地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-EX10 大西洋狂騒曲

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ルーティーン(胃腸薬を服用する)を済ませたフォスターは、豪奢な机の上にある資料へと目を通していた。

 

 

 レクイエムによるモスクワの壊滅、その後のファウンデーションの通告を受けた彼女は極めて多忙な数日を過ごしていた。

 各地への緊急事態宣言の公布、詳細を求め殺到するマスメディアへの対応等々の外部への対応を済ませば今度は内部──行政各所への指示出しだ。

 

 特に酷かったのは、今後のファウンデーションへの対応を協議する軍部との会議だ。軍の主要ポストを、時間をかけたとはいえ過去の主流派(反コーディネイター派)から冷遇されていた派閥(親コーディネイター派)へと転換するという人事において大鉈を振るった以上、どうしても軍部との軋轢は避けられずに手間取ったのだ。

 

 

 

 そして親コーディネイター派の中でも派閥があり、あくまで時流を読んで大人しくしていただけの過激な派閥のここぞと言わんばかりの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という、心が躍る素敵な提案(後先考えない夢見がちな願望)を聞いた時には机の下で思わず腹部へと手を当ててしまうほどのストレスをフォスターは感じたものだ。

 

 どうにかその提案した連中を良識的かつ現実的な穏健派とともに宥めすかして、最終的には〈プラントの手で解体・平和利用される筈のレクイエムを手中に納めている以上、前大戦にて使用されたニュートロン・スタンピーダーを配備していないという保証が無い以上悪手である〉という言葉で矛を収める事ができた。

 

 そして現実的であろう対抗策、世界各国──最低でもオーブ・ユーラシア連邦・東アジア共和国との対ファウンデーション連合を結成する事を決めたのが、つい数時間前であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「例の四番艦……ハーデスだったかしら、進捗は?」

 

 「はっ……現在エンデュミオン基地での最低限の再武装化と、航宙能力の復元は完了したそうです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フォスターの声に、秘書官が手元のタブレット端末を確認して答える。

 それに満足気に頷くと、彼女はそのまま考えを纏め始めた。

 

 

 

 

 少なくともフォスターからすれば、オーブがこちらの提案──連合を結成しファウンデーションに対抗するという案に賛同するであろう事はほぼ決定事項であった。

 オーブの理念に加え、前大戦においてもデスティニー・プランにおいて武力を用いてまで対抗してみせたのだ。

 まず今回も同様の措置を行うことは予想できた。そして、オーブ単体での対抗は厳しいということも。

 

 少なくとも、複数の国家が同時に対抗を宣言すれば国家の数だけレクイエムの標的になるリスクは減る。

 草食動物が群れを作る理由に近しい理屈に、抵抗がないとは言えないが背に腹はかえられぬだろう。

 

 

 それに──とフォスターは自身が設立を指示した、将来のプラントとの戦いを見据えた特殊な装備や戦術を研究・評価する部隊である第一特殊戦闘技術評価大隊がエンデュミオン基地にて評価試験を行っていた()()()()()()()()()()に思いを馳せる。

 実物を用いての評価試験の段階まで漕ぎ着け、複数作製されたソレを用いればレクイエムの無力化は充分に可能だと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……大統領、本当によろしいのでしょうか?」

 

 「何がですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼女の思索は、かけられた秘書官の言葉で中断される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「アレを復元するのは、確かに今現在の状況ならば問題はないかもしれませんが、しかし……」

 

 「少なくとも、勝てればどうとでも理屈はつけることができます。……勝てれば、ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 秘書官の弱気な響きの言葉に、フォスターはあえて強気に言葉を返す。

 そして机に両肘を立て、口元に両手を添えながら口を開く。その目に剣呑な光を宿しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「穏健派というのは、殴られても殴り返したりしないという意味ではないのですよ……断じてね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 豪奢な机の上、備え付けられた内線が呼び出し音を鳴らした。フォスターはその目から剣呑な光を消しながら、受話器をとって応じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はい、どうしましたか?」

 

 『たった今、オーブから通達がありました。あぁ、その…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妙に歯切れの悪い言葉を口にする相手に、しかしフォスターは静かに続きを待つ。

 重大な案件でなければ内線を使うな、と指示を出していたのだ。それにここ数日で信じがたい出来事が頻発したこともあり、あくまでも聞き終えてから判断しようと考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『オノゴロ島にて寄港中のミレニアムが、何者かによってハイジャックされた……とのことです』

 

 「何ですって……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、フォスターの思い描く戦略の崩壊。その先触れだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ──オーブめ、先走りましたか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モニターに映し出される映像──衛星によって捉えられたミレニアムへの物資の搬入や人員の動きに、フォスターは内心で吐き捨てる。

 

 

 

 オーブからの通達ではハイジャックとのことだったが、整然と行われる物資の搬入を見るだけでもその言葉が怪しいものだと分かるだろう。

 もちろん、軽々しく口に出すべきではないと考えていたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「引き続きオーブの状況の注視を。それから、ダイダロス基地──レクイエム周辺に関しても警戒を続けなさい」

 

