地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-24 サプライズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体を走る鈍い痛みに、喧しいアラート音。妙に重い瞼を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………ッ!今は──ンギィっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寝起き特有のモヤのかかった視界が晴れていき、ヒビが入ったり酷いところは火花の散っているモニターを認識。

 急激に意識がハッキリとし、現状を把握しようと身体を起こそうとして全身に痛みが走る。次いで喉奥から酸味と刺激、こみ上げる吐き気をどうにか抑え込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「んグゥゥ、ッ……ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヘルメットを取り、荒く息を吐きながら思考をまとめる。ファウンデーション、ミケール捕縛作戦、キラさんの錯乱、黒騎士たちの強襲、墜ちたアークエンジェル、糞騎士との戦い、地面へ向けての紐なしバンジー。

 最後の記憶は、全身を襲った強い衝撃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヘルベルトさん、マーズさん…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シートに仰向けのまま、腕で目元を押さえながら漏れ出たのは生き延びたことへの安堵でなく、悔恨の籠った言葉。目の前で爆炎に呑まれた二人の名前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……糞騎士どもがよぉ。トドメ直接刺さなかったことォ、後悔させてやるからなァ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 恨み節を口にしながら、コンソール──そこにセットされている情報記録媒体を取り外す為の手順を行おうと手を伸ばす。

 ユーラシアじゃなくてコンパスに積極的に殴りかかってきた証拠、洗いざらいぶち撒けて……。

 

 

 

 

 

 

 

 ドクン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いまだ全身に走る鈍痛、それとは別の痛みが胸の奥底に突き刺さるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「グッ、ガァ……アアアァァァっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久方ぶりの感覚、グリフェプタンの禁断症状だ。胸を押さえながら、伸ばしていた手をコンソールからその脇──小物入れへ。

 中身が零れ落ちるのに構わず、手探りでお目当てのモノを探り当てる。そしてそれを、そのまま首元へと荒々しく押しつける。

 

 

 シュッ、と言う音とともにインジェクターの中身が体内へと注入される。

 禁断のグリフェプタン二度打ち、禁断症状とともに興奮作用で全身の痛みも引いていく。

 頑張れ、未来の俺。苦しいってことは、生き延びてるってことやん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そのためには、まず死ぬ気で逃げないといけないんですけどね……んェ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クリアになった身体機能、そのうちの聴覚が音を拾った。コクピットのスピーカーは死んでいる。外から僅かに漏れ聞こえる音だ。

 コンソールを操作して、機体の状態を見る。スラスターを吹かせたとはいえ、高所から叩きつけられた衝撃でズタボロだ。多少は動くだろうが、すぐに何も出来なくなってしまうだろう。

 生身の身体が動かせる程度の怪我なのは、奇跡に近い。

 

 

 

 今の状態のモニターには、音の発生源は見えない。頭部を動かすぐらいはいけるか。

 下手に周りの状況を把握しないで外に出るのは危険だろう。情報記録媒体を取り外せるようにしながら、ウィンダムの頭部を動かしてメインモニターへと音の発生源を…………。

 モニターに映った映像に、絶句する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 VPS装甲がバッテリーダウンしているのか、くすんだ灰色になってズタボロになって倒れ、挙句にバカデカい針がいくつも突き刺さってヤマアラシめいた様相のフリーダム。

 背部装備を破壊されて、立ちすくんでいるギャン。

 

 

 その奥、シュラが駆る黒騎士がまるで舞踏の如く、目にも止まらぬ速さで全身の武装を振るって戦っている。

 それに対峙し、振るわれる実体剣やビームサーベルを的確に弾きあるいは回避して、射撃すら合間に差し込んでいる見覚えのないMSの姿があった。

 

 

 

 ……いや、見覚えはある。その世界観にそぐわない独特な意匠のMSには。

 赤の機体色に、丸みを帯びたフォルム。蛇腹の伸びた関節に、赤熱化した三つの鉤爪を備えた両腕。

 全体的な印象を端的に表すと甲殻類が最も近いような、そんな奇怪なMSに、覚えがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ズゴックじゃねぇか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな俺の叫びを他所に、黒騎士とズゴックは、目にも止まらぬ鮮やかかつ洗練された技量で切り結ぶ。

