方向へと蹴り飛ばした上で、バルカンで破壊する。
ミサイルは黒騎士──その残像を突き破って時限信管によって爆発。ライフルは、迫っていた黒騎士本体の目前で爆発する。
広がる爆炎を他所に、スラスターを全開にしながら距離を取る。あくまでジグザグに不規則な軌道を描きながら。
それの正しさは証明された。爆炎を突き破ってコチラへ放たれた光芒によって。
かろうじて躱しながら、機体を砦跡へと。アスカ大尉達へと合流する為に飛ばす。
『ゼフォーッ!!……クッ!?』
《俺を前にして余所見とはなっ!!》
コチラに注意を向けたせいか、シュラの駆る黒騎士に背のスラスターを破壊されてフリーダムが地上へと落ちていく。
《思ったより手こずってなぁい、グリフィン?》
《様子見がてら遊んでただけだ。想定外だがどのみち、クスリ頼りの雑魚には変わりないみたいだがな》
風に吹き散らされた爆炎の向こう側、なんの痛痒も感じさせない無傷の黒騎士からの侮蔑の感情。
悪態の一つも返してやりたいが、それどころではなかった。
「フゥ、フゥ、フゥ、フゥー」
さっきの数秒のやり取りで、すっかり荒くなった息を整える。どうにか凌げたのは、相手の言葉通りに遊ばれていたからだ。
まるで、歩いているときに道端の小石を蹴るような片手間。茹った頭でも分かる追撃の甘さが、楽観視を許さない。
ユーラシア連邦なんて大国相手に、独立を勝ち取れるだけはある。頭に響く声に、キラさんに洗脳をかました相手だと確信を抱いて茹だりそうな頭が冷えるほどには圧倒的な差があった。