地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
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「第二爆心地の東1.5キロにアークエンジェルと思われる残骸を確認しました」
オーブの執務室に、トーヤが報告書を読み上げる声が響く。それを聴くカガリ、そしてモニターに映し出された大西洋連邦大統領フォスターとプラント最高評議会議長ラメントの顔は険しくなる一方だ。
ファウンデーション首都イシュタリア、及びエルドアへの核攻撃という惨劇から数日。
カガリ達コンパス参加国代表は緊急の会談を行なっていた。現在トーヤの読み上げている報告書。その内容は、掻い摘んで言えばエルドア地区にて作戦行動中であったコンパス部隊は全滅したというものだった。
静まり返った空間に、沈鬱な溜息が響く。イシュタリアにて待機していたミレニアムはどうにか被害を免れた、というのが数少ない吉報の一つか。
彼らが居なければ現地での状況は今以上に不明瞭となり、会談を行うことすらままならなかっただろう。
『……それで、クライン総裁はご無事なのですな?』
『……ええ。ミレニアムからの報告では、ファウンデーションの高官らとともに脱出したと……』
ラメント議長の言葉に、カガリは僅かに違和感を覚えながらも答える。そして、違和感のままに口を開いた。
「……プラントに連絡は?」
『いや…………』
気がかりそうに首を振りながらの答えに、カガリは思わず眉を顰めた。それでは、実質ラクスも行方不明ということではないか。
本来なら、プラントなりオーブなりに無事であるとの連絡が来て然るべきであり、ラクス自身もそれを失念するとは思えない。
やはり、なにかが引っかかる──そんな風に考えこむカガリを他所に、フォスターが口を開いた。
『クライン総裁の事も気掛かりですが、ひとまずは今回の件にコンパスとしてどのように対応するかを──』
『コンパスとしての対応……?何を他人事のように!!』
議論を促そうとしたその発言を、穏健派であり本人も穏やかな人柄として知られているラメントが激しい言葉で遮った。
その普段からかけ離れた様子に、だがカガリは内心で同意していた。フォスターの物言いは、少しばかりこちらの心情を軽んじているようにも思える。
ラメントは湧き上がった激情を抑えるためにか一口水を含んでから、なるだけ平坦な声色で言葉を続けた。
『…………今回の件、報告書によればユーラシアからの攻撃でファウンデーションのMSが撃墜された事が発端、との事ですが貴女はどうお考えなのです?フォスター大統領』
『……ユーラシアからは、現場の独断による行動であり我々に攻撃の意思は無い。詳細は鋭意調査中である──との連絡を受けています。報告書にも記載のある通信障害を含め、慎重な判断が必要であり調査を続けるべきかと。……それと、発端はヤマト隊長の不可解な軍事境界線への接近です。尤も、我々が出向させた兵の挺身によって致命的な事態は避けられたようですが。そんな人員を失ったことには、私も心を痛めています』
『……ッ、そうですな。申し訳ない』
それに対するフォスターの皮肉げな返答に対して、ラメントが言葉を返すがその顔は険しい。カガリもユーラシアの無責任ともとれる弁解にも、それを受けてか及び腰にも思えるフォスターに苛立ちを感じるが、必死に内心へと抑え込む。
不可解な点が多い事は、報告書を読む限り事実である。この件は慎重な判断が求められ、それゆえに調査を続けるべきであるとの意見には一理あると考えるからだ。
『とにかく、ヤマト隊長の件も含めて不可解な点が多すぎる!私も調査を続行すべきだと思う』
『とはいえ、今回のユーラシアの行動はあまりにも目に余る!核を撃つなど、どんな理由があろうと全人類への背信行為だ』
ラメントの言葉にフォスターは僅かに眉を顰めるが、カガリはその通りだと考える。この件は地球全土に強い衝撃を与え、もとより独立運動への苛烈な対応を行なっていたユーラシアへの悪印象が更に高まっている。
だが、だからこそ慎重な対応が求められるだろう。今回の一件は、下手をすれば大きな戦乱へとなりかねない。
それこそ、過去に起きた二度の大戦に匹敵するような大規模なものに。
『……とはいえ、今回の一件の責任。ユーラシアだけに求めるべきなのでしょうか?』
『……何が仰りたいのです?』
水を差すようなフォスターの発言に、ラメントが危険なものを漂わせた口調で返す。
だが、フォスターはそれに気づかず──あるいは気にも止めずに言葉を続けた。
『ヤマト隊長の行動は本当に貴方達にとっても不可解だったのか、ということです。……例えば、そう、今回の一件はプラントがユーラシア領に介入できる絶好の──』
『言い掛かりはやめて頂きたい!犠牲になったのは我々の兵ですぞ!』
その物言いに、ラメントが怒りに眉を逆立てながら反論する。だが、それを受けたフォスターは僅かにたじろいだ様子を見せただけで、冷ややかに言葉を返した。
『……そちらの兵だけではないでしょう?それに被害の大多数は地球の市民です』
『そもそも、ヤマト隊長は境界線を超えていない!その上で撃ったのは、ナチュラルの方でしょう!!』
『……ッ!撃ったのはユーラシアです!ナチュラルという大きな枠で一括りにするのは止めて頂きたい!!超えていないのも、我々が出向させた兵が必死に制止を行なったからではないですかッ!!』
徐々にボルテージの上がっていく応酬──いや、もはや罵り合いへと変わったそれに、苛立ちを必死に内心へと押し留めていたカガリの自制心が完全に切れた。
「そんなことを言っている場合か!!だいたい、キラがそんなことをするものかっ!」
『……そうですか──貴女は、ご身内の擁護を優先なさるというのですな』
思わず立ち上がり、テーブルを叩いて荒々しく叫んだ言葉。それに対して、ラメントのこの上無く冷ややかな言葉を浴びせかけられる。怒りで熱くなったカガリの頭が急速に冷えていく。
傍にいた側近達が頭を抱えているのが、カガリの視界へと入った。
『……この様子では慎重な判断、というのは難しいですね。とにかく、我々は当事者たるコンパスの活動の一時凍結を提案します。それに付随して、我が国はコンパスへの関与を活動再開に至るまで断つことを宣言させていただきます』
『…………我らもだ。ひとまずは今日はこれにて。……痛くもない腹を探られて、今はとても慎重な判断を出来そうにないですからな』
ラメントのらしくもない皮肉げな言葉を皮切りに、カガリの前のモニターから首脳達の顔が消える。
交渉は決裂、という形での会談の幕切れである。
自身の失態に、カガリはうなだれデスクに頭を落とした。
「カガリ姉さま…………えっ?」
トーヤの気遣いながらの呼び掛けが、メールの着信音とともに疑念の声に変わったのに気づいてカガリは顔を上げた。
目に入ったその送り主の名に眉を顰めながら、そのメールを開く。
「これは、一体どうして…………」
「前にも言ったろう?ものごとには裏と表があるんだ、と。とはいえ、流石にこれは少し予想外だが」
そこに添付されていたデータに目を見開くトーヤを嗜めながらも、カガリ自身も驚きの表情を隠さなかった。
「わかっていたつもりだったが、まったく。とんでもない狸だったというわけか」
カガリは送られてきたメール──宇宙から観測されたと思わしき、ファウンデーション方面から大気圏を突破したシャトルの軌道から算出したらしい予定航路及び複数の目的地候補のデータ。
このデータを有効活用することを期待します、という文面の添えられたそれを送りつけてきた送信者──フォスターをそう言って評した。