地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
オーブのアカツキ島、その地下に存在する極秘格納庫の一角。そこではモニターに映し出される映像を食い入るように見つめる人影があった。
エリカ・シモンズを含めた、オーブ代表首長からの信任の厚いモルゲンレーテ社の技術者達だ。
そんな彼らの視線を集めている映像、それは全身各部のスラスターを小刻みに作動させて曲芸じみた軌道を描くMS──ゼフォー・ローワンがシュミレーター上で操縦しているエールカラミティの様子であった。
──生体CPUだから?それとも……このエールカラミティの操縦に、生まれながらにして適合した神経網の持ち主……?理屈の上ではあり得るけれど……。
エリカは口元に手をやりながら、目の前で披露されるゼフォーの特異性に思いを馳せながらおもむろに周囲に視線を巡らせた。
ここにいる同僚たちが思わず手を止めてモニターへと向ける視線には、見事な操縦への感嘆よりも畏怖が込められているようだった。
だが、それも無理のないことだろう。いくら事前にゼフォーの以前の乗機──ウィンダム・ベヴァイズンの重量バランスに近づけるなどの調整を行ってあるとはいえ、初めて操縦するMSを僅か数分であそこまで軽々と操ってみせているのだ。
その上──。
「エリカさん、こんなことあり得るんでしょうか……?いくら彼のデータが学習元とはいえ、最新鋭の戦闘支援AIを機体の制御に適応させない方が複雑な挙動を安定して行えるだなんて……」
「……少なくとも、ありのままを受け入れるほかないでしょうね。それに、理論上はありえないワケでも無いし……」
思わずといった様子でこちらに疑問を投げかける同僚に、エリカは正直な所感を返した。
ゼフォーのコンパスでの活動──対ブルーコスモスとの実戦や度重なるシュミレーターで得られた運用データを用いて開発・アップデートされた連合製の戦闘支援AIは、エリカから見ても間違いなく優秀である。
エールカラミティという連合製の高性能機を、ナチュラルでは持て余すとはいえ惜しげもなくコンパスに対して提供することを決めたのはその運用データによるAIのブラッシュアップが目的ではないかと邪推してしまうほどには。
「なんか動き固いんで、AIは兵装の補助にしちゃってもいいっスか?」
一度動かした後、傍から見れば十分に流暢な操縦であり感嘆の視線を受けていたゼフォーは一言そう結果を評してAIの設定を変更したいと申し出た。
それを受けた際は、AIの補助を受けたのは初めてなのだろうからと快く反抗を受け入れた。比べれば違いも分かるだろうと。
尤も、それで生じた違いはエリカたちの想定したものとは真反対だったわけだが。
僅かに胸中で首をもたげる知的好奇心に蓋をして、エリカはパンと手を叩いた。
この場にいる同僚たちの視線が、ゼフォーからエリカへと移る。
「ほら、手が止まってるわよ?彼の操縦がスゴイのは分かるけど、私たちの仕事をしないと、ね?」
そう声をかければ、弾かれたようにコンソールやモニターに向き直り止まっていた調整したことによる齟齬やズレの検証を再開する同僚たち。
少なくとも、上手く操縦がこなせるのならそれに越したことはない。そうエリカは思いながら、壁に掛けられた時計を見やる。
そろそろマイカから告げられた時間だと、自身の目の前のコンソールのボタン──シミュレーター内に呼び掛けるマイクのスイッチを入れてゼフォーへと声をかけた。
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──どうやらオーブは、思っていたよりも小賢しい国だったようだな……!
モニターに映る国際救難チャンネル──全世界に向けて発信されている映像。そこに映し出されている、首から大西洋連邦軍のドッグタグを下げている見覚えのある人物。
ゼフォー・ローワンの姿にオルフェは歯噛みをしながら思う。
ミレニアムが占拠されたというオーブの茶番、オノゴロ島へのレクイエムの発射を進めている最中に為されたキラ・ヤマトによる全世界への映像の発信。
それらは、十分想定内であり今後に与える支障はそう大きくはないだろう。オーブを討ち、然るのちに声明を出しさえすればどうとでもなる。
想定外だったのはゼフォー・ローワン──異分子扱いされるであろう存在を、オーブが謀に組み込んでいたこと。
ソレがモニターに映し出された時は僅かに狼狽えてしまったものの、ファウンデーションの宰相として辣腕を奮っていたオルフェはすぐさまその意図を理解した。
大西洋連邦との協調の為に、自分達と異なるモノを糾弾に利用する判断は敵ながら見事と言えるものだろう。
そうオルフェは思いながらも、一方でこうも断じていた。
……だが、所詮は旧人類。連中の狙い──口封じの為にミレニアムに狙いを変える。それに乗ってやる理由は我らには……ファウンデーションには無い。
レクイエムを撃ち込まれ政治中枢を失い組織立った行動が困難になったオーブのことを、大西洋連邦は見捨てずにいるだろうか?己の保身の為に、我らへと尻尾を振るに違いない……と。
──…………キラァッ!止まって、くださいぃ!
──私の愛する人は、あなたではありません!
