地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
「ミレニアム、現状ではおよそ六分でファウンデーション艦隊と会敵と予測されます」
各月面基地から発進した地球連合軍の第二次攻撃艦隊は、その戦力を二分。
一方はレクイエムへ、もう一方は月へと向かうミレニアムの進路上に展開するファウンデーション艦隊へとその進路をとっていた。
そのファウンデーション艦隊へと向かうオーディン艦隊旗艦、アガメムノン級オーディンの艦橋にて士官の声が響いた。
モニターにはミレニアム、及びそれを迎撃せんとするファウンデーション艦隊の様子が映る。
「本艦隊、最大戦速での会敵予想は?」
「ハッ、およそ十分後となります」
艦長席に座る壮年の男性──アラン・ベルマン少将の問いに返った答えに、彼はその厳めしい顔を険しくした。
「……艦隊としての体裁を気にしない場合だと、どうなる?」
「機動分隊のみ最大戦速にて先行させるのが最速となりますが、それでもミレニアムの会敵予想には間に合いませんね。この程度では連中がミレニアムへの攻撃を優先するのは揺らがないでしょう」
再度の問いかけに、今度はアランと長い付き合いの副長──ヘレナ・フーバー大佐がキビキビと答えた。
──得られる助けは全て受ける*1、と言いたいところだが……。
単なる確認でしかないが、単騎で艦隊へと向かうミレニアムに対しオーディン艦隊が何かしらの援護をすることは叶わないということだ。
戦力はいくらあっても足りないといえど、もはやミレニアムは戦力外だと考えるべきだろう。…………常識的に考えれば、だが。
考え込んでいるアランに、ヘレナが声を掛ける。
「戦術リンクが構築されている以上、今ならばミレニアムに対して通信で戦術の提起は可能です。…………速度を80%まで抑えたならば、本艦隊から直掩部隊の合流も叶うかと」
「いや、それは悪手だろうな」
だが、その提案をアランは蹴った。モニター上ではファウンデーション艦隊が鶴翼の陣を思わせる、ミレニアムの前方を覆い包むような陣形を整えていた。
おそらく最大戦速で加速し続けたミレニアムのスピードは、唯一の強みだ。徒に速度を落とせば、これ幸いと即座に包囲され集中砲火を浴びせられてしまうだろう。
アランが思いつくミレニアムの勝ち筋は、そのスピードで可能な限り損傷を抑えて敵艦隊を突破することぐらいだ。
「では、彼等を見捨てると?」
「そうなるな。……だが、存外切り抜けるかもしれないぞ?オーブへのレクイエム発射を通信で引きつけて、双方無傷で切り抜けたようにな」
「流石に楽観が過ぎるかと」
「相変わらずだな、君は。……さて、そろそろ話は終わりだ。総員、戦闘準備!」
そう話を切り上げたアランは、自身のヘルメットのバイザーを下ろしながら周囲へと指示を飛ばし始めた。
オーディン艦隊は、急速に戦闘準備を整えていった。
「連合艦隊からMA発進。高速でこちらに向かってきます、数三!会敵予想時刻まではおよそ六分!」
「なに?」
その動きは、当然ファウンデーション艦隊も捉えていた。旗艦であるヴァナヘイム級惑星間航宙戦艦グルヴェイグ、ミレニアム会敵までおよそ三分ほどのタイミングでその艦橋に響く士官の報告にオルフェは視線をあげた。
モニターに映るのは自身の知識と僅かにその姿に差異はあれど、確かに連合MAであるユークリッド。
だが、僅かな疑問が浮かぶ。
──MAといえど艦隊に対して直掩機無し、かつ少数で突出させる……連中は何を考えている?
