地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
《弱いくせにでしゃばるなよな、時間かかるじゃん。めんどくせー》
《同感です。残りも手早く片付けますよ、ダニエル》
頭に響く、いっそ清々しいまでに悪びれもしない太々しい声たちに、むしろ一周周って感情が凪いでいく。
刺さるような敵意、頭を駆けるビジョン。今度は間違えない、機体を翻してビームランチャーを一度二度、三度と放った。加えて、翼下のミサイルを全て解き放つ。
再び響くロックオンアラート、ほぼ同時に周囲の無人機が放ったミサイルにビームが突き刺さり、爆炎。
至近での爆発に煽られた無人機達の土手っ腹に、ビームが食らいついて更に爆炎を大きくする。
肉薄してきていた黒騎士達は、迫り来るミサイルを前にスレスレまで引きつけた上でそれぞれ異なる方向へと急激に進路を変える。
再度、頭を巡るビジョン。このポンコツCPUがッ!こんな風に見えるんだったならなぁ、もっと早くに見えろよなぁ!?
「だあああァァァッ!」
《叫んでも強くなんか……あ?ウッザ》
対艦刀を勢いよく放り投げながらワイヤーを射出、同時にスラスターを部分的に強く吹かす。上から急降下してきたダニエル……贅沢な名だね!今日からお前の名はダニだよっ!
ダニの振るう対艦刀──それを握った左手首へと、スラスターで加速させた左足でオーバーキック。
ウィンダムのフレームが軋む音が直接聞こえると錯覚しそうな衝撃に歯を食い縛りながら、それでも腕を弾き飛ばすことで開いた空間──黒騎士の胴へと左手のサーベルを勢いのまま振るう。
投げつけた対艦刀は、アークエンジェルへと踵を返した桃の差し色の黒騎士の進路上へと進む。
黒騎士が軌道を変える寸前、柄にワイヤーが巻きつき不規則に軌跡が揺れた。
《チッ、面倒な……》
『お前らァァァッ!』
それを受け更に大きく軌道を変えた黒騎士に、ミサイルが突っ込む。叫びを上げながらムウさんのエントリーだ。
それを認識して、完全に意識をダニへ向ける。振るったサーベルは空振りだ。間を取った相手は、既にライフルをコチラに向けている。
急ぎ対艦刀を引き寄せながら、角度をつけたシールドで光芒を弾きながら距離を詰める。
《マグレで調子乗んなっての》
「お前がそう思うんならそうなんだろ、お前ん中ではなぁ!」
頭に響く蔑みの声を悪態で返して流し、黒騎士が俺の右手側へ動き対艦刀を振り下ろす──そのビジョンに対応する。
ワイヤーで引き寄せた対艦刀を握り、相手が動く寸前にタイミングを合わせて体幹を軸に時計回り。
勢いをつけて、ダニヤローの対艦刀に速度が乗る前にコチラから振るう。
パッ、と眩く閃光が迸った。ダニがコチラを切り払おうとした対艦刀の軌跡を変えて、受け止めてみせる。
勢いを乗せた振り下ろしでも、五秒も満たない僅かな拮抗の後で弾き飛ばされる。
「チィッ、パイロットの腕とMSの性能が良いだけのドブカスがッ!」
《だいぶ調子乗ってんなあ、めんどくさ……》
咄嗟に対艦刀から手を離し、衝撃をなるべく受けないように。すかさずワイヤーで確保しながら、今度はコチラが間合いを開ける。同時に、なるだけ黒騎士をアークエンジェルから引き離すように。
舌打ちと悪態を漏らすコチラに対して、ダニは気怠げな反応。……分かっていたけど、余裕ですってかぁ?!
『くっそォォォ!』
ムウさんの絶叫が聴こえた。視界の片隅、爆炎で吹き飛ばされきりもみしながら落ちていくムラサメの姿が映るモニター。
「ムウさんッ?!」
《よそ見とか、調子乗るにもほどがあるっての》
思わず意識が逸れてしまう。そして、それを見逃す相手ではない。対艦刀を振り上げながらグン、と肉薄した黒い影に反射的にスラスターを最大出力。
かろうじて直撃は避けるが、オオトリストライカーのX状に広がる四枚の翼。そのうち、右下の翼が真っ二つに切り裂かれる。
急激に失われる揚力。体勢を立て直すことに意識が割かれる。
《ハイ、おしまい。あーダルかったー》
突き刺さる敵意、駆け巡るビジョン。咄嗟にシールドを投げつけながら、コードを打ち込む。2、4、5、3。
ほぼ同時、幾度も光芒を弾き耐ビームコーティングが劣化してきていたシールドへ高出力のビームが突き刺さる。
弾ききれなかったエネルギーの奔流が、シールド裏にマウントされたミサイルを巻き込み爆発。爆炎が大きく広がる。
それとほぼ同時、ミシェンクレイドに内包された分離ボルトが起爆し、外装を強制排除する。
視界が爆炎で切れたことを見てとって、続け様にオオトリストライカーに分離及び自立飛行のコマンド入力を行いながら、左腕のワイヤーを認識している黒騎士目掛け射出した。
オオトリストライカーが自立飛行で爆炎へと突っ込むのに遅れて、スラスターを全開。
対艦刀を振りかぶって、爆炎を突っ切る。この勢いで、叩っ斬ってやる!!
大きく、アラート。モニターに表示されるオーバーヒートの文字。次いで、ガクンと身体で感じるほどに減速してしまう。
マズイ、
ゾクリ
感じる悪寒。反射的、かつ強引に上体を逸らし左足を振り上げる。爆炎を抜けた瞬間、目に入ったのは突貫してきたオオトリストライカーを僅かに身を捩って躱していた黒騎士。
そして、対艦刀が勢いよく振り切られ。
スラスターがオーバーヒートを起こさず
《チッ、運のいいヤツ》
対艦刀を振り切った黒騎士の背中がコチラを向く。頭に響く言葉を他所に、左足をより強く振り上げ蹴りを叩き込もうとして。
マントのようにたなびくビームがうねり、無数の斬撃を生み出して左足をズタボロに引き裂く。
ぬぁんてインチキィィっ!!
そのまま黒騎士は、逆にコチラへと右回し蹴りを胴体へ叩き込む。衝撃に揺さぶられながら、ライフルが向けられる前に左手でスティレットを抜き取って投擲。
爆発が、衝撃と共に機体を吹き飛ばす。残念ながら、黒騎士には損傷はないようだ。痛痒を感じさせない姿のまま、ライフルをコチラに向け──。
《めんどーだから、そのまま地面のシミになれ》
粘つくような悪意。頭に声が響くと、ダニは言葉通りにそれ以上コチラに何もせずにその場を飛び去った。
重力に引かれる感覚の中、コンソールのモニター。高度計に視線を向ける。何もしなければ、ミンチ確定だ。
オーバーヒートしたスラスターの出力を切った上で、必死に生きているスラスターを吹かし、体勢を整え背中を地面へと向ける。
「ほおおおォォォああァァァ!?」
みるみる地面へと近づいていくことを示す高度計を横目、絶叫しながらタイミングを図る。
オーバーヒートの表示が消える。瞬間、出力を全開。僅かに浮遊感を感じ────。
一際強い衝撃。それと共に、意識が暗転した。
falling downー落ちる。計画が失敗する。