地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
大変お待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。
アカツキを庇うような形で交戦を開始したアイシュ・ガローテの駆る異形の黒騎士。
幾度か砲火を交わし剣を交えて分かったことがいくつかある。
一つはミラージュコロイド・ステルスを搭載していたことからある程度事前に推測出来ていたが、あのクソチンピラ騎士の機体達よりは正面からの戦闘力は一段劣るということ。
一つは機体同様に、アイシュ・ガローテも正面からの戦闘には不慣れなようでその技量は決して超人的とは言えないということ。
以上を踏まえて、今現在の戦況を端的に述べるとするならば──。
コチラが不利、である。
幾度目かの突撃。スラスターによる加速で得られた速度に巨大なMSの腕で振るわれることで生まれた遠心力が加えられたウォーハンマーの鋭い槌頭が、なびくマントのように左肩から展開されたビームへと吸い込まれるように打ち付けられてその勢いを殺される。
瞬間、垣間見えたヴィジョンにスラスターを用いてカラミティの体躯を反回転させれば、うねったマントが斬撃を生み出していた。
距離を空け左手で腰から抜き取ったレールガンを撃つが、高速で飛翔した弾は余裕を持って構えられた異形の右腕によって防がれる。
お返しとばかりにコチラへと向けられた砲口から続けざまに放たれるいく筋ものビームを避けながら、両翼端の
アークエンジェルの
《反則!インチキ!!このチートヤロー!!!…………ヒエッ?!》
心の底からの負け惜しみを叩きつけてみせても反応一つ返さない髑髏めいた相貌の黒騎士が、先程までビームを放っていたその異形の右腕から今度はサーベルを発振させコチラを上回る猛烈な勢いで迫る姿に思わず素っ頓狂な声が漏れる。
シュベルトゲベールは……間に合わない、ウォーハンマーモードのアドラーll(仮)をジャベリンに変形させながら振り上げてビームを発振すれば間一髪。
「ホアァアァーッ?!」
《ちぃ……ッ》
黒騎士とカラミティの体躯が、互いのビームサーベルを形成する力場の干渉とそれを振るった勢いで跳ね飛ぶ。尤も、どちらかと言えばコチラが跳ね飛ばされたと形容した方がより正確な状況の描写であろうが。
その衝撃に叫びながらも、脳裏を過ぎるヴィジョンに機体を操れば装甲を掠めるように光芒が迸る。
冷や汗が頬を伝うのを感じながら、肩のマルチランチャーから放つミサイルを使ってアイシュの視線を切りレールガンを構えガトリングの狙いをつけることで牽制してかろうじて距離を稼ぐ。
黒騎士を相手に有効打になり得る射撃兵装は無い、そう断言してもいいだろう。
ビームであるライフルやショルダーキャノン、シュベルトゲベールによる射撃はもろちん論外。実弾であるレールガンもガトリングも、フェムテク装甲に当たればただキラキラと綺麗なだけ。
関節に当てれば或いは……と言ったところだろうが、相手がアコード──読心能力持ちのコーディネイターであること、モルゲンレーテの手でセカンドステージ相当の機動性を得たカラミティを凌駕する、正面戦闘でなくミラコロステルスを用いた工作がコンセプトであろう機体にあるまじき機動性を含めた基礎性能を誇る異形の黒騎士。
この二つの要素が合わさった時点でハードルはエベレストよりなお高い。
衝撃を一点に集中させる事によって装甲の強度によらずその内側へとダメージを与えるアドラー……それに手を加え攻撃性を増したアドラーll(仮)と、ビームと物理による二つの特性を併せ持った事で高い攻撃力を持った対艦刀であるシュベルトゲベール。
この二つの近接兵装も、同様の理由でその真価を発揮出来ずにいる。フェムテク装甲の規格外と言っていい強度を踏まえれば、どうしても勢いをつける必要がありその分大きな動きが求められる。
それを読心で察知され、コチラを上回る機体性能によって危なげもなく防がれ……アドラーll(仮)の、ll(仮)たる所以である機能を使えばビームマントの防御は抜けるだろうが当たらなければどうということは無い──だなんて言葉の通りに躱されてしまえば意味がない。
ここまで殴り合いが出来ている時点で、奇跡のようなものだろう…………?
僅かな、違和感。なぜアイシュは、俺と素直に戦闘を続けている?アカツキを墜とす為──より正確には、ゼウスシルエットがデスティニーへと受け渡されることを阻止するために行動していたんじゃなかったのか……?
どうして、さっさとミラコロステルスを使って離脱しない?
見落としそのものに気づいても、ナニを見落としたのかに気付けない不快感。例えるなら、歯にモノが挟まった感覚があるのに舌先で挟まったモノの場所が分からないような…………。
俺に対しては、読心で無意味になるから?それでもフェムテク装甲の強度や機体性能の差を考えれば、大した意味はないんじゃねェの?
スラスターなら通るからか?でも読心である程度避けれる筈だろォ?
……俺は、ナニを見落として──。
ゾクリ
《隙、ありィ!》
「あっ、ぶねぇッ!!」
そんな思索を遮る悪寒、直後にアイシュの思念が頭に響く。思わず声を上げながら機体を操って迫りくる光条を避ける。
戦闘の真っ最中に考え込むとか、舐めプチンピラ騎士どものこと笑えねェぞ?!