 『はっ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フォスターの指示に、疑問なく返答が返り作業が開始される。ファウンデーションが今後どう動くのかを、ある程度予測しているが故だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──愚鈍ではないと思っていましたが、身内を引き合いに出されて黙っていられませんでしたか。それでも、軽挙妄動と言わざるを得ませんが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 予想外のオーブの動きに、フォスターは頭の中で組み立てていた今後の動向をオーブ抜きでどうするべきかにシフトさせていた。

 もはや、彼女にとってオーブへとファウンデーションがレクイエムを撃ち込むのは避けられないと思っていたからだ。

 

 そんな思考を他所に、映像内のミレニアムに動きが起こる。滑らかに離岸を果たし、オーブ海軍のMSおよびイージス艦による攻撃(見送り)を受けながら離水。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ファウンデーションからのオーブへの通告です。十分後、オーブに向けレクイエムを発射する、と』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モニター越しの声に、フォスターはやはりかと僅かに眉を顰める。こうなることは明確であった筈なのに、オーブは──カガリ・ユラ・アスハは何故こんな行動を起こしたのか。

 彼女の脳裏を過ぎった疑問の答えは、間を空けずに示された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『これは……国際救難チャンネルに放送を受信。……なっ、モ、モニターに出しますッ!』

 

 

 ──……なるほど、これが理由ですか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 狼狽した様子のオペレーターの声とともに、モニターに映像。そこには、核の炎に消えた筈のキラ・ヤマトの姿。そして、その後ろ。ミレニアムの艦橋、その艦長席にはマリュー・ラミアス。

 

 

 それを納得の感情とともに受け止めていたフォスターだったが、その余裕はそこまでだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『残念だったね、僕は──僕たちは生きている。自分の国民を見殺しにして、ブルーコスモスと戦っているその背中を撃ってまで殺そうとしたのにね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キラの皮肉たっぷりの口調での言葉のすぐ後、モニターに映し出される映像に雷に打たれたような衝撃が彼女の精神を激しく揺さぶった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『なっ、あのドッグタグ……』

 

 『どういうことだ……ッ?!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オペレーター達の困惑の声でもなく、その映像に映し出されるコンパスに襲いかかるファウンデーションの様子でもなく、その映像を映し出しているタブレットを持つ人物に視線が釘付けになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──あ、あの小娘(カガリ・ユラ・アスハ)ぇぇぇぇッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オーブから全く知らされていなかった、大西洋連邦から出向しキラ・ヤマトらとともにMIAになっていたゼフォー・ローワンの五体満足な姿。

 その姿に、オーブ──カガリにしてやられたと理解してフォスターの内心に悪態の嵐が吹き荒れる。

 どうにか政治家としての経験でそれが漏れ出るのを最小限に抑え、けれども僅かに漏れ出し引き攣る表情にすら意識を向けずに彼女は必死に考える。

 

 

 もはや、彼女が考えていた戦略はご破産と言わざるを得なかった。

 

 各国との対ファウンデーション連合、その設立時にオーブを中心に据えることでファウンデーションの敵意をなるだけオーブへと向けるという意図。

 そもそも、オルフェが世界に行った演説には穴があった。ナチュラルとコーディネイターが共存し、プラントと地球連合の参加国と肩を並べるほどの国家として()()()()()()()()()()()()()()()繁栄するオーブの存在である。

 どうあっても、ファウンデーションはオーブに対して矛先を向けざるを得ない。

 

 

 ゆえに連合が成立し戦闘になった際にはフォスターはオーブ軍と、レクイエムを撃たれ恨み骨髄だろうユーラシア連邦軍に先陣を切らせることで──言葉を選ばなければ()()()()()して大西洋連邦の消耗を抑える、最悪の場合は降伏を選択することを画策していたのだ。

 少なくともオーブを撃たせれば、ある程度の交渉の余地が生まれると考えて。

 

 

 

 

 

 だがその謀略も、たった今この瞬間に御破算となった。キラ・ヤマトの行うファウンデーションへの糾弾に、大西洋連邦軍人が協力している様子が世界に流れたことによって。

 言うならば、オーブとともに大西洋連邦はファウンデーションへと手袋を投げた(決闘を挑んだ)のだ。

 

 そう、たとえそれが自身が無くしたと思っていた手袋(亡くなったと思っていた所属する軍人)で、赤の他人(オーブ)が投げたものであっても。

 問題は相手がどう受け取るかであり、このオーブの行動にレクイエムの使用を即断したファウンデーションが相手であるのならば。

 間違いなく、オーブの次に撃つべき相手と思われたことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……緊急会見を行います」

 

 「……えっ」

 

 「広報部に、指示していた資料の用意と会見の準備をさせなさい。可能な限り、早くッ!」

 

 「わっ、分かりましたッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ならば、もはや考えるべきはファウンデーションに対して勝利することである。そう結論づけたフォスターは、秘書官へと素早く指示を飛ばした。

 大西洋連邦の保有する戦力、その全力を動かすためにまずはファウンデーションとの戦いを国民に納得させること。

 

 

 

 それが今、大西洋連邦大統領の責務を自分が遂行するために必要なことなのだと、腹部に走るキリキリとした痛みを抱えながらフォスターは動き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 ハーデスーギリシャ神話における冥府の支配者。またティタノマキアと呼ばれる巨神族との戦争において、被ると姿が見えなくなる『隠れ兜』を使って活躍したという。

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