 な、なんて無駄に無駄のない的確な動きなんだ……。片方が甲殻類でなかったらもっと素直に称賛の気持ちが湧くのに、絵面のせいで困惑が勝る。

 

 

 

 黒騎士とズゴックが、互いに飛び退き間合いを開けて向かい合う。黒騎士は油断なく実体剣とシールドを構え、ズゴックはその両腕の鉤爪を隙のない姿で向ける。

 ……無駄の無い動きとシュールな絵面の温度差で、脳がバグりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さようなら、アスラン・ザラ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳裏に響く、冷たい殺意。ユーラシアの兵が錯乱する直前に感じたものと同質の思念。

 思わず周囲に視線を向けるが、何者の姿もない。ただ、黒騎士とズゴックの戦いで生じた砂埃が、風に巻かれていて────。

 

 

 

 

 

 

 

 不自然に揺れ動く砂埃。思考が及ぶ前に、直感が身体を動かした。

 

  

 

 

 

 

 

 仰向けに倒れていたウィンダムの身体を跳ね起こし、右手でスティレットを抜き取って投擲。

 そのまま倒れ込む機体を、コクピットハッチが下敷きにならぬように無理矢理仰向けになるように操作。

 かろうじて仰向けに倒れ込むと同時、無茶をさせた関節から火花。完全に機体が沈黙する。

 

 

 投擲されたスティレットは、不自然な動きのあった地点の地面へと突き当たり、炸裂。

 爆炎が上がり、まるで滲み出るように黒い影が現れる。

 

 

 派手な差し色はなく、黒とグレーを中心にしたカラーリング。その顔は、髑髏が兜を被ったような独特な容貌。

 黒騎士達と同様の意匠でありながら、必要最低限の防具を身につけているようなスリムなシルエット。

 だが右手だけが大きく、その前腕部が丸ごと大きなハサミのような形状となって射出されていた。それは右肘から伸びるワイヤーで繋がれている。

 総じて、まるでファンタジー作品に登場する異形の暗殺者めいた印象のMSだ。

 

 

 

 その射出されていた右前腕部は、爆発によってズゴックへと向かっていた軌道が逸れて地面から突き出た岩の塊へ。

 接触すると締め上げるような挙動、瞬く間に岩の塊を細かな破片へと変貌させた。

 

 

 

 

 

 …………ミラージュ・コロイド・ステルスやないかーい!しかも、黒騎士に近い見た目でズゴックを狙っていたってことは、ファウンデーションの刺客……ってコト?!

 

 

 

 思わぬ光景に顔を引き攣らせていると、頭に直接響く声。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ダニエルめ、怠け癖はいい加減に直せと……いえ、ここは素直に貴方の尋常ならざるしぶとさに敬意を抱くべきでしょうか。ゼフォー・ローワン特務少尉殿?》

 

 「敬意は結構ですので、その物騒なモノを向けないでいただきたいんですけどぉ……。アイシュ・ガローテ筆頭外交官殿?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 聞き覚えのある声、ワイヤーで巻き取った右手──そこから覗くビームの発射口と思われるモノをコチラへ向ける黒いMSに声をかける。

 突如現れた新手に反応したズゴックを、シュラの黒騎士が鋭く牽制している。助けは絶望的、か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ご遠慮なさらず。我々の計画を、こうも見事に妨害されたのです。それ相応の御礼を差し上げねば、ね》

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭に響く声は柔らかだが、刃物を向けられているような鋭く冷たい殺意が、如実にガローテのコチラへの心象を伝えている。

 視線を動かし、思考を回すが打開の妙案は見つからない。

 

 

 

 

 ……現実は、非情である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《では、さようなら。ゼフォー……なにッ?!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前のMSが、後ろに飛び退きながら左半身を前に。コチラの頭上を飛び越え迫るミサイルが着弾する前に、左肩の装備から黒騎士のマント状のビームと同様のものが展開。

 ミサイルの爆風に包まれるガローテのMSとこちらの間に、何かが現れ降り立つ。

 

 

 

 えぇ……なにぃ?空飛ぶ円盤、U.F.Oかなにか?

