地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-26 その涙は誰が為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 耳に飛び込んできた言葉に、息が止まり頭の中は真っ白に。けれども、俺の困惑なんかでは状況は止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「キラ、お前……」

 

 「どうなるかも深く考えずにラクスに頼って!そのせいでもう向けられなくていいはずの悪意を向けられて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こちらに気付いていないのだろう、がむしゃらに殴りかかりながら言葉を投げつけるキラさん。その勢いに気圧されてか、先ほどまでと違いアスランさんは受け身に徹している。

 

 

 けれども、それよりも。キラさんの言葉、その意味するところに思考が向いて、血の気が引いていくのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「挙句に戦場で戦わせてる!命を危険に晒してる、ゼフォーの手を汚させてしまったんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ち、ちがっ……ッ!俺はただ、出来ることで役に……恩を返したくって…………。

 ジワリと、視界が滲んでくる。キラさんの強い自己嫌悪を知覚して、胸が締め付けられるように痛い。

 一歩、後ずさる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そんなことをさせてるのに……僕は、僕はッ!あんなことをしでかしてッ!!」

 

 「キラっ、それは連中の……ッ」

 

 「ゼフォーに言われたのにッ!ラクスが泣いちゃうかもって、なのに……なのに!!ゼフォーを危険に晒して、ラクスにあんな悲しそうな……泣きそうな声を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そ、そんなつもりじゃ……俺はただ、ラクスさんとすれ違ってたようだった貴方の背中を押したかっただけで。あの時だって、ラクスさんは貴方を…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「僕じゃダメなんだ!ゼフォーを苦しめて、ラクスを悲しませて!僕には、僕にはぁ!」

 

 

 

 

 

 ラクスの手を取る資格なんて、ないんだぁぁ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 呼吸が荒くなる。叫び出しそうな口を押さえて、まるで子供みたいにイヤイヤと首を振っても何も変わらない。

 彼に……キラ・ヤマトにそんなことを言わせてしまったのは、俺だ。

 

 

 人の気も知らずに、良かれと思った行いで。すれ違った恋人達の背中を押したつもりで、断崖から突き落とすように。

 

 

 血反吐を吐くかのようにぶちまけている、あんなに強い自己否定を募らせるほどに追い詰めたのは、ゼフォー・ローワンだ。

 

 

 

 

 

 

 

 そう思い至って、俺は。両耳を塞いで、踵を返してレクリエーションルームを飛び出した。

 これ以上、自分の過ちを突きつけられたくなかったから。何よりツラいのは、それでもキラさんから知覚する感情が自己嫌悪で。俺に対する悪感情が、欠片も感じられなかったからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ッ!この、馬鹿野郎!!」

 

 「えっ、ゼフォー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 背中越しに僅かに聞こえるアスランさんとシンさんの声も振り切って、廊下の壁に背をつけながら力無く腰を落とす。

 目からこぼれ落ちる涙を拭っても拭っても、溢れ出して止まらない。口からは嗚咽とも、言葉ともいえない音が漏れ出る。

 

 

 まるで小さな子供のように泣きじゃくりながら、はたと気づく。肉体的苦痛を除いて、これまで泣いたことがあったっけ?

 

 

 

 復興支援の最中に仲良くなった難民の子──ミーシャが家族諸共に武装勢力に吹き飛ばされた時も、一緒に復興支援に従事していた現地政府軍のMSパイロットのセイ中尉が俺を庇ってビームが直撃した時も。

 

 それこそヘルベルト大尉とマーズ大尉が墜とされた時だって、薄っぺらくキレただけじゃなかったか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あぁ、そうか。ストンと腑に落ちる。こんな風に自分の時にだけ心が大きく揺れ動くような自分勝手でしか無いヤツが、上っ面だけで考えた行動が正しいわけないじゃないか。

 

 

 

 ズビズビと鼻を啜りながら、みっともなく泣きながら。ネガティブな方向へと思考が沈む。

 

 

 

 

 

 前世の知識があるのがどうした。結局のところ何も良い方向になんかなっちゃいない。

 いっそぶっちゃけてしまえば何か変わっただろうか。いや、ただ単に精神に異常を……。

 

 

 あぁ、と頭を抱えた。やっぱり自分だけが可愛いんじゃないか、俺は。

 頭に浮かんだ考えに、そう結論づける他なかった。

 

