地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-31 雌伏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マイカ中尉の用意してくれたすりおろし林檎の混ぜられたヨーグルトを、もにゅもにゅと口に運びながら卓上に置かれたタブレット端末──その画面を穴が空くほどに見つめる。

 

 そこに映し出されているのは、ブラックナイトやその取り巻きであるジンやディン。ファウンデーション軍に配備されているMS達だ。

 それらがコンパス所属のムラサメ改や、ゲルググ。あるいは映像を収めているMSに対して襲いかかっている映像。

 

 これは俺がウィンダムから回収した物や、ハーケン少佐のギャンに残されていたデータを解析した上で画像処理によって解像度を上げたり、あるいは拡大された物だ。

 こんな不愉快極まりない映像を見ているのには、理由がある。連中の戦い方を分析して、どう戦うかを考えるためである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 エールカラミティを披露され、その仕様が纏められたデータの収められたタブレットを渡されたのは数時間ほど前だ。

 そちらも既に齧り付く勢いで目を通している。残念ながら、その時のお供は相変わらずのケミカルゼリーだったが。

 

 悲しいことに、少なくとも数日は意識がなかったために消化器系の機能低下が懸念される──そうマイカ中尉に説明されて、泣く泣くあのゼリーを口にしたのだ。

 あまりにも悲壮な様子だったのか、マイカ中尉が後でヨーグルトを用意してくれた時は思わず視界が潤んだが。

 

 

 

 とにかく、休養と栄養補給を済ませた俺はエリカさん達モルゲンレーテ技術者の立会いのもとでカラミティの実機の調整と、軽い慣らし目的のシミュレーターを実施したのだ。

 

 流石は技術大国として名高いオーブ、その国営企業と言うべきか。実機での調整はものの数分で完了。

 そのデータを反映したらしいシミュレーターでは、これまで乗っていたMSと似通った連合系のコクピット周りとはいえまったく別の機種であるにも関わらず()()()()()()()()()()()()動かせた時には軽く動かしただけで分かる高性能ぶりと合わせて、万能感に満ち満ちてクソ騎士連中に目にもの見せてやれると息巻いたものだ。

 

 

 だが、むしろ高性能だからこそシミュレーターであっても感じる負荷は強く。エリカさんに本格的なシミュレーターでの習熟は休養を充分にとってから、と釘を刺されてしまったが。

 …………そういえば、その後ろで他の技術者の方々が少しざわついていたがなんだったんだろうか?

 

 

 

 

 

 そうしたわけで今この身はベッドの上、というわけである。それでも時間は有限だ。

 身体を休めないといけないなら、頭を回せばいいじゃない。

 

 

 エリカさんに対して駄目で元々、そんなつもりで頼んだデータをあっさりともらえた俺はただ今絶賛考察中である。

 そうして分かったのは、改めて連中が無駄にイヤらしい戦い方をしていることだ。

 

 

 

 

 

 

 ライジングフリーダムやイモータルジャスティスを凌駕する機動力に、片手で扱える対艦刀やビームライフルにシールド。オマケにセンサーに対して欺瞞効果のある残像。手堅く纏まった装備と圧倒的な機体性能を、コーディネイターを超えた存在として創られた──その言葉に相応しい操縦技能によって充分に生かす。

 そして、それを大量の取り巻きによるミサイルの飽和攻撃によって援護する。

 通常の装甲なら命取りになり、PS(フェイズシフト)系の装甲でもエネルギーを消費し打ち消せない衝撃が体勢を崩し隙を作る。

 ブラックナイトという脅威に、意識を集中させることを許さない。

 

 

 

 ヤマト隊長が相手取ったサーベルを多数備えたシュラの機体や、アイシュの駆るステルス機についてはこの映像では情報が少ない──あるいはまったく存在しないために判断できないが、あの四機のブラックナイトの戦い方はこんなところだろうか。

 

 

 冷静になれば、エリカさんが口にした逃げに徹すればどうにかなる──その言葉に強い納得を覚える。

 読み込んだ仕様と、慣らし目的の軽いシミュレーターでなんとなく把握したエールカラミティの強み。けれども、そう簡単には連中にそれを押し付けることは叶わないだろう。

 

 口に咥えたスプーンを行儀悪く上下させながら出した現時点での考察の結論に、溜息ひとつ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「マイカ中尉ー、ヨーグルトごちそうさまっス。…………それで、そのぉ……」

 

 「お粗末さまでした…………フム」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の言葉に、マイカ中尉は時計に目をやってひとつ頷くとこちらへと視線を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「シミュレーターを行っても大丈夫でしょう、ただし投与はナシですよ」

 

 「っス!了解っス」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その言葉に、ピョンとベッドから跳ね降りてシミュレーターへと向かう。

 出来れば実戦同様に状態を整えたいが、現状では緩和剤の持ち合わせがないと話は聞いているのだからしょうがない。

 なんもかんもアークエンジェルを墜としやがった連中のせいである。

 

 

