地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-EX12 外交官勤務録ガローテ 2/2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラクスは一人、物思いにふけっていた。柔らかく調光された照明で照らされた、豪奢でありながら品の良い部屋の中にあっても彼女の心持は軽くはならなかった。

 

 目を落とした先、右手に光る指輪。それの裏に刻まれた言葉──『世界はあなたのもので、そしてまたあなたは世界のもの。生まれ出てこの世界にあるからには』。

 かつてラクスがキラへと伝えた母の言葉、祈りの言葉。それが今では、彼女を縛める鎖のように感じていた。

 

 

 

 アウラとオルフェから聞かされた、デスティニー・プランにおいて支配者として定められアウラと母によって創られたというラクスの出自。

 否が応でも感じた、心地良さという彼女の心への侵食。

 

 

 

 

 

 

 

 ──ラクス。

 

 ──私とあなたであれば変える事が出来るのですよ。貴女が必要とし愛した、キラ・ヤマトでは変えられなかった世界を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感じ取ったキラの声、それを縁に己を取り戻したラクスにかけられたオルフェの酷薄な言葉。

 あの時は跳ね除けることが叶ったが、時を置けば告げられた言葉で生じた不安がジワジワと心を蝕んでいく。

 

 

 それを振り払おうと、せめて自身の置かれた状況を把握しようと思索を深めればふとラクスは思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──何をバカな……核の配備は、其方からの指示だった筈……ッ?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ファウンデーション王国、宮殿内の戦略情報室。あの時──ユーラシア側からの攻撃を切っ掛けとして発生した、大規模な通信障害の最中にユーラシア本国からの有線での連絡に答えた将校の言葉だ。

 

 核ミサイルの発射の報。その後に続いた騒ぎで記憶から薄れていたが、改めて考えれば些か不自然な言葉ではないか……?ラクスの整った顔が、湧き出た疑念で自然と歪む。

 ……まるで、ユーラシアにとっても想定外の事態とでも言うような言葉。自らの国民が核で焼かれたにも関わらず、意に介していないような先程のオルフェやアウラの様子。

 

 ラクスの頭の中に、恐ろしい仮定が浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ラクス様、失礼いたします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドアの外側、控えめなノックの後に聞こえた声にラクスの思考は中断される。

 開かれたドアから、ティーセットを手にした長身痩躯の男性が部屋へと入る。そして手にしたティーセットを机へと置き、黒い髪を整髪料でオールバックに纏めた頭を下げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あなたは、アイシュ・ガローテ筆頭外交官……?」

 

 「ラクス様にわたくしの名前を覚えていただけているとは、光栄の極み。………………少しばかりお話をさせて頂きたく参りました。こちらへと座らせていただいても構いませんか?」

 

 「……えぇ、どうぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 記憶を辿りラクスが目の前の人物の名を口にすれば、モノクルを乗せた顔を上げながら言葉が返される。

 そのまま慣れた手つきでティーカップへとポットの中身を注ぎラクスの手前へと差し出し、自身の分も用意してからアイシュは着席の許しを求めラクスは答えた。

 

 

 

 

 目の前に置かれたカップからは、爽やかな芳香が漂っている。ハーブティーだろうか、とラクスは思うが手をつける気にはなれなかった。

 今まで提供された食事に不自然なものはなかったが、彼らに対し拒絶を示した直後というのもあって僅かに身構えてしまう。

 

 そんな様子を見てとったのか、アイシュは自身の前のカップに口をつけてから話を切り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「わたくしがブレンドしたハーブティーです。気分を落ち着けるのに丁度良いかと思いましたが……出過ぎた真似でしたでしょうか?」

 

 「いえ、そういう訳では……」

 

 「ご安心ください、貴女様は我々にとって大事なお方。貴女を害するようなものはこの部屋にはございません」

 

 「……私が大事であると言うのならば、できるだけ早く帰して頂けるようお願いいたしますわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 モノクルを押し上げて位置を直しながら掛けられた言葉に、ラクスは半ばダメ元で自身の望みを口にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……まずはオルフェ閣下とアウラ陛下が貴女にかけた不躾な言葉、僭越ながらお詫び申し上げます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイシュの口にした言葉に、顔には出さずともラクスは驚いた。少なくとも、あの場にいた全員は彼らの言葉・考え方に少なくとも表面上は同調していたのだが、目の前の男は頭を下げて謝罪の言葉を口にした。

 そんなラクスの驚きを他所に、アイシュは言葉を続けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ラクス様の公私に渡るパートナーたる、キラ・ヤマト准将。あの方を貶めるような言葉を、世界の悪意によって失い傷心の貴女様へと聞かせてしまいました……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラクスを労わるような言葉、だがそれを聞くラクスの中には警戒が募る。

 こちらからの問い掛けに答えずに、まずは耳触りの良い言葉でこちらからの心証を良くしようとする意図があると感じた。

 

 この場所へと連れてこられてから、妙にこちらの機嫌をとるような態度だった彼らともまた違う違和感。

 彼らの態度の理由が、ラクスがデスティニー・プランで定められた上位者だからゆえとするならば。目の前の男の態度、その理由は何か?