 

 

 前世があるとぶっちゃけて、精神に異常をきたしたと判断されていればミケール捕縛作戦は中止……そこまで行かなくても延期にはなっていただろうか。

 あるいは、俺が作戦から外されて配置が違うだけでも結果は変わっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………何が持てる力の全てでクソッタレな運命に歯向かおう、だ。今思いつけたならもっと早く思いつけただろう。

 頭がおかしくなったと思われる──ただそれだけのことなのに、周りからの目を気にして自分可愛さで目を逸らして棚上げしていただけで。

 

 

 

 

 

 

 

 訳もわからずMSの操縦技術を文字通り身体に刻み込んで、身体に得体の知れない機械を埋め込まれて。

 名前も尊厳も、最後には心すら奪われてしまった誰か。そんな誰かから、何の苦労もなく何もかもを奪い取った寄生虫じみた存在のくせに。

 

 

 明るい茶髪に、クリクリと大きくパッチリとした目に茶の瞳。154cmほどの身長に、42kg程度の華奢な身体……具体的な特徴はモヤがかかったように思い出せないくせに、こんなんじゃなかったいうことだけははっきりと分かる。

 世界のことを知れば知るほど一致する、自身の中のアニメとしてのC.E.世界の知識が現実感を薄くする。

 

 

 キラさんに、シンさんに、ルナマリアさん。それにマイカ中尉とか……彼らだけでなく誰かに気遣われるたびに、心の片隅が痛む。

 これらは本来は、前世の知人はおろか家族まで覚えていない薄情者な俺ではなくて本来の身体の持ち主に向けられるはずだったのにと。

 

 

 そんな痛みを誤魔化そうと、僅かに残る楽しかった記憶──ネットミームと呼ばれるネタを思い返して。

 〜〜っスなんて語尾やおどけた態度で人と接しても。ふとした時に鏡に映る自分(誰か)は微かにしか表情を変えない。

 

 

 

 

 

 だから、俺の……俺の中にだけある知識で恩人達の役に立ちたいと。そう思っていた結果が、これだ。

 キラさんに、こんな俺を思ってあんなに思い詰めさせてしまった。どうしてこうなったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……すぐに、結論は出た。逆に俺が、何もしなければよかったのだ。

 

 

 

 

 あの時、キラさんはラクスさんの声で正気に戻ったんだ。俺のせいで追い詰められていなければ、きっと最初のラクスさんの呼びかけで正気に戻れていただろう。

 

 

 

 俺が戦場に出ていなければ。俺がコンパスに出向してキラさんと関わらなければ。

 いや、違う。もっと根本的に……。

 

 

 

 

 

 

 

 「あの時、助かろうとなんてしなければよかったんだ……」

 

 ふざけるなぁッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思わず声に出した途端に、いつのまにかいたシンさんに自身の艦内着の襟首を掴みあげられながら怒鳴りつけられた。

 その剣幕に面食らいながらも、問い掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「シンさん、どうして……」

 

 「お前が泣きながら出てくのを見て、追っかけてきたんだ。それよりなんだよ!助かろうとしなければよかったなんて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンさんに掴み上げられて、爪先立ちになりながらも知覚する感情に困惑する。

 どうして?怒っているのはともかく、どうしてこの人は……悲しんでるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「だって、俺が……俺のせいでキラさんは」

 

 「それでもッ!あの人が、隊長がそんなこと言われて喜ぶかよ!それにオレだって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言って、シンさんは顔を伏せる。そして俺は、知覚する感情──その比率が悲しみによっていくような感覚にやはり戸惑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あの時、ゼフォーを助けられて……生きててくれて嬉しかったんだ……なのに、なのにそんな悲しいこと言うな、言うなよ……言わないでくれよ……ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ぽたりと、シンさんの顔から床に落ちる雫にガツンと頭を殴られたような気がした。

 

 

 思わず自分の単純さに呆れかえる。結局また、自分のことしか頭になかったのだと自覚して。

 それと同時に真っ正面から『生きていてくれて嬉しかった』と言われただけで、また涙が滲んできているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「グジュ……ごめんなさい、あと手を離して欲しいっス。そろそろ足ツラいんで」

 

