地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
前話の連合艦隊名および旗艦名が命名規則に則っていないと感じた為に変更しています。申し訳ありません。
グリンカムビ艦隊→オーディン艦隊
「チャンドラハース、てーっ!」
艦長の声と共にファウンデーションの主力艦、バルドル級がその船体中央部から三本の陽電子ビームを放つ。
一本でも容易く宇宙戦艦を貫き轟沈せしめる陽電子の槍が宙を駆け抜け、標的に着弾したかのように見えた。
だが、しかし──。
「……ダメですッ!目標健在、速度変わらず!」
士官の悲鳴じみた報告の声がバルドル級の艦橋に響き渡る。それを聞きながら艦長は、モニターに映し出されるこちらへと高速で迫る目標──ユークリッドEを憎々しげに睨みつけた。
機体左右に加え改修によって増設された機首部分、計三基の発生器で正面に展開した陽電子リフレクターによって無傷で陽電子砲による攻撃を凌いだユークリッドEはそのまま展開状態を維持。
懸命な対空砲火の弾幕をものともせず、さながら弾丸の如き猛烈な勢いでファウンデーション艦隊中央へと到達。そのまま食い破るように突き抜ける。
まるで掠めるような艦艇とのすれ違いざま、左側面から伸びる赤い熱線──ランチャー装備ダガーの放ったアグニが中央船体やMS格納庫を焼き焦がし、兵装庫の弾薬への誘爆やエンジンブロックへの直撃を許して船体全体を大きな火球へと転じた。
当然、仲間をデブリへと様変わりさせた狼藉者のその無防備な背をただ見送ろうと考える者はいなかった。
追撃を試みるMS隊、だがその背に幾筋かの光条が放たれる。素早く散開するが、逃れられなかったジンが無情にも爆散する。
直掩機として飛び立っていたウィンダム達が、追撃を阻止せんと放ったものだ。
そしてユークリッドEに僅かに遅れて艦隊と接敵した彼らは、交戦を開始した。
──欲を言えば、もう少し数が欲しかったが……泣いて月を欲しがる*1ようなものだな。
艦艇からの対空砲火、それをエールストライカーによってもたらされる高い機動性を新型戦闘支援AIの補助──学習元として使用された情報故か、エールストライカー装備のウィンダムでの使用が最も効率良く運用できるようだ──によって最大限に活かし、ヒラリヒラリと舞い遊ぶように掻い潜りながらユークリッドEへと向かおうとするMSを優先的に撃破する
艦隊を突破し滑るように回頭……というより、もはや右ドリフトと称すべき機動で自身の左側面──ダガーの構えるアグニ、その砲口を回頭の間に合っていないファウンデーション艦隊へと向ける三機のユークリッドE。
薙ぎ払うように放たれる赤い熱線。その軌跡上、艦艇の無防備なスラスターノズルや放たれた大型ミサイル群、ウィンダム達の攻撃を掻い潜って追撃を仕掛けるジン達が熱線の通過から一拍遅れて多数の炎の花を咲かせる。
猛烈な勢いで加速しながら突撃しているオーディン艦隊、その先陣を切るアガメムノン級オーディンの艦橋の艦長席。
ユークリッドEは、第一特殊戦闘技術評価大隊にて新たに提唱された機動分隊戦術──その要となるMSの簡易輸送能力を持ったMAとしてザムザザーやゲルズゲーに比べ比較的シンプルな構造であったユークリッドを改修したものであり、あくまでも評価段階である試作機だ。
エンデュミオン基地にて最終評価試験の行われている最中であり、配備計画の策定すら行われていないものを緊急事態であるが故に引っ張り出してきた代物である。
