地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
『……?どうしたんだ、そんなソワソワして』
脳裏に過った可能性に、思わず自身の身体をシートヘ固定しているベルトを確認しているとアスカ大尉に声を掛けられる。
顔を上げると不思議そうな顔をしたホーク中尉とアスカ大尉、ただハーケン少佐はなぜか呆れ顔だ。
「いやぁ、ちょっと……」
『ちょっと……って何よ、気になることがあるなら言いなさいよ』
ただの予感だし変に脅かすようなこと言わない方がいいかな……と少し口ごもれば、ホーク中尉から突っ込まれる。
確かに何も言わない方が気になるか……?
『……今のミレニアムの進路だと、またアクロバティックな回避機動でもするんじゃないか……ってとこかい?』
『いっ?!』
「…………ハーケン少佐って、エスパーなんですか?」
『そりゃお前さんのことだろう……ハァ』
いざ答えようとした矢先、ハーケン少佐の発した言葉にアスカ大尉は分かりやすく顔を顰め、俺は思わずしょうもない質問をしてしまった。
そんな様子を見て盛大な溜め息とともに肩をすくめたハーケン少佐は、そのまま口を開いた。
『そんなことでいちいち狼狽えてるんじゃないよ、坊主ども!そもそも少数で殴り込もうってんだ、多少コクピットで揺さぶられる程度で敵の集中砲火を切り抜けられるだなんて目っけ物だと思いなっ!!』
威勢のいい啖呵に、思わず聞き惚れる。さすが、年上だったシメオン大尉から姐さんと呼ばれていたことはある。
「さすがっス姐さん!一生ついてくっス!」
『調子のいい事言ってゴマ擦ってる暇があるなら、さっさと腹括りな!もうじき──』
『MS隊各員に通達、これよりミレニアムは敵艦隊中央を最大戦速で突破。衝撃に備えよ』
俺の軽口がハーケン少佐にピシャリと切って捨てられたすぐ後に、MS管制を担当するウィンザー中尉の声が響く。
どうやら思った通り、真正面から突破するらしい。多分ここからギリギリまで引きつけてから回避になるのだろうか…………改めて言葉にすると無茶苦茶だな、おい。
『聞こえたろ、さっさと備えなっ!』
そう締め括ってハーケン少佐は通信を閉じた。それに続くようにアスカ大尉、ホーク中尉の通信も閉じられた。
俺もそれに倣って通信を切って、手の中で転がしていた無痛注射器を小物入れへと納めて、衝撃に備えて姿勢を正した。
……………………???
衝撃が断続的にコクピットを通じて身体を揺さぶる。ただ、大気圏突破直前のモノと比べたら随分と大人しい。
それこそ三連ドリフトでもかましたのかと思うような、シートに齧り付くぐらいでなければ放り出されるぐらいの荒々しさを覚悟していたのだが、まるで単なる不整地を走っているかのような…………。
思わず気になってモニターに現在の状況を呼び出して確認してみる。この操作も危なげなく出来る程度なのがなおさら疑問を生む。
……??????