 「えっ、あっ……悪いッ!ゼフォー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 申し訳ないけれど正直に告げた言葉に、シンさんは慌てて飛び退く。……ある程度泣いて、一旦自分でも引くほどネガティブになってスッキリしたのか、やらなきゃいけないことがあると分かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「行かないと」

 

 「ゼフォー?行かないとって、どこに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 口に出していた言葉に、アスカ大尉がこちらに疑問を投げかける。なんてことはない、単純な話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヤマト隊長に、謝ってくるっス」

 

 「いや、謝るって……。隊長は多分そんなこと……」

 

 「まぁ、その……俺の気持ちの問題っス」

 

 「……そっか」

 

 「うおおおおッ、隊長ぉぉ!!」

 

 「いやそこで全力ダッシュは違くないか?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何かアスカ大尉が言ってた気がしたけど、とりあえず一刻も早く謝る為にもダッシュでレクリエーションルームへと駆け込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ラクス……ただ隣で笑っていてほしいだけなのに……あんな風に悲しませた僕に、資格なんてないってわかってるのに……。それでも隣にいてほしいんだ…………もう、どうしたらいいのかわからないんだ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 壁に背を預けて座り込むヤマト隊長の、絞り出すような声に思わず息を呑む。

 それでもと、一歩踏み出したところでスッと手で制される。視線を横に向ければ、そこにはハーケン少佐の姿。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今いいところなんだ、用があるならちょいと待ちな」

 

 「えっ、隊ムグッ」

 

 「坊主も静かにしなっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉を聞いて頭に疑問符を浮かべる俺を他所に、ザラ一佐が皮肉っぽく口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「しばらく会わないうちに、ラクスはずいぶん変わったんだな」

 

 「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤマト隊長が思わずと言った風に顔を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「隣にいることに資格がどうのとか、こうしてやらないと幸せになれないとか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 呆れたと言わんばかりに、ザラ一佐は肩をすくめて言葉を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「俺の知ってるラクスは、そんなこと言わなかったはずだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉を聞いたヤマト隊長は、目を落としてゆっくりと呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ラクスは……世界の平和を望んでいて……でも、結局僕は……」

 

 「ラクスさんは、『平和』が誰かにポンとプレゼントしてもらえるようなものだと思っていたのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヤマト隊長の自分を卑下するような言葉に、今度はラミアス大佐が口を開いた。まるでたしなめるように、疑問の言葉を。

 それに続いて、ザラ一佐も言葉を投げかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ラクスにとって、一歩一歩向かっていくものなんじゃないのか?だからこそ、たとえ険しく遠くても共に歩んでくれる相手を望んでいたんじゃないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザラ一佐の言葉に、ヤマト隊長は弱々しい声で呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今も……そう思ってるかな、ラクスは……?」

 

 「不安なら、ちゃんと面と向かって聞いてみろよ」

 

 「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザラ一佐の笑いながらの言葉に、面食らったようにヤマト隊長が顔を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「行こう、キラ。ラクスを助けよう、俺たちで。……言葉にしないと、伝えられないこともあるから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言ってザラ一佐は手を差し伸べる。そしてヤマト隊長がその手を握り、グッと引き上げられて立ち上がる。

 そこで、ザラ一佐が少し笑いながら口を開く。こちらへと──俺へと視線を向けながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「まぁ、もっとも……ラクスより先にちゃんと話をしないといけない相手がいるみたいだけどな」

 

 「えっ…………ゼフォー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その視線に促されて、俺は足を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……ヤマト隊ちょべぶッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思いっきり足がもつれて、レクリエーションルームの床に濃厚なキスをかましてしまったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  「うわぁ!?ゼフォー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こちらに急いで駆け寄って、助け起こしてくれたヤマト隊長。向けられるのは、曇りのない心配と優しさで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヤマト隊長……グズッ……お“で、お"で……あ"な"だの"ごどぉ"遏・縺」縺滄「ィ縺ェ莠九>縺」縺ヲ縺阪★縺、縺代※縺励∪縺」縺ヲ」

 

 「ごめん、なんて?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思わず思いの丈を涙と鼻水と共に撒き散らしてしまった。ここから人類の言語を取り戻すのに5分近くかかってしまって、本当に申し訳ないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









 最後のゼフォー君のセリフの文字化け部分は文字化け変換でググって出てくるサイトで復元できます。大したことは言ってないですが。





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