 

 

 

 目の前に現れた謎の飛翔体は、備え付けられた砲門とミサイルランチャーを未だ晴れぬ爆炎へと向けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 《悠長に喋りすぎましたか、これでは立つ瀬がありませんね》

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆炎が吹き散らされ、傷ひとつないMSの姿が露わになる。だが、奇妙なことに冷たい殺意はもう知覚できない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《シュラ、お楽しみのところ申し訳ありませんが時間です》

 

 《……いいのか?キラ・ヤマトは健在だぞ?》

 

 《フリーダム、ジャスティス含めたコンパスの戦力は粗方破壊……もしくは損傷させました。必要十分な成果でしょう、私の方から申し開きをします》

 

 《構わないが、あの方の執着の強さは相当だぞ》

 

 《想定不足による立案ミス、私の責です。その程度は織り込み済みですよ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭に響くガローテとシュラのやり取り。聞きたいことは山ほどあるが、口を挟むよりも耳を澄ませるべきだろう。

 先程の冷たい殺意が、グリフェプタン系の薬のもたらす興奮作用で熱くなった頭を冷やしたのは幸いか。

 

 

 ガローテのMSが、空気に溶けるようにその姿を消していく。さっきのやり取りでも言っていたが、優位な状況なのに引くのか?

 

 

 

 

 

 

 そんな疑問を他所に、状況は動く。目の前にある飛翔体が高度を下げ、ハッチを開いた。そこから覗くのは、身体のところどころから巻きつけた包帯が覗くマイカ中尉の姿だ。

 

 

 

 

 コンソールを手早く操作してコクピットハッチを強制排除し、取り外せるようになった情報記録媒体を手荒に引き抜く。

 両腕に力を込めてコクピットから這い出て、地面へと飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……おべッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思ったよりも足に力が入らずに、着地した際に地面へと崩れ落ちる。起き上がろうとするが、力が入らない。興奮作用で痛みを感じていないだけで、どうやらかなり身体は限界近いらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ゼフォーッ!……意識はあるようですね」

 

 「……ヘイ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 こちらに駆け寄り、助け起こしてくれながら声をかけてくれるマイカ中尉に返事をする。

 腰のポーチからインジェクターを取り出す彼女に、情報記録媒体を握っていた手を差し出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これは……?」

 

 「ちょっと……代わりに持ってて、欲しいっス」

 

 「……分かりました。では、担ぎますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 情報記録媒体をポケットへ入れ俺にインジェクターを使ったマイカ中尉は、コチラを肩に担いだ。いわゆるお米様抱っこ、正式にはファイヤーマンズ・キャリー……だったっけ?

 腹にグッ、と力がかかる。戦場からいち早く離脱するためとはいえ、少し苦しいなぁ。

 さっきのインジェクターの中身は、簡易的な緩和剤と鎮静剤かなぁ。普段は効きが悪いのに、もう意識がぼんやりしてきたからやっぱりかなり限界だったみたいだぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《来るかい?》

 

 《…………ハァ?なにしてるんです、シュラ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭に響く言葉も、薄らいでいく意識にボンヤリと滲んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《これでもそれなりに優秀なパイロットだ。手元に置けば、なにか使い道があるだろう》

 

 《……まぁ、いいでしょう。オルフェと陛下への説明は、貴方がなさってくださいね》

 

 《なッ……くっ、わかった》

 

 《……はぁ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、とうとう意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 ガローテ:鉄環絞首刑、首を鉄の輪で絞めて後ろを捻ることで首を絞める絞首刑の一種。ガローテ・ワイヤーという、第二次世界大戦にてスパイあるいは静かに歩哨を倒すのに使用され、今日でもアメリカ海兵隊の格闘術の教本に使用方法が掲載されている暗器がある。
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