地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
「ワンエッツーエッスリーエン、フオォォォォ!!」
《ちぃ、鬱陶しいんだよ!》
「アッハハハハハァッ!ゴメンねぇ、鬱陶しくってさぁ!!でもさっさと落とさない、そっちが悪いんだよぉ?ざぁーこ♡ざぁーこ♡」
そう煽りながら、周囲のディンやジン──ファウンデーションの無人機群からの攻撃を回避、あるいはバルカンで迎撃する。
口では余裕ぶって煽ってこそいるものの、その実余裕などありはしない。先程から隙を見て何度も通信を繋げようとしているが、上手くいっていない。
『ゼフォーッ、そっちはどうなってる?!応答しろゼフォー!!』
「……ッ!」
《どうしたぁ?お仲間からの通信だろ、出てやれよ!出来たらの話だけどなぁ!!》
今だってそうだ。ユーラシアとブラックナイトとの交戦を察知したらしいムウさんからの通信へと意識を向けた瞬間、感じた敵意に機体を翻せば掠めるように光芒が過ぎていく。
今まで経験したことが無かったせいで分からなかったが、どうやら俺は無人機との連携を行う相手に相性が悪いようだ。
知覚する敵意と、行われる無人機からの攻撃は方向が異なる。指示を出す人間と無人機の位置は違うのだから、当たり前の話ではある。
周囲の無人機群へと意識を向け、自身を追う一体の黒騎士の攻撃を敵意でもって察知し回避する事で、かろうじて砦跡への飛翔は叶っている。
だが、先程までいたオレンジの差し色の黒騎士の姿は周囲に無い。おそらく、向かった先は俺と同じく砦跡。
その事に歯噛みしながらも、注意していた無人機からの攻撃にアクションを起こす。
「ご立派ぁッ!なコイツをォ……プレゼント、フォー、ユー!!」
《いるかよ、そんなのっ!》
自身に向かって放たれた、でっかぁくてぶっとぉいご立派なイチモツ──もとい、D装備のジンの大型ミサイルをアンカーワイヤーで絡め取り、黒騎士へと放り投げる。
対艦刀を抜き放って迫っていた相手は狼狽えることもなくそれを切り捨て、僅かに速度を落としながらもコチラへ肉薄してくる。
その値千金である僅かな時間で、体勢を整えた。そして自身の右手に握られた対艦刀で、振るわれたビームの刃を弾き飛ばされながら受け流す。
それでも防ぎきれず、切先──実体剣部分が耳障りな金属質の高音と共に、機体に傷を刻んだ。
「ぐっ、うぅッ」
《出来損ないの割には粘った方だが、これで終わりだあ!》
コクピットにまで伝わる衝撃に揺さぶられ、小さく苦悶の声が漏れる。僅かな瞬間、集中が途切れた。
だが、相手──ブラックナイトにとってそれは十分な隙だ。無人機からの攻撃とタイミングを合わせて、再び黒騎士が肉薄する。
弾き飛ばされ体勢の崩れた状態では、まともに受け流すことも回避することも儘ならないだろう。
『ゼフォーォォッ!!』
「シンさんッ?!」
通信からシンさんの叫びが響き、周囲の無人機から放たれたミサイル達を、ビームが貫く。
その爆風に煽られて体勢を崩した黒騎士へと、凄まじい速度で接近するジャスティスが続け様にビームを放つ──けれども。
《学習能力ねえなあ。お前ごときは相手にならんと証明してやっただろうがァッ!》
『くぅッ!引くんだ、ゼフォーッ!』
『────ゥ、了解ですっ!』
黒光りする装甲の表面で跳ね返され、逆にビームを撃ち込まれたジャスティスはかろうじてシールドで防ぐ。
通信から聞こえるシンさんの声に、キラさんの錯乱の元凶はソイツだと口にしかけ──マトモな理屈を伴った説明の言葉を持たないと気づいて、無難な言葉だけを返した。
離れる間際、ビームランチャーで無人機のうち一機を撃ち抜きながら周囲に意識を向ける。
地上でブルーコスモスのダガーと切り結んでいたムラサメ改が、諸共にファウンデーション機の放ったミサイルの爆炎に飲まれる。
黒騎士のライフルが放った光芒が、空を舞う翼を撃ち抜く。それに気を取られた別の機体が、ミサイルに食いつかれ爆炎と化す。
ミサイルを回避したムラサメ改が、それを上回る凄まじい機動力で迫った黒騎士に切り捨てられた。
「……チッ」
『ゼフォー、無事だったか!』
ファウンデーション機や無人機に追い立てられたコンパス所属のMS達が、ブラックナイトに弄ばれるように堕とされる光景にキツネ狩りを連想して思わず舌打ちをしたところへ通信。
ムウさんからだ。急いで通信を繋いで返事を返す。
『ハイッ!キラさんはユーラシア国境付近でシュラ……サーペンタイン師団長と交戦中です!ヤツら、ユーラシアじゃなくてこっちを狙ってて──』
「クソっ、だろうな!今の状況を見る限りッ!!」
ファウンデーション機や無人機に攻撃を加えながら、ムウさんへ状況を伝えればそう返ってくる。
キラさんの突然の暴走について言葉を選んでいる間にも、戦況は悪化していく。
当然だ、通信障害による小さくない混乱に味方であるファウンデーションからの攻撃。ムウさんやヒルダさんのような、エースと言っていい人達でさえ不意をつかれたからか、少なくない損傷を負っている。
今はこの修羅場を切り抜けないと。纏まらない思考を、コチラへと攻撃の矛先を変えたファウンデーション機と一緒に切り捨てる。
俺には黒騎士の相手は力不足だ。黒騎士と殺りあっているシンさんのジャスティスはVPS装甲、物理は無効化できるがバッテリーを消費するし、衝撃そのものは殺しきれない。
周りからの横槍を気にしながら戦えるほど、ブラックナイトは甘くない。無人機やファウンデーション機みたいなカトンボは、カトンボ同士でやり合うべきだろう?俺みたいなさぁ!!