 

 

 ラクスは、沈黙を選んだ。それを受けてアイシュは引き続き口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……申し訳ございませんが、貴女様を帰すことは未だ叶いません。地球とプラント間では、ユーラシア連邦を切っ掛けに緊張が高まっています。コンパスも、ユーラシアを擁護しようとする大西洋連邦の働き掛けでその活動を凍結されました」

 

 「なればこそ、私は一刻も早く戻らねばなりません」

 

 「貴女様やヤマト准将。そしてコンパスのこれまでの行いを無かったかのように、互いに憎しみを向け合うような世界の為に……ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 モノクルの向こう、まるで蛇のような視線を向けられてもラクスは毅然とした態度でそれを受け止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……確かに、オルフェ閣下とアウラ陛下の貴女様への言葉は尚早だったかもしれませんが……世界に平和を齎すのは、最早デスティニー・プランしか無いことを貴女様は……二度の大戦を初めとした数多の争いを見てきた『ラクス・クライン』だからこそご理解頂ける、とわたくしは愚考いたします」

 

 「…………」

 

 「心まで明け渡せ……などとは申しません。世界に平和を導くために、パートナーとしてオルフェ閣下のお隣にあるだけでも構わないのです」

 

 「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 オルフェやアウラのデスティニー・プランに対する思いを、信仰とするのならば。アイシュにとっては、道具ではないか?

 短い時間での対峙ながらも、ラクスは沈黙の裏でそう考える。遺伝子で定義された役割を果たさないことを理解できない、といった様子だったオルフェと違い()()()()()()()()と言い切ったアイシュ。

 だが、それでも両者の間で同一であろう認識についても察しはついていた。

 

 

 

 

 彼らにとって、『ラクス・クライン』はどこまでいっても世界を安定的に支配・統治するという役割でしか無いのだろう。

 そこに、ラクスがこれまで生きてきた中での選択や歩みは存在しない。それは、どうあっても彼女と相容れないということであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………ふむ、すっかりハーブティーが冷めてしまいました。どうやら、随分と長居をしてしまったようですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再びカップを口にしたアイシュは、そう言って席を立つ。沈黙を以って答えとしたラクスの様子に、見切りをつけただけかも知れないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「できるのであれば、色よい返事を頂きたかった所でしたが……では、これにて失礼いたします」

 

 

 

 

 

 

 

 音を立てずティーセットを片し一礼ののちに背を向けたアイシュ。その背中にラクスは一つ、どうしても気になった問を投げかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ガローテ筆頭外交官、あなたは……あなた自身はそれで宜しいのですか?」

 

 「……はて、どういう意味でしょうか?」

 

 「タオ閣下とあなた、見ている先が同じなのか。少しばかり気になっただけですわ」

 

 「…………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先程とは、口を開く側と閉ざす側が逆転する。たっぷりとした沈黙の後に、アイシュは口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「……わたくしは、デスティニー・プランによる世界の統治を望んでいる。そこに偽りなど、ありませんとも」

 

 「そうですか」

 

 「…………あぁ、失礼。伝え忘れていたことがございました。貴女様の秘書官──リオ・マオ殿ですが、こちらで手厚くもてなしておりますのでどうかご心配なさらぬよう」

 

 「ッ……。お伝えいただきありがとうございます、感謝いたしますわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして、アイシュは部屋から退出していった。知らずラクスは一つ息を吐いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋から退出したアイシュは、モノクルのブリッジを押し上げ──軽く二回触れて起動させていた録音機能を止めた。

 デスティニー・プランに対する少しでも肯定的な発言があれば、言質を取りたかったところであったが曲がりなりにもプラント評議会の議員でもあるラクスは不用意な発言はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 ──合理性を求めれば、ラクス・クラインには亡き者になっていただくのが手っ取り早いのですが……ソレをしてしまえばオルフェと母さんの心が持ちませんね。

 

 

 

 

 

 

 もしも読み取られてしまえば大変なことになるだろう冷厳な思考を固く閉ざした心の内で浮かべるアイシュ。

 他のアコード達よりも早く創り出された彼は、その分精神干渉能力の扱いには一日の長があり心を閉ざすことは容易いことであった。

 

 

 

 

 

 

 ラクスの推し量ったアイシュの内面は、かなり的を射ていた。ファウンデーションの外交官として、あるいは工作員として外での活動を多くこなしてきた彼にとってデスティニー・プランは絶対の存在とはいえなかった。

 だが、あの場で口に出したことは嘘ではない。精神干渉能力を持ち合わせたアコードたち、世界を見てきたアイシュからすれば彼らが平穏に生きるにはデスティニー・プランにおいて役割が絶対となった世界でなければならないだろう。

 

 

 

 優れるを妬み、劣るを蔑み、自身の利を優先する旧人類。その姿を見てきたアイシュは、そう断じていた。

 そのうえで未完成のアンチエイジング薬によって生じた苦痛やストレスでもって精神に変調をきたしたアウラ、そしてそんな彼女による教育を施されデスティニー・プランでの役割がアイデンティティとなったアコード──兄弟達をデュランダルが討たれアイデンティティが崩れ落ちそうになっても、教えられたことを支えに必死に彼らを引っ張ってきたオルフェ。

 

 この二人と寄り添えずここまで至ってしまった以上、もはやアイシュにとってデスティニー・プランの成立に尽力する他なかった。

 それが、幸福と呼べる未来をもたらすと信じることが出来なくとも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼の元に、キラ・ヤマトの挑発によってレクイエムがオーブも撃てずミレニアムも撃てなかったという報せが届くのは、あともう少し後であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






 ここから先のことなんですが、ファウンデーション・連合・コンパスが入り乱れることになるのでどう書けば良いかのアンケートを置いておきます。どうか皆さんの意見を頂きたいです。
 よろしくお願いします。
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