異なる戦術とそのための装備、その評価の為に五個分隊分の機体が造られていただけでも厭戦気分の蔓延と経済政策重視の時勢に加えて宇宙艦隊の再建・拡充を優先されている状況を鑑みれば豪勢と言ってもいいだろう。
「本艦隊全艦の主砲射程圏内に敵艦隊中央を捕捉できるまで、あとどのくらいだ?」
「およそ二分三十秒ほど、ですが……」
「敵陣形の関係で、このままなら敵艦隊両翼からの攻撃が二十秒ほど早いですね」
気を取り直したアランの質問に士官が答えるが、何処となく歯切れが悪い。その言葉をヘレナが引き継ぎ、ハッキリとした喋り方でこのままでは敵艦隊にとって有利であると伝える。
ミレニアムを迎え撃った時同様、オーディン艦隊の前方を覆い包むような形だ。
いくらヴィルトシュヴァイン隊による強襲突撃によって浮き足立ち隊列が乱れているといえど、たかが三機のMAと六機のMSだ。左右に広がった艦隊、その両翼までは影響を及ぼせてはいない。
間違いなく、こちらに壊滅的被害を齎せるだけの集中砲火が浴びせられるだろう。
だが、それを聞いた上でアランはその厳めしい顔に不敵な笑みを浮かべながら口を開く。
「構わん。先人に倣うと言ったろう!艦隊進路および速度そのまま、全機動分隊は発進し艦隊先頭へと向かえ!」
「…………聞こえたでしょう?各機動分隊に指示を。艦長、それぞれの配置は?」
「
その言葉に士官たちはギョッとした顔になり、ただ付き合いの長いヘレナだけがやれやれと言いたげな表情を浮かべながらも周囲へと注意を促しながら淀みなくアランへと細かな指示の確認を行う。
それを受け、士官たちもハッとしたようにそれぞれの仕事をこなしていく。
「射程圏捕捉までのカウントを全艦、全機動分隊に共有。敵艦隊砲撃の直前……五秒前に機動分隊のMAは全機陽電子リフレクターを最大出力にて同期展開!」
「レーダーに感あり!敵艦隊両翼より飛翔体多数……超高速ミサイルです!」
「CIWS起動、コリントス及びヘルダート発射用意!敵ミサイル射程圏内到達次第撃てッ!」
アランがさらに指示を出す最中、レーダーを警戒していた士官の報告に素早く対応を命ずる。
敵艦隊の砲撃まであと僅か、不敵な笑みを浮かべ対応を指示したアランだったがその額に冷や汗が光る。
それでも、下すべき指令をいち早く告げるべく声を挙げた。
「機動分隊はコチラの射程圏捕捉の五秒前に全艦の射線軸から退避!グシスナウタル隊は後退し艦隊直掩に、ワルキューレ・アインヘリヤル両隊は前進一杯*2で敵艦隊へと突撃、敵両翼の中央への移動を抑えさせろ!」
接近した超高速ミサイルがCIWSやコリントス、ヘルダートなどの迎撃ミサイル。さらには機動分隊のMSによる射撃によって爆発。
咲き誇る炎の花に照らされた艦橋は、その衝撃で激しく揺さぶられる。歯を食いしばり、アームレストを握り締めて耐えながらアランは前を──ファウンデーション艦隊を見据える。
敵艦隊の砲撃射程圏到達五秒前、全九機のユークリッドEが計二十七基のシュナイドシュッツSX1021──陽電子リフレクター発生器を起動。
発生した陽電子リフレクターは結合し、オーディン艦隊をすっぽりと覆い隠すほどの大きさで展開された。
直後、宇宙戦艦など容易く粉微塵にできるほどの壊滅的な威力の光の暴威。
ファウンデーション艦隊両翼からの陽電子砲やビーム砲からの砲撃が、展開された陽電子リフレクターを打ち貫かんと殺到し目が焼き潰れんばかりの閃光を生み出す。
それでもアランは、目を細めてでも見据え続けた。ひたすらに前を、敵を、虐殺者たちを、ファウンデーション艦隊を。
……反撃の時を、逃さぬ為に。