モニターには、ミレニアムが敵艦隊中央へと猛烈な勢いで直進することを示す画像が表示されていた。
疑問符を頭に浮かべるどころか、背景に宇宙を背負っているような気分だ。
まるで、なんの回避すらせずに直進しているようだ。
相手側の迎撃を回避する、としか想定していなかった頭で受け止められない状況にしばし硬直する。
それでもモニターに映る状況は変わらない。いや、どんどんと敵艦隊との距離は縮まっている……どころか、反撃したのだろう。
敵艦隊の中央の反応が消失し、ポッカリと進路上に穴が空いている。
「マジか……」
ここまで来て、ようやくミレニアムが文字通りの中央突破──しかも敵の集中砲火を避けるでもなく耐え切って見せたことを飲み込んだ。
ポツリと感嘆を漏らし、頭を振って切り替える。
……ミレニアムがザフトの最新鋭の新造艦とはいえ無茶苦茶どころの話ではない、だなんて気にしたところでどうしようもない。
むしろ、それが自分の母艦であった幸運に咽び泣いて運命…………いや、運命って言うとファウンデーション連中の戯言がちらついてしまうから天に感謝するとしよう。
それに、まだあくまで中央を突っ切っただけだ。むしろここからが俺たちの仕事となるだろう。
モニターを切って余計な情報を遮断する。脇にある小物入れから、無痛注射器──『P.G-1.5』のラベルの貼られたものを手に持つ。
最初からブラックナイツとの戦闘が想定されている以上、乗機の性能が上がっていたとしても俺の能力自体底上げも必須だろうからだ。
……寿命の幾らかを代償にして、ようやっとまともにやりあえるかといった戦力の差に歯噛みしそうになるが深く息をして落ち着かせる。
……昂らせるのは、もっと後であるべきだろう。
『カタパルト接続。全システムオンライン。超伝導キャパシタ一番から十番、臨界到達。誘導システム異常なし』
ウィンザー中尉のアナウンスの中でアスカ大尉のデスティニーにホーク中尉のインパルス、ハーケン少佐のゲルググが発信位置へと機体を進めていく。
それに倣って、俺もカラミティを進める。それと並行して搭載されている戦闘支援AIを多数の射撃武装──両翼部のガトリングに両肩の連装砲、おまけに背中の推進ユニット横にマウントしたシュベルトゲベールの柄部分のビーム砲の照準補佐に専念させるようにセッティングした。
シミュレーターで試した結果、試作段階ゆえか回避の補助なんかに使うにはまだ動きが固いと感じたからだ。
……このことを口に出した時、モニタリングしてたモルゲンレーテの人たち騒ついてたけど、結局なんだったんだろう。
モニター越しだし薬も使ってなかったしで感情も知覚出来なかったから結局分からず仕舞いだ。
まあ、悪いことならこっちに話が来てただろうし気にしなくてもいいだろう。
頭を使うことは終わらせた。後は…………。
自身の首筋、インジェクターポートへと注射器を押し付けて投与。ドクンと、普段以上に込み上げるモノ。
戦火から遠ざけるべき無辜の人々は居ない。周りに気を配るどころか、俺が気を配られる側と断言していいほどの腕っききである少ないながらも頼もしい友軍。全力でブチのめして差し上げるべき敵。
……今回に限っては、押さえつける必要はない。
ふつと、心の奥底に沈めていた滓が浮かび上がる。
──平和と安定のみを望む我々の思いは、ナチュラルもコーディネイターも関係なく平和を求めたはずのコンパスと共にナチュラルによって踏みにじられた。なぜか!
……ふざけるなよ、ボケが。何を被害者面してほざいてる?そもそもナチュラルだなんて一括りにしてる時点でお前の抜かす連中と同類だろうが。
一度湧き上がれば、連鎖的に怒りが勢いを増していく。
──我らを受け入れられぬという勢力には、ラクス・クラインの名の下にレクイエムによる制裁を下す。その頭上にメギドの火が落ちることになるだろう。
「ふ、ふふ、ふふふ、ふふふふふふふ!」
他人様の名前を騙って何をほざいてるんだぁ、バカが!共にあるんじゃねぇのかよ、えぇ!?ラクスさんの頭の上から血反吐を被らせるようなマネしやがって……。
オマケに聖書からの引用で神様気取り、ですか。
一周回って可笑しくなり、口から嘲笑が漏れる。
『カラミティ。発進準備、どうぞ!』
自身の発進を促すアナウンスに、顔に裂け目を作るかのように口角が上がり、
自作自演の核で吹き飛ばされた、何も知らないファウンデーションの人々。言い掛かりの報復で、訳もわからずレクイエムで消し飛ばされた誰か達。
平和のために戦っていたのに、世界を支配なんてくだらないモノの為に騙し討ちされお題目に利用されたコンパス各員、マーズさん、ヘルベルトさん……。
「ゼフォー・ローワン、エールカラミティ!出ェまあぁすッ!!」
さぁ、
読んで字の如く、ファウンデーションのクソどもに災厄を翳すべく爆炎に照らされた戦場へと飛翔した。