オルフェの脳裏を過ぎる、ラクスの──自身の隣に立ち世界を共に統治すべき人の、あり得ない……あり得てはいけない言葉と姿。
それをラクスへと行わせた原因──キラ・ヤマトとゼフォー・ローワンの小さく、醜い足掻きを踏み躙ることが出来る。
湧き上がる仄暗い愉悦に、オルフェは口元を緩ませた。
『僕は彼──デュランダル前議長を討った。けどそれは、あまりにも強引なやり方だったからだ。彼が平和を求めていたことを否定するつもりはない。でも君たちは違う!彼が平和を求めて考え出したデスティニー・プランを、ただ自分達が支配者になる為の道具として使うような虐殺者の企ては絶対に潰す!』
ソレを思えば、たった今キラの口にした侮蔑の言葉も冷静に受け止めることができるというものだ。
そうオルフェは思うがその実、冷静ではなかったのだろう。
デュランダルの考えを、ファウンデーションは踏み躙っている。そのように言われたのならば、自身が母上と慕っているアウラが──長年幼い身体に閉じ込められ、情緒が不安定で激情に流されやすいと言っても良い彼女がどう反応するか。
そのことが、頭から抜け落ちてしまっていたのだから。
「言わせておけば……!」
ギチギチと響く音と怒りの滲む唸るような声に、弾かれるようにオルフェが顔を向ければ手にした扇を握り締め憤怒を隠そうともしない表情のアウラの姿。
まずい、と声を出す間もなくアウラは怒りに任せて叫んだ。
「あの出来損ないどもを殺せ!レクイエム、目標はミレニアムじゃ!!」
皮肉にも、デスティニー・プランによって選抜された優秀なオペレーターは唐突な目標の変更命令であっても迅速に反応し、既にレクイエムの目標修正を開始していた。
「撃て!妾の命じゃッ!」
もはや再度の目標訂正は間に合わない。アウラの声を聞きながらそう悟ったオルフェは、視線を傍にいる別のオペレーターへと向けた。
視線を受けたオペレーターはすぐさまその意図を理解して、慌ただしく行動を起こした。
レクイエムでミレニアムを狙うのは、大砲でハエを狙うようなものだ。まず当てることは出来ないだろうが、大砲の砲弾が近くを通ったハエは何事もなく飛び続けられるのだろうか?
否である。巻き起こされる風に弄ばれ、マトモに飛ぶことは叶わないだろう。
レクイエムに狙われたミレニアムも同様だ。今現在、ミレニアムはオーブ沖上空にて大気圏突破の為の加速中である。
レクイエムの高出力ビームがミレニアムそのものに当たらずとも、海面に着弾すれば巨大な水蒸気爆発が発生しそのままではミレニアムは莫大な量の水蒸気に弄ばれる。
オペレーターはそのことを理解して、最短での大気圏突破可能時間と突破後の到達予測地点を算出しようとしている。
最善にはならずとも、連中にとって値千金の時間を浪費させることができる。その上で場合によっては宇宙へと上がった直後の連中の鼻先を抑えることもできるだろう。
自身に出来ることを為し、モニターを見やるオルフェは、絶句した。
発射されたレクイエム、その巨大な光の奔流をミレニアムは急激に減速し旧時代の戦闘機の空戦機動の一つであるプガチョフ・コブラを彷彿とさせるように艦首をほぼ垂直に立てて流れるように回避。
そのままミレニアムは陽電子砲を発射した。
そこまで映したモニターの画面が、砂嵐へと様変わりする。
「ミレニアムをロスト!電磁パルスの影響です」
「くそッ!!」
オルフェは、あまりにも
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『……ゆえに、私はこう断じます。彼らは、人類を導く者などではない。デュランダル前議長が考え出したデスティニー・プラン、それを利用して世界を支配しようとしているただの欲深い殺戮者だ、と』
アイシュはアルテミス要塞からダイダロス基地へと向かう道程で、まるでキラ・ヤマトが国際救難チャンネルで行った糾弾を彷彿とさせるような言葉を口にするフォスターの映像を苦虫を噛み締めたような顔で眺めていた。
キラ・ヤマトの領域侵犯の阻止、アスラン・ザラの排除の失敗、全世界へのファウンデーションに対する糾弾、それに起因するレクイエムによるオーブ攻撃の失敗。
さらにはミレニアムの大気圏突破直後の大西洋連邦大統領、フォスターによるファウンデーションへの宣戦布告。
相次いで計画に生じる綻び、それらに顔を覗かせる存在に思わず声が漏れる。
「……ゼフォー・ローワン」
自身の判断がこの世に産み落とした
だが、それでも決定的な破綻にはなり得ない。そうアイシュは結論づけた。
今現在、自身は乗機であるミラージュコロイド搭載機──ブラックナイトクベーラと共にレクイエムの防衛に就くために移動中だ。
クベーラはミラージュコロイドによるほぼ完璧なステルスを行える他に、右腕の複合兵装防盾・スダルシャナは対PS装甲を前提とした武装だ。防衛部隊を掻い潜り、発射前にレクイエムに取り付けたとしてもクベーラによる奇襲がある。
極論を言えば、戦略的にはレクイエムがあれば状況を巻き返せることは叶うのだ。
アイシュは、自身を落ち着かせるかのように巻き返すことのできる根拠を挙げていく。
確かに大西洋連邦は──フォスターはファウンデーションに対して宣戦布告を行ったが、そこにはキラ・ヤマトの糾弾を思わせる言葉はあれど直接的に肯定する言葉は無かったのだ。
恐らく、キラ・ヤマトの生存をオーブから知らされた大西洋連邦が勝機を見出して便乗しただけのこと。
それ故に、逃げ道を作ったのだとアイシュは考えていた。オーブがレクイエムで撃たれさえすれば、最終的には保身を優先するだろうと。
ブルーコスモスや地球連合、プラントの過激派との多くの接触を持った自身の経験を持って。
そんなアイシュ、そしてオルフェの根底にある今の世界を形作る人々を愚かだと断ずる価値観。
それ故に、彼等は思い至ることが出来ずにいた。
宣戦布告を始めとした国際社会へのあらゆる通達を行わずに為された、一般人を巻き込んだ虐殺。
かつて絶滅戦争へと歩みを進めていた世界であってもなお