だが、オルフェはそれをすぐさま切り捨てた。たとえミレニアム攻撃後でも、迎撃体勢を整えるには充分な時間があるからだ。
「攻撃目標、ミレニアムのまま!ただし、MAと連合艦隊の動向には目を光らせろ」
それに、所詮ナチュラルの集団である連合艦隊やその一部でしかないMAよりも、コチラの計画を狂わせた唯一の存在。何よりキラ・ヤマトを擁するミレニアムを墜とすことの方がオルフェにとって遥かに重要であるからだ。
「
オルフェの号令と共に、ファウンデーション艦隊からミサイルやビーム。そして陽電子ビームの奔流が迸り、ミレニアムへと殺到した。
「…………まさか、ここまでやるとはな」
モニターに映るミレニアムの姿に、まさかファウンデーション艦隊の集中砲火を回避すらせずに無傷で突破してみせるとは思っていなかったアランは呆然と呟いた。
「
「あぁ、まったく。アレが味方で良かったよ……!」
ヘレナの冷静な報告、それに続く揶揄に苦笑しながら心の底からの所感を吐き捨ててアランはモニターの一角──レクイエム次弾発射予想時刻を確認。
充分な余地があることを確認したその上で自身の本分──指揮下の艦隊へと指示を出す。
「先人に倣うとするか……!全艦、突撃陣形に移行。相対速度、本艦に合わせ。速度第四戦速から最大戦速へ!各機動分隊は発進準備を整えろ!」
その号令に合わせ、艦隊旗艦オーディンを先頭にドレイク級、ネルソン級にアガメムノン級の順に同心円を描くように──全体的に見れば直円錐形になるように配置を変える。
そのまま一気に加速しながら、オーディン艦隊はファウンデーション艦隊へと向かう。
「モ、MA隊及び連合艦隊、急加速!会敵予想、MAは二分四十五秒から一分!艦隊は五分から四分!」
「なんだと?!」
士官の悲鳴に近い声での報告に、オルフェは声をあげた。ミレニアムに艦隊の集中砲火を無傷ですり抜けられ、更には事前にプログラミングされた上で散布されたミサイルによる被害を受けた矢先の報告であった。
僅かに逡巡する。MAや連合艦隊の迎撃の為に闇雲に戦力を分散してしまえばミレニアムの撃破は困難だろう。
……だが全艦回頭しミレニアムを追撃すれば、背後からMAの追撃を食らう。
直掩機の居ない三機ばかりのMAとはいえ、その火力と速度は侮れない。一度喰らいつかれたならば足を止められ連合艦隊の到着すら許しかねない。
そうなればいくらナチュラルの集団といえど迎撃に注力せざるを得なくなり、ミレニアムどころではなくなってしまうだろう。
オルフェは決断した。
「艦隊のうち、MA側三分の一はその場にて迎撃用意!残りは全艦回頭し、ミレニアムを全速で追撃!超高速誘導弾、MA・ミレニアムそれぞれの予想進路上へとばら撒け!」
艦隊がその指示をこなした事を確認したオルフェは、士官の報告を受けそのまま矢継ぎ早に命を下す。
「敵艦、MSを発進。数四!」
「MS隊発進!迎撃艦隊は艦砲射撃と回り込んだMS隊による挟撃でMAの撃破、あるいは後退を確認次第回頭。追撃艦隊へと全速で合流せよ!」
──いや待て。
それぞれ艦隊への指示を出した直後、感じた違和感にオルフェはモニターの一角──そこに映し出されるミレニアムから発進した四機のMSに視線を向けた。
デスティニー、インパルス、ゲルググに見慣れないMS──。
「……キラ・ヤマトはどこだ?」
迎撃されたらしい超高速誘導弾が宙へと咲かせる大輪の爆炎の花。それを尻目にバルルス改を担いだジンハイマニューバ、それに遅れてジンが二機。
同様の編成の部隊が三つ、爆炎の先にいるであろうMAに向かっていた。
爆炎を裂いて三箇所からそれぞれビームと弾幕が撃ち出されるが、そこにはもうジン達は影も形もない。
代わりに艦隊からの砲撃がその空間を迸っていく。
素早くMAの側面をとる軌道を描いた鋼の巨人達、その先頭でバルルス改を担いだジンハイマニューバを駆る男は内心でデスティニー・プランに選ばれた自身たちを誇りながらも冷静にその巨体を操っていた。
──データじゃあのタイプのMAは機体上部に陽電子リフレクターを展開するんじゃなかったか?……構いはしないか、どのみち側面が弱点だ!
相手の攻撃で吹き散らされた爆炎から垣間見えた光景に、わずかに疑問を呈すがすぐに目の前に晒されるであろう弱点へと意識を切り替える。
構えた砲口、引き金を引く寸前。目の前のMAの後部側面で、ギラリと瞬くバイザー越しのカメラアイ。
「…………な?!」
瞬間、放たれたビームがジンハイマニューバの胸部を撃ち抜いた。思わぬ事態に浮き足立つジン達に、今度は
同様の光景がほぼ同時に生まれ、新たな炎の花が宙に咲き誇っていた。その向こう側、使い切った増設スラスターを強制排除したMA──ユークリッド
側面にニ箇所、左右で四箇所のハードポイントから接続兼用のバッテリーケーブルで接続され設置されたハンドルをマニピュレーターで掴むことで簡易的に懸架されていたMS四機のうち、エールストライカー装備のウィンダム二機が左右から離れる。
三機のユークリッドEから二機ずつ、計六機のウィンダムが直掩として飛翔。
そうしてランチャーストライカー装備のダガーが左側面、Mk39 低反動砲を装備したダガーLが右側面に残り死角をカバーする形になった三機のユークリッドEはそのまま速度を落とすことなく、ウィンダム達を侍らせながら敵艦隊に対する高速での強襲突撃を続行した。
この瞬間が、この世界で初めて機動分隊戦術──MSを輸送出来るよう改修されたユークリッド一機に四機のMSを一班として扱い、三班合わせて一つの分隊として運用する戦術が実戦で使われた瞬間であり。
「て、敵MAからMS展開!?MA三機、MS六機、速度変わらず迎撃艦隊に接近!!」
「な、なんだと?!」
直掩MSを伴ったMA隊の強襲突撃を突如受けることとなり、オルフェの思考からキラ・ヤマトの所在に対する疑問を吹き飛ばすには充分な衝撃をファウンデーション艦隊へと与えることになったのであった。
機動分隊と突撃陣形、ユークリッドEは公式には存在しないオリジナル設定です。ご留意ください。