遠間でムラサメ隊へと攻撃を加えているファウンデーション機へビームランチャーでちょっかいをかけながら、手にした対艦刀で近くの相手に斬りかかる。
モニターに白い艦体が映る。
「アークエンジェル、前に出て……ッ」
だが、その巨体のあちこちから黒煙が幾筋も立ち上っている。その周りには飛び回る複数のMSの姿──二機の黒騎士と取り巻きの無人機群だ。
マーズさんとヘルベルトさんのゲルググが直掩にまわっているが、無人機も含めた攻勢に対処しきれていない。
アークエンジェルはエンジンブロックを切り離して、地面へと突っ込む。勢いよく土砂が巻き上げられ、衝撃に耐えきれずねじれるように翼が折れる。
挙げ句の果てに、弾薬庫に誘爆したのだろうか艦体から爆発的に炎が吹き上がる。
アークエンジェルには、マイカ中尉がいるはずだ。ギリと、思わず歯噛みして機体をアークエンジェルへとブッ飛ばす。
急ぐ俺の眼前。ゲルググがビームサーベルを向き放ち、それぞれ黒騎士へと挑みかかる。
それを黒騎士は迎え撃つ。背中のマントをたなびかせ、虹色の輝きを背負いながら。
《違うっ、それは!!マーズさんッ、ヘルベルトさんッ!》
『ッ、なんだ?坊主ッ?!』
その光景に、絶叫。瞬間、スラスター推力を全開にした上で対艦刀を腰だめに構え、同時に翼部のミサイルを撃ち放つ。
虹色の輝きを背負う黒騎士──その幻影から離れた箇所より殺意を撒き散らせてゲルググへと迫っている二機の黒騎士へ。
一方はミサイルを向かわせ、もう一方へは。
「突撃ィィィィィィィィッ!!」
俺自身が、叫びを上げながら刃を突き立てるべく肉薄。
身を捩るようにそれを躱した桃の差し色の黒騎士へ、左手でビームサーベルを向き放ち斬りかかる。
《出来損ないの分際で、味な真似をッ》
大きく距離を取った黒騎士からの思念。そちらへシールド裏のミサイルを追撃で放ちながら、歯噛みする。
突貫前に放ったミサイルは、空を裂いて時限信管で爆発。つまり、狙っていた黒騎士は、無傷。
ヘルベルトさんのゲルググは、脇を斬りつけられ爆散した。
『坊主、お前……』
『……ごめんなさい、ヘルベルトさんが──』
『いや、すまねぇ。助かったぜ、こりゃ俺の方が飲み物奢らなきゃ──来るぞッ、坊主!』
思わず漏らした悔恨の言葉に、長年の仲間を失ってツライはずのマーズさんが気を使って言葉をかけてくれる。だが、そんなことは黒騎士達には関係ない。
マーズさんの注意と同時、知覚した敵意に思わず反応し黒騎士へと意識を向ける。
《かかりましたね、出来損ない》
遅れて響く、ロックオンアラート。
ここに来るまでに既に撃ち尽くしていた。
「ちぃッ」
思わずサーベルで切り払い、爆炎。衝撃で揺さぶられ、煙で視界が塞がれる。
マズイ、とスラスターを吹かし上昇。煙を抜け出た先で、敵意。
黒騎士が対艦刀を振りかぶりコチラヘ肉薄。間一髪だが、咄嗟に対艦刀で受ける。だが、体勢が悪く大きく弾き飛ばされる。
そして、そこへ迫る黒い影──ヘルベルトさんを墜とした方、青の差し色の黒騎士だ。
『やらせるかよッ』
そこへマーズさんのゲルググが、ビームサーベルを振りかぶり挑みかかる。飛び散る火花、黒騎士とゲルググが弾かれるように距離を空ける。
俺を弾き飛ばした黒騎士が、今度は体勢を崩したゲルググへと迫る。追い縋ろうとする瞬間、敵意。
再びロックオンアラートが響く。殺到するミサイル、今度はビームランチャーで撃ち落とす。
だが、その僅かな時間で黒騎士はゲルググへと対艦刀を振り抜いた。
『アークエンジェルをッ、たの──』
マーズさんの最期の言葉は、爆音に呑まれ消えた。