 胸の内にファウンデーションへの怒りを燃やしながら、俺はシミュレーターのある部屋へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 「フウウウゥゥゥ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある程度シミュレーターをこなした俺は、被っていたヘルメットを取り深く息を吐く。

 エールカラミティは、ウィンダムやウィンダム・べヴァイズンと比べるとかなり操縦に神経を使う印象だ。

 

 

 

 

 全身のスラスターとその背に背負った飛行モジュールの生み出す推力は、エリカさんの言葉通りかなりのものだ。

 ただ、コイツの操縦が難しいのはそこじゃない。

 

 

 飛行モジュールの翼部、その両端に備え付けられた120mm3連装ガトリング砲?本体に近接自動防御火器の類が無いから、割と便利に使えて好きなぐらいだ。

 

 両肩装甲部の57mm2連装ショルダーキャノン?多分これがエリカさんがスラスターに換装したがっていた兵装なんだろうけど、翼部ガトリングの対応しづらい機体側面に使えるから、まぁギリギリ必要性があるのは分かる。

 

 問題はコイツだ。空戦用複合兵装「アドラー・ツヴァイ(仮)」、ビームライフルとビームサーベル。そして一番の目玉、ウォーハンマーモードを変形させることで切り替えるロマン溢れる武器である。

 

 

 …………どうしてメイン射撃武器とメイン打撃武器とメイン斬撃武器を一纏めにして、いちいち変形動作を挟まないと使えなくしたんですか?(現場ネコ)

 

 

 

 

 

 

 ただでさえ両翼のガトリングと両肩の連装砲の射線管理に思考のリソースを持っていかれるのに、手持ちの武装を適宜使いたいモードへと変形させる手間まで存在するとか……そりゃナチュラルに扱いきれないだなんて評される訳である。

 まぁ、ココにあるものは戦闘支援AIなるものが搭載されていて初期と比べてまだマシ……だそうだけれど。

 

 どうして唯一の強化改装されてる装備なのに、取り回しはそのままなんですか?(現場ネコ二匹目)

 下手すればコーディネイターでも使いこなすの難しいんじゃないか、コレ。

 

 

 飛行モジュールに改良型シュベルトゲベール──柄部分からビームを撃てる対艦刀を装備出来るから、もうそれで良いんじゃ無いかとも思ってしまうが、しかし。

 

 このアドラー、強化改装前の時点でウォーハンマーモードはHESH(粘着榴弾)のように衝撃を装甲の内側へ伝播させダメージを与える……というフェムテク装甲にも通用しそうな特性がある。

 

 

 

 

 アコードが読心できる以上、アドラーのウォーハンマーモードの持つこの特性を理解するだろう。

 それは連中に対して、回避という選択を押し付けることが出来るのでは?

 

 

 映像で見返していて分かったが、あいつら割と装甲に信頼を寄せているようなんだよな。

 無効化できるビームはもちろん、ある程度の実弾に対しても避けずに受ける場面が散見された。

 

 もちろん、攻撃が無意味なことを強調して敵にプレッシャーを与える──という面もあるだろうが、ある種の慢心。その表れのようにも思えるのだ。

 

 

 それに対して、ダメージを通せる未知の兵装。それは、連中の動揺を誘えるのでは無いだろうか?

 

 それに、強化改装の結果得られた────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ゼフォー君、連絡があったわ。予定通りミレニアムの占拠に成功、とりあえずシミュレーターはそこまでにして移動の準備……よろしくね?』

 

 「了解っス」

 

 「それと、着いたらブリッジに来て欲しいそうよ。忘れないでね」

 

 「っス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その思考を、シミュレーター内のスピーカーから響いたエリカさんの声が遮る。

 どうやらラミアス大佐発案の艦の調達──オーブに停泊中のミレニアムへの侵入及び占拠は成功したみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………流石は実質世界を相手取った三隻同盟の中核メンバー、常識では測りきれない実に大胆な調達手段だ。

 

 

 

 

 

 

 とりあえずブリッジに呼ばれてるってことなら、自分……シャワー良いっスか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「失礼します。ゼフォー・ローワン特務少尉、入ります」

 

 「あぁ、来てくれたか。なぁに、大した話じゃないさ。楽にしてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シミュレーターでかいた汗を流し、コンパス制服に身を包んでミレニアムのブリッジに入れば中央の戦略パネルを囲む錚々たるメンバー。

 そのうちの一人、コノエ艦長がこちらに声をかける。そのまま手招く彼の元へと歩み寄れば、続けて言葉が紡がれた。

 

 

 

 

 

 

 

 「さて、キミも承知の上だとは聞いているが改めて。我々はこれより、ファウンデーションに対し行動を開始する」

 

 「ハイ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 背筋を伸ばし返事を返せば、相変わらずの穏和な物腰のままだ。けれど、どうしてだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「そこで差し当たり、事前に打てる手は打っておこうという話になってだね。さっきも言った通り、大した話じゃあないんだが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その目に剣呑な光が宿っているように思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「キミに少しばかり、やって欲しいことがあってだね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと思い至る……それは、そう。艦の調達の手段を提案した時の、ラミアス大佐みたいだ……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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