…………光が治まる。三個機動分隊が最前線で掲げ続けた勇敢なる盾は、光の暴威を防ぎ切ったのだ。
その直後、盾が消え失せて中央の一個分隊はそのまま速度を落としオーディン艦隊の直掩へと。
両翼の二個分隊は、機体後部に備え付けられた増設スラスターを点火。凄まじい勢いで加速しそれぞれの前方──敵艦隊の右翼と左翼へと突撃を開始した。
……即ち、アランが見逃さんとした反撃の時は、今この時であった。
「フォーゲルヴァイデ一番ニ番!てーッ!!」
アランの叫びとともに、オーディンの艦首両舷に備え付けられた主砲から光条が迸る。
そして、それと同時にオーディン艦隊全艦の主砲が艦隊前方──ファウンデーション艦隊中央へと殺到する。
ヴィルトシュヴァイン隊によって散々に掻き乱された艦艇たちは、碌に回避行動に移ることも出来ずに数多の光条、あるいは電磁加速された砲弾をその身に受けて爆散。
そして、それこそドリルで掘削されたかのようにファウンデーション艦隊中央に大きな空隙が生じた。
無論、それをそのままにしようとはせずに艦隊両翼が直ぐにそれを埋めようと動こうする。
だが、猛烈な勢いで迫るユークリッドEが放つビーム砲の光条やガトリングの弾幕によって幾つかの艦艇やMSが撃破され爆散。迎撃行動を余儀なくされる。
そして、艦隊に接敵したユークリッドEから翼を備えた戦乙女たちと勇士が飛翔し挑みかかっていった。
その機を逃さず、オーディン艦隊は更に加速しながらファウンデーション艦隊中央の空隙を駆け抜ける。
「全艦、スレッジハマーをレーザー誘導で発射!足を止めるな、我々の最優先目標はファウンデーション艦隊の旗艦だ!」
「ヴィルトシュヴァイン隊に通達、2ndフェーズへと移行。旗艦艦隊へと突撃せよ」
アランは機動分隊への誤射を避ける為に対艦ミサイルでの攻撃を指示しながら、同時に改めてオーディン艦隊の最優先目標を口にする。
その横でヘレナはヴィルトシュヴァイン隊へと先ほどと同様、今度は旗艦艦隊への撹乱の為の突撃を命ずる。
その命を受け、ワルキューレ・アインヘリヤル隊と入れ替わるようにヴィルトシュヴァイン隊のウィンダムたちはユークリッドEへと戻る。
そのまま加速して迎撃艦隊から離脱し、さらにはオーディン艦隊をも抜き去る。そして、こちらを一顧だにせずミレニアムの追撃を続けるファウンデーション旗艦艦隊への突撃を開始した。
──さて、ここまで派手に暴れたんだ……当然、食いついてくれるよな?
ファウンデーションの迎撃艦隊に対して、機動分隊戦術をもって圧倒的とも言える戦果を得たオーディン艦隊。だが、艦隊司令であるアランの胸中は至極冷静であった。
あくまで作戦目標達成の為の第一関門を突破したに過ぎず、把握している情報が確かならここから先は決して明るい未来が待っている訳ではないと知っているからだ。
……機動分隊戦術は確かにMAの弱点──機動力が高く突出し易い反面、小回りが効かないが故のMSによる近接戦への対応能力の低さを直掩機たるMSを自身で輸送することで補うことが出来るが、それは完全ではない。
例えば、そう──。
「ヴィ、ヴィルトシュヴァイン隊、全機撃墜!!および超高速でコチラに接近するMS、数四!!」
コチラのMSを上回る、陽電子リフレクターを突破しうる装備を備えた高性能MSに対して対策が出来ているとは、とてもではないが言えないのだ。
士官からの報告に、艦橋に緊張が走る。それは予定調和とでも言うべき、予期できた展開。
「来たか、ファウンデーションの化け物…………『ブラックナイトスコード』」
爆炎を背に宇宙の闇を駆け抜ける黒騎士の一団が、オーディン艦隊へと迫っていた。