《滑稽ですね、ゼフォー・ローワン特務少尉?》
《いきなり随分とご挨拶ですねェ、アイシュ・ガローテ筆頭外交官殿ォ?!》
自嘲した直後、頭に響くこれまでうんともすんとも反応を返さなかったアイシュの突然の思念。
それに対して嫌味たらしくなるように意識しながら、コチラからも思念を返しながら向かってくる黒騎士の迎撃態勢を整える。
《だってそうでしょう?あなたがそうして四苦八苦しているのは、私の相手に相応しい能力があるからと押し付けられたからなのでしょう?あなた方が否定しようとしている世界の在り方そのモノではないですかぁ!》
…………………………???
《はぁ。…………はぁ?》
唐突なアイシュの物言いに、思わず気の抜けた声が出る。そして、何故ここに俺がいるかをふと思い返す。
──俺がキミに頼みたかったことは、おそらくステルス搭載機のパイロットであろうアイシュ・ガローテの所在をエルドアの時のように把握してもらうことであって、戦わせるつもりはなかったんだが。
──それでも、多分……俺が前に出た方が良いと思うっス。
──なら、なおさらキミを前に出すわけにはいかないな。彼らにとっては、アコードの優位性と価値を貶める存在だ。是が非でも排除しようとするだろう。あまりにも危険性が大きすぎる。
──差し出がましいかもっスが、多分……逆です。だからこそ俺は前に出るべきかと。
──がむしゃらにならなくても、貴方の居場所はあるんです。貴方は今、貴方の為に休むべきです。身体に鞭打って戦う必要は……理由はありません。
──マイカ中尉、ごめんなさい。必要も理由も俺にはあるんです。
──アスカ大尉には命、ヤマト隊長とラクス総裁には明日。マイカ中尉にも、他の人にもたくさんのモノをもらって俺はヒトとしてここにいます。
──戦わなきゃいけないからじゃなくて、戦いたいから戦うんです。守りたいから、力になりたいから、返したいから。
《………………ハァ!?》
なんだァ?てめェ……。今、あの人達のこと、なんて?
《知っているでしょう!?強がったところで…………は、あ?》
血が昇った頭に、どういう訳か狼狽えた様子のアイシュの思念が響く。なんだかよく分からんが、隙ありだァ!
アドラーll(仮)を構えて、スラスター全開で突っ込む。
《悪いねェ!アンタ方のトコとは違うんだよォ、あの人達はなァ!!》
《な、クッ。だが、同じことをしたところで同じ結果が待っている……ナニッ?!》
どうやらコチラの頭を覗いて何しようとしてるかは分かったみたいだ。振り抜かれたウォーハンマーを迎え撃とうとビームマントを前面に構えた直後、機体を操り回避に移ろうとする。
……もう遅いけんなァ!!オラッ!
瞬間、形成された高出力のビームスパイクがビームマントを相殺し、覆い包んだ鋭い
同時に回避を牽制する為にガトリングを黒騎士の下半身へと狙いもろくにつけず撃ち放つ。
《チッ…………ん、うん?》
結果、機体性能に任せた半ば無理矢理な挙動でガトリングを右腕装甲で受けた上で、上半身を捻る事で左の上腕部を槌頭が掠める程度の損傷しか与えられなかった事に舌打ちを一つ。
だが、直後に違和感。そして──。
「アハァ♡」
頭に過ぎったアドラーll(仮)の特殊機能である、対光波防御帯派生装備用攻撃モードを使った感想──やりたい事分かるけどビーム・スパイクの展開時間が一秒未満とかナチュラルに使わせる気ある?だの、コレってデストロイ等のビームシールドとPS系装甲を併せ持った相手を想定してますって言ってたけど、これ持って有効射程である懐に潜り込めるんなら対艦刀で良いんじゃない?なんかの愚痴は脇に置いておこうと思う。
何故なら、今この瞬間。黒騎士の無理に下半身を庇った動きを見て、
考えてみればある意味順当なことだ。一部のエリート以外のMSをジンなんかで済ませているようなそこまで財力があるわけで無い勢力が、正面戦闘を意図していないであろう機体の装甲全てをわざわざ新開発されたフェムテク装甲になんてしていないだろうなんて、ねェ?
せいぜいコクピット含めたバイタルパートの多い胸部と、繋ぎ目の無い大きな面積が取れて防御姿勢の取りやすい右前腕部あたりだけなんじャあねェの?!
頭に浮かんだこの推測の正誤を言葉よりも雄弁に語るアイシュの焦燥感を感じ取って、緩んだ口角が更に持ち上がる。
《アッハハハハハ!どうやらドラマティックな攻防ってやつがお望みみたいだァねェ、アンタ方がお熱の運命の女神様ってヤツはさァ!!》
そう口にしながら、固定観念に囚われて使おうともしなかったショルダーキャノンとシュベルトゲベールの柄部分のビーム砲の照準を合わせた上で、アドラーll(仮)を構え直して異形の黒騎士へと油断なく向き直った。